魔眼の少女   作:火影みみみ

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第16.5話

四月二十七日。

 いつも通りのさわやかな朝。

 私は今、最近日課になりつつあるツナの早朝訓練をしてします。

 訓練の成果により、ツナが超死ぬ気モードを使いこなすことができました。

 いつもはダメツナさんですが、超モードだとすごく手応えがあって楽しいのです。

 リボーンさんに頼んで死ぬ気丸も作ってもらわなければなりませんね。

 …………しかし、

 

「は、ははぁ、はぁ…………」

 

「どうしたのです? いつもの調子が出ていませんが」

 

 今日のツナはいつもより明らかに動きが鈍っています。

 何か変のものでも拾い食いしたのでしょうか? 

 

「母さんの、御飯を食べた後、から、調子が悪いみたいだ」

 

「…………………………ああ、なるほど」

 

 あれは精神力を消費しますからね。

 味はまともなのですが、何故か一気にSAN値が削れます。

 昔から時折食べている私ですら未だ慣れないのに、ツナには少し刺激が強かったようですね。

 それでも私が初めて食べた時より大分マシですが。さすが男の子ですね。

 

「……訓練はここまでにしましょう、今日の朝食はまともなはずですので、それを食べたら家でゆっくりしていなさい」

 

 しかし、悪いことだけでもありません。

 あの料理を食べた人は必ず体の調子がよくなるのです。

 効果は血行促進、新地代謝の活性化、視力向上にアンチエイジングなど、そして何故か火傷にも効くという意味不明さ。最後のは夫婦愛がなせるものなのでしょうか?

 まあ、食べ慣れないと丸一日は気分がわるいままですけどね。

 それが唯一の欠点ですか。

 

「うん、そうするよ…………」

 

 死ぬ気モードが解け、先ほどより更に気分が悪そうになるツナ。

 しかし、ちょっとだらしないですね。

 

「あなたもこの家で暮らすのならお母さんの料理には慣れておきなさい、その調子では緊急時に遅れをとりますよ」

 

「けどさ、あれをどうやって慣れろって言うんだよ、完全に地球外の何かだったよ、あれは」

 

「大丈夫ですよ、あと二・三回くらい食べれば慣れてくるはずです、…………私なんて最初は丸三日寝込みましたから」

 

 思い出される過去の記憶。

 あの時、私はまだ四歳でした。

 当時の私は何の疑問ももたず、あの料理を食べてしまったのです。

 食べた瞬間にやってきたのは想像を超える不快感、味は普通なのに体の中の何かがそれを拒絶している感じでした。

 しかし、せっかくお母さんが作ってくれた料理なので吐き出すわけにもいかず、そのまま飲み込みました。

 それは食べた後でもその存在を主張しているかのように、私は感じることができました。

 全てを食べ終えた頃には私の中はその得体の知れない何かで満たされており、気持ち悪くてすぐに寝込んでしまいました。

 流石に三途の川に行く位まで、酷くはありませんでしたがあれが私のこの人生最初のトラウマとして記憶に刻み込まれました。

 

「姉ちゃん、よくそんなの食べてられるな」

 

 何やらツナから哀れじみた視線を感じます。

 

「昔のことわざに常住戦陣と言葉があります、私に休みはないのですよ」

 

「姉ちゃん、…………言いたいことはわかるけどそれことわざじゃないよ」

 

 あら、そうでしたか。

 どこかで聞いたような気がしたのですが………………、まあいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで姉ちゃん、今日はどうするの?」

 

 学校に向かうまで少し時間があったので、庭でてぃんだろすと戯れていた私にツナが声をかけてくる。

 

 むぅ、せっかくいい感じにモフれていたのに…………。

 

「今日? ……ああ、管理局のあれですか」

 

 そのことを話す前に辺りを確認する。

 ふむ、てぃんだろすとツナ以外には誰もいませんね。

 

「今日はいきません、ハラオウン執務官に丸投げします」

 

「え、あいつ一人で大丈夫なの?」

 

 ツナが意外そうに驚いています。

 何を不思議に思う必要があるのでしょう?

 

「彼は優秀な執務官なのは知っているでしょう? ならばきっと何とかしてくれますよ」

 

「でも、あいつ一人で八人全員抑えられるとは思えないんだけど?」

 

「……ああ、そういうことですか」

 

 ようやくツナの言いたいことがわかりました。

 要は、執務官一人では戦力不足と言いたいのですね。

 

「何も正面から叩き伏せることだけが勝利ではありません、それに実力的にはあなたよりだいぶ上ですよ」

 

「マジで!? ……あ、まあ俺は五歳児だし仕方ないのか」

 

「そうですね、まあ、変身魔法ありでも運がよければ引き分け、といったところですが」

 

「oh…………」

 

 両手両足を地面につけ、激しく落ち込むツナ。

 実力と経験のある執務官と少し鍛えただけのツナとではそれは当然の結論でしょうに。

 

「あなたはまだまだ力が足りません、肉体的なことは変身魔法でごまかすとして、残りの部分は私が匣兵器を造っておくのでそれでカバーしてください」

 

 A'sまでには未来編の白蘭とまともに戦えるくらいにはなってもらわないと困ります。

 原作のように急激な成長はできないかもしれませんが、まだ半年以上もありますのでなんとかなるでしょう。

 

「俺専用の匣兵器かぁ……、それってやっぱりナッツになるの?」

 

 手足についた土をはらい、気を持ち直したツナがそう私に聞いてきます。

 

「ええ、それも一応考えてはいますが、……他に何か欲しいものはありますか、一応オリジナル匣兵器も渡すつもりではあるのですが」

 

「オリジナルの匣兵器!? そんなのがあるの!」

 

「できなくはないですよ、モデルのDNAがあればなんでも匣兵器にできますし」

 

 扱いきれるかは別ですが。

 

「バウ! バウバウ!」

 

「おや、ありがとです、てぃんだろす」

 

 どうやら少し話しすぎたようですね。

 これ以上遅れると遅刻してしまいそうです。

 

「姉ちゃん、てぃんだろすが何言っているか分かるの?」

 

「ええ、長い付き合いですからね、サードアイなしでも大体はわかりますよ」

 

 ちなみにサードアイを使うとこうなります。

 

《お嬢、学校の時間ですぜ、弟君とのご歓談ももうそろそろおしめぇにして下せい》

 

《てぃんだろすは本当に犬なんだろうか? 時々人間以上に気が利くけど、新手の転生者なんじゃないか?》

 

 近くにいるツナの思考まで読んでしまいましたか。

 おや? まだ誰か、

 

《今日の昼ご飯は何にしましょう? カレーでもいいですけど、今朝送られてきた?????の×××炒めにして、お惣菜はうち――》

 

 サードアイ緊急停止!!

 流れ込んでくる冒涜的な思考イメージをサードアイを消して防ぎますが、先に読んでしまったイメージが頭に残り、私を苦しめます。

 

「うう…………」

 

「姉ちゃん!?」

 

 耐え切れず今度は私が地面に膝をつく。

 ついサードアイの効果範囲内にいるお母さんの思考まで読み取ってしまいました。

 おかげで余計にSAN値を減らしてしまいましたよ。

 

「ツナ………………」

 

「何? 姉ちゃん」

 

「頑張ってくださいね」

 

「何を!? 何を頑張るの俺!?」

 

 こればかりは私にも止められません。

 唯一それを止められるお父さんはまだ出張から帰ってきません。

 ああ、今どこで何をしているのでしょう。

 あなたのイジメじみた修行がないのは楽なのですが、彼女の唯一のブレーキ役であるあなたがいないと、我が家が冒涜的な何かに侵略されてしまいます。

 おそらくロクなことはしていないでしょうが、お願いですから早く帰ってきてください。

 

 でないと、私のSAN値がもちません。

 

 

 




今回は短め、悩みましたがこうするのがいいと思いました。

しかし、前半の部分のみを投稿するという大失敗をしてしまったorz
いくら眠かったとはいえこれは酷い・・・・・・

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