皇女戦記   作:ナレーさんの中の人

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次回投稿は連休明けになると言ったな?






あれは嘘だ



キィエールの休日(その2)

統一歴1925年5月某日

帝都ベルン 参謀本部

 

ゼートゥーアはため息をついた。

すぐ近くには日頃の覇気がすっかり息をひそめ、同じように黙々と書類に目を通すルーデルドルフの姿もある。

「…ゼートゥーア、気持ちは分かるが抑えてくれ。こっちまで気が滅入る」

「あぁ…、すまん。自分でも気づかなかった」

「…無理もあるまい。ここにいる連中皆そうだ」

そう言うルーデルドルフの見まわす先を見れば、なるほど、対共和国戦に勝利した時の高揚感は消え失せ、深刻な表情で己が仕事をこなす参謀たちの姿があった。

「…いや、本来はこれが正しいのだ。勝利に酔いしれビアホールに繰り出すなど、職務怠慢以外の何物でもあるまい」

「…耳が痛いなゼートゥーア。だがその通り。我らは殿下のご厚情に甘えてはならん」

 

 

殿下(ツェツィーリエ)のご厚情

 

 

それは4月18日の昼、ブレスト港襲撃を知り、揃って進退伺を提出した参謀連にツェツィーリエが出した答えである。

 

―― むしろ貴官らでも騙される事があると知って安心したわ ――

 

笑いながらそう言って、彼女は出された進退伺を手のひらで燃やした(術式の無駄遣い)

「そもそも今貴官らにやめられてみろ?帝国軍は空中分解するじゃないか」

「しかしながら信賞必罰は軍の依って立つところ、咎めなしでは規律が――」

「それで言ったら帝国軍全将校の3分の1が辞表を提出せねばならんが?それに、貴官らがビアホールに出撃するのを止めるどころか樽でワインを下賜した私はどうなる?」

 

結局、『あの状態では気づかないのが「普通」であり、まさか軍残党が共和国正統政府を離脱して戦闘を継続するなど誰が予想できるだろうか。むしろゼートゥーアらでも気付き得なかった共和国軍残党の動きに気づいた第203航空魔導大隊、及び作戦参加の全将兵が優秀なのだ』と皇女は結論付けた。

ゆえに。

『「普通」に職務を遂行していた参謀連を【罰】する理由はどこにもない。「異常」に気づいた彼らを経歴に関係なく一階級昇格させることで【賞】とする』

かなり無理のある理屈ではあるが、皇帝に全権をゆだねられた彼女がそう裁可した以上、これが帝国軍の結論となる。

実際問題、大勝利だったのだ。そんな中で高級将校の大量処分などやりたがる者もなかった。

 

「それに、罰は受けているではないかルーデルドルフ」

「…統合作戦本部への煙草類『持ち込み禁止』か。確かにアレはつらい」

「殿下の煙草嫌いは有名だからな。…ところでルーデルドルフ、少し話せるか?」

「ん?二人でか?」

「二人で、だ」

 

 

◇◇◇

 

 

同刻

帝国北部シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州

帝国北洋艦隊根拠地、キィエール軍港

 

「これは?」

「長距離飛行用小型航法装置の試作品。量産は夢のまた夢だが…。そうだな、君にやろう」

「おお、ありがたい。こういうのが欲しいと思っていたところだ」

「それは良かった」

 

ライプツィヒを後にして、上司とともにとある建物を訪れたセレブリャコーフ中尉(・・)は表情を綻ばせていた。その視線の先には、年相応な笑顔で会話を楽しんでいる直属の上司の姿がある。

 

「それにしても、お二人は本当に仲が良いのですね」

「まぁね。私のアイディアを最高の形で実行に移してくれる得難い友人だとも」

「仲が良いのは認めるが……」

 

設計室らしき部屋に入り、腰かけながら言葉を濁す自分の上司に、ヴィーシャは首を傾げる。どう見ても仲が良いのは明らかなのだが…?そんな思いが表情に出ていたのか、ターニャは溜息をひとつ吐いて続ける。

 

「貴官だから言うが、これでも私は出世欲が強い方でな」

「はぁ…」

―― 志願するくらいだから、そういうのがあってもおかしくはないのでは…? ――

「で、だ。この銀翼突撃章で殿下とお知り合いになれたから、名前を売っておこうと思ったのが運の尽きだ」

「運の尽きとは失敬な」

「ほう?休みなしで酷使される現状が幸運だとでも?」

「いや、うん。本当にそこはすまないと思っているのだ。ただ…」

「ただ?」

 

「…203ほどの部隊はないというのが現実でね」

 

「恐れながら、あれほどの艦(ライプツィヒ)を造る皇女殿下の才幹があれば、我々203と同等の部隊とてお作りになれると思うのですが…?」

「買いかぶりすぎだよセレブリャコーフ中尉。

…では問うが、君たちが受けた選抜試験と訓練。あれをクリアできる魔導師がこの帝国に何人いると思う?」

「…あっ」

「順調に感覚がマヒしているようでなにより。加えて言うと、あれで『死なないように調整できる』編成担当者がどれだけいると思う?」

「…全く見当がつきません」

「私も同感だ。つまり、君たちは唯一無二の精鋭であり『再現不可能』なのだよ」

「…使い勝手のいい任務部隊(タスクフォース)を作れという君の意向に沿っただけだぞ?」

「その通りだとも。…ただ、余人をもって代えがたいというのが現実でね」

「…どうにかほかに作れないのか?」

「各方面軍で魔導師を抽出し、任務部隊を作らせては見たんだが…」

 

 

 

碌なものが出来なかった、と皇女はため息をついた。

 

 

 

「そもそも使える魔導師を『抽出』してくれる人格者はそうそうおらん。…結果、出来上がるのは素人の集まりばかり。参謀連も頭を抱えているよ」

「東部方面もか?あそこはまだ若干の余裕が…あっ」

「気づいたようだな。そう、君がやったあの面接試験の時よりは多少マシになったとはいえ、一年も経っていないのに質が劇的に向上するわけもあるまい?」

「…海兵魔導師を所属替えするのは?オースフィヨルドで共闘したが、それなりの練度だったぞ?」

「本気で言っているのか?ただでさえ割り当ての少ない、しかも洋上航法をマスターした貴重な魔導師を海軍が手放すとでも?それに彼らには彼らでやってもらうこと(・・・・・・・・)がある」

 

「…いよいよ203の代わりはないという訳か」

「その通り。そして悪い知らせだ」

皇女は懐から一枚の紙を取り出す。

「…これは?」

「数日前、駐秋津洲皇国大使(・・・・・・・・)から届いた緊急電だ。読んでみろ」

「小官も見てよろしいのですか?」

「ああ、むしろ見て、覚悟をしてもらいたい」

「…いやな予感しかしないな」

 

果たして、そこに書かれていたのは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秋津洲皇国とルーシー連邦が講和交渉を開始した、だと!?」

 

ルーデルドルフは思わず叫んだ。

だが、無理もあるまい。

 

秋津洲皇国とルーシー連邦。

この二か国の極東における相克は、子供でも知っている常識である。

古くはルーシー帝国(・・)がシベリアに、秋津洲が蝦夷に到達したころに端を発すると言われるその争いは、ルーシー革命後も引き継がれ…否、より一層激しさを増し、「紛争」「小休止」「紛争」「大休止」と言った塩梅で終わることなくずるずると推移してきたのだ。

 

それが今になって正式に講和条約を締結する?

 

いずれご破談になるのが目に見えているが、いや、目に見えているからこそ天地がひっくり返るほどの衝撃的事実である。

「シッ!声を抑えろルーデルドルフ。資料室とは言え、誰かが聞いているやもしれん」

「むしろその方が良いだろう。なぜこの情報をほかの参謀連中に伝えんのだ!?

貴様なら分かるはずだゼートゥーア。これが意味することはつまり――」

 

 

「連邦が秋津洲皇国に対処するために極東に配備している精鋭部隊を帝国国境側に回すことが可能となる。既に配置されているのと合わせ、150、いや200個師団でもおかしくないだろうな」

 

 

「それが分かっていて何故!?」

 

 

「殿下のご指示だ」

 

 

「…何?」

「殿下のご指示だ。こちらが気づいたことを連邦に気づかれないようにせよ、と」

「…なるほど。あの国の『長い耳』だな?」

「ああ。殿下曰く『赤は国境も民族も問わない。どこに潜んでいるかわからぬ不穏分子』だからな」

 

 

 

ツェツィーリエ(の中の人)は知っていた。

 

ルーシー連邦成立以前から、社会主義者は国境を越えた横のつながり、『インターナショナル』を有していた。彼らに言わせると戦争とは「上部構造が己の利益のために下部構造に行わせる殺し合い」であり「階級をなくし社会主義を打ち立てれれば――つまり革命――戦争は終わる」。

その目的のため、全世界の社会主義者は結束せよと言うのが彼らの主張であり、そのためのインターナショナルなのであった。

当然、各国の政府、資本家からすれば理解しがたい主張であり、そのために「革命」を主張する時点で「危険思想」以外の何物でもない。

 

 

「厄介なのは、その『第三インターナショナル』の本部がモスコーにあるということだ」

「なに!?初耳だぞゼートゥーア!」

「外務省の友人に確認するまで私も知らなかったよ。むしろ皇女殿下がなぜそこまでお詳しいのかが不思議なくらいだ」

「皇女殿下が『赤』という可能性は――」

「ない。何せ『本の中で終わらせておくべきゲテモノ理想主義』と言っていたからな」

 

だが、とゼートゥーアは続ける。

「我が国にも社会主義者、共産主義者は大勢いる」

「…なるほど、これは大声で言えんな。手は打っているのか?」

「信頼できる連中だけを集めた対策チームを極秘裏に作ろうとしている。貴様のところからも何人か見繕ってもらいたい」

「承知した。…しかし、連邦と皇国が手打ちなど、本当にあり得るのか?」

「普通ならあり得んだろう、普通なら」

 

 

 

 

 

「…連合王国か!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

皇女は嗤う。

 

『いよいよ連合王国お家芸「必殺多重舌外交」が本気を出してきたぞ?さぞかし旨そうなキャロットをぶら下げたに違いない』

 

とある「命令」を持たせて先に帰営させたセレブリャコーフ中尉の退出後、皇女と幼女は苦笑した。

 

『ジョンブルお得意の手だな。察するに帝国東部、それとダキアか』

『ああ。そして秋津洲にはライヒ領ニューギニア(・・・・・・・・・・)あたりをぶら下げているだろう』

 

ライヒ領ニューギニア。秋津洲風に言いなおせば【南洋諸島】。

統一歴1880年代に始まるその植民地支配は、帝国に様々な戦略物資をもたらした。代表的なところではボーキサイトとリン鉱石があり、それらは連合王国の参戦によって海上交通路が遮断された今では帝国本土に届かなくなっているが、立派な権益であった。

 

『あの国の外交努力はろくでもないな。さすが中東紛争の大元凶となっただけはある』

『全くだ。さすが麻薬密売を取り締まられて戦争を始める国は一味違うぜ。

…コホン。現状、秋津洲皇国が参戦したとしても、大西洋まで出張ってくるとは思えんが、ルーシー連邦が東方の兵力を引き抜き、軽く200個師団を帝国国境に配備できるようになるだけで十二分に厄介だ』

『…知っていたが、あの国の兵数は化け物だな…。手はないのか?』

『残念だが、秋津洲皇国とは国交こそあれ友好関係は結んでいない。

逆に連合王国や合州国を刺激しかねんし、まかり間違って真珠湾攻撃でもされて合州国が嬉々として参戦してきたら悪夢だからな。…杞憂だった気もせんではないが。

それと、私の予想ではチャーブルは秋津洲皇国に対し、フランソワ領インドシナ(・・・・・・・・・・・)も提示するだろう。秋津洲本国、高砂島とシンガポールを結ぶ航路にあたるあの地を、あの男が放置するとも思えん』

『馬鹿な。先日までの同盟国………。メルセルケビールか!』

 

 

メルセルケビール海戦。

西暦世界の1940年、西方電撃戦に伴うフランスの対独講和(つまり敗戦)を受け、フランス海軍の艦隊がドイツの手に下り、イギリスのシーレーンを脅かす存在になることを危惧した大英帝国は、『昨日までの友軍に砲火を向けた』。

結果としてフランス側の戦艦一隻が撃沈、2隻が中破、およそ1300名の将兵が『昨日までの同盟国』によってあの世へと旅立った。…なお、英国側の損害は航空機5機程度と伝わる。

 

 

『この世界のチャーブルがあの世界のチャーチルならやるだろう。

自由共和国の目論見が潰えた以上ためらう理由も薄い。そもそもド・ゴールがいてもやったくらいだ。この世界ならば間違いなくやってくれるだろうよ』

『それが分かっていて、統合作戦本部は何もしていないのか!?』

『それはそうさ――

 

 

 

 

 

 だ っ て 知 ら せ て な い も の 』

 

 

 

 

ぞくり

 

ターニャの背筋を何かが走った。

嫌悪?恐怖?

分からない。

分からないが、その原因が目の前で嗤う皇女殿下であることは分かる。

 

『何を言っている…?』

『知らせてないと言ったのさ』

『何故そんなことを…。フランソワ海軍の艦艇は現物賠償の対象だっただろ?』

『そういえばそうだったな』

 

にやり、と面白そうに笑う皇女を見て、ターニャは嫌な予感がした。

経験から言って、この皇女が嗤うときは碌なことはない。

 

『なぁターニャ?君が共和国市民だったとして、昨日までの同盟国に刃を向ける連合王国をどう思う?

その状態で帝国が《卑劣極まる連合王国の蛮行に抗議する》としたら?

《確かに共和国は先日までは敵であったが、その戦いぶりは実に英雄的で誇り高いものだった。敵であれ戦士には敬意を示すのは、武人として当然のことである》

《翻って恥知らずなアルビオンのなす事よ。あれは武人にあらず、犯罪者なり》

《かかる傍若無人な殺人者の凶弾に倒れた勇敢なる共和国軍兵士に哀悼の意を表する》

…他にもいろいろ言いようがあると思わないかい』

 

 

 

 

 

 

連合王国最大の誤算は、帝国にこの皇女がいたことであろう。

 

連合王国から言わせれば『帝国は外交の何たるかを知らぬずぶの素人』であり、『あいつらは戦争上手だが、それしか知らない』のであった。

これは各国の外交当局者が帝国について抱く共通認識と言ってよいくらいには有名な話であった。

そしてそれはこの国が『若い統一国家』であることに起因する。

まず、外国勢力の干渉をはねのけつつ、いくつかの諸民族、国家を統合していく過程では10年単位の根回しを必要とするような外交をやっている余裕はなかった。

加えてそもそも帝国(とその母体)はその国力、軍事力で周囲の国より頭一つ抜きんでており、それを梃子に統一を成し遂げた歴史がある。要するに、『軍事的勝利ですべてを解決する』のに慣れてしまっていたのである。極端な話をすれば『外交=戦争の後始末をつける事』に過ぎない。

 

およそ60年前、帝国開闢期の名宰相もこう言っている。

―― 現下の大問題の解決は、演説や多数決によってではなく、(武器)(兵士)によってなされる ――

 

この有名な鉄血演説の後、あまたの試練と困難を乗り越えてライヒは帝国の下に統一された。

その『成功体験』があまりにも強烈すぎたがゆえに、帝国にはあらゆる問題を軍事力で解決する癖が染みついてしまっていたのである。

外交を、言論を軽視し、軍事的勝利によってすべてが解決されると信じるその様はいっそ「純真」もしくは「ピュア」と言って差し支えないレベルにまで到達していた。

 

またこう言った軍人もいる。

―― 戦争とは、政治の延長である ――

これは「政治は軍事に優先する」に通底する意味合いの言葉であるが、同時に、帝国において政治と軍事が極めてシームレスな関係にあったことも反映している。

 

ゆえに、連合王国の口さがない連中に言わせればこうなる。

―― 帝国は軍隊の中に国家があり、戦略の中に外交がある ――

 

だが、ツェツィーリエはそのDNAを受け継いでいない。

 

その中身はミリオタではあるものの歴史学者であり、戦争と外交、合理性だけでは説明できない大衆心理による歴史、理想と現実…。そう言った実例の数々を2000年単位で通覧し、研究し、実感し、その上で軍事力の必要性を知る存在である。

 

そんな彼女に言わせれば、こうなる。

 

 

―― 大衆心理、世論ほどの劇物は存在しない ――

 

 

 

 

 

『…これまた悪辣だな、共和国民は反帝国どころか、反連合王国になるだろう』

そのとおり。

もともとフランソワとアルビオンは歴史的に仲が良いとは言い難い。その友好関係を崩壊させ、共和国内でのパルチザン活動の弱体化を招けるなら、賠償減を補って余りある成果だ。

しかも帝国の手を汚さず、帝国臣民の血も流さずに連合王国の蛮行によってそれがなされるならば――

 

 

 

 

む し ろ 大 歓 迎 だ 』

 

 

 

 

 

メルセルケビーク海戦

出典:フリー百科事典『アカシッ〇・ペディア』

 

メルセルケビーク海戦(メルセルケビークかいせん、Attack on Mers-el-Kébik)または「メルセルケビークの惨劇」は、大戦でのアルビオン連合王国海軍とフランソワ共和国(ヴィシー・フランソワ)海軍との間の海戦。

 

【背景】

帝国軍の『春の目覚め』計画の成功により、1925年5月3日フランソワ共和国は事実上降伏した。連合王国首相チャーブルは、フランソワ海軍の艦隊が帝国の手に下り自国のシーレーンを脅かす存在になることを危惧した。

これ以前、連合王国はこれらの艦隊が『自由共和国軍』の主戦力になることを期待していたが、『自由共和国』建国の見込みが4月18日の「ブレスト港襲撃」で潰えたため、次善の策として、これらを自軍の指揮下に入れるか、無力化するための作戦計画を実行したのである(【カタパルテ作戦】)。

 

【推移】

5月13日、ソレヴィル中将率いる連合王国地中海H部隊がジブラルタルを出撃した。5月14日朝、H部隊はメルセルケビーク沖に到着した。

この時、メルセルケビークにはフランソワ海軍第3艦隊司令長官ジャンゴウ中将麾下の戦艦部隊及び水雷戦隊が所在していた。

 

午前6時、連合王国のホランド大佐がフランソワ軍に対し5つの選択肢からなる最後通牒を手渡した。内容は以下の通りである。

 

1:再び連合王国側に加わり帝国軍と戦う。

2:艦艇を連合王国の港(ジブラルタル等)に回航し、引き渡す。

3:合州国の港に向かい、そこで武装解除する。

4:自沈する(6時間以内に回答なき場合)。

5:連合王国海軍と戦闘を交える(6時間以内に回答せず、かつ上記4を実施しない場合)。

 

フランソワ側からすれば、(1)と(2)は休戦条件違反となりかねず(残存艦を現物賠償に当てる方向で交渉が進められていた)、代わりの現物賠償としてなけなしの本国残存艦艇、もしくは金銭賠償を求められかねなかった。

また(5)も、この時点ではまだ味方意識の残る連合王国とは戦闘を行いたくなかったため、選択することは出来ない。

残された選択肢は(3)と(4)であったが、これも海軍本部に無断でできる事ではない。このため連絡を試みたがこの日は異様に通信状態が悪く―― 帝国の陰謀とする説もある(皇女殿下がやりました) ――、結局海戦終了まで本国との通信は回復しなかった。

このため、午前9時にフランソワ側は交渉役のホランド大佐に対し、「フランソワ艦艇が帝国の手に渡る事が無いことを保障すること、さらに我が艦隊は不当な攻撃には武力を持って反撃をする用意があること」を申し入れ、明確な回答を避けた。これに対し、連合王国側は明確な回答がないことを口実として――

 

――11時30分を以て総攻撃を開始した。

 

前述のとおり、共和国艦隊は港内に停泊した状態であり、大型艦はこの短時間では出航することもままならず、小型艦は湾外に敷設された機雷、もしくは待ち受けていた連合王国海軍に次々と撃沈された。※被害状況一覧は「こちら」

そのため、今日においてもフランソワ共和国の一部においては『海戦ではなく、国際法に照らしても違法かつ一方的な虐殺であった』として連合王国に賠償を求める声がある。

 

【結果】

連合王国は戦術的勝利を得、地中海西部の制海権をほぼ手中に収めたが、戦略的にはフランソワ共和国の世論を完全に帝国寄りとしてしまった。

これは本攻撃を受けて帝国が昨日までの敵国であるフランソワ共和国に哀悼の意と連合王国に対する非難声明を発表し、代わりの現物賠償を求めなかったことも大きい。そのためこの攻撃は戦略的には失敗だったという見方が有力である。

 




社会主義に関する話が出てきますが、突っ込みどころ満載なのはスルーしてね(おい
旅行先の温泉の効能か、筆が進む進む。
なおのぼせた模様(おい


◇あれ?日英同盟は?
どうもルーシ帝国がロシア帝国以上に早い段階で弱体化、崩壊してるようなので同盟まで進化しないんじゃないかな、と。

◇インターナショナル
名前の響きが実に良い(筆者の感覚)。なお各国政府としては洒落にならん代物。
なお、結局内ゲバで分裂したり(第一)自国第一主義(城内講和)で崩壊したり(第二)、ソビエトの連合国参加(つまり資本主義国家との同盟)で消滅(第三)したりする模様。
でもでも!8時間労働制を主張したのは第二インターナショナルだから無意味じゃないと思うんだ!思いたい。思わせて(哀願

◇仏印進駐
この世界では欧米の反発を招くどころか、連合王国が諸手をあげて歓迎してくれるようです。やったね秋津洲!安全に仏印とニューギニアを獲得できるよ!!

◇メルセルケビール
結果はだいぶ違いますが、英国がやったこと自体は
『現実です…。これが現実ッッッ!!』
筆者の場合「初見のときはすぐに理解できず、少し経ってから理解が追い付き、ジョンブルの所業に戦慄した」代物。さすが麻薬密売を取り締まられて戦争をしかける国は一味違うぜ

Q:あれ?戦艦の大改修がいるって状態なのに、連合王国地中海艦隊動いてるの?
A:フランソワ残存艦艇相手ならば十分と判断されました(無慈悲)。


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