アーランドに転生したのでエスティさんをヒロインにしたい 作:血濡れの人形
~シルド・エスティ宅~
エスティが長期休暇に入ってしばらくたち、子供ができた。性別は女の子、名前はシエル。俺とエスティの最初の文字に、それでは言いづらい上に名前っぽくないということで、最後にルを追加したのだ。どこか別の世界で神様食べるような職業してそうだが、別にそんな意図があって名付けたわけではない。それはともかく、生まれた女の子は今。
「ぷにぷにしてる!はぅ、指にぎにぎされちゃいました!」
「本当にやわらかいですね。なんだか癖になってしまいます」
「それに、なんだかとてもいいにおいがする気がします。クロ、そこの位置を早く変わってください」
「お前はすでに十分ほど抱っこしていただろうが。次はグラスの番だ」
「ちょっと~?私もそんなに抱っこできてないんですけど?」
エスティたちが取り合っていた。とはいっても、奪い合うような感じではなく、小さく歓喜の声を上げたり、抱っこする順番を話し合ったりしているようだ。小さく叫ぶなんてよくやると思う。ちなみに俺は五分ほど抱っこして満足した。抱っこしている間は至福の時だった。
「騎士団長!王が逃げだしました!」
その報告がなければもっと幸せだった。とりあえずジオは・・・
「お、あいつ埋めよう」
「「「「「いってらっしゃい」」」」」
埋めることにする。全力で。城の前に埋めてきてやる。家族たちの声を背に、俺はジオを探しに行くことにした。
~オルトガラクセン 第十階層~
オルトガラクセン、その中でもマギハットと呼ばれるモンスターの生息域にその姿はあった。
「ありがとうございますジオさん!」
「なに。別にかまわんよ。いつもなら少しうるさいのも休みになっていたのでね」
「ふぇ?お休みですか?」
そう、家族団欒を妨害してくれたジオである。
「育児休暇だといって、二、三日休暇をよこせと言われてね。仕方なく一週間休みを出してきたから、たぶんしばらくは大丈夫のはずさ」
それもまた事実。しかし、それには一つ問題があったのだ。
「おう、おどれがにげださにゃあ平気だったのぅ」
確かに何事もなければ休みでいられる彼も、それを返上しなくてはならない仕事が存在してしまうことをジオが知らなかった。ただそれだけで発生してしまった悲しい事件。頭をつかまれ、ミシミシと音を立てながら体が浮いていく感覚に襲われるジオ。近くにいたロロナ、少し離れたところにいたトトリやメルルもそれに気が付き、サッっと顔を青くする。ステルクもまたそれに気が付き、頬を引き攣らせた。
「せ、先輩?なぜあなたがここに・・・」
そんなステルクの疑問に答えるように、ゆっくりと顔だけそちらの方に向ける。その目に光はなく、周辺にいる全員に恐怖を与えた。ゴースト系のモンスター、お前らそれでいいのか?
「ステルクなら知っているだろう?コレが逃げだすと俺が動かないといけないことくらい。伝令が来れないところでなければ、絶対にその任が俺のところに来るってこともよ」
「し、しかし、王が彼女を手伝いに行っていることを伝えれば、それも免除されるはずでは?」
その一言に、さらに腕に力が入り、ジオが気絶してしまう。
「それなら俺だって問題視しなかったさ。しかしコレはよりにもよって、一切の報告もせずについてきたんだよ。というわけで、こいつは城の前に埋めてくることに決定した。安心しろ。仮面をつけさせて身分をわかりにくくさせたうえで、エーテルインキで猫髭を追加してさらにわからなくしておいてやるから」
それじゃ、といって、わざわざジオの足を引きづりながら高速で帰っていくシルドに、五人は苦笑いを浮かべるのであった。
その後、僕は悪いことをしましたというプラカードをかけられ、猫の仮面とエーテルインキ製の髭をつけたジオが埋まっているという情報が、上層部に伝えられたという。なおそれを行った本人は、疲れをいやすという名目でエスティに抱きつきながらシエルを抱っこしていたという。