Golden Marriageの一条寺透子ちゃんは本日誕生日です。よろしくおねがいします。

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オチも中身もない


一条寺透子 生誕祭2019

いらいらいらいら。

超ムカついてきた。今更だけど私、せっかくの休日を無駄にしたんじゃないだろうか。

 

「透子、もう朝だけど」

「...ちょい、待って」

 

そんなこと、わかってる。もう随分前から部屋に日が差してきていて、画面が見づらくなった。それも私の憤りに拍車をかけてるんだけど。

 

「ご飯できてるよ?」

「待って、セーブポイントまで」

「わかった。下で待ってるから」

「ん」

 

改めて画面に目を向け、コントローラーを握る。

こいつ...硬すぎる。明らかにHP高すぎる。絶対勝てないイベントボス並みに倒れない。バランス調整どうなってる。

っていうか、私なんでこんなゲームやってるんだろう。適当な中古ショップで買った100円のゲームなのに、徹夜してまでする意味あったかな。

――なくはない、か。

 

少ない小遣いと時間と体力を浪費して手に入る物ってなんだろう。クリアしたという名誉、優越感、勿体無い精神を満たす自己満足。

私はただコントローラーを握って十字キーとボタンを押すだけ。作業をするように押すだけ。

作業するならロボットでも使えばいいのに。ゲームに娯楽以上の意味はないのに。

 

「――あ」

 

ようやくボスを倒した。死に際に語り始めるありふれた設定。ありふれたUI、ゲームシステム。

 

エンドロールが流れ始めた。名前も聞いたことない人、今活躍してる人、最近消えた人、いろんな人がこのゲームの制作に携わっている。

彼らはどんな気持ちで作ったんだろう。このゲームから微塵も感じられない情熱。クリエイティブな仕事に就いて出した成果がこんなにも創造性のないありきたりなゲーム。彼らは何のために作ったんだろう。

 

そして無機質に表示される『DISC2を入れてください』――

 

「...」

 

その文字を見て私はベッドに倒れ込み、意識を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...透子」

「――ん...?」

 

あれ、私寝ちゃってた。

 

「もうお昼だけど」

 

あ、違う。故意に寝たんだった。呼ばれてたの忘れてた。

 

「...ねてた」

「わかってるよ」

 

寝起きのCPUで叩き出したアンサーは単純明快な一言だった。...はやく起きろ、私。

 

「お昼、食べないの」

 

寝足りない様子の私を見て、気遣うように言ってくれる渚。その優しさに甘えたくなる。

 

「ん...ねる」

「そっか。じゃあ、おやすみ」

「おやす......」

 

結果、甘えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「透子、起きて」

「っ、ぇ...」

「起きて」

 

目が醒めると、また私を起こしてる渚がいた。けど、さっきと違って、目を逸らして口元に手を当ててる。一体どうしたの――

 

「――ぁ」

「おはよう...着替えてから降りておいで」

「ぁ、うん。わかった」

 

渚はそう言って、こちらを見ないようにしながら部屋を出ていった。ドアを開けた時に微かに舞った埃がとても目障りだった。ああ、もう朝か。

 

陽の光が部屋に差し込み、宙に舞う埃を見せつける。最後に部屋の掃除をしたのはいつだろう。

普段は渚の手によって隅々まで綺麗が保たれた部屋なのだが、ここ数日は部屋の片付けを断っている。理由は――

 

「...そういえば」

 

朝、ということはもう、今日は3月21日なのではなかろうか。3月21日ということは――

 

「そっか」

 

丸出しの臍を隠し、身体を起こす。電源の落ちていない家庭用ゲーム機の駆動音を聴きながら、クローゼットを開けた。手に取りやすい位置にあった薄紅のワンピースに着替える。外には出かけないけど、最低限の身だしなみ。...もう遅いかもしれないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下に降りると、テーブルを覆い尽くす豪勢な料理に迎えられた。

 

「おお......これは、凄い」

 

ピザ、サラダ、チキン、サンドイッチ、パスタ――そして微妙に場違いなカレーライス。ご丁寧に旗までつけちゃって。

 

「これだけお子様プレート...」

「おはよう透子。かなり寝てたね」

 

料理に感嘆してると、渚がキッチンから出てきた。ステーキの乗ったプレートを手に持って、コックさんみたい。

 

「おはよう。今日は一段と凄い...」

「勿論。誕生日だからね、腕を奮ったよ」

「美味しそう」

 

私は席に座って、改めて料理を見る。

 

――流石に多くない?

 

「母さん来るから」

「エルヴィラおばさまが...」

 

わざわざ来てくれるんだ。優しい。

婚約者となった今、義理の母親――つまるところお義母さんなのだけど、何となく恥ずかしくて呼び方は変えてない。ずっと前からお母さんみたいな存在だったし。

 

「でも遅くなるみたいだから、先に食べよっか」

「うん」

 

そう言って、渚もエプロンを外して座る。と、少し甘い匂いが鼻腔をくすぐった。

 

「チーズケーキ」

「正解」

「楽しみ」

 

しっかりケーキも焼いていたらしい。流石は渚、余念がない。

 

「じゃ、いただきます」

「いただきます」


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