うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2 作:madamu
「こんな無茶なセッティングは初めてだ」
不安を隠す様に声音はきつく何かを諫めるようなニュアンス。
三校の天才児、吉祥寺真紅郎は先を歩く神話的な美丈夫の背中に言葉に続き溜息を投げかける。
「対象範囲の絞り込みは人力だが時間はかからん」
振りからず答える光夜はいつもの調子だ。
2人は論文コンペ会場の4階の廊下を抜け、テラスへと出た。
テラスから見える風景は異様であった。
天には都市、至るとろこには蜃気楼の様な揺らぎ。
そして戦闘が行われているのか立ち昇る黒煙も視界に入る。
「ぶっつけ本番だけどいけるか?」
「問題ない」
真紅郎の言葉に応え数歩前に出る。
光夜が行うのは鏡世界の解除である。
術式解体や術式解散とは構築理論が全く違う「純理論」による魔法である。
光夜が目の前にテニスボール大の想子球を数十作ると四方へと一気に拡散させる。
想子球は10秒ほどで視認できぬほど距離を進んだ。
「カウントゼロで実行する。観測の補助を頼む」
観測の補助を真紅郎に伝えるが補助と言ってもしっかり見ておくくらいしかできない。
真紅郎も(何をいきなり…)と困惑する表情を浮かべ頷くのが精一杯だ。
頷く真紅郎を確認し、光夜は早々に手首のCADを操作する。
「5,4,3,2,1、0」
CADの操作により、遠く離れた想子球が発光する。
数秒ののち光夜が呟く。
「次の段階だ」
「え!あれで出来るのか!」
◆
四葉光夜が吉祥寺真紅郎に手伝わせ設定したのは光の波長に関する魔法であった。
鏡世界は閉鎖空間ではあるが光源が存在する。
それは太陽である。
だが鏡世界の太陽は太陽なのか。
鏡世界は世界の複製ではない、というのが久慈灘幽玄の結論だった。
久慈灘幽玄は鏡世界を自分の使用する次元間のすき間の様な「異空間に転送された世界」ではなく、閉鎖化された現実世界であり外と内を分ける壁が【接触ループ型結界】であると喝破した。
鏡世界を自由に出来るのは接触型ループ結界を情報体次元にも展開し常時接触型結界として稼働させることにより空間内の事象改変をノータイムで実施できるのだ。
つまりは事象干渉なのだ。魔法科高校の劣等生とは違う原理による事象干渉。
そして、光源である太陽光だけはこの接触ループ型結界を抜けて空間内を照らしている。
結界を崩す方法は光なのである。
◆
「15秒後に開始する」
端末に話しかける竜也は特に返事を期待したわけではない。
軍事行動時の癖に近い。
情報端末からは藤林奏の「どうぞ」と機械的な返事。
端末をしまうと手元のCADのパネルを数度さわり、竜也の足元に魔法式が展開される。
横浜ベイタワーの最上階の展望ルーム。
そこから横浜の全景が見える。
鏡の壁はまるでドームの方に半球状の形をしている。
竜也は視界内の半球をカウント。全部で7。
「発動」
自分の行動を誰と言わずに報告。
足元の魔法式が強く光る。
その瞬間、論文コンペ会場を覆う半球が破裂。
即座に魔法式の展開を中止。
展開直前の魔法式からの逆流で、仮想魔法領域に負荷がかかるが大した負荷でもなく竜也は表情を変えない。
数秒、他のドームの状況を目視するが同様にドームが破裂することは無い。
藤林奏に連絡すべく情報端末を上着から出すと、短文メッセージが表示されていた。
【脱出した。光夜】
「もう少し詳細に報告しろ。効率重視か」
それだけ言って竜也は再度魔法式を展開。
30秒後にはすべてのドームが鏡の世界から開放された。
(言うだけのことはある)と久慈灘幽玄から提供された魔法式を評価すると竜也は展望ルームを後にした。
壁を透過する光の波長を特定し、その波長に過剰な情報を付与させることで情報体次元レベルでの「結界内の情報飽和」を起こすものだった。
それをこの短時間で、複数目標に対して設定した久慈灘幽玄の魔法理論構築の知識と技量について竜也は心の中で脱帽した。
そして想定したシナリオ通りでもあった。
横浜大騒乱編の終劇はもうすぐ。
プロット切れ。
ここからが本当の地獄だ!!