他所の妹が小町より可愛いわけがない   作:暮影司

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その日のランチタイムは一色いろはへのプレゼンと化している

「おはよー、はちまーん」

 

なんだ、戸塚か。こいつは朝から縁起がいいな。

声のする方を向くと高坂だった。まぁ、よく考えたら声が違うけど。

 

「お、ん」

 

返事をする前に場所を確認する。ここは校門の手前、一応学校の外だ。

 

「おはよう、桐乃」

「わっ」

 

高坂は周りを見回して、他に生徒がいないことを確認してほっと胸を撫で下ろした。

 

「八幡、確かに学校の外だけど、知り合いに聞かれちゃったら同じだかんね」

「そうだな、すまん」

「気をつけてよね」

 

確かにそのとおりだ。学校の中と外というのが短絡的過ぎたな。考えが浅かった。高坂はたたっと近寄ってきた。怒られちゃうのかしら、顔はやめて、ボディにして。ボディならいいのかよ。

 

「でも、嬉しかった。あんがとね、八幡」

「お、おう」

 

繰り出されたのはパンチではなく耳打ちだった。照れくさいんだけど。更に耳の近くからのセリフは続く。

 

「今日さ、お昼一緒に食べない?」

 

む。

こういうお誘いをされると困っちゃう、だってぼっちだもん。しかし、学校で一緒に昼飯食っちゃったらバレバレなのでは?

どちらにせよ今日は駄目だ。

 

「すまん、用事がある」

「あ、そなんだ。うん、わかった。じゃね」

 

少し残念そうに笑ってそう言うと、先に駆けていった。

ぽりぽりと頬を掻く。なんというか少し悪い気がするな。俺の人生においてとりあえず誘いを断るというのは当然のことであったはずだが。

 

さて、その昼休み。

 

俺は二年生の教室に向かう。

ついこの間まで自分たちの教室だったが、アウェイ感は強い。俺と似たようなカーストであろう冴えない男子に声を掛ける。

 

「会長呼んでくれないか」

 

こういうとき役職があるのはありがたい。なんとなくな。

男子は露骨に嫌そうな顔を見せた。一色に話しかけるのは難易度が高いのだろう。

彼はゆっくりと一色に近づき、彼女が何のようだと反応したところで、俺の方を指さした。コミュ力ねえなあ。って俺も同じ立場だったら多分同じ感じになるけどな。

 

一色はなんだこいつという目で彼を見ていたが、指の先にいる俺を発見して「オヨ」という顔を見せた。オヨルンなのかな? 願えば必ず一色もプリキュアになれるよ。

 

一色はまるで「うわ~、参ったわ~、上級生がわざわざ私を訪ねてきちゃったわ~、仕方ないな~、まじで仕方ないな~」という地獄のミサワ感たっぷりの態度で近づいてくる。お前そういう態度だから同性の友達出来ないんだぞ? 俺もな?

 

「なんですか、先輩。また告白しにきたんですか?」

「ちょ、お前周囲の人間に誤解されるだろ。なんで一度告白したことになってんだよ」

 

やむを得ずツッコミを入れるが、にんまりと笑うだけ。コイツ……。

 

「まぁここじゃ目立ちますから、話は二人きりで、ね」

「お前な……」

 

反論したい気持ちは山程あったが確かにこの場所で注目を浴びながら口論するのは避けたい。いろはすめ~。上機嫌にパンの入ったビニール袋を下げて行進する一色を半歩後ろから着いて行く。

 

「ここでいいですかね」

「中庭かよ。もっと人気のないところの方がいいんじゃねえの?」

 

さくらちゃんや知世ちゃん達のように中庭で円を囲んでお弁当を食べるなんていう光景はそこにはなく、ときおり移動していく生徒が通り過ぎるだけだった。桜が満開だったりするならまだしも、高校生たちはそれほど風流というものを重視しない。風が吹けば弁当に砂が入るかもしれないし、曇ってれば寒いし、晴れてれば日焼けするなどとなんのかんの不満が出るから普通は教室か部室で済ますだろう。もしくはトイレな。オススメはしないが。

 

「誰も来ない体育館の裏とかですか? そんなところに二人きりでいたらそれこそ告白だと思われちゃいますよ? それとも本当に告白するんですか?」

 

それでもいいですけど、というメッセージを多分に含んだ笑みを見せる。

 

「告白する前から何度もフラレてるんだけど?」

 

何度ごめんなさいと言われたことか。抗議の眼差しを向けるが、わぁと一色はパーにした手を口の前にかざす。ファッション誌でそういうポーズのやつみるとイラッとするんだけど、もちろん今もイラッとしている。

 

「あちゃ~。まさか本当に告白すると思ってませんでした。でも、やってみないとわかりませんよ? 頑張って!」

 

両手をぐっと握りしめて「ファイトです、先輩!」みたいなポーズを見せるが、ファイティングポーズで応戦したい気持ちになってきた。オッス、オラ悟空! なんだかイライラしてきたぞ!?

ヤムチャより弱いオレが界王拳何百倍で戦闘力を高めたところで一色には勝てないので、諦めて社畜に戻ります。俺はエアネクタイを締めながら、一色をとりあえずベンチの方へ誘導。鉄製の手すりがついた木製のベンチは二人がけ。

今日は日差しが強いので木陰になっている方に一色を座らせ、拳二つ分ほど空けて隣りに座った。

パンが二つ入ったビニール袋を膝に乗せて一色の方を向く。

 

「さっさと本題に入らせてくれ。わかってんだろ、お前が言い出したんだぞ」

「あらら、結構せっかちなんですね」

 

はむっとハムサンドをかじる一色。わぁダジャレになっちゃったよ。いろはす~?

本題に入ると言っているのに堂々と飯を食い始める後輩に対して真面目な顔をする俺。圧倒的にこちらの立場が低い。なんでこうなった。

 

「また部室の前の廊下に立たされるのはごめんだからな。昼休みのうちにやらせてもらうぞ」

「ほおでふか、むぐむぐ」

 

わざとやってんのかってくらい上からだなコイツ。下請けをいじめるタイプだ、絶対大手のメーカーやゼネコンとかに入社するなよ?

 

「じゃあ、プレゼンをさせていただきます」

「むぐもぐ……意外とノリノリですね先輩。ぱちぱちぱち」

 

丸一日かけて考えたからな。必ずやこの商談をまとめてみせる! あれ? 何、俺ってやる気あるの? いや、そんなわけがない。ちょっとマジで例のブツを返して欲しいだけだ。

 

「今回ご提案させていただきますのは、現役モデル2名との撮影会であります」

「ほお~?」

「以前提示されていた一緒にプリクラを撮りたいという要望を遥かに超えてモデルと一緒に撮影会をするという体験は非常にレアであり、必ずやご満足いただけるものと考えております」

 

ふむ~、と腕組みをして渋面をつくる一色。プレゼン失敗なのかしら……。

 

「あのお二人と一緒にガチの撮影ってことですか? それは無いですよ」

「なんでだよ。プリクラより豪華だろ」

 

不服な理由がマジでわからん。

 

「プリクラだったら目がおっきくなったりとか加工されまくりだからいいんですよ。普通にあんな美少女モデル二人と一緒に撮られたらいわゆる公開処刑ってやつですよ」

 

ため息をつく一色。意外と殊勝なやつだな。

 

「そうか?」

「そうかってなんですか」

「そりゃ確かにあいつらはモデルだけどよ。そこまで見劣りしないんじゃねーの」

 

ボソリと言うと、一色はぽかんとした後にみるみる顔を赤らめる。

 

「なんですか個人的にはモデル並みに見えるくらい好みだから俺だけのアイドルになってくれよっていうメッセージで口説いてるんですか正直言ってこっちは好みじゃないんでごめんなさい」

 

ぺっこり45度で謝罪される俺。だから勝手にフるなよ。

 

「いや、まぁ確かにあいつらはモデルだからスタイルとかいいかもしれんが、女が求めるスタイルと男が好むスタイルってのは一致しないしな」

「ちょっとなんですか、まるで私が男好みのえちえちスタイルみたいな言い方しないでくださいよ!」

「そこまで言ってねえよ……」

 

一色は胸を隠しながら俺を睨んだ。わかっていたことだが、こいつめんどくせえな……。わーい嬉しいーやったーって言って小躍りしてウキウキしながらプリクラ返してくれよ……。小町ならそうするだろ。さすが小町、まじ可愛い。

 

俺も飯を食い始めるかと膝の上の焼きそばパンを手に取ると、そこには影が落ちていた。誰だと思って前を向くと、般若のような表情で腕を組んで仁王立ちの高坂がいた。

 

「八幡、あんたいい度胸してんじゃん」

 

高坂、その認識は間違っている。俺は一色と違ってこの状況でパンを口に入れるほどの度胸はない。

 

 

 

 




どう? こういういろはす、どう? 好き? はいかYESでお答えください。

しっかし、この子はからかい上手ですね。こういうふうにからかわれたかった・・・。

からかうのが下手くそな女の子が好きな方は、ぜひ「からかい上手になりたい神野めぐみ」の方を読んでいただければと(宣伝)
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