うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2 作:madamu
午前8時00分
横浜港署。
千葉寿和警部は昨晩藤林響子に言われて、ありとあらゆる伝手を使って「横浜作戦」へ参加人員を揃えた。
既に国防軍から警察上層部への警備人員の協力の話はあったが、天下の千葉家の総領息子が突然の勤労意欲という名の下心を発揮、当初の予定を上回る人員を当日揃えることができた。
「千葉警部、本件のことは理解しているね」
横浜港署に急遽設置された警備本部では、指揮を執る警視正が美人の色香に負けて無理やり門下生の警官たちを動員した千葉警部に詰問とも説明ともとれぬ声音で語り掛けていた。
直立する千葉寿和は少しだけ青い顔をしている。
国防軍主導の特殊な作戦に警察省上層部が応じたという話は少し前から聞いていたが、藤林響子の依頼がまさにその件のど真ん中とは想像していなかった。
「はっ!国防軍への警備協力と聞き及んでおります」
そう千葉警部が答えると警視正は額に手をやり少し悩むような態度を見せる。
「警備ではなく、正しくは広域での立ち入り制限を行うのだよ。下手をすると横浜は戦場になる可能性がある」
不満と、少しの怒りが警視正の言葉から感じられた。
千葉寿和はその意図を正しく認識した。
(縄張り荒らしか)
国防軍は秘密裏に国内に潜伏する工作員との戦闘が勃発するようお膳建てをした。
そういった国内での広域戦闘が行われることは「治安」を担う警察組織の面目を潰す行為でもある。
国防軍は自分達の作戦行動のため国内治安を意図的に乱す状況を構築したのだ。
事前の調整は難航したが妥協点が見いだされた。
だが現場を仕切る警視正の怒りは収まっていないようであった。
「いいかね、千葉警部。君がご実家の伝手を使ったことには何も言うことはない。逆にこれだけの人員を集めたことを褒めたいくらいだ」
「はっ」
千葉寿和の返答も弱い。
警視正の言葉は文字面とは裏腹な意味があった。
「千葉警部。君にはある程度自由に動いてもらって構わない。警察省にもその旨伝えてある。私からの指示は一つだけだ」
警視正は千葉寿和の顔をしっかり見てから指示を出した。
「国防軍の脳筋共に一泡吹かせてこい!敵国の工作員を一人でも多く”逮捕”しろ!」
「はっ!」
殺さずに工作員を捕まえろ、国防軍が行う工作員の殲滅とは真逆の命令でもある
千葉寿和の恋と仕事の板挟みの一日が始まった。
◆
午前8時40分
「すいませんね、。今朝早くに不発弾が見つかって、この先の区域への通行が制限されてるですよ」
山下公園へは車で25分。横浜という区域から少し離れた路上。
裏道を含めて多くの警官が配備され、人の出入りを確認していた。
「おまわりさん、そんなの聞いてないよ」
大型の貨物トラックの運転手は少し高い位置にある運転席から外にいる警察官に不満を伝えた。
交通量の多い大通りとはいえ、非常に警官の数は多い。
渋滞を起こしている先頭車輛辺りだけでも20人近い警官の姿が見える。
「申し訳ないね、こっちも仕事でね」
「交通規制の解除は何時くらい?」
「予定だと、昼間までかかりそうで」
いらついた運転手は小さく舌打ちをした。
警官はそう言った態度には慣れっこで、特に反応を示すことはなかった。
運転手との応対をしていない別の警官はこの隙に車両の外部をみている。
少しでも違法性を感じるところがあれば別件で運搬貨物の検査も行うよう指示を受けていたのだ。
「まいるんだよ!こっち到着に時間指定のある荷物なんだよ?!」
声を荒げる運転手に対して応対していた警官は準備していた言葉を言った。
「この先でUターンできるでしょ。そこから、この地図の、そうそうそこの大通りを北上した先に交通管理の臨時部署のテントがあるからそこに行けば通してもらえるから」
運転手の見せる地図アプリを指さしながら移動先を指示する。
移動先の臨時部署のテントは貨物つまりは国外の工作員への物資供給を調べる部隊がおり、強制的に貨物検査を受けることになる。
午前8時47分
小規模であるが最初の騒動が始まる。
裏道での検問を抜けた車両がいたのだ。
これが横浜騒乱のスタートであった。