うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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アンジェリーナ・クドウ・シールズことアンジー・シリウス少佐

「あれだ」

「そうなの?」

 

13時27分。

 

横浜の状況について報告を受けつつ、法楽と奈波は指示を受けた寺に到着した。

路地のすき間にある小さい寺。本尊があるとされる小さな本殿。そして賽銭箱。

境内というよりも建物の空き地といった印象が強い。

奈波の腰の高さまである石碑には「小倉百人一首」や「三条家」といった文字が読み取れる。

寺の周囲を見て回ると、赤いモビリティが駐車している。

乗車しているのは男性が二人。虚空を見たまま身動きをしていない。

奈波は少しだけ胡乱な視線をモビリティに向ける。

 

「データじゃ間違いない」

法楽としては断定のつもりで言ったわけではないが、話し相手の即断を少し甘く見ていた。

「じゃ、やるわね」

「おい!人払いがま」

 

奈波の手元に一つの光の弾。

球体が潰れ楕円状に変化し、楕円状から更に伸ばされ潰され、楕円状というより尖端の光の槍だ。

 

法楽の制止を気にすることもなく奈波は槍を投げつける。

光弾発生から投擲まで1秒未満。

人のいない境内の出入口からで、人の目に触れることはない。

 

七海奈波の想弾は一種のBS魔法、つまり個人の能力由来の物である。

それが科学的に立証されたのは20歳の時の研究結果でそれまでは第七研究所の研究の結果と思われていた。

七宝の群体制御に類似した特性のため同一視されていたが、七宝の群体魔法の技術とBS魔法がまじりあい至境の魔法へと昇っていた。

 

奈波の視線に沿って鋭利な光の弾がはるか先の赤いカラーのモビリティのタイヤに穴をあける。

光弾の弾道は一直線ではなく障害物を巧み避ける。

奈波の「想弾」は視線と連動する。その弾道は視線誘導の為直線ではなく、自由に動かすことが可能である。

高速で動く光弾は奈波の視線により地面すれすれを飛行し、目に触れない。

 

昼の京都。観光客は少なくない。しかし多くもない。

人の目に触れぬ路地影の寺からの魔法。

だが、モビリティのタイヤのパンク程度では気にする人間も少ない。

 

モビリティの二人はパンクを気にしたのか降車する。

1人は禿頭の中年。もう一人は20代。

中年は作業着、20代はシャツ姿。

 

タイヤのパンク、いや切り裂かれたタイヤを確認すると二人は視線も交えず、モビリティをそのままに歩き出す。

驚きも不思議がる様子もない。その感情の揺れの少なさに法楽と奈波は敵対者と判断した。

「移動開始した」

奈波は一言マリアへ報告の連絡を入れる。

 

 

太秦から歩いて15分。

 

非魔法師には知られていないが、魔法協会の施設は京都に複数箇所ある。

京都という土地柄再開発可能な地域というのは限られており、横浜の様な巨大なビルを建造するわけにも行かず

本部機能を「協会本部ビル」以外に「協会第二ビル」と「京都西資料棟」と分散している。

 

西暦2000年に入る頃には京都に関しては景観保護の条例を皮切りに、「陰陽」や「風水」に関わる「研究条例」と呼ばれる

学術調査を根拠とした土地開発を制限する時限条例が乱立した。

その煽りを受けてか2095年の現時点でも時限条例から発展した幾つかの京都独特な条例によって大型建築物は制限されている。

その結果として魔法協会の京都本部は「本部機能と大型会議、公式レセプション」「中小会議と専門学術発表」「資料整理と学術調査」で利用できる施設を分けた。

 

本部ビルと第二ビルは「会議」「レセプション」「発表」といった共通部分もあることから建物同士は徒歩圏内であったが

「資料と学術調査」をメインとなる「魔法協会京都西資料棟」についてはやや離れたところに存在した。

 

つまりは太秦映画街から少し歩いた先にある「国際芸術文化京都センター」の敷地内に併設する5階建てのビルである。

 

 

「ZAPPA!」

国際芸術文化京都センターの第一駐車場では、鬼一法楽が大太刀を抜き6人のパラサイトと大立ち回りをしていた。

13時55分に京都センターの駐車場についた時点で、京都センターに待機していた義勇兵の一団と古式魔法師たちが数名のパラサイトと戦闘を開始していた。

 

「いやほぉぉ!」と叫びとともに、大太刀の鞘抜き捨ての一閃で一人を上下両断。

 

次の瞬間に死体の直上の虚空を唐竹に割る。

鬼一法楽が納めた秘剣「仏斬り」である。

魂魄を切り捨てると言われ、「是空の太刀」とも評される技。

現代魔法的に言えば「有機物においては霊子を、無機物においては情報体次元での切断をする」という魔技であり、法楽の対パラサイトの切り札の一つでもある。

その一閃で上下両断された人物に憑依していたパラサイトは消滅した。

 

戦端を開いた義勇兵たちよりも、パラサイトへの直接的な殺傷能力を持つ法楽に多数のパラサイトが群がるのは必然でもあった。

 

2人、3人と膨れるうちに合計で6人を一人で相手することとなった。

 

奈波は「義勇兵は誰!?」と現状を確認しつつ仲間になる相手の確認を始めた。

この状況下で戦闘の真っただ中飛び込めば同士討ちになる危険性が高い。

 

「九鬼門下の義勇兵だ!」

ひげ面で戦闘服をまとった男性が自分の所属を明かす。左右の手には拳銃とタブレットCADがそれぞれ握られている

20名近い魔法師たちは車両止や建物の影から攻撃的侵入者に対して牽制として魔法を照射するもの、パラサイト達は事もなげにその魔法を素手で打ち破る。

だが数に勝る魔法師たちは矢継ぎ早の魔法でパラサイトを足止めしている。

この足止めが可能なのも大多数のパラサイトを一人で相手する法楽がいてこそである。

 

「もっと!」

大太刀の振るう際に「呼吸」と「指で切る印」により大太刀に想子を纏わせる。高周波と加重の二重行使の高等技術だ。

最小の挙動による魔法の行使を可能とするのはこの特注の大太刀CADのなせる業だ。

「多くても!」

左右ほぼ同時に飛び掛かって来るパラサイトを半呼吸で両断。

そして、即座に見えぬパラサイトの魂魄を「勘」と「気配」で切断する。

「俺はいいんだぜ」

 

大太刀を肩にかつぎ、腰を落とし構え直すと法楽は己の希望を周りのパラサイトに伝える。

パラサイトに共感能力があれば、その凄絶な笑みに恐怖を覚えただろう。

法楽本人としては朝からのフラストレーションを開放して満足しつつある。

 

 

「こちら現場の鳴門。大太刀馬鹿が駐車場で暴れております」

駐車場の向かいのビル屋上から鳴門がマリアに報告を入れる。

「ほっといていい。奈波ちゃん」

手元のモニターは駐車場近くの監視カメラの映像が映し出されている。

マリアは義勇兵と接触した奈波に報告を求める。

「馬鹿が大太刀で暴れてる」

「それ以外」

(馬鹿と大太刀は一致してる)とマリアは奈波と鳴門の報告の共通を心中で納得しつつ、改めて奈波に報告を求めた。

 

「九鬼の義勇兵と合流。余剰戦力は無い。7分前に国防軍と九島の義勇兵に応援を要請」

奈波の端的な説明を受けてマリアは会議室の別モニターに表示された近隣の国防軍の移動状況に目をやる。

モニターの京都市街地図には青い点が京都センターに向けて動いている。

「移動している。この調子だと1.2kmくらいだからもう数分」

現状の戦力であれば持ちこたえられるだろうとマリアは判断した。

 

マリアの思考の中にパラサイトの目的という疑問が浮かんだのは状況を楽観できるからだろう。

資料棟から協会本部ビルにあるメインサーバーへのアクセスを目的にした襲撃か。

だが、パラサイトが情報次元のかなたから来た存在なら、怨霊や悪霊を召喚する呪術を収集した資料棟の第5資料所蔵室を狙った可能性もある。

彼方から自分たちの同種をこの次元に呼ぼうという「種の拡大」を望んだ可能性もマリアの頭によぎる。

 

「あ、裏門」

京都センターの裏門付近のライブ画像に声をあげたのは冬彌だ。

マリアも裏門の映像を目にすると、自分の情報端末とパーカーを手にした。

「今から行くから、冬彌足止め」

「は~い」

「鳴門、あんたは監視」

「アイマム」

二人に指示を出すとマリアはそそくさと会議室を出た。

 

モニターに映るのは赤い髪、秋物のコート、目元を隠すマスク。

20歳ほどの背の高い女性。

 

アンジェリーナ・クドウ・シールズことアンジー・シリウス少佐であった。

 

 

(これは”仮装行列”?!それも範囲展開?)

リーナには坂道と足元の感覚ズレている。

視覚的に察知している地面は、足裏の感覚ではもう数センチ下にある。

 

彼女の知覚魔法も情報次元レベルでの座標のズレにより十全に機能しない。

 

この魔法は冬彌の「雪雨」の魔法である。

効果は幻術による認識の誤認。その範囲は情報次元へと波及する。

 

「四季」のエレメントは「式」であり「四鬼」であり「四神」でもある。

彼の古式としての血統は「格」ではなく「術」に集約されており、その役目は「四神の器」でもある。

 

冬、つまりは玄武を守護獣としてその身に宿す冬彌は霊験あらたかな京都の町とは非常に相性が良い。

東京の、特に地形的に霊力の恩恵を受けない八王子ではこれほどのことは出来ないが

京都では地形を情報次元レベルで詐称することなど赤子の手をひねるよりも容易だ。

 

赤毛の女兵士は眼を閉じて、知覚魔法を再度展開し情報次元レベルでの周辺感知に注力した。

およそ1分。

サイオン量に対して負担は大きいがリーナは決して得意とは言えぬ「術式解体」を行った。

数秒間の後、情報次元レベルでも現実レベルでも雪雨の効果が軽減される。

リーナは移動魔法を即時展開し、影響ある範囲を抜け出した。

 

言葉では容易だが、知覚魔法から術式解体の範囲放出、そして1秒の間を置かずに移動を行う。

連続使用の継ぎ目を極力感じさせない確かな魔法行使の実力が必要である。

精緻な魔法運用をあまり得意としない、と評されるリーナではあるがそれはUSNAの超一流魔法師が揃うスターズ内の話であり、ごく平凡なB級以下の魔法師と比較すると十二分に精緻な魔法運用であった。

 

「流石リーナちゃん、このくらいなら抜けるか」

前世で二度、作戦で殺し合いを行った冬彌としてはこの程度で行動を阻害できるとは思っていなかったが、マリアが裏技で現地に到着する時間は十分稼いだと判断した。

 

 

 

「止まって」

 

(誰?)

 

裏手の駐車場を抜けて建築物まであと数メートルといった時、一階の非常階段ドアから現れたのは青いパーカーに黒のジーンズ。青のスニーカーの女の子であった。

シリウス少佐の姿であるリーナより少し背が低い。

”仮装”を解いた実際のリーナと同じだろうか。

編み上げた黒髪の美少女。強く、どこか攻撃性を秘めた顔つきの少女だ。

「アンジー・シリウス少佐。ここは日本の魔法協会の敷地内。一応社団法人の施設で公共施設じゃないから不法侵入にあたるよ」

少女は左手を開きリーナの方に向ける。

(通せんぼね)

リーナは少女と対峙しながらも部下たちが別の経路で敷地内に侵入し、表の駐車場へ到達したか思案を巡らせたが目の前の少女の気配の強さから、一瞬で目の前の状況に引き戻された

 

「どきなさい。民間人が怪我するわよ」

「すでに上とは話が付いている。ペンタゴンはこの件にはどの程度関与しているの?デビット・ストールの承認は出てるの?」

黒髪の少女、高村マリアの口から出たのはデマかせだ。適当。嘘。

その言葉にアンジー・シリウス少佐は動きが止まり、マリアを睨みつける。

(どうせパニックってるんでしょ。今だとストールのおっさんは上院だっけ)

マリアの予想は当たっていた。

 

(どいうこと!ペンタゴンが偽の命令を出したの?CIAが関連しているって話だったけど、少将や参謀関係からは何も情報は出なかった!ストール上院議員のブリーフィング同席は政治的要素でもあったわけ?我々スターズは囮?なんのため?もうこんな陰謀とか嫌なのに!魔法の力を評価されたけど隊長だけど、軍内政治はまったくわからないのに!いや~せっかく日本に来たのに!すぐに戦闘だし、まともに観光できなかった!観光は無理でもシブヤには行ってみたかった!ダメよリーナ戦闘中に余計なことを考えては!)

 

マリアは親魔法師系かつタカ派の上院議員のストールの名前を出したのが、偶然にもリーナの思考の混乱を激しくする。

来年の中間選挙用にスターズへの予算配分の政治的便宜を図るためペンタゴンに寄ったとき、表敬と印象向上のためブリーフィングに顔を出したにすぎず、そこにはこの一連の事件への深い関与はない。

前世でマリアはストールへの政治献金により間接的に金融関係のロビイングを支援してもらったことがあり、よくしゃべり覇気のある笑顔を浮かべる老人と懇意にしていた。

 

「もう一回言っておく。上とは話がついているから引きなさい。嘘だと思うなら確認でもしたら?」

リーナは薄っすらと汗をかき、二歩三歩と後ずさる。

「名前は?」

「たか…川村エカテリーナ」

 

「そう、この場で言うのはなんだけどあまり国家間の騒動には首を突っ込まないことね」

 

リーナはそう言うと踵を返し走り出す。

その言葉は強がりであり、同世代の女の子に対するアドバイスでもあった。

走るリーナの後ろ姿が見えなくなるとマリアは小さくため息をつく。

おっちょこちょいで勘違いしやすいリーナを言葉の罠にはめた事へのちょっとした罪悪感。

 

「まあ、この名前を言うのはあんたとカナデだけしとくよ」

誰に言うでもなく一言呟く。

高村マリアはちょっとだけカチューシャに戻った気になった。

 

「獲ったど~!」

建物を挟んだ駐車場側から叫び声が響く。

法楽がパラサイトの最後の一人を物理的にも情報次元レベルでも「唐竹」にした瞬間であった。

 

 

14時27分

 

横浜では想定よりも前倒しで事件が頻発していると連絡を受けたがマリアからしてみれば、あの四葉光夜と黒羽竜也そして司波達也が揃っていることを考えると、16時前には横浜騒乱編が終わるのではと感じていた。

 

不安要素の「影の中の男」については(どうせ関重蔵がなんとかする)の一文で結果が出てしまうと感じていた。

 

「お次だよ!三年坂で意識不明者が二名出たよ、向かって」

各人の情報端末から冬彌の明るい声が聞こえる。

 

「奈波ちゃん!鳴門!二人は事後処理してから来て。法楽、飛ぶよ!」

駐車場で義勇兵たちと状況確認をしている三人に声を投げる。

 

高村マリアは川村エカテリーナではなく、高村マリアとして現世で戦っているのだ。

 

 

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