徐々に返事をさせていただけばと……
誤字脱字報告ありがとうございます。
非常に助かります。
というわけで、思いついたので投稿します。
私的意見がめちゃ入ってる感じです。
これがアンチになるかもしれません。
土星での一戦から、しばらくゼントラーディ軍からの襲撃は鳴りを潜めていた。
奇しくも、土星でマクロスがダイダロスアタックで爆散させたあの3000m級指揮戦艦は土星、木星間の艦隊の指揮を執っていたのだろう。
あの戦いでのマクロスの損傷もかなり大きく、防衛に回っていたパイロット、特に新人パイロットの損耗が激しかった。
あの一戦で分かった事は、マクロスよりもゼントラーディ軍の方が索敵能力も高いと言う事だ。
こちらの作戦を利用され、逆に奇襲を受けピンチに陥った経緯を見ても明らかだ。
アムロは新人パイロットやパイロット候補生の育成に取り組む一方、兵器開発に積極的に関わる。
技術部ではアムロ組なるアムロが提供した技術提案を実現化させるチームまで結成される。
その中で開発された兵器の中で、特に有用だったのはダミーバルーンだ。
バルキリーに似せたバルーンを放出する事で、敵の認識やセンサーを狂わせる。
相手の攻撃の盾としても役割を果たせるのだ。
ダミーバルーンはさらに発展をみせ、モーターを取り付け、プログラミングされた動きを行うパッシブダミーバルーン。
更に、バルーンに爆薬を含ませ、接触や破壊すると爆発を起こし敵を巻き込む、パッシブアタックバルーン等など。
また、チャフを多量にまき散らすグレネード弾を作成。相手のミサイルロックオン機能の阻害及びビーム攻撃を減衰させる効果をもたらす。
そして、宙域戦闘におけるバルキリーの有効戦術を練り直す。
これにより、火星圏に近づくにつれ、敵の散発的な攻撃を受けるようになってからのパイロット生存率はかなり高まった。土星前と比べると新人が多いのにも関わらずパイロット損耗率は7割減少した。
しばらく前からアムロは技術部から、ある兵器についての活用方法を模索してほしいと要請を受け承諾する。
その兵器とはバルキリー用のアーマードパック。正式にはGBP-1S プロテクター・ウェポンシステムと呼ばれるものだ。
装甲の薄いバルキリーに追加重装甲と火力を補うための重武装を一体化させた脱着可能な追加ウエポンシステムだ。
そう聞けば、一見かなり有用な兵器なのではと思われるが、最大の難点なのはバトロイド形態のみでの運用と限定されてる事だ。
その最終試作品がマクロスに持ち込まれていたが、元々陸戦を想定してる装備パッケージなだけあって、現在宙域をさまよってるマクロスにとって無用の長物であった。
なにせこのアーマードパックを武装したバルキリーの運用方法が、デストロイドとほぼ同じだからだ。
バルキリー運用はやはり宙域や空戦での戦闘がメインとなる。特に宙域では、旋回能力や高速飛行能力に優れている ファイター形態での運用が殆どだ。
わざわざバルキリーをデストロイド化させる必要性は全くない。
しかもデストロイドが存在するのに、より高価なバルキリーをデストロイド化させる意味も無いのだ。
なまじアーマードパックを纏ったとしても、マクロス艦上から、ミサイルを撃って弾幕を張ったり、迎撃をするのが関の山。バルキリーの運用方法としては宝の持ち腐れも良いところなのだ。
デストロイドが不足し、よっぽどバルキリーが潤沢に余ってる状態では、多少の意味は持つだろうが……
そんな事で、今までお蔵入りになっていた武装だった。
メーカー曰く、陸戦で単騎突入を想定した武装との事だが……重力下でも空中に浮く戦艦、しかも凄まじい攻撃能力を持つゼントラーディ軍の艦に対して、どれだけ有効なのかも疑問でもある。
ゼントラーディ軍の戦艦の大型ビーム砲の前ではその装甲も意味をなさないだろう。
「大尉どうでしょう?これに有効な活用方法はあるのでしょうか?」
ミーティングルームで作業服姿の技術部中尉は、アムロにアーマードパックの技術資料を載せたタブレットを渡す。
「……バトロイド形態で近接武器が無い。重力下での戦闘をメインと考えられているが、重量が倍に跳ね上がる。スラスターで補っているが、旋回能力がかなり落ちる。歩く砲台と言ったところか……デストロイドで事が足りる。デストロイドモンスターの方がよっぽど有効ではないのか?」
アムロが言っている事はまさしくその通りだった。重火力の人型形態はデストロイド系のマシーンが担っている。わざわざそこにバルキリーを近づける必要性はほとんどない。
「やっぱりそうですか。大尉でもこれの運用方法は見つからないと」
「そうだな。まだ、これがガウォークかファイターでの運用が可能であれば、評価は違っていたが……、せめて旋回能力と機動力を確保できる常時ホバーが可能な状態であればな……武装の殆どが弾数が極端(1発)に制限されるミサイルなのも痛い。けん制の為の中又は近距離の兵器も欲しい。あとは超接近戦用の武装も必要だろう」
「なるほど参考になります!ホバーに中近距離兵器!接近戦武装!わかりました!」
「飽くまでも重力下でのという前提はつく。宇宙空間ではファイターの優位性は変わらない。バルキリーは可変戦闘機との位置づけだがやはりメインはファイターだ。それにどんな戦闘場面だろうと優位性を損なわない事を可能にしたのがあの3段階変形だろう」
(わざわざ最大の利点である加速と旋回能力などの俊敏性や機動力を削る方向では、バルキリーを活かしきれない。これは企画倒れだろう。まるでモビルスーツ黎明期の様だな。あの時は特にジオンは様々なバリエーションのモビルスーツを作成し、有用性の無い物は日の目も出ずに淘汰されていった。この重装甲・重火力兵器パーツがモビルスーツに対してのコンセプトであれば間違いではない。むしろ正解でもあった。装甲強化、火力増強といったアーマー系の装備パッケージは多数作られた。しかし、大艦巨砲主義をモビルスーツに求めすぎると、機動力との兼ね合いが上手くいかず。非常にバランスの悪い機体となる。そこで現れたのがMAだ。戦艦と戦闘機、モビルスーツの利点をうまく融合させたものだ。但し、あまり詰めすぎるとパイロットの負担過多になり、適正パイロットの選出が困難なものにもなる)
「レイ大尉!非常に参考になりました!」
何故か満足そうに頷く技術部中尉。
「……中尉、バルキリーの追加武装パッケージはこれ以外にもあるのでは?」
アムロはこの技術資料を見て、バルキリーの製作段階で既に追加武装パッケージの構想はあったのではないかと考えに至り、目の前の中尉に聞く。
「はい、高加速による一撃離脱をコンセプトに機動力、重武装のパッケージや機動力・持続力を高めたパッケージ計画もありました。しかし、こちらの方はマクロスが飛ばされた時点では試作品も出来上がってない状態で、もしかすると地球では既に完成品が出来上がっているかもしれません」
「なるほど、そちらの方がかなり有用そうだな。計画段階では三段階変形に対応していたのかい?」
「はい、ただバルキリーの複雑な変形コンセプトに対応するために難航していたようで…それで開発に遅れが出ていたようです」
「なるほど」
「次世代機であるVF-2やVF-3の試作機であるVF-X-2とVF-X-3はほぼ完成と噂がありまして、今頃調整段階でしょう。多分ですが設計思想を見るにVF-3が採用されるんじゃないでしょうか。我々が地球に戻る頃には、正式採用が決まり量産に向け動く頃だと」
「その機体を見るのにも、マクロスで地球に帰らなければな」
「大尉とフォッカー少佐がいれば大丈夫ですよ」
10月初旬、マクロスは火星圏到達。
火星には幾つか地球統合軍の基地が存在する。
無人探査機により得た情報では、火星基地は攻撃に晒され壊滅状態。もしくは脱出しもぬけの殻となった基地も存在する。
更にバルキリーの偵察隊を送り込み、基地周辺を探索。
敵影は発見されず。マクロス上層部は火星表層には敵がいないと判断する。
マクロスは補給を行うために、攻撃被害の少ない基地から物資を運び出す事を試みる。
火星圏の宙域では散発的な戦闘が繰り返し行われたが、敵が引いたのと同時に、火星へと降り立ったのだ。
火星に降り立つ半日前。
「少佐、これは敵の罠だ」
アムロはマクロスが火星に降りたつことをフォッカーに聞き、間髪入れずにこう返事を返した。
「偵察も隈なく行ったが敵は見つからなかった。その上での判断だ。しかし俺も罠の可能性が十分にあると感じている。マクロスをおびき寄せるためのな」
敵の存在が全く感知できなかった事に、フォッカーは逆に危機感を感じていた。
土星での戦闘で、明らかに相手の索敵能力と隠密行動能力が高かった事は周知の事実であった。
「だったら……」
「上の決定だ。参謀部も艦長も罠の可能性を十分承知している。……物資不足が深刻だ。特に生活物資などが不足している」
確かにそうだった。マクロスは式典の最中に宇宙に放り出されたのだ。長距離航行の十分な準備が整っているはずが無い。しかも5万8千人の民間人を緊急収容してる状況だ。同時に飛ばされた基地や街から物資などを取り入れたからといって、マクロスの元々の許容量を優に超えている。この8か月間何とかやりくりしていたが、もはや限界が近かったのだ。
「……そうか」
「罠だろうが突破しなければならない。参謀部も罠にかかったふりをし、反撃する方法を模索しているが、やはり索敵能力に歴然とした差がある。今も必死に戦術を練っているところだが難航してる。最悪出たとこ勝負となる可能性もある。その時は俺達で敵の奇襲なりトラップなりを一早く察知して対処するしかないだろう。そのためにお前に相談に来たんだ」
まさしく、これはゼントラーディ軍のブリタイ艦隊が敷いた罠であった。
火星圏に近づくにつれ、散発的な攻撃が行われたのは、地球一直線へのルートを阻害し、火星圏へと誘導するためであった。
そして、破壊が少ない基地に補給することを見越して、トラップを仕掛けたのだ。
敵は、マクロスが基地の付近に到達するとマクロスの重力制御装置を阻害させる特殊な波長を放出する戦術兵器を地中に埋め、マクロスを地上に釘付けにし、そこを一気に叩く算段であった。
「……わかった。……少佐。俺に考えがある」
マクロスは火星の大気圏に突入し、目標基地手前20㎞に到達。
結局、参謀部も有効な戦術を練る事が出来ず、出たとこ勝負となった。
勿論伏兵が潜んでいる可能性のある地点などはピックアップし、それに対応する準備も整えてはいたが十分とは言えない。
ところどころに無人偵察機を飛ばし、周囲には十分警戒しマクロスは基地に近づく。
補給も短時間で行わなければならない。
補給中のマクロスが、火星宙域に展開する敵艦隊に火星に降りて来られて一斉攻撃を受ければお終いだ。そちらにも十分注視している。今の所、火星宙域では動きは無い。
逆にそれが、敵が基地周辺に罠を仕掛けているという可能性を非常に高めていた。
アムロはアーマードパックを装着したVF-1S改、通称アムロ専用アーマードバルキリー改に乗り込み、マクロスの艦橋に立っていた。
「やるしかない。……敵を感じろ。マクロスに対しての敵意を感じるんだ……」
(サイコフレームが無くともやって見せる。一年戦争のア・バオア・クーではあれ程感じたじゃないか)アムロは一年戦争最終決戦の場で、ニュータイプ能力を最大限に発揮し、ア・バオア・クー内で戦っていた味方を全員、死地からの脱出に導いたのだ。まるでア・バオア・クーで起きてる状況や未来に起きるだろう事象がすべて見えていたかのように……。
アムロは心を落ち着かせ、自身のニュータイプ能力を信じ覚醒させる。
「……………そこか」
ブリタイ司令に命令を受けたカムジン機甲師団長が、戦闘ポッド隊を引き連れ火星地表の切り立った深い崖の谷間に身を潜ませ、奇襲のタイミングを計っていた。マクロスが基地付近に到達すると重力制御装置をかく乱させる兵器を作動させ、マクロスが動けなくなったところを多量に引き連れ各所に潜ませた戦闘ポッド隊で叩く算段だ。
「ふん。のろのろと。さっさと罠に嵌れ」
カムジンはマクロスが基地20㎞手前で急に減速したことに苛立ちを感じていた。
「隊長……なんか、敵の戦闘ポッドが一機先行してこっちにくるぜ」
「はぁ?そんなもん唯の偵察だろ?ジッとしてろ。レーダー阻害装置を作動させてんだ。動かなきゃバレねーよ」
「でも、変なんだ。そいつ、真っすぐこっちに来るような」
「偶然だ偶然。いちいちそんなもんに……ん?なんだ?」
間近に迫る一体の敵機に流石のカムジンも違和感を感じ出す。
しかし、それは既に手遅れだった。
アムロの専用アーマードバルキリーはマクロスから飛び降り、一気に加速する。
アーマードパックの脚部にはホバーシステムと後部ジェットエンジンが搭載されていた。
バルキリーは前傾姿勢のまま、地表を滑るように突き進む。
デストロイドモンスターに搭載されていたホバーシステムを小型化改良し、アーマードパックに追加したのだ。これで地上における加速性能、旋回能力などの機動力と運動性が確保されたのだ。
アムロはニュータイプ能力を覚醒させ敵意を感じ、すべての伏兵の位置を確認。
先ずは、奇襲を兼ね敵意の中心を叩くために単独で突撃を敢行したのだ。
そして、敵戦闘ポッドの戦団が潜む崖の谷間へと到達すると同時にミサイル群を全弾発射、広範囲に崖の谷間の壁面を巻き込む形で爆破破壊する。
崖の谷間に身を潜めていたカムジン率いる敵戦闘ポッド部隊は、ミサイルの直撃やクレバスの壁面から崩れ落ちた岩などで戦闘不能にされていく。
その様子を確認したマクロスはアムロが示した他の敵伏兵位置へとミサイルを一斉に放つ。
それと同時に待機中のバルキリー部隊は次々と飛び立ち、ミサイルが命中した敵伏兵位置へ向かい、混乱した戦闘ポッド部隊を討ちに行った。
アムロは破壊され土煙が立ち込めるクレバス一帯から抜け出してきた戦闘ポッドを、両脇に抱えている専用大型バズーカーで次々と吹き飛ばす。
さらにアムロの専用アーマードバルキリー改に何体かの戦闘ポッドが突っ込んでくる。
アムロは右手のバズーカーを腰のパーツに吊り下げ、肩口からサーベル状の物を取り出し、構えると刃先が伸びキーンと高音が鳴り響く。
現在のところ装備自身が大型になるのと、刃先方向でしか断ち切ることが出来ないのと、刀を扱う技量が必要だという難点がいくつもあるが、実戦に耐えうる仕上げとなった。
アムロの戦闘センスとホバーシステムの旋回能力も相まって、近づく敵を次々と両断していく。
上空から迫る敵には左手のアーマー装備前腕部から三連装ガトリングが展開し、敵を撃ち抜き、撤退する敵をバズーカーで仕留める。
カムジンが直接率いていた120機の伏兵戦闘ポッド部隊は、アムロの専用アーマードバルキリー改たった一機にカムジンと2体を残し壊滅。
カムジンは這う這うの体でその場から脱出したのだった。
そして、他の敵奇襲部隊もマクロスのミサイルとバルキリー部隊に攻撃を受け潰走する。
こうして、奇襲部隊を退けたマクロスは罠を警戒しながら基地近くに停泊。デストロイドや車両等を多量に投入し、基地から物資を運び入れる。
これで、しばらくは地球までの物資不足に悩まされる事は無いだろう。
(何とかなったか……やはり索敵能力の違いは痛いな。今回は相手の敵意が強かったがため見つけることが出来たが……)
アムロは一度マクロスに戻り、補給を受けていた。
アーマードに搭載されたミサイル群32発は一発限りの武装だ。
まさに、今回のような使い方のような先制一斉攻撃が理想といっていいだろう。
その後の戦闘持続能力を高めるために、左前腕部の二連装ミサイルランチャーをガトリング砲に載せ換え、バズーカー若しくはライフルを最大3門背中と腰口装着できる様に改装を施したのだ。
「大尉!見事なご活躍でした!その…アーマードパックの具合はどうでしたか?」
デッキ休憩場で栄養ドリンクを飲むアムロにあの技術部中尉が声を掛ける。
「上出来だよ中尉。よくやってくれた」
(アーマードパックはなんとか使えるようには仕上がった……ホバーシステムは上出来だ。やはりビームサーベルは無理か。だが高周波ブレードは、グフやザクのヒートソードやヒートホークよりも十分に使えるレベルだ。技術部も頑張ってくれたようだ)
マクロスの技術部は僅かな時間と少ない資材で創意工夫をし、アムロが提示した設計思想を基にいろんなものを流用し、出来る限り要求に近づけ、実現させたのだった。
結局アムロは117機戦闘ポッドを撃墜。
まあ、半分以上からは初撃のミサイルと崖の岩肌に押しつぶされて撃沈したんで……
いや、それでもこれはやりすぎだった?