魔眼の少女   作:火影みみみ

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第1話

 

 目を覚ますと、目の前にあったのはぼやけた視界だった。

 それは水の中で目を開けた時よりもぼやけていて、光があるとしかわからない。

 ……一応転生には成功したということだろうか?

 目が見えにくいのは生まれたてだからでしょうし点点。

 赤ちゃんからやり直しなのは想定の範囲内だけども、これからのことを考えると些か面倒ですね。

 

「あ、起きましたよ真実(まこと)さん!」

 

 明るい感じの声が聞こえる。

 この人が母親なのでしょうか?

 

「お前がぎゃあぎゃあ騒げばそりゃあ起きるだろうよ」

 

 今度は男の人の声。

 という事はこっちが父親? なんか厳しそう。

 

「ありゃりゃ、それもそうですよね、うっかり失念していました」

 

「……それにしてもこのガキ、やけに落ち着いてやがるな、鍛えがいがありそうだ」

 

 確定! この人鬼です! 赤子相手に何を考えているのですか!?

 

「もう、こんなか弱い女の子に何をさせる気ですか!? この子はちゃんとした女の子に育てるんですよ!」

 

 そう、その調子です! 何とかしてこの父親(?)を説得してください!!

 

「は、俺とお前のガキだぞ、たとえ女でもまともに育つわけがねえ」

 

「…………それもそうですよね~」

 

 そこで諦めて欲しくなかった! もうちょっと頑張ってください!!

 ……といいますか、なんですかこの二人は!!

 ふたり揃って戦闘狂(バトルジャンキー)か何かですか!?

 もしそうだったら早くも私の第二の人生は詰み確定ですね。 

 そして、その二人の血を受け継いだ私は一体どうなってしまうのでしょう!?

 

「あなたに似たら、きっと最強の剣士になるでしょうね」

 

「お前に似たら、はちゃめちゃな美人になるだろうな」

 

 悲報・どちらにしろ、ロクな人間にならないことが確定いたしました。

 ……ああもう、心の中で騒いでいたら疲れてきました。

 赤ちゃんだと体力の消費が激しいのでしょうか…………、まあいいです、もう寝るとしましょう。

 …………それにしても、実に楽しいそうな二人ですね。

 いつか、目が見えるようになったら二人の顔を見るのが楽しみです。

 しかし、この二人の声、どこかで聞いたような気がするのは気のせいでしょうか?

 そう思ったのを最後に、私は眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

 

「あらら、寝ちゃったみたいですね」

 

「まあガキはそんなもんだろ」

 

「そうですね、これから育てるのが楽しみですよ」

 

「あまり無茶な教育すんじゃねえぞ、ニャル子」

 

「あなたが言いますか、元・志々雄真実さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから幾日が過ぎ、ようやくちゃんと目が見え始めるようになりました。

 その成長速度から察するに、もうそろそろ完全に見えていい頃です。

 ですがその前に、少しおかしなことがあります。

 通常、人間に視界は右と左の目で世界を見ることができます。

 私も例に漏れず、ちゃんと両目が働いていることは確認済みです。

 変なものが見える?

 そんなの魔眼を頼んだ時点であってもおかしくありません。

 たとえ視界の全てに赤い線が見えていても、今は無視しましょう。

 問題は現在進行形で私の顔の上に浮かんでいる三番目の瞳(サードアイ)でしょう。

 

 

 

 

 何で魔眼を頼んだのにコレが浮かんでいるのでしょう?

 なんですか、コレも魔眼に含まれるのですか?

 しかも、コレもちゃんと見えるのですよね、赤い線込みで。

 その上やっぱり心の声が聞こえますのでとてもうるさいですね。

 直死の魔眼にサードアイ、どう考えてもチートですね。

 これでも十分にチートなんですが、問題はまだあります。

 この二つはかなりわかりやすい部類ですけれども、魔眼には発動しなければわからない類のものがたくさんあります。

 石になるとか、見たら死ぬとか、そんなのがあったらもう最悪です。

 二つもあるのだからそれ以上ないのかもしれないですが、これ以上ないという保証もありません。

 ……一か八かですが、一度自分の姿を見てみましょうか?

 運がよければ相手のステータスを見抜く魔眼も備わっているかもしれません。

 ギャンブル性が高いですが、他の手といえば他人で実験するという非人道的極まりない方法しかありません。

 それに、失敗しても何もデメリットはありませんですし、一度くらい試してみましょう。

 

 

 それでは、一、二の、三!

 

 

 視界が開け、サードアイから自分の寝ている姿が確認できる。

 その全身には赤い線と点が走り、とてもじゃないがまともな人間には見えません。

 そして数瞬後、私の体の詳細な状態を理解できました。

 

 

 

 

〈以下、そのイメージ〉

 

 体調:万全

 心拍:普通

 視力:並以下

 握力:赤ちゃんにしては強い

 

 

 

 

 おお! どうやら賭けは成功のようですね、いや良かった良かった。

 

 

 

 

 レアスキル:五つ

       直死の魔眼 

       サードアイ 

       見稽古

       魅了の魔眼

       停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)

 

 

 

 

 ……ここまで見て目を閉じた私は悪くないと思う。

 うん、どう考えてもおかしなのが混ざってるよね。

 特に見稽古、これ、魔眼どころか邪眼ですらないよね!

 

 

 ……。

 …………。

 ………………うん、もしかしたら見間違いかもしれない。

 ありえないかもしれないけど、もう一度見たら消えるかもしれない。

 その僅かな希望に、私は賭ける!!

 

 

 

 

 レアスキル:十つ

      直死の魔眼 

      サードアイ 

      見稽古

      魅了の魔眼

      停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)

      妖精眼(グラムサイト)

      複写眼(アルファ・スティグマ)

      殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)

      写輪眼

      未来測定

 

 

 

 

 ……。

 …………。

 ………………増えた!!?

 ちょっと目を離した隙に凄い増えた!!

 しかも厄介そうなのしかないし!

 うう、これはもうコントロールができるまで盲目確定ですね。

 危なっかしくて迂闊に目も開いてられません。

 ……ん? どうやら追加情報があるみたいですね

 

 

 ※基本、使用者が使おうと思わない限り魔眼は発動しない。なお、コントロールできるかは別。

 ※同時に使えるのは三つまで。

 

 

 

 地獄に仏とはまさにこのことです。

 取り敢えず、勝手に発動して大惨事、という結末にはならないでしょう。

 しかし、訓練が必要なのにはかわりないので、やっぱりしばらくは盲目でいた方が安全ですね。

 あ、私座頭市にちょっと憧れているのですよ!

 目が見えないのにどこから誰が来るのかわかるなんてかっこいいじゃないですか!!

 

 

 まあそれはさて置き、ここで私の今の状況を思い出して欲しい。

 今私は赤子、自分の事もまともにできないただの赤ちゃん。

 つまりこの後、大体三・四歳になるくらいまで、様々な羞恥プレイが私を待っているのです!

 そんなのは死んでもごめんなので、ちょっと写輪眼で催眠をかけることにします。

 

 

 

 えっと、サードアイを自分の前に移動させて、私も目を開けて。

 内容は

 ・サードアイ以外の能力の封印。

 ・三歳になるまで記憶を封印

 ・サードアイのことは誰にも話さない。

 ・迂闊に人の心を言い当てたりしない。

 ・三歳になるまで目が見えない

 でいいかな?

 こっちの両親に迷惑かけちゃうのがちょっと罪悪感がありますが、あの人たちならきっと盲目の私でも何とかしてくれるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 では、三歳になるまで、お休みなさい。

 

 

 

 

 

 


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