アムロ再び戦場に立つ。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
徐々に……徐々に返事させていただきたく><ごめんなさい。
誤字報告ありがとうございます。非常に助かります。

では今回は題名通りで……



アムロ地球に再び

ゼントラーディ軍の大船団から輝達バーミリオン小隊と未沙の救出に成功したアムロは、予定より1日遅れで長距離移動用ブースターで地球へと向かった。

 

無事帰還した輝や未沙、アムロが持ち帰った情報により、ゼントラーディ軍について幾つか判明したことがあった。

月の裏側に戦闘艦船2000隻を有する敵大船団が存在すること。

敵の巨人種はこちらの言語をある程度把握していること。

娯楽等の文化的な概念が無いことから、文化形態がかなり異なると推測されること。

女性を見かけなかったこと。未沙と輝達男女同じ場所に居た事に酷く驚いていた事から、女性は存在するが一緒に生活を営んでいない可能性があること。

さらに元々、巨人種の死体から得た血液サンプルなどにより、DNAが地球人類とほぼ一緒であることが判明していた。それが意味することは巨人種と地球人類のルーツが同じである可能性が非常に高いという事が分かっていた。

それは、人類誕生の秘密に迫る内容だ。

もしかすると地球で生命が誕生し、進化し、人類が生まれたという前提が覆る事になるのだ。

人類は地球外から来たと……

興味は尽きないが、これらの事は後は学者に任せればいい話であった。

目前の問題は今の地球が総力を挙げたとしても、ゼントラーディ軍と技術面においても、艦隊保有数を見ても明らかな戦力差があり、現状を打開する見込みが薄いという事だ。

 

マクロス上層部は未沙からの意見具申もあり、人類存続のため和平への道を模索しだしたのだ。

 

 

アムロが地球に届ける情報には上記の情報も含まれていた。

また、同行者一名は参謀部次官の田中中佐が選ばれる。

未沙は帰還後直ぐに願い出たが、却下されていた。

 

 

 

「マックス。飯行こうぜ!隊長殿がミンメイちゃんところで奢ってくれるってよ」

 

「僕は遠慮させてもらうよ、柿崎君」

 

「またシミュレーターで訓練か?敵さんの所から帰ってからずっとそれだな」

 

「思うところがあってね」

 

哨戒任務を終えた柿崎はマックスを食事に誘うが、あっさり振られる。

マックスは柿崎が言うように、敵の大船団からの帰還後、時間が許す限り、シミュレーターでの訓練や情報解析を行っていた。

マックスはあの時見た光景が脳裏から離れなかった。

敵の大船団にも驚いたがそれではない。

敵の大船団の中を縦横無尽に駆け回る真っ白なバルキリーの姿を……

 

情報部と技術部の許可を得て、アムロの戦闘データを閲覧し、毎日目に穴が開くほど繰り返し繰り返し見ていたのだ。

特に、アムロのバルキリーの各種カメラから捉えた映像を一つ一つ自ら解析していた。

(……早い。このタイミングで旋回を……僕のタイミングより0.4秒早い。……この段階では少佐の機体のロックオンアラームすら鳴っていない。後部カメラが敵を捉えた瞬間に……うん、なるほど、敵戦闘ポッドのあの挙動を一瞬で捉えての回避行動か……)

 

(射撃が正確だ。相手の動きを完全に読んでるかの様に。しかも無駄弾が殆どない。ガンポッドですら……少佐の操縦桿捌きを見て見たいが……早瀬中尉はあの時、同乗していたから見ていたのかもしれない。聞いてみようか)

 

(操縦技術が桁違いだ。見れば見るほどその凄まじさを実感する。一種のアートと言っていいのかもしれない……今の僕では、レイ少佐の動きにはついて行けない。もしレイ少佐と対峙したならば、何秒持つだろうか?僕は早い段階でこの人に出会えて幸運だった)

 

(少佐の動きは、背筋が凍るような物が幾つもある。……どう分析してみても証明できないような動きが……俗に言う経験による勘なのか……しかし、まるで未来が見えているかのような……アムロ・レイ少佐。あなたは一体――)

 

マックスはアムロの戦闘シーンを脱出時に少し見ることが出来た。

その時の光景がマックスにとってあまりにも衝撃的だったのだ。

アムロと今の自分との戦闘技術の明確な差を感じ、受け入れていた。

受け入れることで、マックスは自分に足りない物を補おうとより一層訓練に打ち込む。

アムロに対し畏怖を抱きながらも、明確に目標となる人物が現れた事に喜びをも感じていた。

 

 

 

 

アムロが無事地球へ降り立ち、地球統合軍極東方面基地にたどり着いた頃。

マクロスは新たな敵と出くわしていた。

 

「艦長。敵戦闘ポッド、いえ新型兵器1機が前線を抜け高速接近中、防衛中のフォーク小隊、ラインバルト小隊を沈黙させ、こちらの危険宙域まで到達してきます」

 

「敵の新型か!!人型だと!?マクロスに近づけさせるな!」

 

「デストロイド隊、マクロス左後方ブロックから対空防御出撃願います」

 

「バルキリー隊救援願います。マクロス左後方から敵の新型兵器が高スピードで接近、マクロスの危険宙域まで突破されました」

 

マクロスの発令所ブリッジでは、高速で接近する敵1機の対応に追われていた。

それは今迄のゼントラーディ軍の戦闘ポッドとは全く異なる形状をしていた。

人型を取り、ひと昔前の宇宙用の作業服にも似ていた。

全身赤一色のその兵器は、ゼントラーディ軍ラプラミズ直衛艦隊所属ミリア・ファリーナが駆るバトルスーツ、クァドラン・ローであった。

このバトルスーツの扱いは非常に複雑かつ繊細なため、整備も困難であり、運用が非常に難しい兵装であるため一部のエースなどにしか配給されていない代物である。

また、ミリア・ファリーナはゼントラーディ軍ボドル基幹艦隊の中ではエースのミリアとして名前が通っていた凄腕のパイロットだった。

 

「敵人型兵器、なおも侵攻中、左後方デストロイド隊2部隊全滅!!マクロスとの接触距離です!!」

 

「敵の狙いはマクロスのエンジンか!?くっ!!バルキリー隊はまだか!!」

グローバルは焦る。たった敵単騎でここまで接近を許した事がなかったからだ。

 

「もう間もなく到着です……あっ、艦長。敵人型兵器、撤退していきます」

 

「何!?弾切れか、はたまた単騎でのこのマクロス撃墜は困難とみて撤退したか、何れにしろ助かったか」

 

「敵侵攻部隊も次々と撤退していきます。バルキリースカル大隊は追撃戦に移行します」

 

「……早瀬中尉、今の赤い人型兵器一体で味方の被害はどのくらい被った?」

 

「今判明しているだけでデストロイド16機、バルキリー11機撃墜されました」

 

「間違いなく敵のエースだな。……レイ少佐が居ない間にこのような敵に出くわすとは。……マクロスのダメージコントロール。周辺宙域の警戒を怠るな」

グローバルは帽子を深くかぶり直し、シートに深く腰を沈める。

 

 

しかし、ミリアは弾切れ等の理由で撤退したわけではない。

ミリアの目的はマクロスに接近し、マイクローン装置で人型サイズとなったブリタイ艦隊の偵察兵を乗せたカプセルをマクロス内部に送り届ける事だった。

ミリアはマクロスの表層の一部を破壊し、見事カプセルを内部に置いて行く事に成功させたのだった。

「ふん。白い悪魔とやらには出会えなかったな。奴は必ずこの私が倒し、腑抜けたブリタイ艦隊の男共に真のエースとはどういうものかと思い知らせてやる」

 

地球にはゼントラーディ軍の分岐艦隊が2部隊存在していた。

主に地球を包囲していたのが女性だけの艦隊ラプラミズ分岐艦隊。太陽系全体を幅広く、制圧監視、さらにはマクロスの監視を行っていたのが男だけの艦隊ブリタイ艦隊だ。

ゼントラーディ軍は男女を完全に分けて軍を運営していた。

いや、男は生まれてから女とは一生接触がないことが殆どである。

戦闘兵器として生まれた彼らは、生まれてから死ぬまで男女の交わりがなく生涯を終えて行くのだ。

 

こうして、男女の艦隊が同じ作戦域に存在する事自体稀な状況であった。

 

 

 

 

現在、マクロスは知らずの内にゼントラーディ軍偵察兵3人の侵入を許した事になる。

しかし、この事はマクロスにとって決して悪い状況へと誘うものではなかった。

 

 

 

 

 

 

一方、地球に到着したアムロと参謀次官の田中中佐は、基地内で4日間待たされ、ようやくとある将校と接触することが出来た。

 

 

「地球統合軍中将、アラスカ統合軍総司令部提督の早瀬隆司だ」

 

「SDF-1所属参謀部中佐、田中雅也です」

「同じくSDF-1所属作戦部少佐バルキリーユニコーン部隊隊長アムロ・レイです」

 

会議室に通された田中中佐とアムロの前に、統合軍中枢の一人である早瀬中将が待ち構えていた。

早瀬中将は未沙の父親で、たった一人の肉親でもある。

今のアムロには知る由もなかった。

 

「まさか、マクロスが生きていたとはな。こうやって地球圏まで戻って来たのは良かったのか悪かったのか……君らからの提供されたこの9カ月間の交戦記録や情報は実に興味深い。映像記録だけでも膨大であり、まだまだ吟味する必要がある。これでも早くこの場を設けたつもりだ。今もこの情報を巡って、アラスカの統合軍本部では地球を包囲している異星人軍に対し、主戦派と和平派の間で論争が続いているだろう」

 

「はっ、してマクロスの帰還は……」

 

「ふむ。主戦派が押している状況だ。マクロスだけが敵視されているという認識は無い。衛星軌道上友軍艦隊は奴らに全滅させられ、残った艦隊は地球で待機していた30と月に残した10のみだ。さらにマクロスが消えてからの9カ月、奴らは地球への直接攻撃はほぼない。しかし最初期に奴らにとって威力偵察ぐらいのつもりなのか基地の何か所かはいとも簡単に潰されたよ……今の所、一般市民への被害は極微量だ。……それもこの状態がいつまで続くかはわからない。和平派の主張を取るとしてもだ。こちらにもある程度の優位性を保つ必要がある。主戦派、和平派共にマクロスを、奴らに唯一対抗できる手段として、手元に置いておきたいのだよ」

 

「という事は、マクロスの帰還は……」

 

「許可しよう。但し、マクロスは太平洋、ウエーク島南200㎞地点だ。マクロスが敵に狙われてる事実は覆しようがない。一般市民には、異星人軍との戦闘状態であるという認識を受けたくないのでね」

 

「ありがとうございます。ではマクロスに収容した市民にはどのような対応を」

 

「それは追って知らせる」

 

こうしてマクロスの沙汰を言い渡されたのだ。

アムロはこの間、口を挟むことなく無言で頷いていた。

内容はとても歓迎しているように見えないが、とりあえず地球に降り立つことが出来たという事で、田中中佐は安堵の息を吐く。

 

「ところでレイ少佐」

早瀬中将はアムロに向かって語り掛ける。

 

「はっ」

 

「君の戦果もこのマイクロチップに収められていたよ。マクロスでの活躍はまさに統合軍エースにふさわしい。グローバル准将からも信頼が厚いようだ」

 

「はっ、恐縮です」

 

「数々の開発提案に宙域における戦略・戦術策の立案まで、各方面においても見事な働きぶりだ」

 

「恐縮です」

 

「ふむ、君の出自には少々疑問を懐いているが……今の状況ではそんな事は気にしてはいられない。そうだろ?……君はこのまま極東基地に留まるように」

 

「……いえ、私はマクロスに返答を持ち帰らなくてはなりません」

 

「いや、それはできない。優秀なバルキリー乗りはすべてマクロスに持って行かれたか、宇宙艦隊と共に宇宙の藻屑となった。君には極東基地のバルキリー部隊の指導官として辞令を出している。君がマクロスで鍛えたユニコーン部隊だったか、アレに劣らない部隊を作ってくれ。スーパーパックの実戦テストも兼ねてな。さらにだ。バルキリー開発の第一任者であるタカトク大佐が非常に君に興味を持っていてね。今開発中の新型バルキリーに意見が欲しいそうだ。君が提案し再改修を施した長距離移動用ブースターか、理論上では単独で大気圏突破も出来るそうだね。素晴らしいものだと、技術部のトップが褒めていた。極東本部の開発研究部と作戦部にも顔を出してくれ、君と兵器開発と宙域での戦術論を語りたいそうだ」

 

「いや、しかし」

 

「少佐……これは命令だ。統合軍士官ならば当然受諾すべきだ」

早瀬中将のこの言い回しは、アムロの出自に対して明らかに疑っているようだ。

当然の事だが、地球統合軍のデータベースにはアムロ・レイなる人物は存在しないからだ。

ただ、グローバルから元直属の上司である早瀬中将宛にアムロについては信頼がおける人物であり、マクロスに、ひいては地球統合軍に無くてはならない人物であることを書状にしたためられてあった。

出自を不問にするから素直に命令を聞けと早瀬中将は言っているのだ。

 

アムロの処置に関して、色々な派閥による思惑が見え隠れしていた。

アムロが非常に優秀なパイロットであることは勿論だが、アムロが地球統合軍内のどの派閥にも所属していない佐官であるため、各方面の上層部としては自らの管轄下に置きやすい。

技術部等は純粋にアムロの提案力に目をつけ、より良い物を開発したいという思いもある。

また、マクロスの戦力一点集中を危険視する勢力からすれば、エースパイロットを引き抜くことで、戦力分散を図る事が出来る。

さらにはマクロスの存在を良しとしない勢力からすれば、マクロスからエースパイロットを引き抜くことで、マクロスの戦力低下を狙い、地球降下前に撃墜されれば良いとまで考えていた。

 

「中将。失礼ながらレイ少佐には一刻も早くマクロスに戻り、この事を伝えていただきたく。それだけじゃありません。少佐はマクロスには無くてはならない人材です。なにとぞ」

田中中佐は早瀬中将にアムロをマクロスに帰らすように意見する。

 

「相当信頼が厚いようだな少佐。…田中中佐。その懸念には及ばんよ。地球の我々も手をこまねいていたわけではない。大出力レーザー通信を開発、設置し、既に月基地とは連絡が付けられる状態なのだよ。マクロスももう少し地球軌道側によれば、通信可能状態になる。

現在の進行距離であれば、後1、2日の内に通信可能だろう」

 

「……」

アムロはこの世界に来てまで軍部内の政治に利用されるのは不本意でしかない。

そして、アムロにとって守るべきはこの世界の地球ではなくマクロスであった。

当然、この地球を守りたい気持ちはあるが、それよりも自分を受け入れてくれたあのマクロスの人々こそが本当に守りたいものだった。

 

「少佐…今は」

田中中佐もマクロスと共にこの9カ月戦って来た人物であった。

アムロの気持ちも痛いほどわかる。が、これ以上ごねると厳しい処分を受ける可能性がある。それはマクロスにとっても地球統合軍にとっても不利益でしかない。

 

「中将、謹んでお受けいたします」

アムロは起立し敬礼をして、受諾する。

今は恭順の意を示し、マクロスに帰還する方法を模索することを心の中に決める。

 

「ふう、私も肩の荷が下りたよ。どこも人材不足でね。特にこの極東基地は……。期待しているよアムロ・レイ少佐」

こうして、早瀬中将との会合を終える。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、マクロス上層部では戻ってこないアムロにやきもきしながらも、地球に徐々に近づいていた。

 

 

そして、今日もゼントラーディ軍の戦闘ポッド隊が攻撃を仕掛けて来くる。

 

「スカルリーダーから各機へ、あの赤い人型が来たぞ。マクロスに近づかせるな!」

 

「「「「了解」」」」

 

各小隊は散開して、面上に防御体勢を取るが、ミリアの赤いクァドラン・ローは凄まじいスピードでそれをお構いなく突破する。

「ふん。ぬるい。白い悪魔とやらはどこだ」

 

 

しかし、突破したミリアの前に青いVF-1Aが立ちはだかる。

輝達のバーミリオン小隊がミリアの突破を予想して先回りしていたのだ。

 

そして、 マックスの青いVF-1Aバルキリーとミリアの赤いクァドラン・ローの一対一のドッグファイトが始まる。

「くっ、この青いの、なかなかやる!」

 

「人型だからと言って、抜かせないよ」

 

高機動によるガンポッドと小型ミサイルの応酬。

ミリアのクァドラン・ローは近接格闘戦を混ぜてくる。

マックスのバルキリーは確実な回避行動をし、頭部レーザーで格闘戦をけん制しつつ、ガンポッドで迎撃する。

 

 

「隊長!こんなに動かれちゃ、マックスの援護ができないですよ」

 

「凄いなマックスは……。柿崎、マックスと赤い人型の戦闘域に近づいてくる敵を倒せばいい。赤い人型の援護をさせるな!」

 

「了解」

輝と柿崎はマックスとミリアの戦闘域に近づく敵を迎撃していく。

 

 

 

激しいドッグファイトを繰り広げていたマックスとミリアだが……

 

「くっ、小癪な!」

ミリアが残弾を気にしだす。

 

「強いね。でも少佐に比べればどうってことないさ。まだ僕に理解できるレベルだ。これならどうだい」

マックスはそのわずかな隙を見て、相手の腕の関節部に集中してガンポッドの弾を当て、クァドラン・ローの右手上腕部関節を破壊した。

 

「ぐっ、……貴様、次は絶対倒す」

ミリアは残弾や味方状況をみて、形勢不利と見て、一気に下がり撤退していく。

 

 

これが、マックスとミリアの出会いだった。

 

 

 

 

 

無理矢理極東基地に配属となったアムロは、タカトク大佐や極東基地の技術士官や作戦部将官などに挨拶に伺い、歓待を以って迎えられた。

翌日、指導官として極東基地バルキリー隊員を前にすることになるが、とても歓迎ムードではなかった。

その原因はどうやらフォッカーの存在が大きいらしい。

既にどこからか、マクロス帰りのバルキリー乗りの少佐が指導官、または大隊長として赴任してくると噂がたっていたのだが……

目の前に現れたのは統合軍きってのエースパイロット、ロイ・フォッカー少佐その人ではなく、名前も聞いた事がない優男風のアムロだったからだ。

ただ、アムロのマクロスでの実績などは知れ渡っていなかった。

本来アムロがマクロス帰りであることも上層部以外秘匿事項にすべきものだが、何故か漏れ出ていた。

相当、緩い空気がこの基地に流れているようだ。

 

アムロは今日は簡単な自己紹介と訓練指針について説明するに留める。

 

アムロには次の仕事が入っていた。

格納庫ではアムロ立ち合いの下、直ぐにアムロのVF-1S改のスーパーパック取りつけ作業に移る。

技術部本部やタカトク大佐から大気圏内におけるスーパーパックの評価をしてほしいと頼まれていたのだ。

 

「レイ少佐。スーパーパックの仕様を確認お願いします。……それと制御プログラムのインストールなんですが、レイ少佐のバルキリーのOSは大分触られているようで、このままインストールしても大丈夫なものなのかと……」

若い女性技術士官少尉がコクピットに座るアムロにスーパーパックについて説明を始める。

 

「インストールは俺の方でやっておく。このスーパーパックは大気圏内では空気抵抗の影響を受けやすいのか、大気圏内の高速戦闘には向いていないか……なるほど本来宇宙空間専用と思って間違いない様だな……」

アムロはタブレット端末でスーパーパックの仕様書を確認しながら、バルキリーに制御プログラムをインストールする。

 

「はい、宇宙宙域での戦闘を念頭に置いております。しかし、大気圏内での戦闘にも対応した物を開発するためにデータを取りたいらしくて……従来の物に比べ多少空気抵抗を軽減させるような形状に変更しております。大気圏内でも対応できる制御プログラムもあり、理論上では大気圏内でも戦闘出来るはずなんですが……並みのパイロットでは、このスーパーパックを大気圏内では扱えないのが現状です。……後、今開発中のVF-X3の試験データとしても大気圏内のデータが欲しいらしくて……申し訳ございません。無茶を言います」

技術士官少尉は申し訳なさそうにアムロに説明する。

 

「……このスーパーパックだが、今量産体制に入っていると聞いていたが、この基地の現存数はどのぐらいだ」

 

「はい、極東基地及びその周囲分団基地に320機あるバルキリーの内、40機分はあります。1年かけて全バルキリーに配備し宇宙空間での標準装備の予定です」

 

「そうか……、パイロットは若い奴が多い様だが……」

 

「その、ベテランパイロットの殆どが宇宙艦隊での迎撃戦で亡くなられて。基地に残っていたのは、当時の訓練生や宇宙経験のないパイロットばかりで……」

 

「そうか……この基地に直接攻められたことは?」

 

「一応ありますが、9カ月前の初期戦闘時に威力偵察程度で、勝手に引き上げてしまいました。それ以降ありません」

 

「……主な任務は哨戒任務と聞いているが、哨戒任務で敵に出会った回数は?」

 

「聞いた限りだと、無いと思います。敵は大気圏内に降りてこないんですよ」

 

「質問に答えてくれてありがとう。助かる。それにインストールも終わった」

 

「もうですか?」

 

「それにこのスーパーパック。データ通りならば、現状のバルキリーの弱点を見事に克服している。宇宙宙域戦での持続能力、さらに最高スピードはかなりのものだ。これがもう少し早く配備されていれば苦労せずに済んだだろう」

 

「やっぱりそうなんですね。少佐はマクロスから来られたと噂になってます。それと技術に明るい人だと伺っていましたので、まさにそうですね」

若い女性技術士官少尉はアムロに微笑んでいた。

 

そこに緊急警報が格納庫に流れ、緊急出動要請がアナウンスされる。

 

 

 

 

アムロは基地管制にバルキリーから通信で状況を確認する。

『レイ少佐、敵小型機が多数小笠原父島北西上空に現れました。衛星軌道上に展開する敵艦隊から出撃、大気圏を突破し、降下したものと推定します。迎撃準備をお願いします』

 

「なぜそこに……小笠原に何がある?」

 

『小笠原には軍事施設は何も……しかし、八丈島にはこのほど建造した大型レーザー通信装置の巨大アンテナステーションが存在しますが…実験施設なので』

 

「八丈島?……なるほど、敵は飽くまでもマクロスを孤立させるつもりか……哨戒任務中の部隊及び5分以内に出動できる部隊数の確認願う」

アムロは手元のタブレットでマップを開き位置関係を確認して頷く。大型レーザー通信装置は現在唯一マクロスに連絡する手段であり、明日にはマクロスが通信可能距離に到達する予定となっていた。

 

『伊豆諸島及び小笠原諸島近海、哨戒任務中の部隊はありません。他の哨戒任務部隊よりもここからの方が早いです。5分以内は現状困難です』

アムロはその返答に呆れるしかなかった。

そんな重要施設近辺に哨戒任務を行っていないだけでなく、5分で出撃できる部隊が一部隊も無いという事に。…全く緩んでいるとしか言いようがなかった。

マクロスではこの5分が生き残るか落とされるかの瀬戸際となるのにだ。

 

「遅い!俺は先行して出る。後は小隊ごとに順次出撃!……敵の予想到達時刻を!」

アムロは珍しく声を荒げていた。

 

『少佐、たった一機で無謀です。せめて大隊規模を編成しないと。それにこの基地からも対空ミサイルの準備は出来ています……』

 

「対空ミサイルだと?本来は大気圏突破中の敵を狙い撃ちするのが目的じゃないのか?既に大気圏を突破した敵に、しかも小型機に鈍重な長距離対空ミサイルが容易に当たると思っているのか?八丈島に迎撃システムはあるのか」

アムロはさらに呆れるしかなかった。

どうやら、優秀な人材は、ゼントラーディ軍の9カ月前の交戦で消耗したというのは本当らしいと。

 

『それはその、マニュアルではその対応で……八丈島は元々民間施設でして……迎撃システムはまだ』

管制室士官はあやふやに答える。

 

「レーザー通信設備が破壊されてからでは遅い。相手の射程が届く前に叩かなくては意味がない」

 

『しかし……』

 

「発進管制だけしてくれればいい」

アムロはここで一旦通信を切る。

 

 

「少尉、スーパーパックの取り付けは完了しているのか?実弾は?」

アムロは近くで待機していた若い女性技術士官少尉に再確認する。

 

「はい、搭載されてます。しかし、即実戦とは……本来宇宙宙域用の装備パックを多少改修した程度でまだ試験段階です。無茶なのでは?」

 

「途中で脱離可能なのだろう?」

 

「そうなんですが……その、脱離すると使い捨てになってしまいますので……」

 

「少尉、なるべく置いてこないようにするが、敵がそれを許してくれるか、その時は諦めてくれ」

そう言って、少尉を丸め込む。

 

「アムロ・レイ、出る」

ハッチを閉めながら、管制室に通信を繋げ、それだけを伝えた。

 

 

 

スーパーパックを装着したアムロ専用VF-1S改は極東基地バルキリー分隊のある横須賀から飛び立ったのだ。

 

 

「推進能力は相当の物だが、空気抵抗を受けてか、やはりプログラムだけでは制御コントロールがうまく行かないか……形状の問題か、特に上部ブースターパックの空気抵抗の影響が大きい様だ。問題はエンジンの小型化と対流処理の形状か……このままだと旋回能力に大きな影響がでるか……カラバ時代のZプラスの試験飛行を思い出すな……まるでじゃじゃ馬だ」

アムロは空気抵抗で震える機体をマニュアル制御で調整しながら、高スピードで突き進んでいく。

 

アムロはティターンズとの戦いの際、カラバに所属し、Zガンダムの大気圏内特化型量産機ZプラスA1タイプの試験を行っていた。

元々Zガンダムのウェイブライダー形態は大気圏再突入をスムーズに行い、大気圏内でも高速航行移動を可能としているが、モビルスーツに求められる旋回能力や運動性を犠牲にしていた。

さらに言うと、ウェイブライダー形態では近距離ドッグファイトを想定した武装が少なく、飽くまでも長距離移動の為の形態だった。

それを大気圏内運用を前提とした量産型のZプラスで解消しようとするも、武装増加やオプションパーツを取り付けると、空気抵抗の影響が大きくなり、自慢の高速航行移動の安定性を著しく欠く結果となった。そのため、Z同様ウェイブライダー形態は高速移動用と割り切った仕様となっている。

因みにカミーユがウェイブライダー形態で大気圏でも戦闘をこなせたのは、個人の優れた技量によるものである。

 

 

 

 

アムロは八丈島を越え、上空2.5キロメートル地点まで上昇し、敵空戦ポッド100機と対峙する。

「……空戦ポッド単独で大気圏突入が可能なのか?……相手の技術水準が分からないな。アンバランスも良いとこだろう」

空戦ポッドと宙域で何度か戦闘を行っていたが、戦闘ポッドや他の機体に比べ武装も性能も貧弱で、耐久力も戦闘ポッドとほぼ同様で低い。航行距離だけは、勝っていたようだ。

だが、その空戦ポッドが大気圏を単独で突入してきた事に、アムロは驚きというよりも苦笑していた。

 

空戦ポッドに対し、スーパーパックのマイクロミサイルポッドで多数ロックオンし、先制攻撃を行う。

ミサイルポッドは中空で分離し24発のマイクロミサイルを発射、敵空戦ポッドに一気に襲い掛かる。

そして、アムロは空戦ポッドとドッグファイトを展開、スーパーパックの大出力ブースターの高速移動と気流や揚力、空気抵抗さえも利用して、巧みに機体をコントロールし、空戦ポッド部隊の頭を抑え、マイクロミサイルポッドを効率よくたたき込む。

スーパーパックのマイクロミサイルポッドはまさに、密集陣形を保っている敵に対して有効であった。

 

明らかにアムロが駆るスーパーパックを搭載したバルキリーと空戦ポッドでは戦力差があり過ぎた。

まるで、現代の最新鋭戦闘機と第二次世界大戦のプロペラ機の戦闘の様だ。

3分の2を撃墜したところで、敵は撤退を開始する。

 

アムロは撤退する空戦ポッドを追撃をしようとするが、空戦ポッドが撤退していく先から高速で接近する敵大型戦闘機を確認する。

 

「なんだあれは?戦闘機か?……でかい!?100m以上ある」

 

その戦闘機は高速接近しながらアムロのスーパーバルキリーに対しビーム砲で攻撃を仕掛けてくる。

アムロはビーム砲を避けながら、追尾型ミサイルを放ち、バトロイド形態に変形しガンポッドで迎撃する。

 

アムロが放った追尾型ミサイルが、敵砲門から放たれる近接ミサイルに阻まれる。

ガンポッドの弾は命中するも、敵装甲を傷つけるだけにとどまる。

 

敵戦闘機はそのまま、アムロのバルキリーに対し、突っ込んできた。

 

アムロはファイター形態にすぐさま変形し回避する。

「装甲が戦艦並みに堅い。スピードも攻撃力も今迄の敵とは大きく異なる。まるで、重装甲モビルアーマーだな。さしずめ大気圏内も運用可能なビグロと言ったところか」

 

アムロがこう感想を漏らしたのも頷ける。

このゼントラーディ軍の兵器はケルカリア、元々戦略・戦域強行偵察が目的の高性能戦闘機である。ゼントラーディ軍切っての高速、重装甲、高火力兵器だった。

自慢の重装甲で身を固めつつ、高火力攻撃で敵を排除しながら、戦闘域の奥深くに侵入し、強行偵察を行うのだ。

但し、高性能機だけあって、各艦隊に数十機しか存在しない。

 

本命はケルカリアで八丈島の巨大アンテナステーションを高速航行で一気に近づき、高火力の攻撃でピンポイントで破壊し、離脱するつもりだったのだろう。

空戦ポッドは防衛兵器の露払いを行うために先行していたのだった。

 

ケルカリアは旋回し、ビーム砲を放ちながらさらにアムロのバルキリーに迫る。

 

「こんな兵器を隠し持っていたのか……ならば!」

 

アムロはスーパーパックのブースターを最大に吹かし、一気に高度を上げる。

ケルカリアも機首を上げ、ビーム砲を放ちながら追いすがろうとする。

アムロはバトロイドに変形し自由落下をしながら、専用ライフルを構え、機首にあるケルカリアの大きなメインカメラの中心を正確無比に打ち抜く。

ケルカリアのメインカメラは破壊され、煙を上げる。

アムロはすかさず、ケルカリアの破壊されたメインカメラにスーパーパックの腕部ミサイルランチャーを叩きこんだ。

ケルカリアは大爆発を起こし爆散。

 

 

八丈島周辺には敵機影は見当たらなくなった。

 

 

「お前たち!ぼさっとしてる暇はないぞ!敵空戦ポッドの追撃を行え!」

遅れて戦闘空域に到着した極東基地のバルキリー隊は、アムロとケルカリアの戦闘を唯見ているだけであった。

アムロは遅れて来たバルキリー部隊全員に通信を開き叱咤する。

 

「す、すみませんでした」

「は、はい」

「りょ、了解であります」

バルキリー隊はアムロの叱咤で慌てて編隊を組み、撤退していく空戦ポッドに追撃を開始する。

 

アムロ自身は追撃が行えなかった。

スーパーパックがオーバーヒート気味であった。

空気抵抗を受けるこの状況で、無茶ともいえる機動を繰り返していたためだ。

特に上部パックはフレームが変形し、脱離一歩手前の状態だった。

 

「レーザー設備は守れたか、これでマクロスにも朗報が届く。……このスーパーパック、現状では大気圏内での使用は控えた方がいいな」

アムロはそう呟きながら基地に引き返す。

 

 

その後、アムロの戦闘を大いに見せつけられた極東基地バルキリー部隊員から、アムロに対し不平不満を言う者が出ることはなかった。

 

しかし……この戦果にタカトク大佐や技術士官連中は興奮し、大いにはしゃいでいた。

そして今後スーパーパックの改良に勤しむことになる。

 

その結果、高熟練者やエース級パイロットでないと操縦が困難なストライクパックが生まれることに。

更には次世代新型試作機VF-X3が相当ピーキーな仕様になり、常人が操縦できないような仕様になったのは言うまでも無かった。




ミリアさん登場ですが、マックスとの戦闘は、TV版よりも早まってます。
ケルカリア登場……アーマードバルキリーを追い詰めた実力機です。
空戦ポッド……ご愁傷様です。
タカトク大佐……バルキリーの産みの親です。
スーパーパック。本来宇宙用です。大気圏内で使用できるようになったのは……もっと後の時代です。
VF-X3スタークルセイダー。あまりにもピーキーな機体だったらしいのでこの状態で量産には至らなかったそうです。姿恰好はファイターもバトロイドもギャプラン見たいです。
その後継量産機はVF-3000は汎用機ですね。似ても似つかないw

あ、地味に早瀬パパ登場……忘れそうになりました。

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