アーランドに転生したのでエスティさんをヒロインにしたい 作:血濡れの人形
~シュヴァルツラング家 庭~
「うさちゃんだ~!」
『ぷに~♪』
突然だが、うちではとあるペットを飼っている。ペットというかモンスターというか、まあ飼っている。いや、正確には今日飼い始めたのだが。そいつは、白い半球体にバニーがつけてそうなウサミミを装着した生物、そう、うさぷにである。ミミの遊び相手にちょうどいいと思って一匹ほど拾ってきた。というか、こいつからすり寄ってきたのだが。
「でも、わざわざ妹ちゃんのために王様と大臣脅してまでモンスターを連れてくるなんてね。さすがの私も聞いた時は驚いたわよ?」
「馬鹿を言うな。脅してなんていないどころか、責任がこちら持ちなら好きにしろと言われただけだ。それに俺だって、あのうさぷにが攻撃を一切せずにすり寄ってきたなんてことがなければ、こんなところまで連れてはこないさ」
そのときは本当に驚いたものだ。まさか普通なら全力で逃げ出すか、突然攻撃を仕掛けてくるのに、剣を構えていた俺の肩に乗ってすりすりとすりついてくるとは思ってなかったからな。
「うわわ!あははっ!速い速い!」
「あれ放っておいていいの?」
「楽しそうだしいいんじゃないかな?うさぷにライダー」
少し目を離したらうさぷにの上にミミが乗っかって、バランスを取りながらうさぷにを走らせていた。
「そろそろ仕事の時間だな。受付に戻るぞ。クーデリア嬢に受付を押し付けてここにいるんだ。そろそろ戻らねば文句を言われてしまう」
「あー、それもそうね。それじゃあミミちゃん、お姉ちゃんたちお仕事に行ってくるから、ちゃんとに留守番してるのよ?」
ちょうどミミがこちらに来た時に、エスティがそう話しかける。ミミは少し悲しそうな顔をした後、何かに気が付いたように表情を明るくして、
「わたしもおねえちゃんたちのしごとみる!」
『ぷにぷにぃ!』
といってくる。うさぷにも何かを期待するようにこちらを見つめてくる。どちらも思わず目を覆いたくなる程度には輝いているように見える。
「はぁ、しょうがない、かな。エスティ、ミミたちも連れて行こうか」
「そうね。仕事って言っても、書類整理とかしかないでしょうし」
「ほんとう!?やったぁ!」
『ぷぅにぃ!』
いつの間にあんな仲良くなったのだろうか、なんて考えつつ、俺たちは城に向かって歩き始めるのだった。
~アーランド王国 広場~
広場のあたりまで来たところで、何やら人だかりが見える。何かに熱中するように集まっている人々の真ん中で、一人の少女が二つの人形を操り、劇のようなものを開いていた。おそらくリオネラだろう。それに気が付いたミミとうさぷにも、そちらの方向に視線を向け、見えなかったのだろう。ミミはうさぷにに乗っかったまま集団の真ん中に移動を始める。って、
「ミミ、ちょっとストップ!」
といって、ミミとうさぷにを回収、自分の頭の上に乗せる。うさぷにがうまくバランスを取ってくれるので、ミミはその上から中心の劇を見始める。
「危なかったわねぇ、その子があそこの中心に入る前でよかったわ。きっとみんな驚いて、もしかしたら攻撃しちゃうかもだしね」
「あぁ、うちの妹と一緒だといっても、モンスターであることに変わりはないからな」
もっとも、俺の上の一人と一匹はこの話を聞かず、劇の方に集中しているようなのだが。
なんて話していると、劇が終わり、中心にいた少女はおひねりをもら
「え?」
うことなく、そのまま走ってその場から立ち去ってしまった。先ほど少女がいた場所には何かが落ちている。俺はうさぷにとミミを下ろすと、人が少なくなったところで落ちているものを拾おうとする。しかし、それより前に倒れているピンクの服の少女を見つけ、とりあえず声をかけることにした。
「大丈夫か?いったい何があったのかは知らんが、そんなところで倒れていると危ないぞ?」
なんていいつつ相手のことを見る。つい最近受付で見かけた少女だった。そう、ロロナである。しかし疑問が一つ。いまは六月、たしかさきほど
「うぅ、ありがとうございます。実は後ろから押されちゃって・・・」
「そ、そうか。それは災難だったな」
「本当ですよぅ・・・あれ?あそこ、何か落ちてる」
彼女はそういうと、落ちていたものを拾う。
「これは・・・お財布?何でこんなものが落ちてるんだろう。もしかして、さっきの女の子が落としていったのかな?」
「シルド、そろそろ行かないと本格的に時間がないわ」
「うわほんとだ。それじゃあな」
何かを考え込んでいる彼女を背に、俺たちは再び城に向けて歩き出すのだった。
このあと受付に戻ったらクーデリアにとても怒られた。ちなみにだが、うさぷには小さな子供たちの人気者になり、ミミちゃんはそんな子供たちと一緒にうさぷにと遊ぶ姿が時々見られるようになったという。