うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2 作:madamu
自分でもこの性格が支離滅裂なのは承知している。
いや、本質的には人間というモノは支離滅裂なのかも知れない。
私、十二江清姫はそんなことを常々思いながら、日々登下校をしている。
不良チームの失敗から2日。
ブランシュの暗躍なく、学内での一科二科問題はほぼ皆無。
平和な青空の下、皆勉学に励んでいる。
良いことなのだ。
だけど不安になるのは自分の行いが世界の成り行きを歪めてしまったのではないか、と言うことだ。
バタフライエフェクト。
地球の真裏の蝶の羽ばたきがこちらの地表に甚大な被害を発生させる事件の兆しかも知れない。
風が吹けば桶屋が儲かる。
ラノベ好きとしては発売とアニメ化の2度のタイミングで前世時点の最新刊まで読んでいた。
勿論アニメも視聴済み。
一条将揮と壬生沙耶香は必ず対面させることが楽しみでもある。
キリトとアスナだよ。
原作ではブランシュ襲撃で「司波達也とは何者か?」というのが学内の実力者、特にまゆみんとジュウモンの中に残る。
これが大事。
九校戦、横浜での特別扱いの基礎となる。
九校戦での司波達也のエンジニア参加は確定だ。
深雪ちゃんの発言と私のごり押しでなんとでもなる。
だけど、モノリスへの特別参加は怪しい。
だってジュウモンは司波達也の実力を現時点では知らない。
実戦経験を匂わしての接触は起きない。
さて、そうなるとモブ崎がリタイアした後に司波達也たちがモノリスコード新人戦には参戦しない。
もっとさかのぼれば、レオもエリカも司波達也の実力に信頼を置いていない状況だ。
司波達也のあの性格だと二科一年の面々の中心にはなるだろうが、戦闘能力では「服部副会長を倒した」程度の噂の持ち主でしかない。
剣術部との悶着もない。
どうも、私の2年間は司波達也の人生に良い意味でも悪い意味でも影響を与えてしまったようだ。
◆
「これは、一昔前で言うところの【ヤキを入れる】というやつですかね」
涼しげな顔で司波達也きゅんが言ってくる。
「こんなか弱い女の子が司波君にヤキを入れられるわけないじゃないか」
放課後、風紀委員として巡回中の司波達也君を第二図書室に連れ込んだ。
うーん、中村悠一の声で敵対な態度で言われると涎が出そうだ。
桐原君との口論とか2時間くらい聞いていられそうである。
ジュウモンは性格が固いので「俺様の美技に酔いな」と言ってくれなかった。
跡部王国の住人としてはいつか言わせてやる。
ただしその時は、アイマスクして声だけに集中したいよね。
外見がアレで台詞が跡部様だと、ギャップで笑死しそうだし。
「ファランクス!俺様の美技に酔いな!」とか。
司波君に椅子を勧めるが座る様子はない。警戒しているな。
「君と話してみようと思ってね」
「自分とですか。二科の3年生主席と話すことなどないよう思いますが」
「入試で論文1位は私は取れていないから、将来的には君なら一科二科関係なく論文だけで主席卒業しそうだけど」
私の言葉に司波君は少し顔を曇らせる。
「実技は評価の6割ですから、残り4割がどれ程評価されても、4割以上にはなりませんよ」
そうね~。
私は思わせぶりに深く足を組んで見せた。去年はこれではんぞー君の声が1オクターブ上がったので、男子の反応見るにはなかなか使える。
「君、九重八雲の弟子筋で入試で論文1位。はんぞー君に勝つほどの腕。不躾だけど、佐渡の防衛戦とかで実戦経験積んでない?」
「いえ、日本海側には行ったことはないですね。それに九重先生とは知り合いの紹介で、別段俺自身は忍者というわけではないですよ」
なんか表情硬いな~。まあ普通この状況で私を信用しないよね。
声の高さも変わらないので足の組み替えじゃ何ともないか。
「私はね、高校から先を見据えて将来有望な子には声をかけてる。まゆみんとは幼馴染みだけど、摩利やリンとは高校からの付き合い。彼女らが将来私に対して有益な事をしてくれるなら、それなりの支援をするつもり」
私の言葉に司波きゅんの視線が変わる。私の求めるところがわかったので敵愾心は薄まっている。
「十二江家はこの国の天候については非常に重要な家だ。資産で言えば二十八師補家に隠れるがそれなりだし、宮内庁、内閣府との繋がりは下手な十師族より上」
ここまで話して司波君の表情も少しだけ柔らかくなった。話のオチが読めたからだろう。
「自分にそれを話して如何するんですか?ただ運良く論文1位で入学し、服部副会長との模擬戦も1対1かつ、障害物のない環境が自分に有利になっただけです」
「だから、自分の実力ではないとでも言うつもり?言ったでしょ、これは将来性を買っているの」
私、悪い顔してるんだろうな~。
「どうやら君は学生生活を静かに暮らしたいようだけど、言っておくよ。中途半端な立ち位置だとこの学校だと悪目立ちをするよ。ただ一人の突き抜けた存在になれば、想像以上に静かで楽に学生が出来る」
「ええ、先輩を見ればわかります」
「キヨさん、と呼びたまへ」
もう一度悪い顔をして微笑んだ。
司波達也きゅんは少し呆れたように笑った。まるで面倒な先輩に目を付けられた後輩の表情だ。
◆
「十二江」
ほら来た。
達也きゅんとのおしゃべりの翌日。第二図書室にやってきた。
ジュウモンはいつもの真面目顔で聴いてくる。
私が司波君に絡んだ話は既に学内に広まりつつある。
【二科の3年生が、1年の有望株にツバをつけた】とかである。
真人の事もあり、司波君を子分にしようとしていると見られても仕方があるまい。
「次にジュウモンはこう言う「お前が声をかけた1年生は何者だ?」とね」
「その通りだ」
も~、ジュウモンつまらない~。
「はんぞー君に模擬戦で完勝。論文1位でおつむの出来は1年で1番。それにあの九重八雲の弟子。超掘り出し物だと思わない?」
「それ程の1年が二科か」
「試験の評価基準の問題でしょ?」
日本の魔法教育の判断基準は「基本的能力」に重点を置かれている。
「強度」「規模」「速さ」確かに重要なファクターだけど、基礎能力だけ強くて発展性の無さと柔軟性の無い日本の魔法思想はちょっとどうかと思うのよ。
その中で変数調整の速度を自由自在に操る司波達也きゅんの能力は評価基準から外れるが、魔法の基礎教育後の能力を伸ばすには必須のテクニックだと思う。
この点に関しては私が二科にいるのも「速さ」の一点が、他の良さを失くすほどだからだ。
天候操作なんて1秒で出来る魔法じゃないので、うちの家系では速度なんて「6時間で儀式が済めば早い方」の感覚だ。
「九校戦には引っ張るよ。どんな形でも学生の中核にいて欲しいね」
もう数か月で来るのが「九校戦」
総合三連覇がかかる大事な学校行事だ。
ここでの活躍によって生徒内の中心人物が決まっていく。
まゆみんも、摩利も、ジュウモンも私も、学内の有名人なのは学校行事での活躍があるからだ。
実績というよりも活躍。目立ったかどうか。それが重要だったりする。勿論実力が伴えば言うことはない。
「対立解消の最終段階か」
そうなのだ。この一科二科対立の最終段階は現在の一年生での二科生の活躍だ。
今の二年生は昨年まで、対立意識の強かった年代、私たちの一学年上を見ている。
二年生は、一科二科対立の記憶が濃く、本当の意味で一科二科問題が解消されるのは
対立意識のない現在の三年生を見て過ごす、今の一年生の年代からだ。
そのためにも実力主義の元、二科生にも活躍の場を与える。
そんな意識が現在の学内自治の上層部は持っているのだ。
「ジュウモン、司波君の実力が本物なら部活連に貸すよ。ただ彼に立ち位置を与えるなら生徒会か私の周りがベターだよ。彼は静かに暮らしたい派みたいだしね」
そう、司波家の二人はこれから先の人生を順風満帆に迎えるために、静かに学生生活を過ごそうとしている。
でも、四葉真夜はそれを許してくれないだろうな~。
「だが」
この大柄なポケモンみなたいなあだ名の男子はことあるごとにこう言ってくる。
「わかってる十師族として、看過できない場合はってヤツでしょ」
そうなのだ。十文字家の次期当主。ほとんど当主の仕事をする苦労人。
彼は部活連会頭の責任と共に十師族の次期当主として、魔法界全体を見る責任がある。
だから「将来的な火種」については敏感で「対応」については、まゆみんや私以上に口にする。
「そうだ。その場合は何かしらの対応を取らざる得ない」
「そうなったら、私とジュウモンで取り合いだ。十二江清姫は20年後の天下の為に有望な人材は欲しいからね」
悪びれもなく言う。本当に実力者とのつながりというのは未来への資産なのだ。
生まれながら当たり前に二十八師補家とつながりを持つ、名家とは違う独立独歩の我が家では人脈の拡充が親の代からの問題だ。
「拾いきれない人材は頼む」
ジュウモンはそれだけ言って図書室を出る。私はジュウモンの背に向けて言葉をかける。
「任してくれたまえ」
ホント、私は支離滅裂だ。
司波達也に主役として活躍はして欲しいが、活躍が必要な事件は防ぎたい。
キャラ萌えはしたいけど、現実の惨劇は勘弁願いたいのだ。