今回は「東部軍から見た戦闘団」がテーマです
統一歴1926年9月26日
連邦西部スモレースク近郊
帝国陸軍東部方面軍中央管区 第2装甲軍
「…ままならんものだな」
「ええ」
前線視察中の第2装甲軍司令、ハンス・クデーリアンは呟いた。
彼が双眼鏡越しに睨む先では、連邦兵が立てこもる都市が砲煙に包まれていた…。
そもそも、電撃戦の要諦は「機動戦」にある。
航空部隊と砲兵隊の援護のもと敵の弱点を突破し、機械化戦闘部隊の高い機動力を以てただちに敵の側面と背後に戦力を展開して包囲殲滅する。これが電撃戦である。
だが、この戦法は統一歴1926年秋になると切れ味を失った。
最初に兵站の問題が持ち上がった。
なにしろ装甲軍は機械化部隊である。つまり、燃料と弾薬を従来の歩兵部隊とは桁違いのスピードで消費する。
しかも機動力が高いものだから、補給線の構築が間に合わない事態がまま発生した。
この問題は、特に第2装甲軍では顕著であった。
何故なら司令官クデーリアンが「速度こそ電撃戦の命」と言って憚らない根っからの運動戦主義者だったから、
余りに補給を無視したその闘いぶりは、それを目撃した同僚から「貴官の作戦は常に一本の絹糸にかかっている」と窘められたほどだったという*1。
次に問題となったのが都市制圧戦である。
都市は建物が密集し、兵が潜む路地が入り組んでいることから、そもそも機甲師団とは相性が悪い。もちろん帝国軍とて無能ではないから、「強固な防御拠点は迂回し、弱点を一点突破する」という電撃戦の大原則に従い、都市を迂回しての進撃を実行。
この方法は先のフランソワ共和国戦でも実施され、『アラス包囲戦』を現出せしめたのだったが…。
「何故だ!?なぜ進めない!?」
「道が悪すぎるのです!先頭集団はともかく、後続部隊が泥に捕まっています!」
「なんということだ!」
そう、ここはフランソワ共和国ではなくルーシー連邦。
一歩市街地を離れれば舗装された道は絶無に等しい。なにしろ帝国基準で「舗装された郊外道路」と言えるのはモスコー街道一本という有様なのだ!
かくして、機動戦術は破綻した。
クデーリアンら帝国軍指揮官たちは、市街戦に不向きな機甲師団でもって都市を制圧しなければならないという事態に直面することとなったのである。
…皮肉なことに、この停滞によって兵站状況は大幅に改善―― 鉄道の敷設が追い付きはじめた ――されたのだが、クデーリアンにとっては何の慰めにもならなかっただろう…。
◇◇◇
ぼやきながら装甲軍司令部に戻ったクデーリアンに、従兵から手紙が届けられた。
「手紙だと?」
「ハッ、参謀本部からでありますが、『私信』とのことで…」
「珍しいこともあるものだ。参謀本部から私信だと?」
首を傾げながら封筒をひっくり返すと、そこに書かれた差出人の名は『コーデリア・フォン・アルレスハイム』。
クデーリアンは嫌な予感がした。
表向き、彼とアルレスハイム大佐の関係は「共同研究者にして友人」だが、その正体からしてクデーリアンとは住む世界の違う御仁である。
『知らない方が幸せだった』と当時の彼が嘆き、『酷い言われようだね』と当時の彼女がにやりと笑った程度には、彼は彼女に振り回された記憶がある。
…いやまぁ、彼女と言う理解者の後押しがあったからこそ、機甲師団は実現したのだ。その点は感謝している。大いに感謝しているのだが…。
「…このタイミングでの私信。…嫌な予感しかしないな」
「奥方にばれた、ですかな?」
「分かっていて言っているだろう参謀長」
「ハッハッハッ」
笑って誤魔化す参謀長に苦笑しながら、クデーリアンは手紙を開く。
そこには――
「…ほほぅ。参謀本部も突飛なことを考えるものだ。…君も見たまえ、参謀長」
「ハッ、拝見いたします。…『戦闘団』?」
「そうだ、上は『戦闘団』なる新たな戦闘単位を造ったらしい」
「なるほど。数は…、ほぉ…、航空魔導大隊に地上部隊が1個半大隊ですか。妙な規模ですな」
「いいや、違うぞ参謀長」
「というと?」
「こいつは極めてコンパクトかつパワフルな戦闘単位だ」
クデーリアンは感心していた。
コイツを考えたヤツは実に柔軟な思考回路を持っているに違いない、と。
「たしかに規模は小さい。だが、その分、装備が実に恵まれている。驚け参謀長、この戦闘団、
「なんですと!?」
参謀長が驚愕したのには訳がある。
実はこの時代、「装甲軍」とは言いながら、機械化率は半分より少し多い程度である。
そんな馬鹿なと思われるかもしれないが、この状態は西暦世界の第二次大戦でも同様であり、
ほかの国は戦車部隊はともかくとして、それ以外は馬匹も相当数含んでいたのである。帝国陸軍第2装甲軍とて例外ではない。
だが、アルレスハイム大佐からの手紙にある『戦闘団』は違った。
1個戦車中隊、1個自走砲中隊、1個機械化歩兵大隊―― いわゆる、装甲擲弾兵大隊 ――と言うコンパクトさゆえに完全機械化を達成しており、歩兵ですらも装甲戦闘車又はハーフトラックに全員乗車可能という、クデーリアンら装甲軍司令官垂涎の装備内容となっていたのである。
「――しかも戦車はⅣ号の
「いやはや、羨ましい限りだな」
「全くです。こんな妙な部隊をつくる余裕があるならば、我々に新型車両を配備するべきでしょうに…」
「それが出来れば苦労しない、といったところなのだろう」
クデーリアンは数年前、帝国の装甲車両製造の実態を視察する機会があった。
ゆえに戦車だけならいざ知らず、自走砲や歩兵用の装甲戦闘車をふんだんに取り揃える機甲師団、装甲軍の充足が如何に難題であるかと言うことも十分知っていた。
「――なればこそ、参謀本部も『戦闘団』というコンパクトな戦闘単位を考えたのだろう。この規模の部隊なら、完全機械化も可能であると」
「なるほど…。しかし、そうなると駆逐戦車がないことが不自然に思われるのですが…?」
「…ふむ。確かに」
それはⅣ号戦車では対処困難な重装甲の戦車を屠るために開発された、いわばスナイパーである。
…が、実のところ連邦戦初期のころまで「つくる必要あったのか、コレ?」と言われていた車両でもある。
と、言うのも、Ⅳ号戦車の8.8センチ砲は短砲身25口径とは言え、新開発の
実際フランソワ戦ではⅣ号の成形炸薬弾で十分であり、ナースホルンはもっぱら「トーチカの開口部を狙撃する」という使用法で多大な成果を上げた。
なにせ、複数のナースホルン小隊が支援を受けた歩兵連隊から叙勲申請を受け、一時は機甲科から歩兵科への移管が大真面目に議論されたほどである。砲精度が当時の帝国軍中最高*3だったから起こった事態とも言えた。
だが、連邦軍の新型戦車を前に、Ⅳ号駆逐戦車は本来の用途に立ち返ることとなる。
連邦軍の新型は装甲が厚く、当たり所によってはⅣ号戦車では撃破できなかったのだ。
これは後の調査の結果、成形炸薬弾が履帯や外装品に命中、炸裂した結果、それらが空間装甲の役割を果たして戦車本体にダメージを与えられなかったことが原因であったと判明する。
また、連邦軍の新型主力戦車『T-32』は大きさの割には足が速く―― 条件によっては時速50キロほどを発揮した ――、短砲身ゆえ弾速が遅く、山なり弾道を描く短砲身8.8センチ砲では遠距離での命中率に難があった。
無論、この問題は近づけば解決するのであるが、逆にこちらの被害も無視できなくなった。
なにしろⅣ号は生産性*4を重視し、また旧式の足回りを採用したことがアダとなって、この時点では正面装甲厚が―― 西暦世界のそれとは異なり、とある皇女の猛烈極まりない圧力で傾斜はしていたが ――最大でも50mmしかなかった。
それ以上の厚さとなると、各戦車メーカーとも装甲板製造用プレス機を新調する必要がある*5うえ、重量増にサスペンションが耐えられないと判断されたためである。
ゆえに近距離戦になれば、練度の低い連邦軍砲手の射撃でも命中するからこちらの損害が跳ね上がるのは道理と言えた。
事ここに至り、ナースホルンは本来の仕事を取り戻す。
『第7機甲小隊より支援要請!』
『直ちに急行せよ!!』
ナースホルンは防御力こそ皆無だが、遠距離からの狙撃では圧倒的強さを誇る。
弾速が速く、精度も良ければ貫通力も高いのだから当然の結果ともいえ、T-32を距離2,500mで撃破した例すらある。
そのため、このころになると、ナースホルンは帝国軍部隊にとっては必須不可欠の存在とも言えたのだが、件の戦闘団にはそれがない。
一瞬訝しむクデーリアンだったが――。
「…いいや、違うな参謀長。こいつの基幹部隊は何だ?」
「…第203航空魔導大隊…。ああ、なるほど!」
従来の機甲師団と戦闘団の最大の相違点はそこにある。
魔導師とは、絶望的に数が不足気味な兵科である。
ゆえにクデーリアン率いる装甲軍でも直属の魔導師は2個中隊に過ぎない。
しかも弾着観測の任務にもあたっているから、上空からの直協支援にあたるのはさらに少なく、文字通り雀の涙。なればこそ、電撃戦には空軍航空部隊、急降下爆撃機の支援が不可欠なのだ。
「だが、この戦闘団は全体でも連隊規模なのに、増強魔導大隊を有している」
「…恐ろしく濃密な航空支援ですな」
「全くだ。おそらく帝国一、いや世界一航空打撃力のある陸軍部隊だぞ、これは」
しかも、それが精鋭で知られる第203航空魔導大隊となれば何をかいわんや。
これならば駆逐戦車は不要だ。
戦車は比較的上面装甲が薄く、空からの攻撃には脆弱である。無論、こちら側が制空権を確保しているという前提条件が必要だが、件の大隊なら『心配ゴ無用』に違いない。
「…こうしてみると、単なる突飛な思い付きでは無さそうですな」
「ウム。考えてみれば参謀本部直轄の部隊なのだ。我が帝国陸軍の叡智の結晶たるそこがゴーサインを出すのだから、当然といえば当然か」
「確かに…。恐るべき慧眼ですな」
「とは言え、『現状では机上の空論ゆえ、実験的運用にあたって電撃戦の第一人者たる貴官の評価も賜りたく』だそうだ」
「…つまり、配属先はここですか?」
「いや、所属は参謀本部直轄のまま。ただ担当戦域が重複する形になるらしい」
「要は援軍と?」
「そういうことだ。まったく、連邦軍も哀れなことだよ」
旧友の仕業に違いない、この恐るべき陣容を目にして、クデーリアンは乾いた笑いを洩らした。これを相手にする連邦兵はご愁傷さまと言うほかあるまい、と。
「しかし、閣下」
「ん?」
「この戦闘団ですが、補給はどうなるのです?見たところ、補給部隊は付いていないようですが」
「ああ、それについてはアルレスハイム大佐曰く、『宜しく願う』だそうだ」
「……それはまた。補給将校が聞いたら怒鳴り込んできそうですな」
「君の言うとおりだな。今から頭が痛いよ…おや?」
「どうされました閣下?」
突然声をあげたクデーリアンに、ボルダー参謀長が問いかけるが答えはない。
じっと書面をにらんでいたクデーリアンだったが、ややあって呟く。
「…まったく、参謀本部は叡智の殿堂だな」
「閣下?」
「見たまえ参謀長。上はシッター代を弾んでくださるようだぞ」
「はい…?…拝見いたします」
ボルダーが見た書面、そこには
それこそ――
「…『突撃砲、もしくは突撃戦車と呼称す。密閉式戦闘室に大口径榴弾砲を搭載。本車は歩兵に対する強力な支援射撃、すなわち強固に防御された建造物や要塞化された地域を一撃で破砕するを目的とし――』か、閣下!これは!?」
愕然とした面持ちになるボルダー参謀長に、クデーリアンも重々しく頷く。
「ああ、
遡ること一か月ほど前の8月。
クデーリアンは都市制圧戦での苦い経験から、新たな装甲戦闘車両が必要であると痛感。統合作戦本部、陸軍参謀本部に上申書を送っていた。曰く――
『都市においては、そのコンクリート建築の悉くに連邦兵が潜んでいる』
『それらの完全なる破壊には、Ⅳ号戦車、Ⅳ号駆逐戦車の8.8センチ砲の榴弾では威力不足である』
『現状、フンメル自走砲の15.5センチ榴弾砲の直射にて対応しているが、同車は装甲防御に乏しく、連邦軍の対戦車ライフルはおろか、機関銃弾すら防げない。このため乗員の被害が無視できないものとなりつつある』
『以上のことから、十分な防御性能を持つ密閉式戦闘室を備えた、大口径榴弾砲を搭載する戦闘車両の開発、配備が急務である』
『参謀本部に於かれては状況をご賢察のうえ、至急対応を請う』
――それが一か月前のことである。
クデーリアンとて、新型車両がすぐにできるとは思っていなかった。
だからこそ、彼は上申書を書き上げるのと並行して、鹵獲又は撃破した連邦軍戦車の装甲板を切り取ってフンメルに溶接する現地改造を命じていたのだ。
それがまさか、一か月後には要望したものそのものズバリが24輌も届くなど、誰が予想できるだろうか!!
しかも――
「主砲は…20.3センチ砲ですと!?」
「短砲身らしいが、驚くべき大口径だな…」
15.5センチと20.3センチ。
一見、5センチ程度の違いしかないように見える両者だが、その違いは凄まじいものがある。
何しろ砲弾重量からして15.5センチ榴弾砲の約43キロに対し、この20.3センチ砲になると約80キロと、実に倍近い重さがある。当然、中に詰められる炸薬の量も多い。
これならば、いかなるコンクリート建築物だろうと一発か二発で倒壊させることも可能に違いない。
クデーリアン自身、15.5センチ榴弾砲の直射の威力そのものに不満はなかったから上申書には砲口径のことは書いておらず、実現するにしても口径はそのままだと思っていたのだ。
――それが、まさかの20.3センチである。
「し、しかし上申から一月しか経っておりませんが…」
「…我々が上申する以前から開発していたと言うことだろう。
…なになに?『元は海軍が潜水艦を遠距離から制圧するために試作していた対潜迫撃砲です』だと?」
「海軍も妙なものを考えますな…」
「全くだな。…『結局対潜迫撃砲は上手くいかず倉庫で埃をかぶっていたので、この度陸軍に所管が移りました。口径の割に弾も砲自身も軽いので、自走砲には持ってこいだと兵器局では判断しております』…。そうなのか、参謀長?」
「ハッ。20センチクラスですので、普通なら、砲弾重量は100キロを超えるでしょう」
「そりゃまた、戦車の車内じゃ取り回しが利かんだろう」
「はい、80キロでも厳しいように思われますが」
「ふむ…。『一応、かなりの重さのある砲弾ですので、運搬機構、装填機構にはいくつか工夫を凝らしていますが、実際に使ってみての評価をお願いします』だと…?
全く、参謀本部には畏れ入るばかりだな」
―― 正確には、あの方の発想の気がするが… ――
文面からでも生き生きした表情が幻視出来そうな手紙に、クデーリアンは確信していた。
絶対にあの皇女殿下の仕業だ!と。
そうでもなければ、使い道がなくなったからと言って海軍が独自開発兵器の所管を陸軍に明け渡すわけがない。海軍に強いつながりを持つ―― もはや私物化している節すらある ――殿下なればこそ、可能になった所業だろう。
「とは言え、こちらからの上申を受けて、テストを切り上げての先行量産だそうだ。むしろ要望が上がってきたのを利用して、テスト運用させようという算段らしい」
「…そりゃまた面倒な。うちには20.3センチ砲弾の手持ちなんてありませんよ?」
「それについては問題ない。乗員も砲弾も参謀本部で手配してくれるそうだ。こっちからは燃料とレポートだけで良いらしい」
「なるほど、それならばだいぶ気が楽ですな。ところで所属は砲兵隊でしょうか?」
「悩ましいところだな…」
クデーリアンが悩んだのにも理由がある。
「自走砲」と見れば当然砲兵科の所属になるだろうが、歩兵支援を主目的とするという観点から言えば「歩兵科」とも言える。
実際、西暦世界の突撃砲は歩兵支援という目的から歩兵部隊の所属、運用だった。
だが、この世界ではⅣ号戦車が何でも屋として―― 8.8センチともなれば、榴弾威力もそれなりのものである ――開発、運用されている経緯から帝国陸軍にはこの兵器の所属を明確にするものがなかったのである。
「一回使ってみないことには何とも言えんだろう」
「了解しました。では、燃料の手配だけ進めておきましょう」
「ああ、よろしく頼む」
かくして、東部戦線に配備された『突撃砲』―― 結局、射程が短すぎることもあって歩兵部隊所属となった。曰く『これは自走砲じゃない。足の付いた重迫撃砲だ!』 ――は、その威力でもって都市攻略戦で絶大な威力を発揮することとなる…。
突撃砲『ブルームベア』
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突撃砲 (とつげきほう、独: Sturmgeschütz、略称:StuG) は、先の大戦中にライヒ帝国陸軍で開発された歩兵支援用の重自走砲である。制式番号は Sd.Kfz.72。Ⅳ号戦車の車体をベースに大口径榴弾砲を搭載した車両である。
【概要】
本車両のコンセプトは、統一歴1917年ごろには存在したものとされる。
当時の帝国陸軍では、将来の戦争においてはトーチカや機関銃陣地などの堅牢な陣地が歩兵部隊の前に立ちふさがるものと想定していた。
これに対し、砲兵隊の支援射撃は敵味方が近接した状況下では同士討ちの危険があり、また歩兵が携行する迫撃砲では命中精度に難があるという問題があった。この問題に対する解決策として、統一歴1920年代になると『歩兵に随伴する、十分な装甲防御を備えた、大口径榴弾砲搭載の自走砲による零距離射撃』が有効であるとの結論に達した。
しかし、当時帝国は主力戦車であるⅣ号戦車、その他自走砲の量産に忙殺されており、本車両の本格的な開発、量産は対連邦戦開始後の統一歴1926年初頭にずれ込んだ。
【構造】
本車はⅣ号戦車の車体を利用した突撃砲である。
トランスミッション、エンジン、補器類、走行装置などはⅣ号戦車と同じ部品を使用した。ただし砲塔の撤去に伴い、砲塔旋回用の発電機、発電用エンジン、専用排気マフラーが撤去されている。
砲搭を持たず、砲自体は限定的ながら左右に指向させる事はできたものの、微調整を超えた範囲の照準のためには車体ごと左右に旋回させる必要があり、このためトランスミッションに負担がかかり、故障しやすかった。
エンジン等の基本的な車体レイアウトはベース車体のⅣ号戦車と同様である。
戦闘室は溶接で組まれているが、天井のみは整備の際に取り外す必要があるためボルト留めが用いられている。
変わった装備としては、歩兵に随伴しての直接火力支援という用途から、車体後部外側に車内と通話できる電話機が備え付けられていた。
これにより、従来の歩兵随伴支援火力車両に比べ、特に狙撃兵の多い市街地戦では乗員の安全性が劇的に向上したといわれる。
【武装】
主砲は、元々海軍が対潜用迫撃砲として開発*6していたものを流用、制式化した陸軍20.3cm26式突撃榴弾砲(20.3cm Sturmhaubitze 26 L/10)を固定戦闘室に搭載した*7。
砲架は球形の防楯を備えており、その装甲厚は80mmに達した。砲俯仰ハンドルと砲旋回ハンドルにより、左右各8度(計16度)、俯仰角は―8度から+30度まで可動した。
砲身長は10口径、尾栓は水平鎖栓式を採用した。照準には直接式照準のSlfZF1照準器、間接砲撃にはRblf36照準器を用いた。また観測用双眼鏡も配備されていた。
主砲砲弾は重量81.5キロの通常榴弾のみが用意されていた。これはコンクリート建築物やトーチカを、数発で破壊できる強力なものであった。
また、そもそも対戦車戦闘を想定していない本車両であるが、後には対戦車戦闘も経験し、その砲弾重量と爆発時の衝撃*8によって、あらゆる敵戦車の内部乗員を殺傷、又は装甲そのものを叩き割った。
本砲は分離式装薬方式を採用しており、弾丸のみで81.5キロの重量があった。
これは帝国陸軍の主力自走砲フンメルの15.5センチ砲弾の倍の重量があり、狭い車内での人力装填は困難であった。
そこで床上にレールを設け、その上に移動式のローラーベアリング付き砲弾装填トレーが設置された。このトレーはレール上を移動する脚の上に砲弾受けを設け、この砲弾受けからはローラーベアリングが断面で言えばY字状に突出し、砲弾を支える構造になっている。
砲弾の装填、射撃手順は以下のとおりである。
①砲弾装填トレーを砲弾ラック(戦闘室後方)に近づけ、砲弾を移載する。
②トレーを移動させ、水平状態とした主砲砲尾へ正対させる。
③砲尾栓を開き、人力で砲弾を装填。
④発射装薬を装填する。これは複数個の薬嚢からなる燃焼式装薬となっており、装填手2名が交互に装填した。また、燃焼式のため、射撃後の排莢が無いという特徴があった。
⑤尾栓を閉めることで、安全装置が解除される。
⑥射撃
⑦砲を水平状態に戻し、内部を点検する。異常がなければ次弾装填に移行する。
なお、近接戦闘用として、戦闘室前面に前方機銃を搭載し、側面、後面にはピストルポートを備えた。
【装甲】
本車両は敵陣地を正面から、かつ零距離で射撃するため、当時の戦車の中では最も厚い部類の装甲を有している。
戦闘室は、初期型では40度傾斜した50mm厚の装甲板を2枚重ねにしたもの、後期型では100mm厚の一枚板を装備し、20度傾斜した50mm厚の側面装甲そして30mm厚の後面装甲で囲われ、天井部分にも25mmの装甲が用いられた。
車体についてはベース車両のⅣ号と同等で、正面50mm、側面30mm、後面20mm、上面及び下面20mmとなっていた。このうち正面については厚さ30ミリの増加装甲を追加装備したが、重量増に対処するため車体下部装甲厚を10mmに減じた。
このように本車はかなりの重装甲となったため、車体重量もベース車両より大幅に増加した。このため速度性能が低下した*9ほか、駆動系、懸架装置がしばしば故障したといわれている。
【要目】
全 長:5.96m
全 幅:2.90m
全 高:2.68m
全備重量:28.6t
乗 員:5名(車長、砲手、操縦手兼前方機銃手、装填手2名)
懸架方式:リーフ式サスペンション付二輪ボギー式
最大速度:28km/h
武 装:10口径20.3cm26式突撃榴弾砲(Sturmhaubitze 26 L/10)×1、
7.92mm機関銃MG22×1(車体正面)
装 甲:(戦闘室)前面100mm(前期型:50mm+50mm)、側面50mm、後面30mm、上面25mm
(車体)前面50mm(後期型:50mm+30mm)、側面30mm、後面20mm、上面20mm
〇第2装甲軍司令部の現状
「こんな戦闘車両欲しいなー、とダメ元で送ってみたら、一か月後にまさに欲しかった戦車が送られてきた。何を言ってるか分からねえと思うが(以下略)」
〇砲弾重量80キロの20.3センチ砲
大日本帝国海軍の短二十糎砲の場合、重量50キロ。
ちなみにシュトルムティガーの38センチは350キロオーバー。…これを一応実戦投入していたドイツやべえ…
〇砲弾装填トレー
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