アムロ再び戦場に立つ。   作:ローファイト

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アムロ平行世界に転移する

メビウスの輪……

 

サイコフレームの共振が見せた希望の光。

 

アクシズが地球の重力から徐々に離れて行く……

 

 

(ああ、光の輪が……シャア見ているか?お前が見限った人々の心はこんなに温かな光を……)

アムロの意識はそこで途切れる。

 

 

アムロ・レイ大尉29歳 第ニ次ネオ・ジオン抗争、アクシズ降下阻止戦にてMIA

実質戦死扱いとなり、2階級特進で中佐となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし……

 

 

 

「おい!そこの見慣れないパイロットスーツのあんた!バルキリーの戦闘経験は?戦闘機ぐらい乗れるだろ?」

 

(ここは……基地……いや戦艦の中?)

けたたましく鳴り響く警報音に、見慣れないノーマルスーツを着た兵士達がそれ程広くない通路を騒然と行き来していた。その空気感は、戦場独特の雰囲気を醸し出している。

 

(これは一体?俺はνガンダムと運命を共にしたはずではなかったのか?いや、助かったのか……しかし、あの時のノーマルスーツのままだ)

アムロ・レイは自身の体を確かめるように動かし、その目で確認する。

 

「ボーっとしてる暇は無いんだ!!彼奴らがまた攻めて来てるんだ!パイロットが不足してる!時間が無い。こっちにこい!!」

白色の戦闘機のパイロットスーツのような物を着込んだ30中頃ぐらいの強面の男が、アムロの腕を強引に掴み、引っ張って行く。

 

「待て……ここはどこだ。俺はどうなった?」

 

「ちっ、まだ混乱してやがる!しょうがねぇ!!SDFがフォールドしたのは良いんだが、何でか冥王星まで飛ばされたんだよ!ってわからねぇよな!ふぅ、あんたプロメテウスかダイダロスのパイロットの生き残りか?……とりあえずだ!敵は待ってくれない!事情説明は後だ!行くぞ!!」

 

「おいっ!?」

(冥王星に飛ばされた!?何を言ってる?SDFとは?フォールド?プロメテウス?ダイダロス?)

アムロは思考が追い付かない。

この男の言動には聞きなれない言葉が多数含まれていたためだ。

 

アムロはその男に引っ張られるまま連れられ、広い場所に出る。

そこは格納庫だろう。アムロからすると旧世代の戦闘機が所狭しと置かれ、発進準備をしていた。

 

(どういう事だ?あれは、旧世代のF‐14型戦闘機じゃないか?……いや、この男、ここが冥王星だと言っていたぞ。そんな辺鄙な場所に宇宙戦艦が?その宇宙戦艦の中になぜ旧世代の戦闘機が?モビルスーツも見当たらない……)

 

 

「おーーい!空いてるバルキリーはどこだ!!」

アムロを引っ張ってきた男は大声で叫ぶ。

 

「そこら中空いてるよ!!」

整備兵と思われる若い男が怒鳴り声で返す。

 

「くそったれ!さっきの地球での一戦でかなりの戦死者が出たってことか!!」

 

(地球での一戦?なんだ?……あの後、地球で戦闘行為があったと言う事か、俺はあの後どうなったんだ?)

 

「おい、あんた。そこらへんのに乗り放題だ!バルキリーは……その顔を見るに乗ったことは無いだろうな。まあ、ファイター形態だったら、ほとんど戦闘機と一緒だが……あっ、しまった。宇宙空間での戦闘の経験はあるのか!?」

 

「……ある」

 

「ふー、よかったぜ。流石に宇宙戦闘の経験が無いと無理だからな。おっと、俺はSDF-1所属キャスパー中隊隊長エストラント・キーリック中尉だ。俺の部隊はもう3人しか生き残ってないから実質小隊だがな。あんたは?」

少々乱暴な物言いのパイロットスーツの男は、ようやくここで名乗りを上げる。

 

「外郭独立遊撃艦隊ロンド・ベル所属アムロ・レイ大尉だ」

 

「げっ、階級上かよ!しっ失礼しました大尉殿!って、なんだそのロンド・ベルって聞いたことが無いが、まあいいか。大尉殿!ご同行願いませんでしょーうか!」

 

(なんだ。俺の名前を知らない?……そこそこ有名だと思っていたのだがな)

地球連邦軍のパイロットでアムロ・レイの名を知らない兵士は居ない。

なにせ、伝説的モビルスーツRX-78-2ガンダムを駆り、数々の功績を残したエースパイロットだ。

 

「……おい、ここはどこで、何と戦ってる?」

 

「やっぱ、混乱してんな。……大尉殿!とりあえずこのデカブツ戦艦を守らないといけないんだ!出撃して生きて帰れたら、たんまり答えるからさ!とりあえず乗った乗った!!」

 

アムロは整備兵と共にエストラントに無理やり、空いてるバルキリーに乗せられ、ハッチを閉められる。

 

「聞く耳持たずか……しかし、おかしい」

アムロは違和感を持ちつつ、バルキリーのコクピット周りの確認と、マニュアルが映し出されてるタブレット端末を確認する。

(……なんだ。これは!?唯の旧世代戦闘機じゃない。エネルギーゲインが5倍もある。宇宙用の戦闘機……こんなもの聞いた事も見た事もない。……何!?変形するだと!これはモビルスーツ!?いや、こんな小型で変形機構を持つモビルスーツなど聞いたことが無い!一体何なんだ?)

アムロはマニュアルを見て驚き、さらに今の自分の置かれた状況がますます理解ができない。

 

 

そして、戦闘機風のコクピットの前面画面に年若い美女が映る。

『私は管制オペレーター主任の早瀬未沙中尉です。キーリック中尉に事情を聞きました。アムロ・レイ大尉。突然戦闘に巻き込まれ混乱と疑問をお持ちだろうと思いますが、今はSDFの防衛にご協力ください』

 

「わかった。帰ったら事情を聞かせてもらいたい」

 

(とりあえずは、VF-1Aというモビルスーツ、いやバルキリーと言ったか、乗りこなさなければ)

 

『ご武運を……』

 

 

そして、アムロが乗り込んだVF-1Aは甲板エレベーターに載せられ発進シークエンスに入る。

 

 

 

 

西暦2009年、地球は突如として現れたゼントラーディ軍と交戦状態に突入。

対異星人用に開発建造(正確には改装)されたSDF-1マクロスはゼントラーディ軍に集中して狙われピンチに落ちいるが、フォールド技術を利用したワープ航法で地上から月に脱出を図ったのだ。

しかし、月軌道上にワープする予定が何らかのトラブルで冥王星まで飛ばされる事となる。

 

その際、SDFが停泊していた基地や街、他の戦艦なども巻き込み一緒にワープしてしまう。

さらにはワープした先でも、すぐにゼントラーディ軍の追手が現れ、襲撃にさらされたのだった。

 

アムロは丁度このタイミングで、似通った世界、平行世界へと転移し、飛ばされたのだった。

それはサイコフレームの共振の影響なのかは不明である。

 

そしてアムロは、奇しくもSDF-1のワープに巻き込まれた他の戦艦や他の航空部隊の生き残りだと勘違いされ、無理やりバルキリーに乗せられる羽目に……

 

 

 

 

 

そして……

 

「くっ、凄まじい旋回性能と機動力だ。モビルスーツというよりもMAに近いコンセプトか。パワーはZ系には劣るが、この小回りの良さは対モビルスーツに優位に働きそうだ。ただ、その分技量が必要なのも否めないか……そこっ!」

アムロは抜群の操縦センスと戦闘センス、さらに優れたニュータイプ能力で、ほぼ完全にバルキリーを乗りこなし、凄まじい戦果を挙げていく。

 

「人型……バトロイド形態と言っても接近戦用の武器は無しか、いや頭部レーザービーム、これぐらいか。威力は低いようだな。ビームサーベルが欲しいところだが……、あまい!……反応は悪くは無いが宙域では使い辛い。バトロイドモードは改良の余地が有るな」

アムロは戦闘機形態のファイターモード、人型形態のバトロイドモード、その中間のガウォークモードを確かめるように機動し、戦場を駆け巡り、次々と敵の戦闘ポッドを破壊していく。

 

「敵はなんなんだ?……意思が……まるで戦闘本能だけで生きる野獣のようだ。だがしかし、……やられるわけには!」

ゼントラーディ軍の兵器を次々と撃破していく中、アムロはニュータイプ能力で敵の意思を感じるが、それが今迄戦ってきた相手とは異なっていた事に困惑を隠せなかった。

 

そしてアムロ・レイが駆るVF-1A一般量産型のバルキリーはその一戦で19機という驚異的な撃墜スコアを残し、無傷でSDF-1マクロスに帰ってきたのだった。

 

 

 

 

 


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