りみりんおたおめ二本目です!
ほのりみの組み合わせ、気に入ってるんですよね。
中の人ネタ、いつかやりたいと思ってました。

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牛込りみ生誕祭2019Ⅱ

午前九時半頃。マンションを出たりみは、

「やっほ〜。りみちゃんこんにちは」

「え、ほ、穂乃果ちゃん⁉︎」

目の前に立つ笑顔の穂乃果を見て驚きの声を上げた。

「ど、どうしてここに……?」

「せっかくだから、ちゃんとお祝いしたくて! ──りみちゃん、お誕生日おめでとう!」

歩み寄った穂乃果は、りみの両手を握ってブンブン振る。

「あ、ありがとう」

状況整理が追いついていないりみは、ポカンとした表情のままお礼を言う。

当然そこまで察しの良くない穂乃果は、戸惑うりみには気付かない。

「お友達が誕生日だ、って言ったら、お父さん張り切っちゃって。──はい、私からプレゼント!」

持っていた紙袋を、りみに差し出す。

「これは……?」

「穂むら特製和菓子! 穂乃果とお父さんで作ったんだ〜」

「……えっ? もしかして私の為に……?」

ようやく頭が追いついてきたりみは、受け取った紙袋を落としそうになる。

「そうそう! りみちゃんチョコが好きって言ってたから、それメインの和菓子にしたよ〜」

「わ……ありがとう!」

「お礼なんていいよ〜。あ、でも、普段お店で売るのとは別にアレンジ加えたから、試作品も兼ねてるってお父さん言ってた。だから食べたら感想聞かせてね!」

「──あ、穂乃果ちゃん、この後時間ある?」

「私? 今日は土曜日だし、練習も午後からだからしばらくは大丈夫だよ」

「じゃあ、うち上がってく?」

「でも、どこか出かけるんじゃないの?」

出かけるタイミングを待ち伏せていた穂乃果は、りみの予定を心配する。

「この後ポピパのみんながパーティー開いてくれるんだけど、実はまだ結構余裕あって。散歩を兼ねて遠回りしようかなって思ってたの」

「そうだったんだ。じゃあ、お邪魔しちゃおうかな」

「うん、是非!」

 

 

 

 

「お邪魔しま〜す!」

「あれ、りみ? 有咲ちゃんの家に行ったんじゃなかったの? ……というかどなた?」

元気に響く声に、ゆりは不思議そうな顔をする。

「そのつもりだったんだけど、お友達と会っちゃって。まだちょっと時間あるし、せっかくだから招待したかったの」

「あ、もしかしてあなたが穂乃果ちゃん? りみから聞いてるよ〜。私はゆり。りみの姉です」

にこやかに挨拶したゆりに、穂乃果も頭を下げる。

「高坂穂乃果です! 初めまし……て?」

「どうしたの?」

「どこかで、会った事ないですっけ……?」

「え? ……うーん、無いと思うけど……。でも確かに、初めて会った気がしないような……」

「うーん、不思議だ……」

腕を組んで首を傾げた穂乃果に、ゆりは笑う。

「不思議な子だね〜。──ゆっくりしてってね。違う学校の友達ってりみにとっては貴重だから、これからも仲良くしてあげてくれると嬉しいな」

「お、お姉ちゃんっ」

「もちろんです!」

「ほ、穂乃果ちゃんもっ」

無意識に敬礼までした穂乃果に、りみは顔を赤くする。

 

 

自室に案内された穂乃果は、

「それじゃあ早速、いただきます」

目の前で実食するりみを眺める。

「これは……チョコ、だよね?」

りみが手に取ったのは、どう見てもチョコレートの粒。

「そうだよ〜。ま、食べてみれば分かるって!」

「うん」

楽しそうな穂乃果に促され、りみはチョコレートを口に放り込む。

「ん〜、とろける甘さ〜……──ん、中にあんこが入ってる……!」

思わぬ味覚に、りみの目が丸くなる。

「そうなの! それはあんこチョコ! お土産とかで意外と人気なんだ〜」

「何だか新鮮な味……。でも、これはこれで美味しいなぁ」

「穂乃果は、普通の方が好きなんだけどねー。あんこ飽きちゃったし」

「羨ましいなぁ……。こんな美味しい和菓子が飽きるほど食べられちゃうなんて……」

二つ目のあんこチョコを咀嚼しながら、りみは呟く。

「──それにしても、流石バンドやってるって感じの部屋だね〜」

楽しそうに部屋を見渡す穂乃果。

「音楽の雑誌とか、バンドのチラシとか、──あ、作曲の本とかもある!」

「う、うん。ポピパの曲は、私が作る事が多いから」

「へ〜そうなんだ! りみちゃん凄いなぁ〜!」

面と向かって褒める穂乃果。実はそれが簡単ではない事を、りみはよく知っている。

「──あれ、楽器がもう一つあるよ?」

「あ、そっちはお姉ちゃんのギターだよ」

「お姉ちゃんって、さっきのゆりさん? あの人もバンドやってるんだ〜」

「うん、『Glitter*Green』っていうバンドの、ギターボーカル! めっちゃカッコよくて、憧れなんだぁ」

「へ〜! いつか、バンドのライブにも行ってみたいなぁ〜」

穂乃果は表情を輝かせながら、

「──そうだ!」

突然勢いよく立ち上がった。

「ど、どうしたの?」

「りみちゃん、ちょっとベース弾いて欲しいんだけど、いい?」

「え、うん、いいけど……」

りみは愛用のベースを手に取ると、軽くチューニングをしてピックを持つ。何を弾けばいいのか、分からない。

穂乃果は答えず、目を閉じて息を吸い込んだ。

「──Happy Birthday to you〜♪ Happy Birthday to you〜♪」

唐突に歌い出した穂乃果を見て、りみも趣旨を理解する。スコアは無いので、即興で重低音を奏でる。

「Happy Birthday dear りみちゃん〜♪」

ベースを弾きながら、りみはその歌声に驚く。

なんて伸びのある綺麗な歌声だろう。ポピパのボーカル、香澄とはまた違う力強さの乗った歌声。

「Happy Birthday to you〜♪」

普段の元気な姿からは想像もできないような歌声に、りみは思わず演奏の手を止めそうになった。

「えへへ、ありがとうりみちゃん!」

「う、ううん。私こそ、素敵な歌をありがとう」

最初はダンス。今日は歌。この穂乃果には驚かされてばかりだと、りみは感心する。

いつか穂乃果も交えてポピパのライブをしてみたいな、という考えがりみの頭をよぎる。その前に、未だ会えていないままなのだが。

「──あれ、りみちゃん、ケータイ鳴ってるよ?」

「えっ?」

穂乃果の声で、りみは我に返る。慌てて液晶の画面を見やると、

「あっ……! もうこんな時間! みんなから連絡来てる!」

すでに、パーティー開始時刻の数分前だった。

「えええ⁉︎ た、大変だ!」

同じように慌てた穂乃果。今度はそのケータイが震える。

「っと、電話? ──もしもし?」

穂乃果が首を傾げながら受話器に耳を当てると、

『──穂乃果! 今どこにいるんですか⁉︎ 迎えに行ったら、出掛けた、と……。もうすぐ練習が始まる時間ですよ!』

りみにも聞こえるような、物凄い剣幕の声が響いた。

「うわわっ、もうそんな時間⁉︎ ごめん海未ちゃん! すぐ戻るから〜!」

どうやら、穂乃果も時間が迫っているらしい。

「い、急ごうりみちゃん!」

「う、うん!」

バタバタと部屋を出る二人。

「お邪魔しました〜!」

「お姉ちゃん、行ってくるね!」

何事かと顔を覗かせたゆりに、二人は声だけ飛ばす。

「忙しい子だったな〜」

見えなくなった二人の後ろ姿を見送りながら、ゆりはクスッと微笑んだ。

 

 

「──穂乃果ちゃん、今日はありがとうね」

「私こそ、お祝いできて嬉しかったよ」

「次会う時は、みんなを紹介するね!」

「私も、メンバーに会わせてあげたい!」

並んで走りながら、じゃあ、と二人は顔を合わせる。

「「約束!」」

笑顔でハイタッチ。

そして、お互いの進む道へ全力で駆け出した。



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