うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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あのバカの居場所だ

「思ったより状況は悪い」

「そうなの?」

 

竜也の言葉はその場に残ったカナデに心配の声を上げさせた。

上層階の会議室。

既にアーデルと夜天は戦場となる横浜の街に出ており、残された竜也は状況把握のために動いていた。

二人ともすでに手首のクリップからナノマシンを開封し、制服は黒の模様が現れている。

竜也はジャケットの端に黒のラインが入っているだけ。

カナデは線と点、モールス信号を思わせる模様がスカートに浮かび上がっている。

 

義勇軍との連絡官として魔法協会関東支部にいる国防軍佐官と話をしたところ、現在10時40分時点で戦闘が横浜各所で戦闘が開始されている。

「論文コンペは中止、中華街では中華街内の不穏分子が動き出している」

表情の起伏で言えば達也と五分の竜也は淡々と状況を説明する。

「ついでに言うと羅門が中華街の大門前で不穏分子封じ込めで大暴れしている」

(あの突っかかってくるのは相当腕に自信があるのか)というのが、大暴れに対する竜也の感想である。

 

「それであなたは?」

カナデは動揺することなく質問をする。

二人の間に緊張感が張り詰める

 

この二人は前世世界では、やや敵対的な関係にあった。

FLTのセキュリティ部門の責任者、もう一人はUSNAの軍人。

タツヤ・クドウ・シールズは諜報戦には積極的ではなかったが、USNAに対して企業ながらFLTは眼の上のタンコブであった。

 

日本における魔法師の情報保護はある時点から四葉、特にFLTのセキュリティ部門が一翼を担うこととなった。

当時のFLTはネットワークにおけるハッカー、クラッカー対策は世界最強と称され、USNAの国防総省の対外諜報部門は煮え湯を多く飲まされていた。

ハッキング攻撃の報復で西EUは30分間のネットワーク大規模システムダウンを喰らっている。

それを主導した電子世界の強者が藤林奏こと関奏であった。

 

大亜連は1度、FLTへの工作員の潜入作戦を行ったが関奏の指揮により保安部隊が阻止をしており、前線指揮官としても

十分な資質を持っていた。

「FLTの保安部隊は大国の特殊部隊に伍する」というのはCIA、NSAの諜報担当者からタツヤが聞いた評価だ。

 

「何も。出番はまだ先だ。そっちは?」

手元の情報端末を竜也に見せつける。

「通信網は掌握。何か聞きたい情報は?」

「あのバカの居場所だ」

返事はため息。

「こっちが聞きたいくらい」

関重蔵とは一昨日から連絡が取れないが、元気に動いているのは確実だ。

カナデのネットワークには「USNAの行動阻止」という情報が入ってきており、作戦計画の外で暗躍するのは情報部でありその戦端を担っているのが誰かということも想像がついた。

 

「状況の悪さの原因はあの人、なわけないでしょ?」

「直立戦車の台数が多い。もっと言えば魔法に干渉出来る機体が確認されている」

「ピクシー?」

直立戦車の数が多いのは接岸した船舶から現れた以外に、横浜港近くの積み荷の集積所からの発進が確認されている。

【影の中の男】が空間転移を使ったと考えれば、直立戦車の国内密輸など容易。

この直立戦車の台数の多さも【影の中の男】によるものと竜也は睨んでいた。

 

転生者たちの中でも戦略、戦術眼という意味では竜也、兵介、重蔵は頭一つ抜けており敵勢力の拡大も想定内ではあった。

 

「勘が良いな。影の中の男はパラサイトの憑依を直立戦車のAIに応用している」

カナデは頬を指でなぞり困った顔をした。

 

魔法師の強さは「事象の改変」という物理現象への介入が可能なことで、個人でも大型戦車と同等に戦闘が出来る。

だが、戦車側が魔法師による事象改変に対応できれば魔法師の優位性は無くなる。

戦力は数だが、戦力の内容と相性が変わりつつある。

 

 

「いやいや、確かに百家の責務と作戦実施の協力はするけどさ、この状況は、この状況はちょっとな~」

引き攣る笑顔の十二江清姫の腕を引っ張り半ば引きずるのは渡辺摩利だ。

片手には警棒型とも少し違う武装型CADを握っている。

「駄々をこねるな。こういった状況だからこそ、あたしたちの力が必要なんだろ」

「私、戦闘は苦手でして…」

「空間把握は十八番だろ」

十二江家の魔法は古式の術に則った儀式による天候操作ではあるが、天才十二江清姫の実力は「空間把握」でもその才を際立たせていた。

 

七草真由美が「妖精の射手」という異名を獲得するに至る要因の「千里眼」を持つように、十二江清姫は「風霊の囁き」(シルフボイス)とも言われる「気流把握」の異才を持っており、知覚魔法と合わせることで目視出来ないところでも認知することが可能となる。

 

ブランシュ壊滅における建築物内の敵感知ではこの能力が十分に役立った。

目視ではないからこそ、建物内に罠として配置されていた通常の空気の構成とは比重の違うガスの察知を可能とし、萬真人の突入劇をアシストした。

 

「今度はあたしの為に使ってもらうぞ。宝の持ち腐れだからな」

数名の国防軍兵士とすれ違う。

凛々しい美少女同士が珍妙なやりとりをしているのに不思議な顔をする。

 

「おりんはどうなのよ~」

「鈴音は鈴音で忙しい」

「私は暇?」

「暇だろ」

(ほぼ徹夜で、夜中の3時から晴天になるよう調整したんだけどな~)

 

天候操作だけではない、風向きや湿度、そして横浜港近くの海流の調整まで国防軍から来たリクエストには全て応えたのだ。

彼女の才能は「自国内の環境調整を行える」ことにかけては右に出る者はいない。

 

間もなく、シェルターへの第1組が出発する。

すでに先行して国防軍が進路を確保すべく動いているが地上での戦闘も発生しており、シェルターへの支道出入口の確保まで人が回せないというのが現状である。

そこで七草真由美が「生命を賭して、という覚悟がある人だけ」を条件に九校の生徒内から対策部隊を設立した。

 

その最先鋒で戦場に踊りだそうというのが渡辺摩利だ。

九校戦でも名前をはせる凛々しき美少女である渡辺摩利が麗人然とした十二江清姫を引きずる姿を警備隊の面々や国防軍の軍人たちは驚いたように見ている。

 

「国防軍の人達の邪魔になるから」

「ならない!すでに真由美を通して行動許可をもらっているし、警備隊以外の生徒からの希望だから問題ない」

ふんす、と鼻息強い渡辺摩利の言葉に清姫は先日のミーティングでの担当割り振りを思いだしていた。

 

「光夜は会場の学生たちと行動を共にしてくれ。他の人間が動けない場合の最終防衛線はお前だ」

「心得た」

黒羽竜也の指示に言葉少なにうなずく四葉光夜。

 

藤林奏に指示の意味を聞けば「普通の横浜騒乱なら今の光夜が全力で行動すれば5分で終わるかもしれません。でも今回は彼を予備戦力としておきたいんです。何かしらの不測の事態が予想されます」と清姫に答えた。

 

パラサイトの情報、謎の空間魔法を使うテロリスト、CIAの分派の集団、情報の出どころはいくつかのウソによって巧妙に偽装されて提出されたが先の情報は作戦に従事する各組織は把握している。

さらには雪光から当日暴れそうな達也の仲間にも伝えてある。

「エリカあたりは考えなしに切りかかりそう」とのためである。

 

「摩利~。彼氏にいいとこ説明したいのは分かるけどさ~」

「な!修次は関係ないぞ!関係ない!」

渡辺摩利は顔を真っ赤にし、さらに速足となり清姫を引きずる速度も上がる。

 

(こりゃ、単独行動させると危ないな…)

渡辺摩利の戦闘力に心配はない。ただ戦闘レンジは近接寄り、知覚能力についても十二江清姫以上ではない。

単騎で動くよりも連携を前提とした動きでないと足をすくわれる可能性がある。

友達を戦場の露にするわけにもいかず、溜息を一息ついて清姫は引きずられるのを止め自分で歩き出した。

 

「摩利、わかったから手を離して。こっちも条件がある」

「なんだ?お前が準備した漫画みたいな戦闘服でも着ろとでもいうのか?」

「あ、それを条件にすればよかった」というような表情を清姫が見せるとそれに反応して渡辺摩利も「本当に準備してるのか?」と驚愕とこの友人の残念な性癖にうんざりとした絶妙な表情をする。

「もうすこしメンバー増やそう。スクワッドで動かないと」

 

 

この時点で戦域は中華街大門と横浜地域外縁部となっていた。

間もなく10時10分となる。

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