うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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テレビで見てるし

「清姫先輩、グループデート行きません?」

三年生が多数いる昼食時の食堂。

麗人、女生徒の憧れの一人、色気と盆暗が同居する美女、十二江清姫に正面から声をかけたのが須田渉であった。

 

一年C組の須田渉、妙に男女の仲を取り持つのが好きな少年。

一年の総合評価では30番前後。優秀と言えば優秀だが上位陣には一切食い込めない。

平均身長よりは少し高い背。森崎、相馬と須田。良く絡む仲良し三人組だ。

そこには雪光が混じることもあれば狼谷や久慈灘やアーデル、フィリオ、そして光夜も混じることがある。

 

「え」

海鮮丼を食べ終えた清姫はその美しい相貌をちょっとだけ崩した。

それは面倒ごとに巻き込まれた、というより予想外の言葉への単純な驚きだ。

「そうですよ!先輩とデートしたい一年男子が多くて、自分が代表で誘いに来ました!先輩もお一人だとつまらないと思いますので他の女子も誘ってますよ!七草先輩でしょ、市原先輩は…彼氏いるか、あと誰か彼氏無しの三年女子知りません?」

周りの生徒たちも驚いてふたりのやり取りを注視している。

須田は物怖じすることもなく、やや押し気味に勝手に清姫の正面の席についた。

女生徒の視線が厳しいが須田としては「心地よい」といった感じなので気にはならない。

 

「おねーさんそこまで暇じゃないからな~」

清姫はこの転生者少年の意図を読めないでいた。

どう見ても他の転生者と違う能天気さが爛漫としているからだ。

 

「ダメですよ、そんなこと言っちゃ。せっかくの高校三年間ですよ、恋愛の一つくらいしないと!それに男女で楽しくデートするくらいいいじゃないですか!」

力説。軽く引く清姫。そしてそこには清姫の幼馴染が現れた。

昼食時の食堂でありながらトレーを持っていないことから清姫はこの事態の黒幕は七草真由美だと看破した。

小学校5年生の時は学芸会で一人二役の早変わりを真由美の根回しで行うことになったりと、たまに真由美は清姫で遊ぶ。

清姫としても小学校6年生の時に真由美と二人で人魚役で上半身水着姿になったこともあるのでオアイコだと思っている。

 

「キヨも恋愛するお年頃でしょ~」

七草真由美。

そして渡辺摩利。

真由美の顔つきは久々に清姫を遊べるといった感じで満面の笑みだ。

横に並ぶ渡辺摩利も意地悪な笑いを湛えている。

 

笑顔で清姫に顔を寄せ「最近、学内の空気も重いの。協力して」と言って小さくウィンクをする。

(生徒会も大変、大変)と清姫も内心同情する。

「グループデートは男子25名、女子25名。参加費は一人・・・こんなもんで!」

指を四本立てて須田に提示する。

清姫の提示に須田は笑みを浮かべる。

罠にはまったのは清姫だった。

「任せてください!ただしその参加費を取るなら先輩も協力してくださいね~」

 

笑顔の種類が変わる。

須田の小動物的笑顔から、罠にかかった愚かな動物に対して自分の技量を誇る猟師の笑顔だった。

 

 

「やられた」

青を基調したバニーガール姿の清姫は険しい顔付きで呟いた。

タイツは網タイツではなく、黒に近いストッキングで脚線美をあらわにしている。

 

「その台詞、着替える前に言う台詞です」

横にいる市原鈴音はいつものポーカーフェイスで白のタキシードの襟元を直す。

市原鈴音も女子としては背が高い方で、そのクールな美貌と相まって似合っていた。

身長は二人とも同じ程度、やや清姫が高いが、「バニーガールならハイヒール!」ということで

今は清姫の頭頂が幾分か高い。

 

今日の3年生の引率はこの二人だった。

 

グループデートというのは校外学習だった。

十三束家が運営に参画するテーマパークで1日就労体験。

清姫はお祭りごとは好きだが、学習行事は今二つ苦手であった。

前世もそのあたりは優等生というわけではなかった。

 

この校外学習で参加者のモチベーションをあげるため人気者をやや強制的に参加させたのだ。

策を練った須田は「バニーガール美女が見たい!」を最大の動機として行動をした。

そして彼はこの校外学習の設定の為、十三束に交渉し、学校を説得し、テーマパークの支配人に話をつけバニーガール姿の十二江を実現させたのだ。

 

あの食堂での話の段階で、須田は十三束には接触していたし、テーマパーク支配人へのプレゼン用の大枠は決めていた。学校への説得材料も収集済みであった。

十二江清姫は哀れ「健全な男子高校生」の欲望のためバニーガールとなったのだった。

当の本人はそのバニーガール姿を気に入って、午後の別の作業時もバニーガール姿で楽しく作業していた。

 

校外学習は早々に決まった論文コンペの開催規模縮小に伴う、一般学生への単位取得のイベントであった。

例年は論文コンペへの応援ということで単位取得となっていたが、三校の女生徒が行方不明ということもあり論文コンペ開催事務局は早々に参加者の制限を行った。

 

裏では十師族による圧力があり、内定段階だが論文コンペは登壇者と一部警備班だけの参加となり、各校の応援は当日休校扱いで自宅待機となる。

 

ただし、各校の生徒会からは審査を勤める生徒会長の参加は必須となった。

面子を守るため中途半端な選択した事務局の理事の一人は

中条あずさを危険に晒す事務局の判断に怒る四葉光夜の視線で恐怖のあまり年甲斐も無く失禁してしまった。

 

「おりんよ、私が言いたいのは真由美のバニーガール姿を生で見られないことなのよ」

「十師族、七草家の令嬢がバニーガール姿になるとは思えません」

ぴしゃり、という擬音。

 

スタッフ控室から出た二人は。園内の広場に足を向けた。

時間は8:45。あと15分で開園。

最後に点呼を取って仕事の開始である。

二人は最初の1時間は入園者へのゲート近くでの案内である。

 

テーマパークを選択しなかった生徒は国立博物館の分館での収蔵物の整理作業が待っている。

集合の広場ではすでに40名近い生徒たちが待機しており、それぞれの就業場所のグループを作っていた。

 

「似合いますね」 清姫と市原鈴音の姿を見て笑いをかみ殺しているのは狼谷だった。

横のミシェルもニヤニヤ笑っており、アーデルは情報端末で熱心にバニーガール姿の清姫の写真を撮っている。

「リン先輩と腕組んで」

清姫はその指示に的確に応えていく。

数秒ごとにポーズを変え、時には市原鈴音を巻き込み、軽妙だったり、艶やかだったり、とポーズを決めていく。

既に他の生徒も撮影会に参加しており、5分間の撮影タイムとなった。

 

女豹のポーズを終えた辺りで「バババババニーガール!」と声が広場に響く。

作業員服の左腕に「研修」の腕章をつけた服部刑部少丞半蔵が顔を真っ赤にし、声をあげる。

 

「童貞、もう時間か?」

アーデルは服部の驚きを無視して、間もなく点呼時間であることを確認した。

童貞と呼ばれた服部は自分のことであると確認をせず声を出す。

 

「十二江先輩!如何にテーマパーク研修における研修先からの意向といえ、一校の生徒がそんなにハレ、破廉恥な恰好を、バニーガールですよ!それは、ハハハハレ、破廉恥ですよ!」

「おや、えっちぃ格好だと認識しているんだ~。ウサギちゃんは常時発情してるしね~」

 

服部は顔を背け清姫の方を見ないように努めるが高速の横目でちらちらとその姿を網膜に焼き付けようとしている。

清姫はその姿を面白がりちょっとずつ近寄り、そして作業員姿の服部の襟元をつかみ、無理にでも自分の方を見るよう力づくで態勢を変えさせる。

いつも以上に接近し、目をつぶることで抵抗する服部。服部の耳元に清姫の吐息がかかる。

周りの生徒は男子はドキドキしながら見つつ、女子は黄色い声をあげる。

 

「服部会頭。仕事になりませんからとっととソレを見てください」

市原鈴音はため息をつきつつ、清姫とじゃれる服部の名を呼んだ。

 

清姫は最後にフッと服部の頬に息を吹きかけ離れる。

「ハンゾー君。お仕事の時間だよ」

そう言われて恐る恐る目を開けた服部が見たのは列に並ぶため背中を見せたバニーガールの後ろ姿と形の良いヒップだった。

 

結局この日の夜は服部刑部は寝る前に「俺は真由美さんが好き!」と枕に顔をうずめて20回連呼してから寝ることとなった。

翌日情報端末には、アーデルからの撮影会で撮られた清姫の写真が大量に送られることとなる。

 

「なに、高校生もこんなところで呑むの?」

「コーラ美味しいです!」

 

一日の仕事も終わり、須田渉は行きつけの居酒屋に来ていた。

正しくはこれから行きつけになる店のオープン1年目に来ていた。

 

須田は博物館での収蔵物整理を終わらせ、上野にある飲み屋街に来ていた。

十二江清姫のバニーガール姿はアーデルと共有している一校美少女ファイルにアップされているので心配はない。

上野での収蔵物管理は意外と肉体労働で、数少ない男子生徒は常に走り回って重量のある収蔵物の移動に駆り出されていた。

アラタ達は「軍務」の一言で別途駆り出されている。

 

須田の行きつけはかつての京成上野口から歩いていける飲み屋街の一角にある。

上野の美術、博物館については群発戦争でも残り、文化の聖域として2000年代初頭よりも文化物の収蔵品は増えていた。

「アジア最大」という冠もあながち嘘ではない。

行きつけはチェーン店ではなく、飲み屋の三代目が店名も一部変えたリニューアル店だ。

 

コーラとこの店の名物になるハーフピザをつまみつつ、横にいた男性に見覚えがあって話しかけた。

最初は男性の持っていた情報端末のカバーが珍しいことが話しの糸口だった。

男性は、逆に年若い須田がこの飲み屋、カウンターバーにいることを面白がっているようだ。

 

「仕事は何なさってるんですか?」

「こう見えてもイベント関係でね」

男性はハイボール。横顔からは20代から30才程度に見えるが実年齢は上手く読めない。

コーラを飲みつつ須田は自分に(気軽に聞こう)と気持ちが固くならない様言い聞かせつつ、リラックスの為、先週見たアイドルのグラビアを0,5秒だけ頭に浮かべた。3年後に電撃入籍することで少しだけ世を賑わせたアイドルである。

 

「へ~イベント、ライブとか主催とかプロデューサーですか?どこのアイドルなんですか」

「いやアイドル系じゃなくて、一般ユーザー向けの体感イベントっていうの?規模だけはデカくてね」

いつものように少し食い気味に。男は苦笑いをするが、それの真意は須田では読み切れない。

「体感イベントいいですよね!友達と行くとすっごく盛り上がって!この間も図書館主催の体感系イベントですっごく盛り上がったんですよ!」

そう言って須田はちょっとした思い出を話す。図書館の中の謎を解くという趣旨のイベント。

グループデート10人でクリアタイムを競ったこと。

 

「いいね、図書館系イベント。体感系イベントのキモは非日常から日常を見せることだから、お堅いイベントの割には楽しかったでしょ」

「そうですね、図書館の書庫に入ったのはオモシロかったです。今度されるイベントも体感系なんですか?」

話の流れを切らさないように質問。こういった質問事は須田は得意だ。話を途切れさせないにはジェスチャーと視線と質問。

 

「規模としては大きめでね。最低でも参加規模は数千人を予定していてね。最大に膨らめば10万人は硬いね」

「どこでやるんですか?東京なら行きます!」

少し身を乗り出す須田。男も楽しそうに須田の興味ありげな顔を見て笑う。

「いやね、今度の論文コンペの日になるんだけどね、横浜と京都あと八王子での同時イベントでね」

「すっごい!同時イベント!」

「いや同時にやるだけである程度は観客が主体的に動いてもらわないと」

男の含むような笑い。須田は何が起きるか知っているが、そんなことを知らないふりをしつつさらに質問を返す。

 

「誰かゲスト来るんですか?!」

「ゲストか…君らは知らないだろうけど最高のゲストがいるんだよね。長年の夢の人が」

男はそこで手元のグラス、レッドアイ(ビールとトマトジュースのカクテル)を飲み干す。

「え~教えてくださいよ!」

「ダメダメ。当日までお楽しみ」

男は食い下がる須田を見て笑う。

 

「え~、当日は論文コンペに参加予定だから遊びに行けないんですよ~」

「いや、論文コンペ会場も体感イベント会場だから当日参加できるよ」

(そうだよね~)男の言葉に内心同意して須田はその感情を誤魔化す様にはしゃぐ。

「ホントですか!?やった!行きます!絶対行きます!」

男は「じゃあ」と何かを言おうとしたとき情報端末に着信を感じ、手で「ごめんね」とジェスチャーをすると席から少しだけ離れた。

情報端末を耳に話を始める男。須田も情報端末を出し、つまらなそうな顔を作る。

 

「いや、うん、世田谷。いいじゃない、適当な家あったんでしょ。そこと日暮里にまとめられない?小田原は遠いよ。うん、あ~じゃ、世田谷、日暮里、町田。事務所はこれで。小田原だって大して広くないし」

少し駄々をこねるような口ぶり。

連絡先と何か選定をしているようだ。

 

須田は、その地名を情報端末のSNSに記載して投稿せずに下書きに収めた。

 

 

その日の深夜、アラタと連絡かつかず、黒羽竜也に須田渉はネット回線越しに会った。

知り合いの中で一番軍人らしいことは知っている。

この手の報告も上手く運用してくれることを期待してである。

 

「みたいな会話をね。【影の中の男】としたんだよ。だから目的地は横浜の魔法協会支部、京都の魔法協会本部、あと一校だね」

腕を組み、そのことを思い返して頷く。

竜也もその須田を見て、驚きで表情が固まっている。

「よくそいつが【影の中の男】とわかったな。そしてよくお前が転生者と気づかれなかったな」

一番の疑問がそれだった。なぜ須田渉は居酒屋の横に座った男が【影の中の男】と一瞬で判断できたのか。

その理由がわからないと、情報の信用度が変わる。

「ほら、僕特殊な転生者だから。会ったことのない人も()()()()()()()()。タッちゃんと光夜君との空港の会話とか知っているし」

顎に手を置き、うんうん頷く須田。

全120話+おまけを知る須田は神の横でポテトチップスを食べながら見たことを思い出していた。

出てきた飲み物がドクターペッパーかコーラだけというのは多少飽きがあった。

 

「はぁ~どういうことだ?」

空港の会話。竜也は脳内を検索するがきっとそれは前世の1年生の終わりの頃のことだと判断した。

須田の発言は信用できる。自分と光夜しか知らない会話を知っている。

それがこの発言の担保だ。

 

「まあね、なんていうの神の視点を知る転生者なんだよね。あとね、世田谷と町田と日暮里と小田原になんかあるから調べてみてね」

須田は追加情報を伝えるとその後25分かけて竜也をメインにしたグループデート実施プランをプレゼンした。

竜也としてはグループデートの出汁に使われるのは不快だったが、「光井ほのか」の参加が濃厚だと聞くと「参加する」と間を空けずに答えた。

 

これが世田谷のパラサイト強襲に繋がる情報である。

 

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