皇女戦記   作:ナレーさんの中の人

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本日のヤマモトレイ

①起床
②期日前投票に行く
③ハーメルンにログインする

④ファッ!?
⑤ランキング4位だと!?オイこのサイト壊れてんよー

⑥ゴシゴシ

⑦…嘘じゃない、だと…?


このような拙作に高評価をいただき、感謝感激でございます。
あまりの喜びにイッキに書き上げた代物ですので、多少の誤字にはお目こぼしを…


ダキア始末記

統一歴1924年10月

ダキア大公国、消滅(・・)

 

その知らせは、世界に衝撃を与えた。

 

無論、多くの人は敗北自体には驚いていなかった。そのことは開戦前から予想されており、諸外国は共和国の後押しがあったとはいえ、ダキアは何と無謀なことをしたのだ、と呆れすらしていた。

イルドア国王の言葉を借りれば『ニンジンに釣られたウサギが、愚かにも巣穴を出て獅子に飛びかかったか…馬鹿め』である。

 

 

 

だが、わずかひと月で首都が陥落し体制が崩壊。5か月後には地図から消えるという、その異常な速度に全世界は驚愕したのである。

 

 

 

 

連合王国軍情報本部

「ありえない早さです」

 

サー・アイザック・ダスティン・ドレイクは言った。

「確かに、あの国の軍備はお粗末極まりない代物でした。

ですが、あの大きさの国が5か月で消滅するなど、通常あり得ません」

「その通りだ。からくりは分かったのかね?」

上官の問いかけに、アイザックはうなずいた。

 

「大公国崩壊の混乱で情報が集まりませんでしたが、ようやく見えてきました」

 

 

勝負は開戦から数時間で決していた。

この方面には配備されていないと考えられていた――連合王国情報部は、203の編成完了を把握しておらず、訓練途上の部隊とみなしていた――帝国軍魔導師部隊が突如出現。

その規模は不明ながら、進軍していたダキア軍主力軍を1時間ほどで無力化。

「待て、確かにダキア軍の装備は古典的だが、それでも3個師団だぞ?1時間で無力化されるというのはどういうことだね」

「詳細は不明ですが、開戦とほぼ同時に司令部の位置が露見し、そこを叩かれた模様です」

「なんとお粗末な…」

その後、同一と思われる帝国軍魔導師部隊が首都を急襲。

ここまで開戦から半日程度。

「早すぎる…防空網はどうなっていたんだ」

「帰還した我が国の情報部員の報告によれば、『空襲警報も戦闘機も無く、対空砲も撃たない間にすべてが終わっていた』だそうです」

「なんということだ…」

 

 

実のところ、この作戦は帝国にとっても賭けだった。

 

このとき、皇女肝いりの『戦略航空艦隊』は訓練途上…それも、西方への弾薬供給が優先されたため、当初のスケジュールからの遅延を余儀なくされていた。

結果、本来適さない――汎用性に優れるが、速度や航続距離、爆弾搭載量では重爆に大きく劣る――魔導師による戦略爆撃となり、もしダキア大公国に十分な防空兵器が配備されていたのであれば、大損害は免れなかった。

 

ゆえに、第203魔導大隊(ターニャ)には自由裁量権が与えられたのである。

彼女に与えられた、当時としてはありえないほどの自由裁量権を、かみ砕いて列記すると以下の通りとなる。

第一目標:大公国首都・政府施設

第二目標:大公国首都・軍施設

第三目標:大公国首都・兵器工廠

…ただし、第一目標以下、すべての作戦目標について、貴官が達成困難と判断した場合、自由に変更し、または撤退することを許可する。上級司令部の了解は不要。貴官の行動は須らく承認されるものと思われたし。

つまるところ、『行ってこい。あとは任せる』レベルの裁量権である。

これほどの自由裁量権が与えられた大隊は、古今類を見ない。それほどの困難が予想される作戦であり、博打だったのだ。

 

 

だが、帝国はその賭けに勝った。

 

 

「そもそも首都には警察と衛兵隊しかいなかったと報告が…」

「なんと…。ピストルとサーベルでは魔導師は落とせまい」

「そのとおりです。帝国魔導師はご丁寧にも避難勧告をしてから政府施設と軍需工場、そして発電所を徹底的に破壊したそうです」

 

大公国の政府施設、軍施設への空爆はその後航空部隊に引き継がれ、開戦から1か月のうちに大公国はその首都はもちろん、国家としての機能を完全に喪失した。

 

その間、帝国軍魔導師部隊(203大隊)はどこにいたのか?

 

「彼らは開戦翌日には首都を飛び越え、油田施設を占拠していました」

「なんと!」

「破壊される前に占拠するためとは言え、帝国も思い切ったことをする…」

 

帝国は魔導師を『航空機の機動性と、歩兵としての汎用性』を有する兵科とみなしていた。その汎用性と機動性が見事に発揮されたのがダキア戦役ともいえる。

首都襲撃の成功により、その防空能力のなさを確信した参謀本部は、帰投した第203魔導大隊に対し、再出撃及び原油精製施設の無傷(・・)での占領を命じたのである。

 

――流石に無傷と言うのは困難では…?――

――問題ない。デグレチャフ少佐ならやってくれるだろう――

――それほどの信頼とは…。少佐が羨ましいですな。根拠はあるのですか?――

――無論だ。歴史が証明(パレンバン)している――

――はぁ…?――

――まぁいい。これから証明されるだろうからな――

 

 

かくてダキアの油田地帯は帝国の手に落ち、無傷で確保された石油精製施設は、帝国に血液を供給することとなる。

 

 

『過重労働だ!追加の手当てと休暇を要求する!!』

『知ってるかいターニャ。特別職の公務員に、決まった休暇はない』

『!!??』

 

 

幼女の抗議は、完全に無視された。

 

 

◇◇◇

 

 

「ダキアについては、予定のスケジュール通り順調に統治体制構築が進んでおります」

「大いに結構。パルチザンになられても困るからな。旧ダキア国民には寛容な態度で臨め」

「ハッ、御意のままに」

「ほかに問題は?」

「…殿下、実は申し上げにくいのですが……」

「?」

 

『 帝国最高指導会議 』

 

先に開かれた帝国国策決定会合の成功を受け、これを常設の会議としたものである。

ちなみに、皇女の希望により全席禁煙、ただし紅茶とコーヒーは帝室御用達のものが飲み放題。ターニャがこの場にいれば諸手を挙げて喜んだことであろう。

ともあれ、これ以降、随時召集されることとなるこの会議は、政府、軍、議会の認識のすり合わせ、情報共有に始まり、末期には終戦処理まで差配することになる。

 

とまれ、1924年11月のその会議の席上、言いにくそうに外務大臣ノイラートが報告した。

 

 

「ルーシー連邦から『分割線』の再協議依頼が…」

 

 

「 ま た か ! !」

 

 

思わず皇女と軍人たちが叫んだが、さもありなん。

「頼んでもないのに援軍派遣を申し入れてきて領土をよこせと要求し、しかも『切り取り次第』と言ってきたくせに何を言うか!」

すべてはルーデルドルフのこの発言に集約される。

 

要は、この世界ではポーランドの代わりにダキアが分割されたのだ。

 

「はぁ…。もうすでに譲歩しているだろう。これ以上は無理だと伝えて、お引き取り願おう」

「無論、そのようにしておりますが…」

「連中、よほど油田が手に入らなかったことが悔しかったと見えますな」

「ゼートゥーアの言う通りでしょう。距離的にはあちらの方が油田に近い」

「その割にはちんたら進軍していたようだが?」

「我々が駆け足で前進している間、あちらは入念な匍匐前進をしていたのだろう」

ツェツィーリエの冗談に、その場がどっと沸いた。

 

「ハッハッハッ!なるほど、殿下の言う通りですな!」

「それで合点がいきますな…ハハハハ」

それくらいにルーシー連邦軍の進撃は遅かった。

冗談を飛ばす少女だが、その脳裏ではこう予測していたりする。

 

――おおかた、行く村々での略奪に時間を費やしたのだろう――

 

「ただまあ、不可侵条約を結んでいるとはいえ、我が国の後背に位置するかの国にヘソを曲げられても厄介だな…うーむ」

「恐れながら殿下、軍としてはこれ以上の譲歩は承服できませんぞ」

「しかり。せっかく手に入れた油田が、連邦軍重砲の射程圏内に入ってしまいます」

「議会としても同意見です。殿下のご指示(・・・)どおり、国民には占領地獲得の非生産性を流布してはおりますが、これ以上の譲歩は国民が納得いたしません」

「政府も同じく反対いたします。確かにダキアでの戦費は予想以上に安く済みましたが、さりとてタダではございません。これ以上の権利放棄はその回収と言う点からも看過できません」

 

喧々諤々。

一気に騒がしくなる会議室だったが、ツェツィーリエはそれを満足そうに眺める。

――これで良い――

彼女の脳裏に浮かぶのは、前世で知っていた、大日本帝国の御前会議。

――あの会議は名前と面子はそうそうたるものだが、実態は不文律に縛られて本音の半分も出ていない状態だった。それに比べれば騒がしい此方の方が百倍マシだ――

とは言え、このままでは『会議は踊る、されど進まず』に他ならない。

 

余談だが、皇女ツェツィーリエが終生苦手としたのが音楽とダンスだったりする。

――司令部にあっては最高の指揮官。ただし舞踏場にあっては陳列品――

後にゼートゥーアが手記に記したこの評価は、事実を端的に示している。

 

そんな暴露本を将来書かれるとはつゆ知らぬ皇女。

手を打ち鳴らし、立ち上がってその場を静める。

 

「諸君の危惧するところはよく分かった。私としても全く同意見だ。ゆえに、

 

 領土以外で黙らせることとしたい」

 

 

 

彼女のこの時の決断が、彼女も意図しない(・・・・・・・・)ところで効果をもたらすのは数年後。

ともあれ、この時点でダキアは帝国が6、連邦が4の割合で分割され、地図の上から消失することが確定したのであった。

 

 

 

 

 

「さて、ダキアの統治は政府に任せることとして…」

 

 

 

そう言って、皇女は壁に掲げられた巨大な地図。

それに歩み寄り、一点を指し示す。

 

 

 

「いい加減、こちらを片付けねばな。冬眠前にけりを付けようではないか」

 

 

 

 

その指し示すは北方戦線。

対協商連合戦、その最終幕が開こうとしていた……

 

 




北方の始末については現在構想中。

原作なぞるだけじゃ面白くないよね(ニッコリ
皇女の大戦略が炸裂予定です(自分からハードルを上げてしまうヤツ


そして今度こそ次回投稿が未定です

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