うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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新年最初の投稿


無理解の世界

「ソファ数多くないっすか?」

「注文数は4個だしな」

 

2095年でも業務の一部は人間による車両配送である。

2030年ごろにはドローンでの配達も最盛期を迎えたが同様にドローンジャマーやネットガンによる「網漁」によって盗難被害も非常に多くなっていった。

またドローン生産も生産後即時に群発戦争投入により、ドローンの日常運用が厳しくなったことも少なからず影響している。

 

配送業者は世田谷区にある集合住宅地に向かって車両を走らせていた。

 

 

一箇所に配送される4つのソファ。それは単純に経費をケチったためである。

ベッド4個とセールで出されていた型落ちソファ4脚を比較した際に結構な差額が出たためだ。

パラサイトに憑依された人間は身体を休めることをしても睡眠は必要としない。

身体を横たえるのに適したものがあればベッドだろうとソファだろうとどちらでも構わない。

 

【影の中の男】がCIAに依頼して準備したセーフルームは日暮里、小田原、町田の三カ所で、この日四カ所目として世田谷に一箇所増設された。

 

増殖されたパラサイトの中でも「まともに動ける」パラサイトはあまり多くない。

「まとも」つまりは会話、思考、判断が可能な個体である。

 

現在で25体。上記の三要素を満たさない個体だけなら60体近くになる。

パラサイトによる個体増殖は数日に1体といったペースで増加曲線は鈍い。

CIAが頭を悩ませるのは素体になる人間の選定よりも、失敗して死亡した死体の処理である。

USNA国内であれば方法はいくらでもあったが日本国内では非常に難しい。

顧傑の本国内の協力者のキャパシティも超えており、状況的には芳しくない。

 

この状況があと一か月と少し。

【影の中の男】の条件は「論文コンペ当日」の作戦決行である。

大亜連との連携機会、つまりは陳祥山率いる「決死隊」の到着と作戦準備を含めると妥当な所である。

現在の作戦は複数個所への襲撃による魔法協会の保有する致死性の戦術、戦略級魔法のデータ奪取だ。

 

USNAには「古式魔法師」というものは存在しない。

1960年代のヒッピーブームに並行する形で乱立した超自然主義を掲げたカルトはいくつもあったが

欧州魔術や東洋魔術を源流とする魔法を生育する社会状況ではなかった。

そのためUSNAの魔法師は基本科学的な超能力の解析と、科学技術との複合物であり、その魔法は戦略、戦術使用方法は非常に「常識的な範囲」にとどまっている。

つまりはABC兵器の代用品でしかない。

 

反面、アジアや中南米、アフリカ、欧州の魔法は非常に盛んであった。

その中でアドバンテージを取ったのは魔法と科学の混合をいち早く行った日本であった。

カルト的な集団が一夜にして魔法の権威。

それが起きたことで、2000年代初頭の日本では非常に複雑かつ大規模な混乱があったのも事実である。

 

「ここ右か」

自動ナビに誘導されて車両は動く。

年配の方40代と10代のバイト風。

二名の配達員は「運転手」ではなく、荷物を届ける際の運搬用ロボットの操縦者である。

 

1990年代の世田谷は下町の色を残す23区最大の区であったが、自然災害を受けての復興による強制的な区画整理が行われた。

その際に二次大戦の遺構から見つかったいくつかの資料や遺物が学問としての魔法に多大なる影響を与え

民間の魔法師たちによる学問地区として一時期は栄えた。

しかし、民間魔法師たちは貧学の徒である。

復興後は住宅街として民間魔術師たちは立ち退きを求められら西へ東へと散って言った。

あるものは研究所勤めに、また別物は「伝統派」を名乗る。

 

住宅街として賑わいを見せていた世田谷区であったが、群発戦争、そして現在まで続く数十年で少子高齢化となり

住宅の数に対して住民は減少傾向にある。

 

到着したのは3世代住宅であった。

「また古い…」

40代のスタッフはやや古びた住宅を見上げた。

30年前には流行った3世代住宅は風雨によって白い外壁は少しだけ古びていた。

 

 

玄関に向かうパラサイトは元はUSNAの海兵隊に所属していた「アジア系」の女性だ。

身長や体格は平均から少し大きい。しっかりしていると言っていい。

右頬から顎にかけて小さいながら傷があるので「スカ―」とCIAからは呼ばれている。

 

この家に住む唯一のまともなパラサイトである。

そのため対人に関わることは全て対応している。例えば手配されたソファの受け取りである。

 

他のパラサイトとは意識を共有しているがそれでも管理できるのはこの家にいる11名が限界だ。

皆、それぞれ繁殖欲求を持ち、状況を理解させ外出が可能なタイミングを計るのは

判断と会話と思考のすべてが揃った「スカ―」だけである。

 

チャイムの音で玄関口のモニターを確認。

写っているのは配達人が二人。中肉中背の一人と、小柄な一人。両名とも男性。

1人は40才に届くほどだろうか。もう一人は10代に思う。

(安全)と判断しスカ―は玄関のロックを手元のコンソールで解除し、少し離れた玄関先に向かった。

 

玄関の扉に手をかけた瞬間に状況は一変した。

情報体次元による巨大な揺れ。それは肉体ではなくパラサイトの本体である情報体次元における不安定な空間状況を発生させた。

揺れというより強力な波紋、巨大で重い波が情報体次元のパラサイト達を押す。

スカ―をはじめ、住宅内のパラサイトに憑依された身体は両手足を床につけ耐えるだけであった。

下手に憑依した身体を抜け、情報体次元に逃げ込むと波に呑まれ、霧散するか遠くへ流されてしまう。

 

玄関が開いた。

40がらみの男は拳銃を構え、室内を確認する。

左手を後ろに回し合図すると数秒後に武装をした兵士たちが住宅内に突入し「クリア!」「目標発見!確保!」

と叫び連携を取る。

 

その後に作業着姿の10代と、服装が違う一校と呼ばれる高校の制服を身にまとった前髪がクロスした髪型が特徴的な少年と一緒に住宅内に入ってくる。

40代は10代に敬礼する。

 

作業着の10代はその恐ろしい揺れに耐えるスカ―の傍らに屈み、顔を覗き込んでくる。

「確かお前らは意識が共有しているんだよな」

スカ―は無意識に声の方を向く。

声の主の顔を見る。だが印象が薄い。どこにでもいる顔。どこにでもいない顔。

それは情報体次元で生きるパラサイト達の人ならざる認識を持っても理解の及ばない無理解の世界だった。

 

最上級のヘルメスの加護。詐術の加護は「認識」さえも騙す。

 

「もう消すぞ」

もう一人の少年が軽く呟くと手元のブレスレッド型のCADを弄った。

強力な渦。情報体次元で起こる強大な圧力と回転。それは物質の情報体次元を傷つけず、パラサイトのみを対象とした恐ろしく高等かつ「情報体」を殺すことだけに特化した魔法。

四葉竜也の「アケロン」という魔法だ。

 

「これで攻勢に出れるな」

「まあ須田ちゃんのおかげでね」

 

少年同士の会話はスカ―の耳には届いていなかった。

彼女であったパラサイトは一瞬で渦に消えていったのだ。

 

 

 




活動報告に2020年1月5日までのアンケート書いた。
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