うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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USNAの超大型直立戦車「ハイペリオン」

「十文字隊長」

魔法科高校から選抜された学生警備隊の隊長である十文字克人に声をかけたのは、この論文コンペ会場を中心とした警備陣の責任者である福島中佐である。

小柄な中年男性なので十文字克人を見上げるような態勢になる。

臨戦体制ということもあり服装は戦闘服を身に着けている。

 

福島中佐のもたらした情報はただ一つ。

「どうやら国内潜伏した工作員が横浜市外の交通規制の網を無理やり破ったようだ」

開会式もこれからというところで、この情報は十文字克人の緊張感を一気に上げた。

「警備隊に警戒を促します。続報があれば共有いただきたい」

 

奇妙なことだが学生有志による警備隊は、国防軍の指揮系統の下部にはない。

 

学生ではあるが、警備隊は本来は学生自治をうたう魔法科高校の趣旨による自発的な行為であり、その指揮系統は警備隊長が頂点になっている。

 

そのため今日の国防軍との連携はあくまでも「情報共有」による提携であり、十文字の判断は「国防軍からの助言」によって決定され、国防軍の進言を履行する義務はない。

そこには十師族に対する忖度も過分に含まれている。

 

国防軍としてはいくら魔法師集団とはいえ、指揮命令系統に含まれない集団が警備の一翼を担うのは不安でしかない。

福島中佐も平静を装っているが舌打ちの一つもしたい気分だ。

 

十師族。その政治的影響力が有事ともいえる現在に多少なりとも影響をしていることはやはり国防軍の悩みでもあった。

 

十文字は警備隊の控室に戻るなり、沢木を引きつれた服部に指示を飛ばした。

「服部、警備班でエントランス警備担当班以外を集めてくれ」

 

 

「ドンパチ!」

「わかったから」

アーデルの弾む声を制するのは夜天だ。

アーデルはタワー正面で腰に手をあて胸を張る。

 

二人とも横浜ベイヒルズタワーの正面玄関に陣取っている。周辺には義勇兵たちが車止めや防弾用の簡易壁をそそくさと設置する。

 

30分前には横浜市街地への敵勢力の侵入が各所に情報が流された。

横浜ベイヒルズタワーには多くの義勇兵が詰めており、現在は戦闘経験が豊富な部隊が今か遅しと周辺陣地の構築に励んでいる。

 

「あんた、糸は?」

「もう出してる」

夜天の魔技である「斬糸」はミクロンサイズの糸を、時には人体、時には周囲に張り巡らし操作、感知を行う。

現在は、この横浜ベイヒルズタワー周辺に200本の糸を張り巡らせ、地面の振動から異質な存在の感知を行っている。

「国防軍以外はいないわね」

周辺の振動や温度、そして微量の波動、そういったものを感じ分析するのは夜天の得意とするところである。

「いや、ちょっとまって。ああ中華街ね。あと五分くらいかしら。門が開くわね」

少し距離がある区画である中華街方向から複数の振動。地面をこする独特な振動。数は複数。

地面圧を考えると全長5m前後。

 

「出番じゃない?」

少し面白がって、横のアーデルへ水を向ける。

 

それを受け、アーデルはCADを介さない地震の魔女としての独特な魔術を発動する。

「●△■××!!!!」

言葉としては聞こえない、叫びの様な祈りの様な声を出すとアーデルの身体には無数の青白い紋様が浮かび上がる。

それは首元から伸び頬まで覆う様だ。

同時に手首のクリップのナノマシンも活性化する。

 

制服の上着、グリーンのジャケットは漆黒に染まる。ネクタイもだ。

そしてワンピース部分には黒いファイヤーパターンが浮かび上がる。

 

ナノマシンが想子に反応し、個々人の想子紋(サイオンパターン)を形成している。

その横では夜天も想子をナノクリップに注入する。

彼女来ているドレスは色を変え純白へと変化し、スクエアの幾何学模様を浮かび上がらせる。

 

「行ってくる!」

それだけ言って走り出すアーデル。

目の前の防御陣としている防弾用簡易壁の1,8mの高さを簡単に飛び越え、さらには1mの高さの車止めも飛び越えていく。

 

アーデルの戦闘用魔法装甲「タイタン オブ ウォー」

戦の大神の名を関したこの魔法装甲は強靭な想子装甲に人理を越えた肉体能力を宿す状態にするものである。

今の彼女には”ジェボーダンの獣”など子犬にも等しい。

150cmに満たぬ身体はUSNAの超大型直立戦車「ハイペリオン」、大亜連が投入した中型の東欧製直立戦車とはケタ違いの、重戦車を屠るために生まれた超大型直立戦車とほぼ同等の馬力と強靭さを持つ。

 

レース用バイクもかくやという加速を見せ、アーデルは中華街目がけ走り出す。

 

 

「カノープス少佐」

「ああ、京都でも総隊長殿が動き出した」

衛星の一人に声をかけられ、横浜港近くのUSNA系の貿易会社が借りるオフィスでカノープスが答える。

 

USNAスターズ。

世界最強の魔法師部隊。

実際に去年の中近東での作戦で派兵された2小隊が敵の機甲大隊の侵攻を抑え込んでいた。

 

カノープスたちUSNAスターズの服装は軽装甲スーツを身にまとっている。

スターズブラボーチーム総数11名。

京都にはシリウス率いるアルファチーム。

横浜では残りの11名がカノープスのブラボーチームとして戦端が開かれるのを待っていた。

 

昼の戦闘ではあるが、USNAの戦略分析官の読みでは目標は2カ所、魔法師協会関東支部と論文コンペの会場だ。

カノープスはチームをブラボー1、ブラボー2と隊を分け、スターズだけではなく潜伏在日していた準戦闘工作員(パラミリ)を各班に5名ずつ付ける。

首都圏におけるUSNAの最高戦力でもある。

 

目的はCIAから離反した元工作員の処分と「パラサイト」の削除。そして漁夫の利である。

複数の目標を持つ本作戦は非常に偶発的な状況への対応を求められることから、シリウスよりも政治的判断能力が高いカノープスが横浜の担当となった。

それには彼の血筋、USNAの政治中枢に近い血脈による要求でもある。

 

「傾注!」

衛星級の声にオフィス内にいるスターズと準戦闘工作員がカノープスに向く。

カノープスの派手さは無いが重く通る声が響く。

「本作戦は偶発的な要素が多く、諸君らの冷静かつ躊躇ない判断を求める。この作戦にはそれを対応できる人員を配置した。諸君らの理性と豪勇に期待する」

短いながらも、期待と作戦の難しを伝えるには十分だった。

オフィスにいるスターズと工作員がカノープスに敬礼する。

中には普段敬礼などしない無頼を気取る者もカノープスの佇まいに敬意を表する。

 

なぜ彼がシリウスではないのか?

 

オフィス内は軽装甲のスターズ、銃器と防具で身を固めた工作員たちが張り詰めた空気の中、カノープスの返礼と次の言葉を待っていた。

通常の社員たちは誰一人といない。全てUSNAの人間だ。

 

「あらほらさっさ」

 

1人だけ、1人だけ異国の言葉で返事をする者。

オフィスの入り口、抱えていた衛兵を力なく足元に倒れさせる。

服装は制服、魔法科高校第一高校の制服に、口元をバンダナで隠している。

決して大柄とは言えない体格、USNA基準で言えば子供だ。

 

侵入者の声に全員が振り向く。

 

「作戦失敗はお仕置きだべ~」

準戦闘工作員が銃口を向けるよりも早く、左手と右手にそれぞれ持った何かを床に投げつける。

その場にいた工作員たちは、グレネードだと思い距離を置く者や重量のあり被弾を防ぐ遮蔽物へと回る者、魔法師たちは障壁を展開する。

 

それは鎮圧用のスタングレネードとスモークグレネードであった。

大音量と閃光によって、一部の工作員たちは動きを制限された。

訓練の賜物か混乱による銃乱射は起きない。

魔法師たちはオフィス内に充満する煙で視界が確保できない。

下手に障壁を解除すれば煙を吸うことになり、確実に今よりも行動不能になる。

 

一種の詰み、であった。

 

魔法師たちが聞くのは煙の中からの打撃音と「敵だ!」という工作員の声。

 

天井部分にある換気装置も稼働状況が悪い。一向に排煙される様子がない。

エアコンによる室内の空気循環が余計に煙を充満させる。

魔法による排煙をしたくとも密閉された会議室、地下にありさらには窓や隣室に空間が無いことは全員理解していた。

煙を逃がす先が無いのだ。

 

3回目の打撃音。

 

魔法で煙の無害化を行おうとするが、煙の成分と魔法式の不一致で発動エラーを起こしている。

CADのエラー音が室内でいくつも木霊する。

スモークグレネードが地面に投げつけられて2分。

USNAスターズの体感として10分だろうか。

 

最善の判断は浮かばないが、障壁を緩め周囲に打って出ることが最悪の手段の一つと考え誰一人障壁は解かない。

準戦闘工作員がダメでもUSNAスターズ11名がいれば作戦の遂行、最低でもCIA工作員の削除は可能なのだ。

 

「諸君!余計なことをしなければCIAの跳ねっ返りの首を土産に持たすぞ!だがこちらに敵意を向ければ諸君は死ぬ!」

滑らかな英語。

無音に近い、煙の充満した部屋の中。その言葉が聞こえて1分後、ドアの開閉音。

 

「ドア方向に近い者!障壁を解除して無理にでもドアを開けろ!」

カノープスの声で、一人のスターズ下士官は「イエッサー!」の声と共に障壁を解除。

煙に咳込み、催涙の効果で涙を流しながらも手探りにドア方向に進み、何とかドアを開けることが出来た。

ドアが開いたことで気圧差で煙が徐々に廊下へと逃げていく。

 

「全員15秒内に障壁を解除して目を閉じて床に伏せろ」

カノープスはその命令を出し、15秒後にドアに向かってゆっくりと流れ出すような気流を作った。

煙が晴れるのにさらに30秒ほどかかったが、他の物であればこれほど早く原状復帰は出来なかったであろう。

 

煙が無くなった後には床に倒れ込む10人以上の準戦闘工作員。

後にわかることだが打撃で気絶させられた者は少なく、「後頭部に何かか触れたら意識を失っていた」「喉元に触れられたら意識が無かった」と言っていた。

 

「本部に至急連絡!動けるものは重要資料の破棄、負傷者の介抱、即座に次のセーフハウスに移るぞ。監視機器が仕掛けられていないかも確認だ」

 

先程の高校生を追うことはしない。それがカノープスの判断であり、それは最善手でもあった。

もし、追跡をしていれば関重蔵の「俺の小隊」によって追跡者は射殺されていただろう。

 

USNAスターズ、ブラボーチームは事件介入の機会を失う結果となった。

関重蔵の手によって。

 

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