うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2 作:madamu
「ガスの元栓閉めた?」
「何言ってるの!?バカなの!?死ぬの!?バカなの!?バカなの!?」
そこまで言わなくていいと思わない?
警備隊の指示で、参加学生は全員大会議室に集合している。
私の横では数少ない観覧学生である「おかん」こと和泉理佳が緊張のあまり私に食ってかかっている。
ちょっとジョークに耐えられる気分じゃないようだ。
発表する学生、審査の各校の生徒会、そして少数の観覧生徒、全員で100人程度。
一校や二校より生徒数の少ない六校や七校は発表に5名、生徒会で3名、観覧で2名みたいな構成になっており、横浜に近い一校からの観覧生徒が多い。
この中には武闘派で知られる生徒が多く参加しており、準警備班と言った感じになっている。
特別に今日は全生徒に自衛のためCAD保持認められてもいるので完全に戦力扱いだ。
会議室の前の方ではあーちゃんが「落ち着いてください!現在、警備班と国防軍にて退避ルートの確保をしています!」
と一生懸命に説明している。
横には四葉君がおり、あーちゃんのその様子を後見している。
「キヨ」
慌てるおかんをよそに真由美が声をかけて来る。
彼女も元生徒会長ということで観覧生徒として論文コンペに参加だ。
「どうしたの?お花摘みなら一緒に行こうか?」
ゴン
脛を蹴らなくてもいいじゃない。
「そうじゃなく、摩利も警備班に回ったの」
たまに「白磁の肌」とかお世辞を言われている真由美の肌がいつもより白い気がする。
流石の七草のお嬢様も戦場に放り出されて緊張と恐怖を感じているのかも。
「それは旗色が悪いということ」
「ちょっとこっちに」
真由美は私の腕を引いて会議室から出ようとする。
丁度近くに三七上ケリーがいたので「和泉の面倒みておいてよ!」と声をかけると「げっ!」と返事をしてくれた。
和泉の事が嫌いなわけでなく、昨年二科生中心のクリスマスパーティを行ったときに当時の一年生を一科、二科関係なく参加招待したのだが誤って私の胸に顔からダイブしたのが三七上ケリーなのだ。
それ以来、私に頭が上がらない。
う~ん、2年男子は初心いの~。
◆
真由美が私の手を引いて会議室を出ると、別の階の警備隊本部へと連れていかれた。
「十二江」
そこにいたのは十文字克人、渡辺摩利、一条将輝&黒城兵介だ。
「どうしたの?後輩いびり?」
「違う」
摩利が呆れつつちょっときつめに否定する。
「指揮権の移譲を提案されている」
そう言ってジュウモンは同じくらいの身長の黒城兵介くんに視線を飛ばす。
視線を真っ向に受けても黒城君はひるまない。
「です。実際の戦闘が行われていますので警備隊の指揮権の移譲を隊長である十文字さんに具申しました」
黒城君は肩を少しだけすくませる。
「状況的に学生の対応範疇を越えていると思いまして。十師族としての面子もあるので何とも」
言葉だけで聴くと非常に挑発的だが、なんとも黒城君の表情やジェスチャーを見ると一種ユーモラスだ。
「警備隊は十師族の領分ではない」
「そうです、だからこそ国防軍に対して隔意なく指揮権を移譲できる」
あ、じゅうもんが言葉尻取られてやんの。
「その判断は隊長であるこの俺が」
「では判断してください。実戦経験が国防軍より豊富とは思えません」
じゅうもんは眉間にしわを寄せるが、それを真正面から受けても黒城君は余裕。いやより上位者といった雰囲気を漂わせる。
助け舟を出したのは真由美。
「黒城君の意見もわかるわ。でも、国防軍指揮下に入った場合に隊が十全に機能するとは思えないの」
「なぜです」
「私たちは学生で、それも学校が違うわ。それを纏められるのは十文字君のモノリスコードでの実績によるものものよ」
十文字克人のモノリスコード三連覇。まあ正しくは新人戦と2年次、3年次の連覇で合計で3連覇。
真由美のスピード・シューティング三連覇にも比肩する記録ではある。
「それは違います。モノリスコードの優勝者であることはたんなる箔付けです。十師族の十文字家次期当主。それがこの人の指示を聞く理由の一つです。勿論理由としては最大ではありませんが最小でもありません」
うわ、魔法科高校内における十師族の政治力学を理解した上で話しているのね。
モノリスコードの実力者。一校の部活連会頭、そして魔法師の頂点に立つ十師族、それも他の当主とも対応の立場にある十文字家次期当主。
たしかに百家に関係ない一生徒から見たら、指示する側と捉えるだろうな~。
こう後輩から指摘されると、いかにジュウモンの周囲からの見られ方が厳しいかよくわかる。
「最大の理由はなんだ兵介」
一条君がそう聞くと黒城君はあっさりと答える。
「慣習だよ」
う~ん、痛い。
そうなのだ、九校戦の優勝校が警備隊のトップにつくのは慣習、慣例でそこに特に過去の警備実績等は加味されない。
そこに十師族とかは関係なく「九校戦の優勝校の警備隊総隊長がちょうど十師族だった」だけなのだ。
例えば実戦式のある学生がいればその人の意見を聞くのが良いのだろう。
だが実戦を経験済みの指揮官など学生にはいない。
そらに言えば原作ではジュウモンは警備隊の指揮をほっぽって義勇軍に参加した。
しかし、それはなし崩しに戦闘が始まり、学生の自主的な行動の結果でもある。
でも今は組織的な行動を求められる中、学生の警備班が指揮系統から外れるわけにはいかないのだろう。
この辺りは前世が軍人だった黒城君のいうことが正論だ。
「これ以上は時間の無駄です。自分からの具申とその説明は以上です。ご判断を」
黒城君は再度じゅうもんを見ると視線を真由美に向けた。
余計なことを言った生徒を見守る先生みたいだね。
真由美の立場は難しい、前生徒会長ではあるが今の時点では学生自治における権限は何一つ有していない。
十師族の七草としてジュウモンの判断を支援できるだけの戦略眼を真由美は持ち合わせていない。
だから代弁者として私を呼んだのだ。
七草真由美はまごうことなき十師族の姫で、人の上に立つ器量を持っている。
そしてその周りには三人の協力者。
1人は武力、渡辺摩利
1人は知恵、市原鈴音
1人は私、十二江清姫、担当は政治である。
「十二江家の次期当主として進言します。警備隊は国防軍の指揮下に入るべきと考えます。十文字家次期当主殿には申し訳ありませんが実戦経験や事態の規模はこの場にいる私を含めた若輩には荷がかちすぎると思います」
珍しく堅苦しい物言いに十文字克人の顔つきが怒りや困惑ではなく、今まで以上の緊張の色が見れる。
ジュウモンも別に指揮権を渡したくないわけではない。ただ一人で決断するには慎重にならざる得ないのだ。
本当に国防軍に任せていいものか?魔法師を守護し、国を守る十師族の十文字家の当主として、警備隊の総隊長としての責務の放棄にならないか。
そこに同学年で十師族として意見を言える七草と十二江、そして学年的には若いが後日この判断の証言し、信用されるだけのバックボーンを持つ一条を集めた。
ただの一生徒からの具申を検討する時間はあまりにも短い。
だからこそ、若輩の十師族が具申を支援するポーズを作りたいのだろう。
それが意識的にしろ無意識的にしろ。
ジュウモン的には儀式なのだろうね。
「わかった」
それだけ一言言うと近くにいた警備隊の生徒を呼び止め軍の人を呼んでもらった。
来た人は襟元の階級章を見ると佐官のようだ。
どうやらここの最高責任者かな?
軍の偉い人に向き直るとジュウモンは宣言する。
「現時点より魔法科高校の有志警備隊は国防軍の指揮下に入ります。今後の指揮命令については、中佐の指示のもと行動いたしますが、我々の本分が学生であることをご留意いただきたく存じます」
その言葉に軍の人も敬礼する。
「わかりました。指揮権の移譲を受理いたします。国防軍としては警備隊には観覧学生の護衛をお任せしたい。銃火に身を晒すのは国防軍の仕事。若人たちに無駄な血を流させるつもりはありません」
「黒城、これで指揮権は国防軍だ」
満足したか、といった口調だ。
「そうですね、これで十文字さんも将輝も戦力において警備隊から離れての運用が可能です」
今までの厳しくも挑戦的な感じじゃない。なんというか謎々の答えを言う年長者みたいな感じで黒城君が答える。
黒城君は軍の偉い人に背筋を伸ばし、違和感なく敬礼。
偉い人も自然に返礼し、返礼した瞬間に釣られた敬礼をしたことの驚きが顔に出る。
「中佐、僭越ながら有志警備隊、黒城兵介、具申いたします。十文字克人、一条将輝の両名を魔法協会義勇兵と合流させ、市内の侵攻軍の掃討作戦へ参加させることを具申申し上げます!両名とも機甲化部隊で換算で1個大隊規模の戦力を有する戦術級魔法師であります。本施設警備においては過剰戦力となりえます。何卒両名の義勇軍参戦をご一考下さいますようお願いいたします」
黒城君の話の神妙に聞いた偉い人は口を開いた。怒ってる感じはない。
「君のその本施設警備の戦力過剰とする理由は?」
その場の全員の視線が黒城君に向く。そうだ、爆裂の一条君、ファランクスの十文字がいなくても防衛は可能なのか。
「一校に四葉がおります」
堂々と、下手をすると目の前の軍の偉い人以上に堂々としている。
まるで大軍を率いる将軍のようでもある。
偉い人の額にうっすらと汗が見える。
そう思った私もいつの間にか手を握りしめているし、真由美や摩利も緊張しているのが伝わる。
四葉光夜。そうだ。四葉の貴公子。いや、九校戦の実力が本物なら天才。
十師族最大の闇。殺し屋集団。悪意の壺、殺戮の影、裏社会の王、闇の住人、マギウス・ザ・カース(呪われし魔法師)…
戦争、闘争、殺し、暗躍、そういったものでは右に出る者はいない。
書き換えられた私の記憶ではその勢力はこの数年で飛躍的に伸び、すでに東アジアのみならず東南、オセアニア地域まで手が伸びているとの噂もある。
真由美も、十文字もその名前の前では余計な口は挟めない。
「わかった。魔法協会に連絡をし受入れ体制の準備と戦力運用について協議しよう」
「感謝いたします」
再度黒城君は敬礼。
偉い人も返礼。
「黒城君と言ったな、卒業したら国防軍に来る気はないか」
少しほほ笑み、えらい人が勧誘する。
「そうですね。希望としては海兵大隊ですかね?さもなければ陸軍空挺かな」
困ったような笑顔で黒城君が返すと、偉い人は指示をするためこの場を離れる。
「将輝、これでフリーハンドで動けるぞ。あの子を探してやってくれ」
二人とも真剣な表情をする。
誰か探し人がいる…もしかして、三校でパラサイトに憑依された女子生徒?
「わかった。兵介無理するなよ」
「大丈夫だ。ジョージに雪光もいる」
三校の二人はがっちり握手をする。
一条君は「ジョージに会ってから関東支部に向かう!」と言って小走りに警備隊本部から出て言った。
「十文字さん、引継は服部副隊長に」
「お前はここまで読んでいたのか」
ここまでの算段に驚きを隠せないじゅうもん。いや私も真由美も摩利も驚いている。
この会場に集中する戦力を分散する方便を使い、十師族としての責務と警備隊の仕事に板挟みだった二人を解き放ったのだ。
「十師族の威光は否定しないが、それだけで人が従っているとは思わないことだ」
黒城君はじゅうもんと真由美に再度視線を飛ばすと「警備に戻ります」といってこちらも部屋から出た。
「まいったな。これじゃどっちが先輩だかわからんな」
嘆息一つし、摩利がつぶやくとじゅうもんが「ああ」とだけ答えた。
どんなに実力が有ろうと結局は私たちは18歳の子供なのだ。
大人たる二周目の面々からすれば、何に悩み、何を気にして、何に囚われているかなどお見通しだ。
関重蔵や四葉光夜だけ注視していたが、他の人たちもやはり特典持ちの実力者ぞろいなのだろう。
そんなことを思いつつも、事態は次のフェーズに移っていく。
つまり「シェルターへの避難」だ。