魔眼の少女   作:火影みみみ

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第2話

 皆さん、おはようございます。

 やっと三歳になり、催眠が解けいろいろ取り戻した七海です。

 ……あ、そう言えば名前を言うのは初めてでしたね。

 私の名前は八坂七海、どう考えてもあの七実さんが影響しているとしか思えない名前です。

 しかし、記憶が戻った私の驚きはこんなものではありません。

 三歳の誕生日を迎えたあの日、私は好奇心にかられ、両親の姿を見てしまったのです。

 

 

 

 

 

 銀髪碧眼で、とても二十代には見えない母。

 

 

 

 顔や腕に包帯を巻いて、ギラギラとした目をしている父。

 

 

 

 

 

 どう考えても「這いよれ」のニャル子さんと「るろうに」の志々雄真実さんですね。もういろいろと突っ込みどころ満載です。

 母親が神話生物?、父親が殺人鬼?(こっちでもそうなのかは知らない)のハイブリッドなんて、これもチート級の贈り物ですね。泣きたくなります。

 

 そして、容姿に関することでもう一つ。

 何を隠そう私の容姿ですが、名前と能力の影響なのか、やっぱり鑢七実に着実に似てきていることが分かりました。

 後二十年くらい経てば、原作と瓜二つになりますね、嬉しくありませんが。

 ただし、一部違うところもあります。

 まず、私の髪の色ですが、中二病よろしく白髪です。

 目の色もなんというか表現に困る色をしています。

 虹と言いましょうか、それとも混沌と言いましょうか、見る度に微妙に色が変わっています。

 まあこれは特典の影響でしょうね、色が変わるのはその度に新しい魔眼が付加されているからでしょうか?

 もしそうだったら笑えませんね。

 ますます人前で目を開けられなくなりました。

 

 

 まあ、これは考えても仕方ありませんので次の話に行きましょう。

 今の私の生活ですが、一応問題はありません。

 目が見えなかったですが、私には見えるものがあります。

 いつ、そのことに気がついたのかはもう忘れました。

 ただ、物心ついた頃には目には見えない世界を私は見ていました。

 色も光もない、ただ音が全てを支配する世界。

 私がかけた催眠の影響なのか、目が見えないと判断した脳は聴力を上げるように進化したようです。

 流石に百メートル先のアリの足音が聞こえる、なんて化け物じみた聴力ではありませんが、近くの人の心音くらいはギリギリ聞こえます。

 愛用の杖が手放せないのが難点ですが、もう慣れたのでいいとしましょう。

 ……何をどう間違ったのか、この杖明らかに重いんですよね。

 見た目は普通の杖なんですが、金属が仕込まれています。

 幼児用のレイピアを持っている気分です。

 どう考えてもおかしいですよね!

 あの両親は何を考えてこんなものを持たせたのでしょう。

 それを貰った当初喜んで振り回した当時の私もどうかと思いますが。

 

 

「七海ちゃ~ん! ごはんですよー!」

 

 そんなことを考えていると台所からお母さんの声が聞こえます。

 もうそんな時間でしたか、盲目状態だと電子時計が見えないのは難点ですね。

 そんなことを考えつつ、私はお母さんの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「七海、今日でお前は三歳になる」

 

 台所で待ち構えていたのは神話生物ではなく修羅でした。

 お母さんはお父さんの後ろでニコニコ笑っています。

 

「気がついているかどうかは知らんが、生まれてからずっとお前を鍛え続けてきた、その杖もその一環だ」

 

 わぁお、いきなりのカミングアウトに思考がついていきません。

 若干持ち物や服が重かったのは気のせいじゃなかったのですね。

 

「……お母さん、何かとてつもなく嫌な予感がします」

 

「まあまあ、ここからが大事な話ですから」

 

 全くもって役に立ちませんね。ちくせう。

 

「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き、弱ければ死ぬ、……何が言いたいかわかるか?」

 

「……よくわかりません」

 

 わかりたくもありません。

 

「簡単に言えば今日から『七海ちゃん強化訓練』の開始! ってことですよ!」

 

「さいですか」

 

 ある程度、といいますかこの両親の元ネタ(?)を知った時点で、こうなることは予想できていました。

 しかし、疑問は残ります。

 

「目が見えない私は一体何をどうすればいいので――」

 

 そう言おうとした時、お父さんの腕が素早く動いたのを私は聞きました。

 彼の手にはナイフが握られており、振った瞬間にナイフがこちらに飛んできます。

 それは私の命を刈り取ろうと眉間目掛けて飛んできます。

 

 少し考えて、私はそれを杖で弾きます。

 三歳の幼女がナイフを掴むなんて不自然過ぎますからね。

 …………今更自然不自然もないと思いますが。

 

「は、目が見えないから何だ、お前はそんなもの最初から関係ないだろう?」

 

 ……どうやらこの人には隠し事ができないようです。

 志々雄さんの目って、本当に油断できません。

 

「お前は確かに目が目ないかもしれねえ、だがな、だからこそ出来ることがある」

 

「できること、ですか?」

 

「ああ、お前にはそれを今日から徹底的に叩き込むからさっさと準備しろ」

 

 どうやら、私に拒否権はないようです。

 

 

 

 …………さて、辞世の句でも準備しましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○月B日 曇り

 今日は狩りに出かけた。

 兎を仕留めました。

 

 ○月M日 雨

 今日はひたすら回った。

 回りすぎて平衡感覚がおかしくなるかと思いました。

 これは一体何の特訓なんでしょう?

 

 ○月Q日 曇り

 今日は初めて刀を握った。

 何故かしっくりくると感じたのは父親のせいだと信じたい。

 

 ○月S日 晴れ

 今日は吊るされた。

 意味がわからない。

 

 ○月U日

 今日は死ぬかと思った。

 詳しいことは思い出したくないので書かない。

 

 

 ○月X日 晴れ

 今日は崖から落ちた。

 獅子は我が子を千尋の谷に落とすと言いますが、それを実践するとは思いませんでした。

 まじで殺す気でした。

 

 ○月Z日 快晴

 今日は森の中に放置された。

 かろうじてこの日記帳と杖を持ってくることができたが、もうホント、巫山戯ているとしか思えない。

 一週間たったら迎えに来るそうだ。

 ……その時まで、生きているといいなぁ。

 

 #月A日 曇り

 訓練が開始されてから約二ヶ月。

 もう自分が何をしてきたのか思い出せません。

 今日もまたいじめという名の訓練が始まります。

 けれど、これに慣れてきてしまった自分がいます。

 ……もう、普通の生活には戻れませんね。(元々普通じゃない)

 

 ×月D日 雪

 寒い、この季節でも冷水シャワーを浴びているお父さんは化物です。

 一度浴びたことがありますが、もう二度としたくありません。

 

 ×月G日 雪

 布団にくるまっていたらお母さんに無理やり引き剥がされました。ちくせう。

 

 ▽月I日 曇り

 年が明けた。

 街のみんなは楽しそうに騒いでいるが、私にはそんな余裕はない。

 なぜなら、今後ろにお父さんが訓練用の道具を持って迫ってきて

 (この日はここで途切れている)

 

 △月V日 晴れ

 今日は小太刀二刀御神流とかいうのを習った。

 昔、お父さんが手こずった人が使っていた流派らしい。

 ……どこかで聞いたことがあるような?

 

 ◇月Y日 雨

 五日かけてようやく「神速」が使えるようにあった。

 本当は見稽古を使いたかったが、嫌な予感がするのでやめた。

 極力、お父さんの前では力は使いたくない。

 

 υ月R日 晴れ

 今日はいい天気。

 しかし、稽古は続く。

 

 

 

 

 (日付が大きく飛ぶ)

 

 

 

 

 -月A日 晴れ

 この日記を書くのも久しぶりです。

 本棚にしまっていたこれを発見して、また書きたくなりました。

 あれから二年が経ち、私ももう五歳。

 いやはや月日が経つのは早いですね。

 今でも稽古は続いていますが、三歳ころほど嫌ではありません。慣れました。

 それどころか、少しずつ強くなるのを実感できて楽しいくなっています。

 さて、今日はどんな訓練なのでしょう、楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 (日記はここで終わっている)




・八坂七海
容姿:白髪の鑢七実
性格:冷静に見えて、内心慌てるタイプ
魔力量:なし
デバイス:なし
魔力光:なし
担当した神:金属バッドを持った女神
特典:「特殊な瞳」 通称「魔眼」


2013/12/16
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12/22
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