うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2 作:madamu
一気に論文コンペ会場はざわついた。
「学生を二組に分ける!」
学生警備副隊長を任されている服部は警備隊を前に激を飛ばす。
十文字克人と一条将輝は横浜ベイヒルズタワーへの義勇軍参加のため警備から離脱した。
「任せたぞ」の一言に服部刑部は頭を悩まし、30秒後には覚悟を決めた。
会場の玄関ホールには学生警備隊の各班の班長9名が揃っている。
「編成基準は?」
「人数が多く戦力とカウントできる一校生を分散させ、第一組は参加人数の少ない学校を纏める!二組目は国防軍に殿を任せて撤退する。発表準備済みの学校は各機材を破壊やデータの削除を急げ!」
的確な判断を質問者にぶつけると、学生警備隊は自校の生徒会執行部と連携し人数の確認と人員の調整に勤める。
各班班長が各校の生徒会と調整すべく離れると服部に人が近づく。
「服部君」
「七草かい、先輩」
いつも以上に真剣な眼差しの七草真由美が服部に声をかける。
その後ろには、一年生の司波達也と行動を共にしている面々だ。
司波深雪、吉田幹比古、千葉エリカ、西城レオンハルト、柴田美月、光井ほのか、北山雫。
それだけではない、千代田花音と五十里啓、壬生紗耶香、桐原武明もいる。
「第一高校の服部会頭に提案があります」
七草真由美の声は前生徒会会長ではなく、十師族特有の希望を伝えるのではなく命令に近しい声音だ。
後に言われる「七草の特別攻撃隊」の結成の提案である。
◆
「先発は出したか」
「はい、第二中隊から選抜した小隊を移動ルートに。他に周辺警戒で四小隊を周辺に出しています」
「そうか」
会議室では福島中佐はモニターに映る地図と戦闘開始地域、そしての学生たちの避難ルートを見ながら呟いた。
部下に不安を与えぬために表情を消して頷く。
本来であれば横浜内の自軍戦力は十二分と考えていたが敵、侵略者である大亜連の持つ戦力は想像よりも厚めに配置されていた。
既に横浜港近くでは突如出現した直立戦車により遭遇戦が行われており、中華街大門では既に銃撃、魔法戦が展開されている。
中隊以上の指揮官にはこの作戦の全容が知らされていたが、その作戦は受け身なこともあり、敵勢力の行動如何では変わってくる。
今も、3分おきには各地域の情報交換が頻繁に行われておりモニターの戦況も逐一変化している。
(戦力はもつか?)
横浜港を中心に横浜全域での戦闘が開始されている。
広くもなく、狭くもない地域で小規模ながらいくつかの要所要所で戦闘が繰り広げられ、この要所の戦闘が拡大し、要所戦闘範囲が合体すれば一大戦闘区域となり投入すべき戦力も増える。
戦闘区域が合体して横浜全域を覆った場合。
一区域の限定的な対応に収まらず、横浜を中心とした神奈川や八王子や町田など南多摩、そして都心への広域の戦闘区域宣言が発令される可能性がある。
それは、本格的な「本土侵略」を受けていることの表明であり、本土侵略が発表されれば大亜連から第二陣、第三陣と戦力が投入されるだろう。
国際法上における宣戦布告をっとり越した侵略行為。国際社会への遠慮が無用になる。大戦力による本格戦争へと発展するだろう。
その場合は横浜ではなく福岡をはじめとした西日本の北側へ侵攻だ。
つまりはこれから数時間が日本侵略防衛の分水嶺になって来る。
◆
先頭の隊員が左手を握り腕を少し上げる。
ハンドサインで「止まれ」ということだ。
第一小隊8名はシェルターへの撤退ルートを先行して進んでいた。
先頭の隊員はライフルに搭載した赤外線スコープを除くと人型が数名、進行先に待ち構えているのが見える。
最小限の電灯で薄暗い中、大人数が少数の敵と遭遇すれば最悪の結果学生たちの血だけが流れることとなる。
先頭の隊員がゆっくりと音を立てずに後退すると小隊長に「複数名による待ち伏せです。小銃らしいものを携帯しています」と伝え、小隊長も頷き、情報端末でのテキストメッセージを本部に送る。
◆
作戦司令室となった会議室は学生たちのシェルター避難のための準備のため兵士たちの出入りが活発になっていた。
「生徒の組み分けが終わりました。警備隊の振り分けも完了済みです」
警備隊を代表して服部刑部は福島中佐に報告すると福島中佐は頷く。
「では、第一組は避難路が確保次第出発。第二組は第一組が到着後出発とする」
先発が到着するまで後発を出さないのは先発組が後退する可能性を含めての判断である。
先発の撤退時に後発組が撤退路にいることによる撤退困難を回避するためだ。
結果的に論文コンペ会場に長時間残ることとなる第二組の護衛陣は第一組よりも厚くなっている。
「あの…」
「どうかしたかい」
報告を終えた服部はおずおずと、申し訳なさそうに福島中佐に声をかける。
周囲にいた副官や連絡係は服部を制止することはない。
「先ほど、当校の七草先輩、七草真由美さんから施設外警備の志願者を集める許可を得たと…」
服部の言葉に福島中佐は苦笑いをせざる得ない。
命令無視ではあるが、学生内にいる即戦力を自発的に糾合して戦力化できるということは望ましいし、「七草」の名前の元で責任を取ると誓約したのだ。
士官学校の先輩である村井からは「十師族はお荷物だが役に立つ荷物だ」と以前言われたことを福島は踏襲した。
「十師族の若い世代は好戦的だね」
服部に向ける視線は優しい、いや板挟みになるこの若い学生の苦労が福島の頬に苦笑を浮かび上がらせている。
七草真由美が率いる一団には連絡役で1小隊を付けた。
福島の想定する戦力は数名ながらあの七草、それも射撃においては魔法師軍人のそれを凌駕する七草真由美が
いるのだ。中隊規模の制圧力を持つだろう。
数十人規模の人員を出すよりも数名の学生と1小隊で、中隊の動きをするのならおつりがくる。
それが福島のはじき出した算盤の結果だ。
そこに装備を整えた兵士が報告に現れた。
「報告いたします。地下シェルター通路の先遣隊が敵勢力を発見したとのことです」
その報告を聞いて福島は顔を少しゆがめた。
(先手を取られた)
「すいません」
司令本部となっている会議室の入り口には一校の中条あずさ生徒会長とその補佐たる四葉光夜がこの後の行動を確認に訪れ、福島への報告を耳にした。
◆
四葉光夜は三回指を鳴らす。
◆
「直立戦車を前に!横転した車両を盾にして距離を詰めるぞ!」
大亜連の小隊隊長は日本の魔法師の卵たちが立てこもる会場へと迫っていた。
保有する戦車は2台。
兵士も多く、この作戦で拠点制圧が出来ればエリートコースも確実だ。
協力者から与えられたキョンシーたちもある程度はこちらの指示を聞いてくれる。
路上の先には日本の兵士たちが銃器を構え、時折撃ち牽制してくる。
相手には直立戦車が無い。だがこちらには直立戦車がある。
距離を詰めるのに適しているのがどちらかは明白だ。
「たいち」
横にいた副官に一筋の雷が落ちる。
轟音。後方の兵士にも、横の兵士にも、近くの直立戦車にも侵攻していた小隊全員に寸分の狂いもなく雷が落ちる。
そして小隊長にも雷が落ちる。
◆
「終わりました。半径300mは安全です。シェルターへの通路にいる敵勢力も処分しました」
四葉光夜の天才、100年単位で語り継がれる「天才」の伝説の一端であった。
状況がつかめぬ周りの人間がいきなりの光夜の言葉の真意をつかみあぐねて奇異な視線を向けている。
「四葉どういうことだ?」
「先ほど索敵し、周辺の地上地下の敵軍を処分しました。シェルターまでの経路は確保しました」
「確認だ!急げ!」
声を荒げて指令を出したのは福島の副官を務める兵士だ。
四葉光夜の佇まいに気押され、感情を強めにだし指示を飛ばす。
それは上位者の機嫌を取るためのポーズでもあり、恐怖を紛らわす感情の発露でもある。
「四葉…お前何をやった?」
猜疑と恐怖。服部は四葉光夜が入学してから何度となくこの感情を己の中に呼び起こすこととなっていた。
「索敵、照準、攻撃です」
再度指を三回鳴らす。先ほどのスナップ三回が魔法の発動であると示す様に。
驚き疲れた顔をする服部。
この緊急事態でせわしなく動く兵士たちも、魔法行使をこともなく言う四葉光夜に恐怖のあまり行動が遅くなる。
「四葉君と言ったな。こちらの指示無く魔法の行使は止めていただこう」
唯一毅然とした態度で光夜に注意できたのは福島だけであった。
言葉は毅然としていても背中に流れ出る汗は畏怖の感情の表れだ。
(あの小娘どころの話じゃない!あれは小賢しいだけだが・・・・・これは!)
「七草が責任を取る」「実戦で有効な若手の魔法師を有効活用」と言った七草真由美の指示や命令なれたリーダーとしての言葉は福島にしてみれば学生の背伸び程度だったが、目の前にいる四葉光夜の一挙手一投足は、「支配者」「絶対者」のそれだ。
「申し訳ありません。緊急事態と判断してのことです。ご容赦を」
冷静な四葉光夜の言葉に声を荒げて返事したくなる気持ちを押さえ福島は言葉を返す。
「君の魔法師としての実力は我々の切り札になり得る。軽々な行動は慎んでいただきたい」
緊張に声をからさずに言うのが精一杯だった。
「報告です!シェルター通路に敵勢力の姿が消えました。先遣隊が安全を確認!追加の部隊派遣を要請しています!」
兵士の報告で、静寂と緊張に包まれた司令室はまた感情と熱を取り戻し、通路警備の追加人員の派遣のため人が動き出す。
「生徒の最初の集団の移動開始をする。服部君」
福島の言葉に服部は頷き、早々に第一組出発の準備をするため会議室を出る。
「小鹿曹長」
「はっ」
「斎藤少尉の隊を呼んでくれ。会場内の逃げ遅れ生徒の確認は斎藤少尉に一任する。学生警備と連携するよう伝えてくれ」
福島は指示を飛ばしながら手元のタブレットに目を落とす。
会場周辺の敵勢力を示す情報が「制圧」「消失」と文字に替わっていく。
「四葉君は疲れていませんか」
会議室を出て服部の後を歩いて追いながら
恐る恐るねぎらいの言葉をかけるのは中条あずさである。
屈強な兵士たちが行きかう中で小柄で弱弱しさが残る中条あずさは非常に目立つ。
戦場の一角となるこの会場では「普通の少女」である。
この小柄な少女の言葉が、四葉光夜には最大の癒しであった。
「はい、大丈夫です」
笑顔で返す光夜。
この光夜の笑顔を服部が見れば、更なる驚きで動きを止めるだろう。
そこには少女に恋する少年の笑顔があったからだ。
◆
間もなく午前10時30分を迎える。