他所の妹が小町より可愛いわけがない   作:暮影司

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「いいぞ、もっとやれ」のご声援ありがとうございました!
やっていけるよ!


どちらにせよ一色いろはの登場タイミングは神がかっている

高坂がズココココーと音をたてながら、溶けたバニラアイスとメロンソーダが混ざりあった液体を飲み干すのを見ながら、俺が

 

「じゃあ、そろそろ帰るか」

 

と言うとまるでシンジくんに食って掛かるときのアスカみたいな顔で、

 

「は? いや、今集まったばっかじゃん。なんで帰るわけ」

 

と言いながら人差し指を突きつけられてしまった。眉毛は逆八の字、口は逆三角形。

まぁそりゃ喫茶店でクリームソーダをやっつけるためにわざわざ千葉に来たわけではないだろうが……大体いつも俺って帰宅を提案してたよね。とりあえず帰ろうとする、そいつが俺のやり方。高坂の表情を見てると、今までのリアクションは優しい方だったのだと気づく。一色、おまえって結構優しかったんだね、ありがとな。今思うとお前のほうが可愛げあるわ。

 

俺に対してぷんすこしている高坂を見やりつつ新垣は天使のような微笑みを見せて、

 

「ほら、桐乃。八幡さんはやっぱり忙しい方なんじゃない。ご友人も多いみたいだし」

 

ぐふっ。なんという辛辣極まりない皮肉。絶対わかってて言ってるだろ。雪ノ下の方がまだマシだ。

 

「いや、八幡に友達なんて居ないし、暇に決まってるじゃん。単に引きこもり性質だから家に帰りたがっただけっしょ」

 

ここに第三者が居たら、新垣が優しい人で、高坂はひどいやつに見えるのかもしれん。

しかし現実は高坂が大正解で少しも問題ない。意外と俺のことを理解してくれてるのね、高坂……。そして、今帰りたいことについてはもう一つ強い理由がある。

 

「あ~、そういうことですか」

 

ぽんと手を打って、にっこりとする新垣だがそれが本当のスマイルではないことを俺は知っている。

見た目が良ければいい。そんなの、ウソ、だと、思いませんか?

雪ノ下陽乃という人は奥底に闇を抱えているのがたま~に見え隠れする程度だが、新垣あやせは信号機の青と赤くらいの感覚で闇を見せてくる気がしており、とっても怖いです。アビスに降りるくらい怖いです。助けてナナチ。

 

「今回はお礼なんだから、きっちりお礼されなさいよねっ」

 

お礼をされるときに人はここまで上から目線で命令されることがあるだろうか。いや、ない(反語)

 

「ところでどこに行けばいいかな~。カラオケはもう行ったもんね」

「へ~。桐乃とカラオケに行ったんですか。ふ~ん」

 

やめて、そんな目で見ないで! 石化しちゃう。

っつか何でこいつそんなに高坂の事を思ってるんだ?

ゆるくないゆりなの? いつか君になるの? いっそCitrusなの? そういやCitrusの二人とこいつらって結構似てるな。特に藍原は高坂と似てるな。

 

高坂と新垣が一緒に住んで同じベッドに寝ている妄想をし始めてしまう前に何か考えないと!

俺がなんとかしようと考える必要もなく、藍原、じゃない高坂は人差し指をぴんと立てて、

 

「とりあえず、一緒にプリクラでも撮ろっか」

「ああ、そういえばお兄さんとも撮ってたわね。ケータイ電話に貼ってた――むぐっ」

「その話はいいから」

 

高坂は新垣の口を両手で押さえ、顔を赤くしていた。兄妹でプリクラか。俺も小町と撮って冷蔵庫にでも貼りたいね。戸塚とは結局撮れなかったしな。

 

「ゲーセン行こ、ゲーセン」

 

そう言って、高坂は新垣の手をとって立ち上がる。

伝票を取ろうとすると、先に高坂が人差し指と中指でぴっとつまんで持っていった。年下の女の子に支払わせるのは、ちょっと違和感があるが……そうか、きっちりお礼されないと、だったな。

 

高坂と新垣がショッピングモールに向かうところに付いて行く。離れるとストーカーだと思われて通報されそうだし、近すぎても新垣に通報される。いい感じの距離を保って付いて行くというとってもスリリングなゲームだよ? なにこれ超クソゲー……。

 

ショッピングモールのゲーセンは、ららぽ以来だったか。エスカレーターに乗っているとなんか聞いたことある鬱陶しい声が聞こえた。

 

「っべー。いろはす~、まじ、べー」

「意味わかんないこと言ってないで、ちゃっちゃっと歩いてくださいよ」

 

げっ、戸部と一色じゃねーか。両手に紙袋を持たされている戸部とすぐ後ろに一色。すれ違って登っていくエスカレーターに立っている。

今あいつらに見つかると厄介だ。

 

「あれ、今のヒキタニくんじゃね?」

「えっ、先輩ですか?」

 

逆走するわけにもいかないので、しゃがみこんだ。

 

「あっれ~? べ~?」

「どこにいるんですかっ」

 

キョロキョロしている戸部。自動的に右上に去っていく。助かったぜ。

そしてその後ろにいる、私服の一色。なんつーか、スカート短すぎないか……ってパンツ! 縦縞! 意外じゃない!

登りきったところで、速やかにエスカレーターから離脱。

ふう、助かったぜ……。しかし、思いがけず良いものを見させてもらった……。

 

階段でゲーセンエリアに向かうと、高坂と新垣は太鼓を叩いていた。

 

「おー、ジャパリパークか、なかなか上手いな」

「あ、あんたどこ行ってたのよ」

「八幡さん、私これやったことなくて、代わってください」

「お、おう」

 

つっても俺もそんなに上手いわけじゃないんだが。

高坂は全部パーフェクトだった。ハードモードでも余裕なのだろう。新垣に合わせて難易度を低く設定したものと思われる。

これなら俺でも、出来る、な。

 

「やるじゃん、八幡」

「桐乃もな」

「あったりまえじゃん、にひひ」

 

背後には新垣がいるが、妙なプレッシャーもかかってこないし、邪悪なオーラは鳴りを潜めている。

さすがに自分から代わってと言っておいて怒り出すほど理不尽ではないらしい。

太鼓を叩き終わった俺達は、後ろに並んでいるちびっこ達にバチを渡して、プリクラの方へ向かう。「ねえ、今の姉妹、超可愛くなかった? はう~、お持ち帰り~」などと言っているのは聞こえないふりをした。

 

しかし、今どきのプリクラってデカイよな。ジャック・フロストも話しかけてこないし。大きな垂れ幕にこれでもかと大きく修正された目の派手な女が印刷されている。

 

「じゃあ、最初は私と桐乃で撮りますから、その後、お一人でどうぞ」

 

あれ? おかしいな、理不尽さを感じるね。なんかこういう言い方すると雪ノ下そっくりだな。

 

「あはは、あやせ面白~い。そういうジョーク言えたんだね~」

「あ、うん、そう。最近バラエティにハマってて」

「あやせだったら、バラエティ番組に出ても大人気間違いなしだよ~」

 

絶対ジョークじゃなかっただろ。

数人並んでいるため、3人で最後尾に並ぶ。

前にいるのも3人組だった。ただし全員女子。

 

「もちろん、うちら3人で撮るっつーの」

「だおね~」

「ねえねえ、キスプリしな~い?」

 

キスプリ?

シスプリの親戚かな?

だとすると高坂が好きそうだね。

 

「桐乃、私達もキスプリしてみる?」

「ええっ、さすがに恥ずかしいっしょ」

 

ふむう。恥ずかしいのか。なんだろうね、キスプリ。キスのプリンスさまっの略でもなさそうだね。

それにしても何のことなのかしらん。高坂をぼんやりと見ていると目が合った。するとみるみるうちにゆでダコのように赤くなる。

 

「ええっ、だ、駄目だかんね、八幡。いくらお礼って言ったって、キスなんて、し、しないかんね」

 

キス!?

あ~、キスしながらプリクラ撮るってことか? とんでもねえ発想だな。

しかしこれはマズい、俺がキスプリしたかったみたいに思われちゃってるよ。

とりあえず視線をそらすとそこには高坂とは違う意味で顔を赤くしている新垣と目が合う。にっこり笑いながら首を傾げつつ、スマホをタップ。

 

「通報しますね」

「待て、俺は何もしていない」

 

なんだこいつ、スキあらば通報しようとすんだけど。

 

「キスすることを妄想しただけで十分です、さようなら」

「おいおい、思想の自由は憲法で守られてるぞ」

「ふ~ん、妄想したことは否定しないんですね」

 

語るに落ちるとはまさにこのこと。待てあわてるなこれは孔明の罠だ。

ジャーンジャーンジャーンと鳴り響く脳内のドラとともに現れたのは、妙にもじもじした高坂だった。

 

「へ、へー。妄想したんだ。それってどっちと?」

「いや、そのな。どっちとかじゃなくてね?」

 

ここで新垣と言っても、高坂と言っても新垣は通報するじゃん。事実上選択肢ないじゃん。どう言い訳したものやら困っていると、新垣が身を捩って俺を睨んでいた。

 

「ま、まさか2人共……脳内でいかがわしいことになってるんじゃないでしょうね、エロ同人みたいに! 死ねえっ」

「ま、待ってあやせ。今日はこいつへのお礼だから。ここはあたしに免じて。ね?」

 

高坂は新垣に手をすり合わせ、このとおりとぺこぺこしていた。あれ、俺なんか悪いことしましたっけ? でもなんかゴメンね?

それにしてもなんで新垣はバックステップしたんだよ。まさかハイキックとかしようとしてないよな。本気で死にかねないんだけど?

 

「ほらほら、もう順番だよ」

 

暖簾のように入り口を開けながら、一足先にプリクラブースに入っておいでおいでをする高坂。新垣はすぐにててっと追う。のこのことついて行く俺。

 

「フレームとかどうする、どうする~?」

「桐乃の好きなのでいいよ」

「八幡は?」

「任せる」

「ま、そうだよね。あたしにお任せ~」

 

手慣れた様子で選んでいくのをぽけーっと見る。なんかキャピキャピしてんなあ……。

 

「一枚目、行くよ~。枠の中に入ってね」

 

こいつはプリクラの機種の声だ。

枠の中って、これ3人だと相当狭くないか?

 

「ほら、八幡は真ん中。ちょっと屈んで」

 

言われるがまま中腰になると、肩にそっと手が触れた。そして長い髪も背中やら腕やらに当たる。画面を見ると俺の顔を挟むように2人の顔が。近い、近すぎる。近いなんてもんじゃない、2人の顔がときおり耳に触れる。

 

「あははは! 八幡の腐った目が、ちょーでかくなってんだけどー! ウケるー!」

「ぷっ、ふふふっ」

 

2人は笑っているが、俺はもうガチガチだ。そして心臓はバクバクだ。なにこれ、なにこれ。

 

「八幡、ちょっとは笑ってよ」

 

無理なことを言うね。ここでニチャア……と笑ったら新垣が即、通報しちゃうでしょ?

ひたすら耐えていると3回のシャッターによって撮影は終わった。どっと疲れたぜ……。

ブースから出ると、2人は落書きに夢中となっていた。俺はこっそりと深呼吸したり、素数を数えたりして待つ。

 

「はい、これ八幡のねー」

「おう」

 

受け取ってゲーセンエリアから出つつ、出来上がりをチェックすると、日付だの、☆だの、親友! だのLOVEだのが書かれていた。ちょっと、LOVEの位置がここだと俺と高坂がLOVEみたいじゃないの、はわわ! なんて思ってたら、うっかりプリントシールを取り落としてしまった。休憩用の椅子の近くにひらりと飛んでいったのを追いかけるとそこに座っていた女の子がスマホを隣において、拾い上げてくれた。

 

「あ、ありがとうございます……って縞パン」

「は? あれ? 先輩じゃないですか」

「やめろ、それは見るな」

「そう言われて私が見ないわけないじゃないですか」

 

そうだった、そういうやつだったわ、やだー。

最悪なことにプリクラシールを拾い上げたのは、一色いろはだった。

 

「え、ええ!? この人って確か高坂さんと同じ雑誌のモデルの、ええ!? 一緒にプリクラ? LOVE!?」

 

終わったな。これ、終わったわ。っべーわ。っべー。

 

 

 




原作の、パンツ! ピンク! 意外! が大好きなのでなんとしてもやってみたかった。反省はしていない。
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