アムロ再び戦場に立つ。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
……すみません。徐々に…徐々に返信させていただきたく……
誤字脱字報告やご指摘ありがとうございます。非常に助かってます。


1回1回完結のつもりで書いてますが……なんか、全然進んでない気がします。



アムロ敵に恐怖される。

11月初旬

マクロスは冥王星に飛ばされてから9カ月、遂に地球圏に到達する。

 

しかし、地球に無事降り立つには数々の困難が予想されていた。

地球圏到達直後の作戦会議では……

 

「敵味方の状況はどうだ?」

マクロス艦長ブルーノ・J・グローバル准将は会議出席者を見渡し、問いかける。

 

「地球圏における敵1000m級以上の艦数は確認できただけで300隻です。予想では1000はくだらないと考えております。また、地球軌道上の友軍は確認できていません。最悪全滅してる恐れがあります」

参謀部長兼副艦長が答える。

 

「うむ。このマクロス以外では奴らの攻撃には耐えられないだろう……1000か、かなり厳しい状況だな」

そもそも地球統合軍の宇宙艦隊は設立間もない艦隊だ。

地球が保有する宇宙艦艇は150艇有ればいい方だった。さらに戦闘に耐えうる戦闘艦艇となるとその半分にも満たない。確認できた敵艦艇数だけでも優に5倍以上の戦力差がある。

しかも、マクロスのような超大型戦艦は他に無い。

地球が本格的に宇宙に進出し始めて、それほど時が経っていなかった。

宇宙機動艦艇などの技術革新はここ10年の出来事である。

そもそもSDF-1 マクロスは9年前に地球外から飛来した戦艦を地球人が使えるように改装したものに過ぎない。

その飛来した戦艦の未知の技術を解析し、今の宇宙艦艇やバルキリーの基礎技術が出来上がったのだった。

 

脆弱な友軍宇宙艦隊は既に壊滅しているだろうと予想はしていた。

 

 

「地球…統合軍本部との連絡はどうなっている?」

グローバルは次の議題に移った。

 

「各種通信手段を用いておりますが、敵による通信妨害の影響で地球との連絡は依然と付きません」

通信部将校がその問いに答えた。

 

「やはりそうか……現在の地球の状況はわかるか?」

 

「超望遠カメラによる目視又は各種分析を行った結果、地球内では目立った大きな被害は見られないとのこと」

参謀部次官がそれに答える。

 

「ふむ、それは朗報だな。そうか…地球は無事か……我々が困難を乗り越えここまで来た甲斐があったというわけだな。……月面基地の様子はどうかね」

 

「はい、火星とは異なり、月面基地の幾つかは現在も稼働してる可能性が高いと判断しております」

 

「……ふむ。奴らは何故、月面基地を攻撃していない?いや、我々が冥王星に飛ばされて9カ月。奴らは何故、地球に対して侵略行為を行っていないのだ?地球と奴らは何らかの交渉を行ったと見た方がいいのか?」

グローバルは火のついていないパイプを口にくわえながら、考えにふける。

 

「艦長、その可能性については疑問があります。現在もマクロスは攻撃を受け続けております」

 

「ふう、奴らがマクロスだけを狙っていたとすればどうだ?」

 

「それは………」

参謀部次官はグローバルの問いの答えに窮す。

グローバルが問いかけた内容はマクロスにとって最悪のシナリオだからだ。

ゼントラーディ軍は地球圏に現れた際、マクロスだけを狙って攻撃を仕掛けて来た。

9年前、マクロスを地球に送り込んだ何者かに仕掛けられたブービートラップが発動し、マクロスキャノンが地球圏に現れたゼントラーディ軍に対し放たれ、大きな被害を与えたという事実もある。

 

もし、ゼントラーディ軍の狙いがマクロスだけだとすれば、地球側はゼントラーディ軍との和平交渉が成立する可能性がある。

その場合、マクロスは地球から見捨てられた事を意味する。

 

「艦長、現段階ではその可能性については語らない方が良いでしょう。士気にも関わりますぞ」

参謀部長兼副艦長がグローバルをたしなめる。

 

「ふむ、何れにしろ、現状況が把握できていない事には変わりないか、情報も無い状態で無闇に地球に降り立つこともできまい。なんとしても地球の参謀本部と連絡をつけなくてはなるまいよ」

 

「艦長、その事についてなのですが、このほど上がって来た技術部からの新装備が有用と判断し、新たな作戦を立案いたします」

参謀部長兼副艦長が地球との連絡手段が有ると答える。

 

「ふむ。言ってみたまえ」

 

「先行してバルキリーによる月面基地又は地球への単独降下により、直接連絡を取る方法を提案いたします。単純ではありますが、確実性があると判断いたします」

 

「伝令役を直接送るという事かね。確かに確実性はあるが、中世の時代に戻った気分だな。……ただ、そのような事は可能なのかね。その装備とは何かね」

 

技術部将校が挙手をし、グローバルの問いに対し答える。

「それは私から説明いたします。この程、バルキリー用に改良を施しました長距離移動用ブースターが完成いたしました。その結果バルキリーの宇宙空間での航続距離を大幅に伸ばすことに成功いたしました。

単独で星間移動とまでは行きませんが、地球圏内であれば長距離移動が可能です。元々長距離移動用ブースター自体はバリエーションオプション計画として存在し、その試作品はありましたが、レイ少佐の提案再設計により、航続距離が大幅に延び、さらに旋回能力などは大きく落ちますが、超高速スピードを安定して出すことが可能です。また、大気圏再突入だけでなく、理論上は大気圏突破も可能です」

元々バルキリーは単体でも大気圏再突入が可能な程強固な機体であった。一番の問題は宇宙空間での航続距離だった。大気圏では空気を推進剤とするため理論上連続700時間という航行時間を保つことが出来るが、大気が存在しない宇宙空間では、水素推進剤が必要となる。元々アムロは一回の戦闘持続時間を延ばすためにプロペラントタンクを2基取り付ける設計思想を提案していたが、バルキリーは変形機構が複雑なため、難航し実現が困難であった。

色々と検討した結果、設計当初よりかなり小さめなタンクを取り付ける事に……

また、別の運用方法として遠距離での戦闘を想定し、この長距離移動用ブースターを改良したのだった。

長距離移動用ブースターはファイター形態のみでしか運用できない。

バルキリー後部にドッキングさせ、戦闘中や航行中の脱着を可能とし、基本は戦闘宙域前に外し、帰還前に再び装着をするスタイルとなる。

これは初代ガンダムのRX-78シリーズに対応したコアブースターやGアーマーの運用思想をバルキリーに転用したものだった。

 

 

「うむ。確かにその作戦は有用ではあるが……しかし、月面にしろ地球にしろ、敵の警戒網を突破するのは容易ではなかろう」

 

「アムロ・レイ少佐にその任務を任せようと考えております」

ここでバルキリー部隊の指揮官であるフォッカーが挙手し答える。

 

「そうか、少佐ならば……。しかし少佐にはマクロスの防衛に専念してもらいたかったが、致し方が無い。少佐、やってくれるか」

グローバルはフォッカーの横に座るアムロに尋ねる。

 

「任務承りました」

アムロは軽く頷き承諾する。

すでにこの一連の流れは、フォッカーや技術部将校と参謀次官と打ち合わせ済みであった。

アムロ自身、長距離移動用ブースターの改良に携わり、試験を繰り返していた所であった。

 

 

 

長距離移動用ブースターを装着したバルキリー単独による地球への伝令作戦を遂行することが正式に決定され、作戦にあたっての調整が行われる。

大きくは地球に送り届ける情報の選択や、マクロス内で開発された技術試験品の運搬や同行者を搭乗させることが可能かなど……。

同行者や技術試験品を載せるためのバルキリーや戦闘機用の脱出コクピットを強化した運搬用カプセルを長距離移動ブースターのウイング下部、左右の大型ミサイル4連装着アームに1基づつ、合計2基取り付ける事となった。

1基には同行者を一人、もう1基には技術試験品を積むことも決定される。

同行者と技術試験品の選別はこの場では決まらなかった。

 

作戦遂行は3日後と決定する。

その間、アムロは可能な限り、長距離移動用ブースターの調整を行う事になる。

 

 

 

 

この頃、技術部では長距離移動用ブースター以外にも多数の改良装備や追加装備を検討、試験運用を行っていた。

一つは哨戒偵察用の戦闘機ES-11D キャッツアイと哨戒偵察用バルキリーVE-1 エリントシーカーの強化だ。

現状ではマクロスよりもゼントラーディ軍の索敵能力が完全に上回っている状態である。

それを少しでも解消するために哨戒偵察機の運用範囲の強化、さらには現状の索敵能力を大幅に強化改修させる試みが行われていた。

 

もう一つは無人機の運用だ。

元々マクロスの運用方法として、無人戦闘機が先行攻撃を行い、続いて有人機がそのフォローを行う方法が想定されていた。

マクロスに配備されていた無人戦闘機QF-3000E ゴーストは敵の電子妨害(ECM)をも想定して、無線運用ではなく、AIによる自動戦闘が出来る機体として仕上がっていたが、AIが脆弱なため、敵の戦闘ポッドの攻撃に対応することが出来ず、今ではバルキリーの支援攻撃で運用するのが関の山な状態となっていた。

アムロはこのゴーストに着目して、新たな運用方法を模索し、AI周りの再強化、半自動運用の提案を行う。

 

さらにはダミーバルーンのバリエーション強化なども行っていた。

 

 

 

長距離移動用ブースターをドッキングしたバルキリー単独地球降下作戦が決定された次の日。

アムロは巨大な2基のブースターエンジンを搭載した長距離移動用ブースターと運搬用カプセルの調整のため、ドッキングしたアムロ専用バルキリーで長距離試験飛行を行っていた。

 

一方、一条輝のバーミリオン小隊は哨戒偵察用の戦闘機ES-1D2 キャッツアイ改と同じく哨戒偵察用バルキリーVE-1 エリントシーカーの哨戒試験飛行を行っていた。

輝はES-1D2に搭乗、柿崎がVE-1 エリントシーカー、マックスはその護衛と外部からの運用記録を行うため、自らの搭乗機VF-1Aに乗り込み出撃する。

しかし、輝のES-D2の複座席には早瀬未沙が同乗していた。

名目は試験運用状況を確認するのと、哨戒範囲拡大における運用状況の確認をするためという事にはなっているが、発端は輝と未沙の些細な言い争いが原因だったようだ。

輝がいつものように未沙におばさん呼びをしながら、現場を分かってないとか、戦闘に出ていないからそんな事を言うんだ、とかと愚痴を言った事が要因となり、売り言葉に買い言葉でこんな事に。

 

 

 

しかし、そんな中、事件が起こった。

哨戒偵察機の試験運用を行っていた一条輝のバーミリオン小隊が敵襲に遭い、消息を絶ったのだ。

マックスの最後の通信で、ES-1D2が突如として現れた敵部隊に鹵獲され、それを奪還するとメッセージを残して。

 

 

それから2時間。

長距離試験飛行から戻ったアムロだったが、バルキリーの格納庫では……

 

「連れ去られたって事はまだ生きてるってことだ!まだ間に合う!!俺が出る!!」

フォッカーが数人の整備兵やパイロットに掴まれながらも、引きずってバルキリーに乗り込もうとする姿があった。

 

「ちゅ、中佐!やめてください!!参謀部の返答を待ってください!!」

「おい!!フォッカー中佐を止めろ!!バルキリーに乗せるな!!」

フォッカーは2m10cmを超える巨漢だ。数人の人間に押さえつけられたところで物ともしなかったが、続々とパイロット達が集まり、遂にはフォッカーを押し倒す。

 

 

アムロは近くに居た若い整備兵に状況を聞く。

「どうしたんだ。フォッカー中佐はかなり荒れているようだが」

 

「レイ少佐!その…ですね。バーミリオン小隊が消息不明に……どうやら、鹵獲され連れ去られたようなんです。それでフォッカー中佐が自分が出て助けに行くと……」

若い整備兵はアムロに敬礼してから、状況を説明する。

 

「バーミリオン小隊と言えばフォッカー大隊の一条少尉の部隊か、鹵獲とはどういう事だ?あの隊にはマクシミリアン軍曹も居たはずだ。そんな不覚を取るとは思えないが……」

アムロはフォッカーに一条輝との関係を聞いていた。自分の恩人の息子だと…弟のような存在だと。

フォッカーの荒れように納得する。

しかし、輝とマックスというエース級のパイロットが二人も居る小隊だ。

撃墜ならともかく、それに比べかなり難易度が高くなる鹵獲という状態に持って行かれた事に疑問が残っていた。

 

「いえ、哨戒偵察機の試験運用を行っていまして……」

 

「ああ、あの試験運用実験は一条少尉の部隊が受け持っていたのか……なるほど」

現在試験運用用哨戒偵察機の実験機とあって戦闘能力は低い。いくらエース級のパイロットと言えども、まともに戦闘をするのも困難な代物だった。

 

「その……あと、試験運用の確認という名目で早瀬中尉も同乗していたらしくて……」

 

「ふぅ、済まないが俺のバルキリーと長距離移動用ブースター共に燃料を満タンに、バルキリー本体の兵装は専用のB3装備を…直ぐに出られるようにしてくれ」

 

「は、はい!」

若い整備兵は嬉しそうに返事をし、駆け足でアムロのバルキリーに向かっていく。

 

 

「中佐、随分荒れてるようだな」

アムロは多人数に組み敷かれてるフォッカーに声を掛ける。

 

「アムロ!こいつらをどかせるように言ってくれ!」

尚も暴れようとするフォッカー。

 

アムロはフォッカーの耳元に小声でこうささやく。

「……ロイ、俺は今から長距離移動用ブースターの調整運用に再航行する。今回の調整運用はすべて俺の一存で決めることができる。その試験運用場所がどこだろうとな。……たまたま、敵の部隊に遭遇するかもしれない。たまたま捕まった友軍機を発見するかもしれない。そういう事だ。お前は年代物の酒でも用意して大人しく待ってろ」

 

「アムロ……お前」

 

「皆!中佐殿を丁重に独房にでも閉じ込めておけ!」

アムロは立ち上がり、フォッカーを抑えつけてる兵士達に命令を下す。

 

フォッカーは10人がかりで取り押さえられながら引きずられて行く。

「アムロ!!お前!!お前が居ないと作戦がどうなる!!お前をこんな事で死なせるわけにはいかないんだ!!俺が行く!!アムローーー!!」

 

(ロイ、精神的な支柱であるお前が居なかったらどうなる?マクロスは終わりだ。お前の代わりは居ないんだ。それに俺は死に行くつもりは毛頭ない)

 

 

数分後、長距離移動用ブースターとドッキングしたアムロ専用バルキリーは、巨大なブースターエンジンから吐かれる高熱燃焼物の光を尾を引かせながら、マクロスから暗闇の宇宙へと一気に離れて行った。

 

 

 

 

 

 

一方、ゼントラーディ軍に哨戒偵察機を鹵獲され捕まった一条輝、それに早瀬未沙、柿崎速雄はゼントラーディ軍ボドル基幹艦隊所属第67グリマル級分岐艦隊(ブリタイ艦隊)旗艦、通称ブリタイ艦に連れていかれ、ブリタイ司令及び記録参謀エキセドルに尋問を受け、艦内で監禁されていた。

艦内から外の様子を見た未沙と輝達は驚きを隠せなかった。

そこには、宙域を埋め尽くさんばかりに巨大戦艦がずらりと編隊を組んでいたのだ。

その数、2000はくだらなかった。

ここに集結しているだけで2000隻、各宙域に展開している部隊も合わせると3000近くあった。

しかし、これはブリタイ艦隊だけの数だ。現在、ブリタイ艦隊以外にも分岐艦隊が地球圏には存在した。

 

その頃、マックスはバルキリーのまま輝達が鹵獲され移送された戦艦内に潜り込み、さらに現地巨人兵から奪った服を器用にバルキリーに着させ、兵士の態を装い、ブリタイ艦に移動、そして輝達の奪還の機会を伺い潜伏していた。

 

 

第67グリマル級分岐艦隊司令ブリタイ・クリダニクは発令所で記録参謀エキセドルと話し合いをしていた。

『あの兵士を弱体化させる音波攻撃は歌、と言ったか……あのマイクローン達はあれは攻撃手段ではないと言っていた…娯楽だと。娯楽とはなんだ?体を休める事と類義するようだが…理解不能だ。……やはり奴らは』

 

『はい、あのマイクローン達の証言から、プロトカルチャーの可能性がありますな。あるいはその子孫の生き残りであるかもしれません』

 

『やはりな。監察軍が残した戦艦。マクロスと言ったか、あの艦にマイクローン化した偵察部隊を送り込め……もう少し様子を見た方がいいかもしれん』

 

『そのように』

エキセドルはブリタイの命令を実行するために手配を開始する。

 

 

『ん。なんだあれは、デブリではなさそうだ』

ブリタイは艦隊の正面に何やら小さな点のようなものが動いているのを見つける。

 

『高熱源体を確認、こちらに真っすぐ迫ってます。大きさは、小さいです。戦闘ポッドサイズ』

発令員がブリタイに報告をする。

 

『逸れた友軍が帰還したか?』

 

『いえ……これは敵の戦闘ポッドです!ですが今迄に無い反応です!凄まじいスピードで……この艦に迫って来るコースです!』

 

『たった一機でか?』

 

『……後部形状は異なりますが、93%の確率であの艦の戦闘に関わった兵士の間で噂される

呼称名【白い悪魔】ですな』

エキセドルは冷静にブリタイに告げた。

 

『敵のエースか。なぜ単騎だ?なぜこの場所に……まさか、マイクローン共を奪還に?バカな。自殺行為も甚だしい。全艦に告ぐ、前方敵機を撃墜しろ』

ブリタイはそう言って命令を下した。

 

 

 

 

 

アムロは輝達が連れ去られるとすれば、敵中枢艦隊だと予想していた。

マクロスが予想していた敵中枢艦隊の位置と、輝達が連れ去られた地点からシミュレートし、場所を大まかに特定する。

さらに、自分自身のニュータイプ能力を信じ突き進む。

 

「見えた!やはり月の裏側に主力艦隊を隠していたか…しかしなんて数だ。優に2000はある。……ん?中心から前方……何かを感じる。あそこか!」

アムロは流線形の形に展開する大船団を確認。艦隊の中に輝達の居場所を感じ、その方向に向かい、エンジンをフルスロットルに回す。

 

 

 

敵の艦隊の鼻先まで接近した段階で、敵の攻撃が始まる。

「確かにこのブースター、航続スピードは凄まじいが旋回能力に乏しい。この状態では近接戦は厳しい。ならばこのまま一気に行く!!」

各艦船はアムロのバルキリーに向かって弾幕掃射を開始するが、アムロのバルキリーはそのまま艦隊の中へと突入する。

 

艦隊編隊の中に突入すれば、容易に相手は攻撃が出来なくなる。

味方に当たるため、大型ビーム砲やミサイルを無闇に発射できなくなる。

そもそも、この大船団による艦隊編成内に敵が単騎で潜り込んでくる等と誰も想定していなかったのだ。

 

アムロは敵の戦艦からの機銃掃射を予想し、機体を横に回転させながら避け、一直線にブリタイ艦に向かう。

 

アムロは4000m級戦艦である旗艦ブリタイ艦を捉えると、ブースター上部に搭載されてるミサイルポッドから一点集中で小型ミサイルを発射させ、ブリタイ艦の側面一部を破壊し、さらにダミーバルーンを破壊された側面に向かって数発発射、破壊された内部でダミーバルーンが幾重も展開、その中にバルキリーを突っ込ませる。

アムロは突っ込む寸前にブースターを切り離し、バルキリー本体はガウォーク形態に変形、ダミーバルーンで衝撃と速度を相殺すると同時に、バルーンが割れる衝撃すらも利用し、機体をコントロールし、ブリタイ艦内に回転しながら不時着する。ブースターも車輪を展開させながら滑るように不時着する。

まるでプロのスタントマンがスピードに乗った車をブレーキ一つで、数センチ単位の縦列駐車を実現させるが如き神業だった。

 

アムロが不時着した場所は広い空間ではあったが、何の施設かは不明だ。

恐らく兵士の臨時待機場所か何かだったのだろう。

 

暫くすると、マックスの敵の戦闘服を着たバトロイド形態のバルキリーが通路から現れる。

まるで、示し合わせたかのように……

しかもだ。その敵戦闘服のポケットには輝や未沙、柿崎の顔が覗かせていた。

マックスはどうやら、輝達を監禁場所から無事救出したようだ。

 

「マクシミリアン軍曹!よくやった!直ぐに脱出を図る!3人をそこのブースター底部にあるカプセルに!それと軍曹!今から送るデータを軍曹のバルキリーにインストールしろ!そこのブースターの制御プログラムだ。やる事は一つ、プログラムをインストール後、軍曹はそのブースターとファイター形態でドッキング。俺が敵を引き付けている間に、一気にこの地点から、5.25.120方向に向かって脱出しろ!!タイムリミットは2分だ!!いいな!!」

アムロは短距離通信でマックスに一気に伝える。

アムロはマックスが輝達を救出し、この場所に到達することがニュータイプ能力で見えていたのだ。

 

「え?なぜレイ少佐がここに……どうやってここが、いえ!了解しました!!」

マックスはアムロのバルキリーが目の前に存在するのとアムロの声を聴いて、夢でも見ているような気分になっていたが、直ぐに頭を切り替え、作業に入って行く。

輝や柿崎、未沙にしろ同じく驚きを隠せないでいた。

 

アムロは周囲を警戒し、マックスは粛々と作業を行っていく。

 

その間、ブースター底部にあるカプセルポッド前で柿崎が何か叫んでいた。

「少佐~!!片方のカプセルが開かないです!!置いてけぼりは嫌ですよ~!!」

 

「一条少尉と柿崎伍長は片方のカプセルの中に!狭いが我慢してくれ!早瀬中尉は俺のコクピットだ!」

アムロは男性パイロットとしてはかなり小柄な方だ。アムロで身長171cm、マックスが181cm、小柄な輝でさえ175cm、フォッカーが217cmと……バルキリーのコクピットは元々大柄なフォッカーでも窮屈だが操縦できる空間を確保してあった。

アムロはガウォーク形態で未沙を手に乗せ、コクピットに誘導する。

 

「早瀬中尉、すまんが我慢してくれ」

 

「助けに来ていただいてありがとうございます少佐……それで、その、どこに……」

 

アムロはコクピットシートを最大限に後ろにさげ、自分の膝の上を示す。

「礼なら後でいい。頭は俺の頭の横にし、後ろを向く感じだ。体は出来たらしがみつく体勢で足は左に揃えてくれ。右のコンソールパネルには触れないように、早く頼む」

 

『少佐準備できました。何時でも行けます』

アムロの下にマックスから通信が入る。

 

「早いな軍曹。流石だ。こちらももう少しだ」

アムロはそう言いながら、躊躇気味にしてる未沙を強引に引っ張り、お姫様抱っこのような体勢にさせ、コクピットを閉める。

「きゃっ」

未沙は思わす叫ぶ。

 

「よし……こちらも準備OKだ。マクシミリアン軍曹!出ろ!」

アムロはそう言いながら、通路から現れたゼントラーディ軍の兵をガンポッドで撃ち抜く。

 

マックスが長距離移動用ブースターを一気に点火させ、飛び出していく。

アムロもその後に続き、ファイター形態で飛び出す。

 

マックスが上方に加速していく中、アムロは敵を引き付けるためブリタイ艦隊2000の大船団の中を縦横無尽に飛び回る。

敵の戦闘ポッドの大部隊があちらこちらから現れるが、アムロは敵戦艦や他の戦闘ポッド部隊を盾にしながら悉く避け、敵に頭を抑えられないようにしていた。

 

アムロのバルキリーはまるで、無人の荒野を駆け回っているかのようだった。

 

アムロはマックスのバルキリーが大船団を抜けたのを見計らって、自らも脱出していく。

戦闘ポッドはいくらアムロを追っても捉えることが出来ない。

遂には敵はアムロに一発も当てることが出来なかった。

 

その間、敵は戦闘ポッドを24機撃墜、戦艦中破1の被害を被った。

被害としては少ないが、それよりも敵兵の精神に大きなダメージを植え付けて行った。【白い悪魔】の恐怖を……

 

 

 

『あれがカムジンが手も足もでなかった白い悪魔か……たった一機で我が2000の艦隊を抜けていくとは、凄まじい戦闘能力だ。あれはプロトカルチャーの真の能力なのか?あれほどの手練れは我が艦隊には………ラプラミズのエースのミリアか……』

ブリタイは艦隊を抜けていくアムロのバルキリーを、正面ディスプレイで確認しながらそう呟いていた。

 

 

 

 

 

アムロのバルキリーは途中で燃料切れを起こし、慣性移動でマクロスへと向かう。

しかし、それほど時間が経たずして、フォッカー率いる救援部隊の迎えが来て、回収される。

 

 

戦闘中、恐怖で叫びたい心をグッと堪え、アムロに終始しがみついたままの未沙は……戦闘宙域から抜けた後も一言も言葉を発せず、その体勢のままであった。

未沙の顔がずっと真っ赤であったのをアムロは知る由もなかった。

 

 




設定は劇場版とテレビ版を混ぜこぜになった感じです。
というわけで……脱出劇でした。
そういえば、柿崎君と一条君は狭いカプセルの中で……どうなった?
まあ、一条君にはミンメイちゃんが居るんで……

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