うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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雪光と幽玄はお互い目を合わす

「で俺たちは運良くか」

「運良くだね」

「運良くだ」

久慈灘幽玄、司波雪光、黒城兵介が逃げ遅れの学生の捜索として会場に残っている。

玄関ホールは閑散としており、シェルター移動の第一組はすでに出発しており、第二組は地下ホールで待機中だ。

 

体格的には大中小と言ったトリオだが、容貌の美しさ、力強さ、そして落ち着きぶりを見る者が見れば修羅場をいくつくぐったかを疑うほどだ。

 

運良くといったものの、会場に残ることを後押ししたのは四葉光夜だった。

暗に「三人とも自由行動を取れ」ということだ。

 

「吉祥寺は?」

「さっき第二組に合流した」

幽玄の問いに兵介が答える。

各校の論文代表チームは機材を分解、破壊をし、二組目に組み込まれた。

一組目には中条あずさや、服部副隊長が先導し、二組目の殿には四葉光夜が配置された。

会場に残った生徒がいないかの確認はすでにあらかた終わり、「四葉の指示」という名分で三人は行動権を手にした。

 

雪光はジャケットの下から刀の柄を取り出す。

「なんだそれは」

「霊子刀剣(プシオンブレード)」

2096年以降に「ヴァンパイアハンター:ホーリー・スノー・ライト」とUSNAのWEBパルプ雑誌を賑わせた謎のヒーローが使用していた武装CADでもある。

物理・情報・霊体と三次元での攻撃を行え、その威力は高出力レーザー以上と言われていた。

 

「サイオン固定式のブレードか。アーデルと近い発想だな」

「あの子そんな感じなの?」

「どちらかと言うと身に纏う方だがな」

雪光と幽玄が会話をしながら、三人とも装備を整える。

兵介は左手首の新型CAD、手甲に近い形態。ブーツタイプのCAD。

雪光は霊子刀剣とタブレット型CAD、袖のナノマシンクリップ。

幽玄は手首にリストバンドタイプのCADだけ。

 

幽玄は地面に足先で地面に三角形を書く。

「落書き」と兵介。

「見とけ。理論構築も突き詰めるとこうなる」と幽玄。

 

落書きと評された図形が完成すると久慈灘は図形の中心でサイオンを活性化する。

 

「うお」

驚きつつ2,3歩距離を取る兵介。

立体的な地図だ。青白く半透明の立体画像。今いる位置を中心に半径10kmの詳細な地図が半透明の立体図として立ち上がる。

「現在位置がここ。現在敵勢力の行動地点がここ」

幽玄の言葉に反応して現在位置が明滅。敵勢力の位置も赤の点滅。

「敵の行動傾向は?」

「20分ほど巻き戻す」

赤の点滅が巻き戻り、上陸地点や横浜の街への侵攻状況を再現する。

「便利だな~」

兵介が呟くと、少し気を良くした幽玄がもう一度地図を弄る。

「もう一つ便利ついでに」

右手で立体地図の時刻を現時点にする。

幾つかの黄色の光点が発生する。

「パラサイトだ」

「へ~、そんなことできるの」

今度は雪光が感嘆の声をあげる。

 

 

「競争するか?」

兵介の言葉に雪光は軽く笑う。

「僕の勝ちだけどやる?」

それを受けて兵介も楽しそうに笑う。

「見てろよ」

 

そう言って兵介は手首のCADを起動させる。

次にブーツ型のCAD。つま先を二度、かかとを一度地面を突く。

微小の機械音がすると、ブーツから魔法光。

 

「先行くぞ!お前の分はないかもな!」

その言葉は姿が見えなくなってから聞こえたように幽玄は思えた。

制服の赤だけが幽玄の網膜に残る。

「どんな速さだ。アーデルや一樹以上だな」

少し呆れ気味に3Dマップに突如現れ市街を縦横無尽に走る点に見入る。

兵介だ。

 

「じゃあ、僕も行くから。あとは自由行動で」

「パラサイト案件だ。頼りにするぞ」

「お、信頼するって?」

「こき使うって意味だ」

雪光と幽玄はお互い目を合わす。

そこには子供じみた意地の張り合いは全くなく大人同士の軽口に対しての微笑だけがある。

 

「行ってきます~」

微笑した雪光は手首のCADを起動して歩き出す。

1秒も経たず雪光の姿は遥か先へ来ていった。

 

3Dマップに高速で動く2つの点。片方は赤、片方は白。

人魔未踏の高速世界の住人が二人、戦闘が行われる音の遠い静かな横浜を走り回る。

 

「さて戦況はどう変わるか」

以前の世界で【影の中の男】、幽玄たちの世界では「アレ」と呼んだいた存在がいる以上楽観視はしない。

だが、走り出した二人が想像以上の戦力であることを実感すると勝利への道筋が明るくなった気もした。

 

 

「撃て!」

警察は銃火器で装備した集団と戦闘を行っていた。

路上の車両、建築物の影、交戦距離は50m程度でいつ銃弾が身体を貫いてもおかしくない。

 

警官たちも装備は通常の防弾ベストに拳銃ではなく、拳銃弾用自動小銃、俗にピストルキャリバーカービンと呼ばれる装備にプレートキャリア、防弾用ヘルメットギアという、通常では考えられない装備でいる。

 

この警官たちは横浜管内での暴徒鎮圧や銃火器犯罪を専門に対応するYSAT(ワイサット)の一分隊7名と応援の機動隊選抜チーム8名の混合チームである。

現在、国防軍以外にもYSAT、機動隊、そして警察省から派遣された遊撃隊による「警察」がテロリスト逮捕のため横浜内で活動している。

 

2000年代初頭では銃火器犯罪に対抗する警察組織は5.56mm弾を中心としたライフル弾をメインにした装備であったが、2095年にはPCC(ピストルキャリバーカービン)を主体として交戦距離200m内を意識した装備になっていった。

これは警察組織が貫通性が高いライフル弾の使用に対する致死性の高さが問題視された結果と、実際に日本の都市部での交戦距離を鑑みた結果である。

狙撃手は引き続きライフル装備だが前線に立つ者は世論と上層部判断と予算によって苦労をしていた。

打撃力を残すため強化9mm弾(9mm+)の使用に対応できるPCCが制式採用されている。

 

この武装の採用については国防軍の軍備増強を嫌う政治勢力へのガス抜きの意味合いもあった。

国防ではなく国内治安を担う組織の武装低下。

割りを喰らう形となり、警察組織と国防軍の軋轢は解消することが難しい状況は2095年も継続されている。

 

「隊長!」

隊員が叫ぶと、300mほどの前方のビルの角から一両の直立戦車が現れる。

晴天の中、突然現れた黒い機体は警官たちから見れば最悪の敵であり、テロリストから見れば侵略の象徴である。

 

「全員退避!下がれ!織田、障壁張って後退支援だ!」

隊員の魔法師に指示を飛ばすと同時に警官たちは牽制の射撃をしながら建物伝いに後退を始める。

 

直立戦車はその後退する警官たちに向けてガトリングガンの銃口を向けた。

キャリキャリキャリとモーターの始動音と共にガトリングは回転を始める。

 

!!!!!!!

 

言語化が不可能な排気音と射撃音。

地面に線を書くようにガトリングの銃弾は警官に向かって飛んでいく。

そこは後退を支援するYSAT隊員の障壁が阻み、石壁を削るような凄惨な音が市街地に響く。

 

魔法師の隊員は額から汗を垂らす。

障壁展開に疲労を感じたわけではなく、徐々にだが障壁への魔法的な干渉を感じているから。

「破られます!」

それだけ叫ぶと魔法師の隊員は障壁が破れる感触を両腕に感じた。

つまりそれはあのガトリングから吐き出さる線に殺されるということだ。

 

「ひっ」

小さく悲鳴を上げる。

 

だが弾丸が織田と呼ばれ隊員に届くことは無かった。

恐怖に引き攣った織田の両目は見た。

 

高速で動く何かか物凄いスピードで弾丸の吐き出されるガトリング目がけ、赤い何かが射線上を飛んで行ったのだ。

その何かが向かうとガトリングの弾は地面に落ちる。

織田がガトリングの弾が地面に落ちたのを気付いた瞬間に200m以上先の直立戦車は轟音を立てて崩れ落ちていた。

 

「大丈夫ですか?」

魔法科高校の制服、白いに稲妻のような黒い模様の入った制服を着た少年が声をかける。

輝くような瞳、美少年としか表現できぬ中性的な美少年だ。

この戦闘区域内で特に恐怖や緊張をする様子はない。

「ああ、君は退避しなくてもいいのかい」

本来であれば警官たる職責において退避を指示するところを織田は何ともなしに聞いてしまった。

「ええ、ちょっと散歩を」

そう言って少年は一歩踏み出す。二歩目の瞬間にはそこに姿は無かった。

 

「4機目!」

兵介はガトリングガンの銃弾をサイオンシールドで全て受けきり、1秒とちょっとで200mを詰めサイオンランスで一気に直立戦車を破壊した。

 

幽玄と別れて391秒。

雪光と兵介で9機の直立戦車を破壊している。

二人とも時速に直せば700km以上の速度で横浜市内を走り回っていた。

 

二人の狙いは直立戦車とパラサイトのみである。

通常の陸上戦力は国防軍と警察と義勇兵に任せ、難敵だけに的を絞り行動している。

先程光夜の魔法と思われるものが発動した。

その余波かパラサイトに憑依された人物は鈍くオーラを放ち始め標的の判別が容易になっている。

 

霊子刀剣でパラサイトの霊子だけを斬る。

肉体に残された本人の霊子の生存本能次第では「パラサイトから脱出」が可能であるが確立としては理論上は1.7%ある。

 

多くの市民がパラサイトに犠牲になっている。

だがパラサイトの専門家である雪光でもパラサイトから脱出できた事例は1件しかしらない。

偶然と幸運が3乗したような状況によるもので、今の時点では霊子のみを斬り理論値1.7%にかける以外方法は無い。

 

一校の二科生の面々、特に戦場に走り出しかねない生徒たちにはパラサイトの危険性を説明した。

実力、性能、なによりも情報次元状態での生存。

吉田幹比古なり古式の特に破魔調伏の術を体得した人間なり、情報次元への直接アクセスが可能な人間を同行させること。

 

他の仲間の二科生と一部の三年生に情報を与えて戦力へと変えていく。

今回ばかりは総力戦で使える者は使わねばというのが雪光の考えだった。

パラサイトの専門家である雪光から見れば、パラサイトとは生物というよりは「増殖を単一目的とした有機的なプログラム」に近い。

実体化は出来ず、有機生命体や霊子、想子を介しての無機物への憑依をする存在。

戦略的な押し引きの判断は宿主に依存するが、パラサイト憑依におけるパラサイト本体と宿主との相性次第では十全な戦略思考が出来るわけではない。

 

今回はパラサイトの数が多い。まかり間違っても一匹でも残せば、それが警察組織の人間に憑依すればそれは爆発増殖の可能性がある。

その芽をつぶすためにも、投入できる人間は投入しパラサイトを消滅できるようお膳立てをする必要がある。

それが恋焦がれる七草真由美であってもだ。

 

「雪光、行くぞ」

兵介の声に雪光は走り出す。

 

 

横浜。午前11時38分。

 

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