他所の妹が小町より可愛いわけがない   作:暮影司

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ぼんそわ~!

二次創作書いているときは、キャラクター達に脳内でアフレコしながら書いています。違和感が無いか確認する意味も込めて。

この小説、桐乃と小町ばっかりしゃべるからすっごくプチミレディで書いてて最高。
プチミレディオ最高。

それではよろしくおねがいします。


なぜか高坂桐乃は待っている

僕は友達が少ない。

いや、自己紹介じゃないぞ、愛読書の話だ。

ぼっちにとってはバイブルとも言える。

 

やっぱり、はがないは面白い。

そして小鳩は小町ほどではないが、妹として可愛い。

それに比べて誰かさんは可愛くない。

妹ラノベの妹にしたら絶対人気が出ないこと請け合いだ。

雪ノ下の淹れてくれた紅茶を啜りながら、ブリキ先生のイラストを見ていると改めてそう思った。

 

今日も今日とて、いつもの奉仕部だ。

俺は手前の椅子に座り、窓際に雪ノ下と由比ヶ浜がいて、向かいには小町がいる。

雪ノ下は文庫本に目を落とし、由比ヶ浜は携帯をいじり、小町は宿題をしていた。

 

昨日やってきた高坂桐乃のことには誰も触れなかった。

 

静かに流れる時間、ときおり雪ノ下のめくるページの音だけが聞こえる穏やかな時間。

なんとも安心する。

再度はがないの世界に埋没しようとページを手繰ると、視界の隅にある戸がノックの音もなくがらりと開いた。

 

「大変ですよ~!」

 

平和を脅かすやかましい声をあげて奉仕部に勝手に乗り込んできたのは、もちろん一色いろはだ。

みんなはこの状態の一色にもう慣れたもので、狼が来たぞと叫ぶ少年のように涼やかにスルーしていた。

 

「これ、これに載ってるモデル、うちの生徒なんですって!」

 

長机にバーンとファッション雑誌を叩きつけて、指をさす。

心優しき由比ヶ浜が、一応その指先を見てあげている。

 

「あ、これ高坂さんだ」

 

由比ヶ浜が出した名前にどきりとする。

え、あいつファッション雑誌に載ってるの?

意外、じゃねえな。

すごく納得だ。妹だってことのほうがよっぽど意外だ。

 

「桐乃さんですか?」

 

宿題をしていた小町がシャープペンシルを放り捨てて、雑誌を覗き込む。

 

「えっ、二人とも知ってるんですか?」

 

一色はスクープを持ってきたつもりなのに、すでに知っていたことが面白くないのか、ぷくっと頬を膨らませた。

 

「ええ、小町は同じ一年生ですし、有名人だから面識ありますし。昨日、ここに来ましたよ」

「へー、そうなんだ」

 

丁寧な対応をしている後輩に対して無愛想な返答を返す一色。

大人げないぞ、いろはす……。

大人毛もなさそうだけどね。いや、あるかも……。

 

 

「うわー、本当にモデルさんやってるー。すっごくカワイイー」

「ですよね~、この娘がうちの生徒にいるとかヤバイです」

「桐乃さん、素敵だな~」

 

女子高生が3人寄って雑誌を見ていると、きゃあきゃあと、まぁ、かしましい。

雪ノ下は興味なさそうだが、さっきからページをめくる音が消えている。

俺が見ていることに気づいたのか、雪ノ下は本に栞を挟んで閉じた。

 

「それで、比企谷くんは昨日、高坂さんとどうしたのかしら」

 

その言葉で、雑誌に向けられていた3人の視線がばっと俺に集まる。

 

「どういうことですか、先輩」

 

一色はジト目で俺を見ている。

由比ヶ浜は探るような目で、雪ノ下はちろりと涼やかに横目で。

そして小町はらんらんと目を輝かせて状況を伺っていた。

 

「桐乃さんは奉仕部に相談に来たのですが、まぁなかなかの内容でして。そこでお兄ちゃんが一人で引き受けようとしまして」

「昨日はヒッキー、高坂さんと一緒に出ていったんだよ」

「どういうことですか? 先輩?」

 

説明を受けた一色はさきほどよりも語気を強めてそう言い、にっこりと笑った。

 

思わずため息をつく。

 

「ちょっとハンバーガーショップに行っただけだ」

 

後頭部を掻きながら、観念して自白した。

 

「ちょっ、ヒッキー」

「せ、先輩それって」

「あら、いつの間に比企谷くんは送り狼になったのかしら」

 

諦めて自白したというのに、状況は悪化した。

 

「ちょっとと言いますが、兄が帰ってくるのは結構遅かったです」

「小町、それ言う必要ある?」

 

このスパイ、可愛すぎて処分できないから厄介だ。

3人の目は更に鋭くなってしまった。

このままでは質問攻めに合うのは必至。

都合が悪いので、ここは三十六計逃げるに如かずというやつだ。

 

「あ、今日は夕飯の買い物を小町に頼まれていたんだった」

「いや、小町そんなの頼んでないけど」

「ヒッキーがアホな嘘ついてる!?」

「先輩、実はアホなんですか?」

「比企谷くん、小町さんが入ってくるまではそれで誤魔化していたという事ね」

 

参ったな。

何も考えずに去年までの言い訳を使ったらバレてしまった。

アホ扱いされてることを利用してアホとして逃げるか。

 

「ちょっと今日は頭が働かないみたいだ、やっぱ帰るわ」

「そう。ずる賢くない比企谷くんなんて気持ち悪いものね」

「気持ち悪くてごめんね? 大人しく帰るね?」

 

ひどい言われようであるという引け目を使ってなんとか逃げ出すことが出来そうだ。

感謝するぜ雪ノ下……。

そそくさと帰り支度を開始するが、由比ヶ浜に呼び止められる。

 

「ヒッキーは気持ち悪くないよ、アホでもないし」

「ありがとな由比ヶ浜、心配してくれて。でもアホすぎて気持ち悪いから帰るね?」

 

こうなったら完全に病人扱いされないと逃げられん。

由比ヶ浜の優しさは時として仇になる。

 

「先輩は気持ち悪いですけど、アホじゃないですよ」

「一色、なんかややこしくなってきたけど、兎に角帰るね? あー頭が悪いわ~」

 

兎に角、俺は逃げたいのだ。

逃げちゃ駄目だ、なんて全く思っていない。

こめかみを抑えて退室する俺を、雪ノ下はこめかみを抑えて見ていた。シンクロしちゃったよ……瞬間、心重ねちゃったよ……。

 

小走りで廊下を駆け、いそいそと靴を履き替える。なんか小悪党みたいだな……。

駐輪場から自転車に駆け乗って、颯爽と校門をすり抜ける。

スタコラサッサーという感じでいかにも逃げている感じ。俺が何をしたというのでしょう。

 

「ちょ、こら! 待ちなさいよ、あんた! こら、比企谷八幡―――!」

 

校門を過ぎた途端、大声でフルネームを叫ばれ、ブレーキを握りしめる。

 

首だけで振り返ると、校門の前で仁王立ちしているのは、生意気で派手な女。

不機嫌そうに眉を吊り上げた高坂桐乃だ。

 

「どうした、きりりん氏」

「どうしたじゃないわよ、約束したでしょ」

 

何を?

とりあえず回れ右して自転車を押し、彼女に近づく。

 

「すまん、約束ってなに?」

「ハッピーセット、行くって言ったじゃん。あんたが誘ったんでしょ」

「ああ、そのうちな……」

「はあああ!? 近いうちって言ったでしょ」

「近いうちってのは明日って意味じゃないだろ」

「もう明日は学校休みなんだから今日行くでしょ」

「まあでも」

「うっさい! 今から行くかんね!」

「痛ってえ!?」

 

足を踏まれた、踵で。

事実だけ考えると、こいつは昨日の俺の適当に言った誘いを本気にした。

それを楽しみにして、ここでずっと待っていた後輩なのだから可愛いはずだ。

――なのだが、全くこれっぽっちも可愛くない。

顔やスタイルはファッション雑誌に載るくらいだというのにだ。

 

不機嫌にたったか歩いていくのを自転車を押しながらとっとこついていく。

なんで着いていなきゃいけないんだろうと疑問に思いながらも、諦めて着いて行く。

あまりの速さに少し距離を離されるのでストーカーの如く尾行する羽目になる。通報しないでね?

昨日と同様にレジ前は混んでいた。

やがて順番が来て、当然のごとくマッククルーに問われる。

 

「ご注文をどうぞ」

 

結局注文まで一言も話すことがなかったので、2人で並んでいた。

飲み物なんにすんの、という言葉すらかけにくいくらいむっつりしている。

注文する素振りもないので、俺が頼むんだろうな……。

 

「えと、ハッピーセット1つと、俺はてりたまバーガーのセットを……って痛ってえ―――?」

 

足を踏まれた、さっきより強く。

涙が出るくらい痛い。

 

「何違うもん頼んでんのよ!? ハッピーセットしかないっしょ!」

「おい、昨日は俺もハッピーセット頼むのかって言ってなかった? 2日続けて同じもの食うの嫌なんだよ、いいだろ別に俺の注文なんだから」

「はあああ!? 2つ注文しないとカブる確率上がっちゃうじゃん!」

 

声がでかい声が。

昨日よりも周囲の目が痛い。

バイトのおねーさんの目は怖くて見れない。

モデルとかやってると注目を浴びるのに慣れすぎるのかしらん?

俺もうこの店来れねえよ……。

高坂は俺の発言権はないとばかりに、勝手に話し始めた。

 

「プリキュアのハッピーセット2つ、両方チーズバーガーでコーラね」

「ちょ」

「なんか文句あんの?」

「ないです……」

 

せめて飲み物は変えたかったのに……。

足の痛みが引かないこともあって、その場で待つ。

今日は高坂は先に席を取りに行かないようで、2人で待つ形に。

ちらちら見られたり、指を指されたりしている。

居心地悪いなあ……。

 

「ハッピーセット2つでお待ちのお客様~」

「は~い♪」

 

機嫌よく手を上げてトレーを受け取る高坂。これが外面か!

確かに完璧に猫をかぶってるが、今更にも程があるだろ。もう周り全員に本性バレてるんだけど?

高坂がトレイを持っているので、俺は空いている席を探す。

100人は座れそうかと思われるスペースでもなかなか空いていない。

混んでいるが、なんとかエリアのど真ん中のぽつんとした二人がけ席に空いているところを見つけた。

ささっと座って、高坂に合図を送る。

 

ちっ

 

舌打ちが聞こえた。なんで?

 

「ソファー席取んなさいよ、このグズ」

「お前、逢坂大河みたいな言い草するね」

「は? 誰それ」

 

とらドラ知らないのかよ……。

こいつ、知識の偏りがあるな。ラノベは読まないのかしらん。

当然だが、ソファー席は空いていない。

高坂は不満げに座った。

昨日はひたすら俺が相槌を打っているだけだったが、これから会話をしていくに当たっては、調査が必要だな……。

 

「なぁ、高坂。好きなジャンルとかメディアを聞いてもいいか?」

 

そう質問すると表情は激変、よくぞ聞いてくれたというように目を輝かせる。

 

「そっか、そっかー、気になるかー」

 

勿体ぶって腕を組み、うんうんと頷いている。

若干ウザいが、まぁ、機嫌がいい分にはいいか。

なんとなく海老名さんとは異なる趣味な気がしてはいるが、いまいち要領を得ていない。

コーラを口に含むと、冷たさが心地いい。

 

高坂は気持ちが高ぶったのか立ち上がって、ギレンの演説のように拳を握りこんで大きな声で叫んだ。

 

「エロゲー! あたしエロゲーが大好きなの! 特に実の妹とヤっちゃうやつ!」

 

ブッフゥ―――――!

 

「ああっ、あんた何コーラ吹いてんのよ!?」

 

げっほげっほ、あ、器官に入った、苦しい、死ぬ。

 

「お、お前何を叫んじゃってるかわかってんの?」

 

なんとかそれだけのセリフを漏らす。まだ肺にダメージがある。

 

「何? あんたそういうの駄目とかキモいとかいうタイプなの? そういう奴じゃないと思ってたケド」

 

露骨にがっかりしたという表情になる高坂。

 

「そういうことじゃねえよ、周りを見ろ」

「あ」

 

舞台演出かと思うくらい、静けさの中で高坂だけが注目を浴びていた。

彼女1人だけがスポットライトでも当たっているかのようだ。

そりゃそうだ、舞台女優だとしても目立つくらいの美少女が大声でとんでもない事を叫んでいるのだから。

エスポワールよりもざわ・・・ざわ・・・しているぞ。

 

両手のひらを地面に向けて押さえつけるようにジェスチャーで座れと伝える。

そのまま、どうどう、落ち着けとゆっくり手を上下に振る。

状況がわかったのか、顔を赤くして、歯を食いしばっている。ぐぬぬとでも言いそうだ。

 

しかし、CLANNADは全年齢だしAirもアニメやコンシューマ版があるわけだが、もしやとは思っていた。

それにしてもファッション雑誌の読モをやってる派手な女子高生がエロゲーやってるとは……。

俺は少し前に乗り出して、殊更に声を小さめにする。

手を口に添えると、高坂も少し耳を近づけた。綺麗な耳に、ピアスの跡がある。

 

「あのな、ファミリー層や中高生の多い平日夕方のハンバーガーショップで目立つルックスの女子高生が大きな声で叫ぶような言葉じゃねえんだよ、わかるか?」

「……うっさい、わかるわよ」

 

少し恥ずかしそうに答える高坂。

ちっとは冷静になったか。

話題を変えてやらないと、ずっと恥ずかしいだろうな。

 

「あけるりの麻衣もわかるか?」

「……けよりなでしょ? リースちゃんも可愛いけど」

「あぁ、やっぱお前は可愛い子好きなんだな」

「そうよ」

「妹キャラならなお良いと」

「そ」

「羽瀬川小鳩は知らないのか?」

「知ってるに決まってんじゃん、絶対星奈よりあたしの方が小鳩ちゃんを愛してっかんね」

 

ほーん。つまり名作とか有名なタイトルか、ということではなく美少女、特に妹が出てるかどうかなんだな。

 

「じゃあシスプリも好きなのか?」

「あんたそれ、朝まで会話が止まらなくなるんだケド?」

「そりゃ、女子高生の朝帰りの理由としては残念すぎるな」

 

ふひひと笑う高坂は、まるで秘密を共有している悪友のようだった。

ひそひそと話している間に、俺達はすっかり意気投合していたのだ。

 

ポテトを食べ終わり、コーラが溶けた氷で薄くなっても、取り留めの無い会話が終わることはなかった。

 

 

 




さて、エンゲージプリンセスやらなきゃ!
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