うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2 作:madamu
ご勘弁を~。
「この会議の目的は何です?」
「十師族より若手魔法師たちを独立して行動させたい、という要望がありその顔合せが目的だ」
「それ、俺いります?」
市ヶ谷から少し離れた池袋のビルの一室。
高層ビル群の中では比較的低めだが敷地は広く、V字型のビルである。
軍服姿の風間さんと一校制服姿の俺が並んで歩く。
三校の襲撃事件から3日。
十師族は早急にカードを切ってきた。
つまりは組織間の連携に対して、ちょっとした建前を利用して遊撃隊を結成したのだ。
「実力が保証された若年の魔法師による遊撃隊」というヤツだ。
一条が提案して、四葉と九島が賛成でもしたのだろう。
十師族も日本国内の担当地域の防衛をせねばならん状況で遊撃隊を組むのは、「国防を担う集団としてのアピール」「十師族内での戦功争いの機会の配分」と言ったところか。
状況は俺の手を離れつつある。
今までは「周公瑾」の件と四葉、九島(藤林)との縁から俺が若手の魔法師こと転生者たちの監視役として行動をしていたが、今は三校襲撃による十師族による正式(公的で無いのがミソ)な組織間での提案と折衝となった。
外務省外事部、公安、国防軍の三者による水面下での捜索、対応を実施する段階だったが、ここで十師族が介入することで「組織であって組織で無い」不思議な団体「十師族」が主導権を握ろうと動いてくる。
十文字の件までは「国防軍からの護衛派遣」として主導権を保持していたが今は違う。
対パラサイトのノウハウや対応が出来る魔法師の確保はすでに十師族に握られていると考えてよい。
この国の魔法師戦力はやはり十師族という大きな流れに掌握されているのだ。
影の男の思惑とは別に政治的思惑がまとわりついてくる。
廊下を進んで会議室に到着する。
部屋の出入り口には兵士が二名直立不動だ。
風間さんと俺に敬礼すると会議室の扉が開いた。
部屋の中にはロの字型に組まれた机の三辺に座る10名とホワイトボード近くの座席に着座している書記役の藤林少尉。
そして4名の護衛役の軍人が部屋の四隅付近に立っている。
「遅れて申し訳ない。国防軍101旅団魔装大隊少佐の風間晴信であります」
議長席のように準備された椅子に腰かける風間さん。
俺はその横の席に着席する。
知っている顔と知らない顔がいる。
「本日の顔合せの進行を務めます国防軍魔装大隊の藤林です。すでに面識のある方もいらっしゃると思いますが、面識のない方のため、こちらでお名前をお呼びいたします。敬称を略しますことご容赦ください」
「一条家の一条将輝」
出たー!クリムゾン・プリンス!
軽くうなずくだけだ。疲労の為か目の下にクマが出来ている。
「三矢家の三矢元治」
あ、三矢家の次期当主だ。20代半ばで鍛えられた身体はスーツ姿でもよくわかる。
三矢家は兵器ブローカーを職業としているが、本質的には戦闘用魔法師集団でもある。
「五輪家の五輪鳴門」
知ってる。略。
「七草家の七草孝次郎」
ぼさぼさの髪。優男だがどうも着ているスーツが浮いている。まあ普段は研究施設で研究三昧なのは有名だ。
「八代家の八代隆雷」
こちらも20代半ば?後半と言ったところだろうか。行動的な眉に、人を射抜くようなまなざし。
「九島家の九島蒼司」
あ、不遇の次男。
「十文字家の十文字克人」
「なぜお前が!?」という驚きの視線を投げて来る。
「一校の吉田幹比古」
「なぜお前が!(略)
「一校の司波達也」
あの無表情で俺の方を見ずにただただ虚空を見ている。
まあ考えることは予想がつく「厄介なことに巻き込まれた。CAD弄りたい」あたりだろう。
「風間少佐の横にいるのが」
「君らの面倒を見ることになりそうな関重蔵。情報部支援課第二班所属。少佐。好きなものはシュークリーム」
最後に藤林少尉の説明を引き受けて、テーブルに肘をつき顎を乗せ、不満げに各人を顔を見回す。
風間さんは察しがいいな、と言いたげな眼で俺を見る。
「本件、パラサイト事件については我々国防軍としては各省庁と連携し大亜連、USNAの一部軍事組織が関係していると考えおります。この状況の中で十師族の中から高い実力を持つ各家の方々と、オブザーバーとして吉田家の御次男、また一校でも屈指の実力者を迎えての少数精鋭の遊撃隊を組織されるとのこと。我々国防軍としての最大の支援として、情報部少佐の関重蔵を遊撃隊の顧問として送りだしたいと考えています」
偉くなるとこういった腹芸が上手くなる。
本来であれば重要戦力の司波達也をこの無益な遊撃隊に取られて一喝したいところだろう。
この仕事は村井さんを通してきた話だ。
国防軍としてはこれだけの戦力を「塩漬け」にしたいのだ。
戦力の有効利用を考えるなら各家の得意な分野に割り振る。
情報なら七草、軍部との折衝なら三矢や五輪、現場は一条や十文字と言ったように。
だが十師族はひとまとめに「遊撃隊」を結成し送り込んできた。
この国防軍の意図を無視する無駄な遊撃隊を「国防軍に押し付け横から戦功を奪う気満々」なのだ。
十師族は各地域の防衛で戦力は出さないし、対パラサイト用の魔法師は貸し出しを渋る。
反面、功績づくりに若手十師族はぶっこんで来る。
舐められているのだ。国防軍は。
そういった相手に見張りをつけて適当にあめ玉しゃぶらす役割。
支援班の腕の見せどころでもある。
「最初に言っておくが、この遊撃隊には各所からの期待が多大に寄せられている。それ以上に存在に対して疑問符が付けられていることを承知してもらいたい。君らの行動は常に誰かに評価される。それが本件の解決に関わる関わらずでだ」
さて、一校の制服を着た16,7歳に見える少年からこういった言い方をされての反応はどうだ。
俺の予想では三矢と八代辺りは多少食いつく。
七草は…まあ無視だろうな。研究肌の奴は期待とか評価とかは自分の研究以外では無頓着だ。
一条はさらに緊張するし、十文字はそれが十師族の責務とか考えるだろう。
鳴門の奴は「柄にもない言い方を」と内心笑っているだろう。
幹比古は「どういうことだ?アラタのはずが!?」と驚きが続行。
達也は「十師族だけでなく国防軍の各派閥が十師族の若手の実力を見極めようとする。この遊撃隊での功績如何では次世代の十師族の国防軍の窓口、つまりは軍事面での協力すべき十師族が判明する」と考えているのだろう。
お前の内心のセリフは長い。
「ご説明いただき恐縮だが、関少佐。いや本当に軍人か」
三矢の若いのがなんとも嫌な、上から目線かつこちらを小馬鹿にするような笑いを浮かべている。
わかるよ~、わかる。高校生が軍人の隣で大人ぶったこといったら怪しいよね。わかるわ~。
「残念ながら若作りのでね。ちょっとした理由でこの制服を拝借している。今回の遊撃隊では相談役だ。指揮官ではない。だが、君たちの持つ情報網や実働部隊に関してはある程度把握しておきたいと考えている。差支えなければ伺っても?」
「五輪は僕だけ」
最初に声を出したのは鳴門だ。
こいつ前世の最盛期能力を引き継いでいるなら九重八雲を超える忍術使いである。
いや忍術使いと言うか「甲賀流忍術 五輪派初代総帥」という肩書で十人の弟子を内閣情報局に送り込んでいた。
五輪澪の戦略級魔法師引退で軍部との関係が希薄になる直前に、鳴門は政府との関係を軍より上位にある内閣に誼を作った。
あの年代では一番の出世頭だ。
「一条は人員はほぼいない。俺と三校からの協力者が二人。直接戦闘では役立つが情報面では協力を願いたい」
疲れた顔に申し訳なさ。一条は禿るな。
「人員の話はいい。本件遊撃隊の指揮権や情報網の共有についてはどのようにお考えか」
若い二人の発言を台無しにするように八代が声をあげる。一瞬三矢と十文字に視線を投げたので、八代がこの場で意識しているのはこの二家だ。
七草は除外ね。七草次男も会話の推移を静かに見ているだけだ。寝てないよな?
「その情報網を構築するための戦力確認だ。続けてもよろしいか?八代家の陣容は?」
俺は回答しつつ八代に言葉を返す。
八代は不機嫌な様子も見せない。この辺りの腹芸ごっこは、そこでデカい諏訪部順一声よりも出来るようだ。流石社会人。
「こちらは首都圏の八代関係者と連携する予定だ。直接的な戦闘が可能な義勇兵との知己がいる」
翻訳すると「情報収集も戦闘もそこそこやるよ」だ。お前んとこの関係者って地域開発局の奴ら?
八代は沖縄・九州の守護ということもあり環境関係の省庁や、沖縄を縄張りにもつ環境省の地域開発局に絡んでいる。
直接戦力は「沖縄戦」で投入した子飼いの魔法師だろう。
「八代家には期待しているよ。沖縄では大亜連との一件もあるしな」
そう言ったのは三矢家だ。
おうおうおう、そこで火花を散らすな、若造共。
少しだけ空気がピリッとする。これだから十師族は。
「七草、九島、十文字、三矢の四家は?」
水を残りに向けてみた。
「一応若手代表としてこの場にいるけど、僕はこの手の事が苦手で情報は回るようにしておくから後はよろしく」
七草の言葉に三矢と八代は微妙な顔し、十文字と一条は口をつぐむ。
漫画みたいな研究以外興味のない奴もいたもんだ。
「十文字は情報面、戦闘両面で協力する」
咳ばらいをして、場の空気を変えようと頑張るじゅうもんじさんじゅうはっさい。
「九島は関西方面の防備を強化するため、人員は回せない。ただ、分家の藤林家の前面協力はお願いしている。そちらの藤林少尉とその妹さんが情報面でバックアップしてくれる、はずだ」
九島真言によく似た細面の優男はすまなさそうに藤林少尉を見る。
当の藤林少尉は微笑みを浮かべるだけで言葉は発しない。
この場合は「ええ、わかっています」か「初めて聞きました。シット!」のどちらかだ。
表情で読めない場合は肩と視線と指先を見る。
視線の揺れ、指先の不審な動き、肩に出る緊張、それらので判断する。
視線と指先は意識すればコントロール出来るが、肩というのは見る者が見れば結構感情がわかる。
あ、少し背筋が伸びて緊張した。
こりゃ、はじめて聞いた口だな。
「では九島家は情報収集面では実働は藤林、連絡担当として運用するということで?」
「ええ、概ねは。戦闘面では関西の守りもあるのでどの程度人を出せるか不透明ですが、民間の古式魔法師のご紹介は可能です」
まあ、九島らしい提案だ。戦力を出さない代わりに古式魔法師のカードを晒す。
本体戦力を温存しつつ、別戦力を紹介するで自分の重要性を主張する。
やらしー。この入れ知恵は親父か爺様だろう。
言葉の意味を理解したのは…俺と鳴門と風間さんくらいか?
九島は戦功は放棄したが貢献だけ狙ってきやがった。
八代と三矢は九島の次男坊の発言に口元が少しだけ緩んだようだ。
「こいつは脱落だな」と思っている様だが、あの爺様たちの助言を曲解せずに伝えるだけ合格点だ。
「三矢は基本的に戦闘面での支援になる」
少しだけ胸を張る。馬鹿か。このゲームの勝者は今のところ九島だ。
手駒の被害を出さずに結果だけ攫って行きやがった。
お前のところは手駒の魔法師が減るだけだ。
「では、こちらからの提案だ。情報収集については八代、九島をメインに。直接戦闘での連絡のため七草には伝達役を。戦闘における基本戦力は一条と三矢、十文字。五輪は独立で動いてもらおう」
視線を鳴門に送る。俺の視線に釣られ皆鳴門へと視線を向ける。
「この態で言わせてもらうが子供が役に立つとは思えないな。大人しく邪魔にならない所でブラブラしててもらおう」
俺は左手の小指と薬指を少し絡ませつつ宣言する。
大昔に決めた符帳だ。意味は【自由にやれ】だ。
この場で俺は後ろ盾にならない宣言をし突き放した。
鳴門としては下手にの遊撃隊に組み込まれるよりこっちの方が動きやすいだろう。
「基本はこれだが、八代には予備戦力の準備。九島はそこの吉田家の次男と協議してパラサイト向けの魔法師の選定。あー、司波達也はご足労いただいて悪いが、役不足だな、いや、この場合は役者不足かな」
司波達也くん、俺の意図はわかったかな。横を向き風間さんに目配せ。
周りからは提案の承認というか、意見を求めるように見えるが魔装大隊の大黒特尉を隊に返却したのだ。
「九校戦での活躍は間近で見ていたが、この場では役に立つ部分はないな」
うわー深雪ちゃん聞かれたら俺死んでるね。
五輪以上に役立たずという宣言だ。
頼むからこの場のことを深雪ちゃんに伝えるなよ!ふりじゃなくて、マジだからな!
氷の彫像になんかなりたくないぞ!
「異議は」
俺の言葉に三矢、八代は頷く。まあ初手から妥当な落としどころだろう。
八代辺りは七草を抱き込んで情報を三矢に回さない様するだろう。
戦闘現場に遅れを理由に予備戦力を先行投入して戦功を奪う。
まあやる気のない七草には連絡役で適当な人員を動かしてもらおう。
一応役割を与えたので七草ホニャララからは文句も出まい。
「遅れた」
あああああああああ、はい、俺の仕事は無駄になりました。
無駄です!時間を無駄にしました!最初から来いよ!
光夜は室内を睥睨する。
動揺しないのは俺、司波達也だけだ。鳴門でさえ息を飲む。
「四葉光夜だ」
光夜の瞳で睥睨されると大抵の、あの一条剛毅でさえ言葉を失う。
さらに言うと機嫌が悪い。
三校の襲撃は各魔法科高校内に臨時に警察から警備を呼び込むこととなった。
わかり易く言うと、その辺りの生徒会と学校側、警察との調整で中条あずさと最近同じ時間を過ごせていないのだ。
こいつはこいつで四葉関係者として、非公式の会合に参加する事があり時間を無駄にしている。
そこに来て、これだ。
今の時代で一番転生をエンジョイしている光夜だが、そのエンジョイを邪魔する者には非常に厳しい。
この間も「国防軍には高卒と大卒でどう待遇が変わる?」と聞いてきた。
完全に横浜騒乱で物事にけじめをつけて楽しい学生生活をエンジョイする気満々だ。
学生結婚とか狙ってんるんじゃないか?
「四葉は遊撃隊に参加しない。反対は?」
「十師族の連携をけ・・い・・・・・・・しする・・・・」
会議室に一歩踏み込んだ光夜に反論する三矢だが、光夜に睨まれ声が少しずつ小さくなる。
「十師族で群れる前に国防軍と連携を取れ。防人を自負するなら、国防の担い手に協力しろ」
異議なし!閉廷~
誰も光夜の言葉に反論が出来ない。
バッサリだ。額に手を当て頭を抱えるのは司波達也。わかるよ、わかる。
そこそこの腹の内の読み合いでそれなりの「研修」になったはずだが、こいつのおかげで話が終わった。
この遊撃隊構想を実現するために十師族が行った国防軍への横やりが全部無駄になった。
きっと司波達也も十文字に何かしら圧力をかけられこの場にいるのだ。
「風間少佐」
光夜に呼びかけられ、風間さんが席から立つ。
多少なりとも緊張があったのだろう。又は光夜のカリスマ性か。
「四葉光夜の名にかけて、四葉家が収集した本件に関わる情報は国防軍と共有させていただく。窓口は藤林少尉でよろしいか」
今度は藤林少尉の顔色が少し白くなった。
現代ではまだ光夜と藤林少尉は接点がない。
極東の魔王である四葉真夜と同じ姓を持つ、神秘性と神話的威圧感を漂わす少年に余裕の塊である藤林少尉も緊張の色は隠せない。
この四葉光夜はただの光夜ではない。世界のエネルギー問題に司波達也、司波雪光、タツヤ・クドウ・シールズと共に取り組み、ついには人類の月での生活を実現させた「世界のカリスマ」である。
腕っこきとはいえ、国防軍の一軍人が対面して気おされないわけがない。
「それでよろしいか」
「ああ、それで構わない」
風間さんもうなずくのがいっぱいだ。
光夜は風間さんの承諾を確認すると室内にいる若手十師族にもう一度言う。
「情報収集は七草、四葉で行う。各家は戦力を供出。預かりは101旅団とする。24時間以内に人員リストを提出。九島は古式魔法師について仲介できる名簿を提出しろ。十文字家は首都防衛として警察省に協議を持て。鳴門、お前は東京の別邸にでもいろ。達也、幹比古、帰るぞ」
ばっさり。
だがこれで十師族は四葉光夜の説得により戦力としてカウントが出来る。
対パラサイト戦力として国内の古式魔法師が使える。つまりは国防軍の軍人がパラサイト化することを防げるかもしれん。
味方が即座に敵になる。これほどやりづらいものはない。
光夜に言われて幹比古は驚きながら、司波達也は大きなため息をつきつつ部屋を出る。
俺は残った十師族たちに向かって次の言葉を言って会議を終わらせる。
「光夜の相手するには10年若かったな」
ホント話は進まないし、座ってばっかだし、身体動かさないし、腰痛めそうだし、少しは登場人物たちは運動をした方が良い。
ジャンヌ・ダルクもエアロビするんだぞ!(ビルとテッドの大冒険より)