他所の妹が小町より可愛いわけがない   作:暮影司

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やはり俺たちの露天風呂は間違っている

桃鉄を中断した俺たち。当たり前の話だが、桐乃は黒猫と女湯へ。俺は京介氏とともに男湯へ。

俺たちは身体を適当に流して、露天風呂に入っていた。温泉旅館に来たのだから、露天風呂に入らないわけにはいかない。

 

京介氏は頭に絞った手ぬぐいを乗せ、右斜め前で背中を見せている。洗った髪はオールバックになっており、少し大人っぽくてカッコイイな……。

しかし俺は別にカッコイイ男に興味があるわけではない。ただし天使のような男には興味がある。ここにいるのが戸塚だったら良かったのにね。なんで戸塚と一緒には入れない運命なの? 時をかける八幡なら戸塚と風呂に入れるまでタイムリープするまである。

 

ちなみにこの温泉旅館にサウナはないようだ。

残念だ……。本当に残念……。整わない……。

もし俺が異世界に転生したらサウナーマスクとして活躍し、スパ銭を作るためにクエストをこなすまである。旗揚げ!サウナみち!

 

そんなどうでもいいことを考えながら、湯気越しに外を見やる。小さくときおり聞こえてくる黄色い声。まだ露天風呂には入っていないのだろうが、ものすごく通る。間違えようもない桐乃の声だ。聞いていないふりをするためにも、遠くを見るのだ。

「ひろーい」とか「他に誰もいなーい」とかどうでもいいようなセリフだが、なぜか聞き逃したくない気持ち、大切にしたい。

 

「八幡くん」

「……なんすか」

 

背中を見せたまま声をかけてきた京介氏。

実は耳を澄ませていることがバレたのかな……。

ちょっとどきどきしつつ、平常心をよそおう。

 

「覚悟はいいか? オレは出来てる」

 

何の……?

何の任務を遂行するの? 部下を守る必要あるの?

あと、なんでそんなにブチャラティがサマになるの?

ドドドドドドという効果音が目に見えるような態度で振り返った京介氏は、人差し指をぴ、と立てながら

 

「覗こうか!?」

「妹の風呂を覗きに誘う兄貴がどこにいんだよ!」

 

柄にもなく大声でツッコんでしまった。

いや、こういうときにそういうことを言い出すやつは少なくない。戸部とか絶対言う。だが、事情が違いすぎるだろ。

自分の妹と彼女だぞ?

それを俺に見られるってどうなの?

「正気ですか!?」という目で見ているケンドーハチマンに余裕で肩をすくめる京介氏。

 

「へ~、八幡くんだったらどうすんだ? 例えば俺が君の妹の風呂を覗こうという提案をしてきたら?」

「そうですね、死ぬリスクをおかしてまで聖なる弓矢を使用してスタンド使いに目覚め、アリアリアリアリアリーベデルチって感じですね」

「シスコンだねぇ~」

「あんたにだけは言われたくないっすよ……」

 

妹への溺愛エピソードは今更紹介するまでもないが、俺でもドン引きするレベル。

京介氏は自分では「俺は高坂京介、ごく普通の大学生だ」とか思ってそうだが、実際はとんでもない。

大体、あの高坂桐乃の兄である時点で普通の存在なわけもない。小町のような世界の妹とはわけが違うんですよ。

 

手でお湯をすくい、ぱしゃりと顔にかける。硫黄の香りがすんと鼻をつく。

確かに温泉旅館で露天風呂ってなれば、覗きに行くか、うっかり男湯と女湯を間違えるか、途中で女の子が入ってきてしまってお湯の中に隠れるか、そのへんが定番だろう。しかしそれはラブコメの話であって、現実の話ではない。

これがゲームであれば俺が見ていなくても、ユーザーにはイベントCGがプレゼントされるだろうが、そういうわけでもない。

しかしせめてラジオCDだったら……などと妄想していたところ、本当に隣から二人の声が聞こえてきた。すぐ後ろの竹でできた柵の向こうにやってきたようだ。なんとなく、息を殺す。京介氏も目を閉じ、口を真一文字に結んでいた。

 

「あんた、意外にあるじゃない」

「それはこちらのセリフよ……って、ちょっと、あまりじろじろ見ないで頂戴」

 

いいじゃないかいいじゃないか、そういうのでいいんだよ。こういうキャッキャウフフなやりとりを聞きたかったんだよ。これこそ正しい青春ラブコメなんだよ。

 

「でもさ、乳輪黒くない?」

「黒くないわよ! 失礼ね!」

 

あっれー? なんだろう。なんか思ってたのとはちょっと違うな。どう違うかって言うと俺の顔が赤くなるべきところが、青くなってるところかな?

京介氏もなにやらダメージを受けているように見える。彼女の乳首が黒いとか、そりゃショックだよな……。でもまだ見たことなかったんですね?

 

「桐乃は……まぁ結構ピンクね」

「でっしょー!?」

 

ピンクなのか……そうか……。

 

「よかったな、八幡くん」

 

よかったなて……。

自分の妹の乳首の色の話題する? 俺は一生御免だね。

続けて黒猫の声が聞こえてくる。

 

「でも下の毛が多くないかしら」

「はああああああ!?」

 

俺は天を仰いだ。空はこんなに青いのに、風もひんやり心地よいのに、太陽もいい感じに傾いているのに、どうしてこんなにやるせないの。

いや、別にいいんですけどね。きりりん氏の下の毛がもりりんしてても。クリリンみたいにツルルンしてなくても全然いいんですけどね?

 

ぽん、と肩に手が載せられる。

高坂の兄貴は気にするなとでも言うように、優しい表情で俺を見ていた。

自分の妹の陰毛が多いことで人に同情する? 俺は来世でも嫌だね。

桐乃は反論を試みているようだ。

 

「そういうあんたは、あんた……ってパイパンじゃない!?」

「ちょ、ちょっと桐乃……!?」

「なんで、なんで!?」

「やめ、やめて頂戴。そんなにじっくり見ないで」

「あ、これ、生えてないんじゃなくて剃ってる!」

 

うーん。

 

「うーん」

 

俺も京介氏も、腕を組んで目を瞑る。こめかみを抑えたり、目の付け根の当たりを揉んだり、せわしなく困惑する。

なんというか、なんといっていいかわからん。

「剃ってくれて嬉しいですね」って言うのも変だしな……。「羨ましいですよ」ってのもおかしいしな……なんも言えねえ……。

そもそも想像することがマズいんだよなあ……。無いところもマズいけど、剃ってるところなんてヤバイんだよなあ……。でも俺の想像なんてアニメみたいに湯気とか強い光とかで結局肝心なところは見えないんですけどね?

 

「はぁ……もう上がるわ」

「ああ、あたしもー」

 

もう終わりかよ!

 

なぜだ……。普通はさ、お互いに肌を褒めて、そのあとおっぱいを揉み合って、ひうんとかはうんとか嬌声が聞こえてくるっていうのが定番なんじゃないのかよ……?

そんなことを思ってお湯をぶくぶくさせていたら、隣の京介氏はがばっと湯船で立ち上がり、拳を握って吠えた。

 

「おっぱい揉み合いっこしないのかよー!?」

 

かよー、かよーと箱根の山の方へ消えていく木霊。天下の険も困惑ですよ。函谷関もぽかーんですよ。

あー、口に出して言っちゃうんだ、この人……。いや、思ってたよ? 俺も思ってたよ? でも思ってても言わないことってあるよね?

っていうか妹と彼女が胸を触りあってる声なんて聞きたいか?

……聞きたいな。ごめん。ほんとごめん。各方面に対してごめん。

 

「なっ、何言ってんの、兄貴のアホー! 死ねーっ!」

「京介、後で話があるから覚悟しておいて頂戴」

 

ほら、怒られた。そりゃそうだろ。

頭を抱える京介氏。この人も大分残念な人だな。

 

 

そもそも本当なら、三浦と由比ヶ浜が隣にいるべきなんだよ。

 

「ってか、マジで結衣ってデカイよね。ずるいんだけど」

「ずるいって……ははは……」

「この、うらやまけしからん、これが、これが」

「ちょ、優美子、ちょっと、だめ、だめだって~!」

「うりうり」

「はあん、はあ、んも~、こっちだって~」

「え、あーしはいいって、そんなに大きく、な、な、なーっ? ちょ、結衣、うまくない?」

 

……いかん。

別の世界線の俺が羨ましすぎて、涙が出てきた。

 

隣を見ると、京介氏も同じように泣いていた。何を見ているのかは知らないが、俺と同じような気持ちなのかしらん。

 

「あやせ……」

 

あやせ!? それだけはやめておけ! っていうか黒猫と付き合ってるんじゃないの!? 最低だこの人!

 

「女湯にいるのが、あやせと瑠璃だったらなあ……」

 

……まぁ、それは、なんというか、いいですね。うん、いい。

 

「せめて、今の二人に沙織がいればなあ……」

 

……なんかいい感じになるんですね? あの人、脱いだら凄いんですね?

 

「はぁ……」

「はぁ……」

 

遠くの山を見ているようで、脳内では女湯が見えている。

おそらく、京介氏も同じなのであろう。

 

俺たちは下半身が整うまで、しばらく露天風呂から出られなかった。

 

 

 





投稿遅くなりましたが、八幡と小町のSSを書いてました。そのうちご紹介できると思いますので、何卒。

俺ガイル最終巻読み終わった後の初めての投稿ですが、まぁサウナーマスクくらいしか影響を受けてないですね。クロスオーバーだしね。

渡航先生のトークライブも参加してきたんですけどね。まったく反映できてないというね。どうしたって私はバカなことしか書けないですね。
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