日輪凛空は勇者である〜太陽の子〜   作:シン・ナス

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ちょっと膨らんだけど本当はもっと前に入れるべき話ばかりなんですけどね・・・


四話 過去を観る

「この子は神樹様の子供だ!」

 物事着いた時からぼくは神の子だと教えられてきた。事実、ぼくの血に父親の血はなかった。こう神官に尋ねたことがある。

「ぼくは、人間とは違うのかな?」

 すると神官はこう答えた。

「そうでごさいます。普通の人間であれば、父親の血と母親の血が混じり、母親の身体の中で身体を与えられます。ですが、蓮様は母親の体内に神樹様がお創りになった身体をお与えになったのです。」

 当時、まだ子供だったぼくはそんなものかと理解していた。当然のことだが、普通と同じように育てられることはない。神の子として崇められながら育てられ、そして学校には通わなかった。そんな中、お母さんはぼくの話をよく聞いてくれた。

「今日は神樹様と勇者様の歴史を習ったよ。」

「素晴らしい方達ばかりよね。私はとっても尊敬しているわ。」

 こんな会話もしていた。

 

 小学3年生になるとようやく神樹館に転入した。だが、友達などできるはずもない。世界が違いすぎた。笑顔で話し合う同級生を見て、そこでぼくはようやくこう思うようになった。

 

 ーぼくもみんなと同じように育ててほしい

 

 だが、みんなの生活は分からなかったし、神官に言えることでもなかった。そして、ぼくが四年生の時、お母さんが身体を崩した。

「お母さん!」

 ぼくは病室で寝ているお母さんに飛びついた。お母さんはぼくの背中に手を添え用としたけれど、

「お母さん疲れちゃったのかな・・・力入らないや」

 上がらなかった。

「死んじゃやだよぉ・・・」

 ぼくは泣いた。いっぱい泣いた。

「蓮、よく聞いて。」

 お母さんは力を振りしぼって声を出した。ぼくはうなづいた。

「お母さんじゃ蓮を周りの声からまもることはできなかったわ。でも、いつか・・・」

 お母さんは宙を見上げて言った。

「いつか、蓮を助けてくれる人が必ず現れる。蓮はただの人なんだよって言ってくれる人が。」

 お母さんが冷たくなっていくのがわかった。必死に抱きついた。だが、

「だめよ。もうお母さんはいなくなっちゃうんだから、しがみついちゃダメ。」

 そういってお母さんはぼくを言葉で剥がそうとした。

「ああでも・・・」

 声は遠くなっていく。

「最期が暖かいっていいなぁ・・・」

 

 お母さんの最期を看取れたのは不幸中の幸いだったのかもしれない。だが、大赦はお母さんの気持ちも考えず『()()()()()()()』として盛大に葬式が執り行われた。さしものぼくもこれは許せず、ずっと隣についていた神官を怒鳴った。すると今度は、

「神樹様の子がお怒りに・・・」

 というふうに解釈されてしまった。挙句の果てに、

「神官、巫女から1人づつ生贄でどうかお許しを・・・」

 と言ってきたのだ。ぼくは

「そんなものはいらない!」

 と泣いて叫んだ。だが、だれも聞きはしない。翌日、宣言通り二つの供物が差し出された。

「どうしてこうなるんだ・・・」

 ぼくのために2つの命が消えた。

「もうなにも言わない。ぼくに構わないでくれ・・・」

 ぼくは耐えきれなくなった。そして空白の時は中学一年生の冬前まで続いた。

 

 ある時、神官はこう言った。

「蓮様。ある人がお見えです。」

 ぼくは無言で応接室に向かった。するとそこには灰色の髪の青年が座っていた。

「五十嵐蓮、この子が神樹様の子供か?」

 神官に尋ねた。すると出自を語り始めた。

「なるほど。でも・・・」

 灰色の青年はぼくをのぞいた。

「目は死んでるけど()()()()だよね。」

 刹那、母の言葉が蘇った。

(いつか、蓮を助けてくれる人が必ず現れる。蓮はただの人なんだよって言ってくれる人が)

 すると灰色の青年は

「私は守護者日輪家当主。日輪凛空(ひわりく)だ。まぁ、大方どんな環境だったのかは想像がつく。」

 凛空さんは神官を睨みつけて言った。

「神官。俺は蓮を父の名の元で養子となり、弟とする。」

 神官は慌てて言った。

「困ります!蓮様をお連れになるのはやめていただきたいッ!」

「五月蝿い。」

 と凛空さんは神官を黙らせた。神官の肩が震えているのがわかる。それに追い打ちをかけるように告げた。

「俺に歯向かえばどうなるか、わかっての狼藉かな?」

 神官は身体を震わせながら言った。

「わ、わかりました。他の神官、巫女にもそうお伝え・・・」

「不要だ。蓮はひっそりと俺がいただく。なんとか誤魔化せ。」

 そういうと凛空さんは

「蓮。今日から俺の弟になる者よ。」

 とぼくに告げた。

「今から経験する世界は今までとは全く違うものになると思うけど・・・」

 凛空さんはにっと笑って

「まぁ楽しみなよ。普通の生活は多分蓮にとって驚きに満ちているから。」

 

 そして晴れて讃州中学1年に転入。そこでは思いがけない出来事が待っていた。その日の放課後のことである。

「ねぇねぇ!蓮くんって、あの日輪凛空の弟なの?」

「一緒にご飯を食べよう!」

 と、とにかくアツい。色々なことがアツかった。そんなぼくを助けてくれたのが

「ちょっとみんな!蓮くんが困ってるよ?」

 犬吠埼樹さんだった。みんなごめんごめんと謝りながら、「また話そうねー」など声をかけて離れていった。

「大丈夫だった?」

「あ、ありがとう・・・優しいんだね。」

 すると樹さんは

「人々のためになることを勇んで実施する、勇者部員だから!」

 と胸をはって誇らしげにいった。

「勇者部・・・?」

「あ、あれ?凛空さんから聞いてないのかな?」

「凛空さんに自分が所属してる部活に入るように言われていたけど、もしかして・・・」

 すると樹は呆れ顔で言った。

「部活の名前言ってなかったんですね・・・」

 ぼくは聞いた。

「今日はその、勇者部、だっけ。あるの?」

 すると樹さんは宙を見て

「えーっと・・・たしかお姉ちゃんが、新入部員の歓迎会やるって言ってたっけ・・・」

 とブツブツ呟いた。

「樹さん?」

「ああ、なんでもないよ蓮くん。今日は部活ある日だから、今から連れていってあげるよ。あ、それと・・・」

 樹さんはぼくをみて

「さんづけはちょっと堅苦しいかな・・・」

 と言った。ぼくは考えた。だが、下の名前を呼び捨てにするしか他が思いつかなかった。

「じゃあ・・・樹。」

 すると一瞬樹の顔が赤くなった気がした。

「どうしたの?顔赤いけど・・・」

「いざ言われてみると・・・というか、そういう蓮くんこそ顔赤いよ?」

 ぼくは気づかなかった。だが、明らかに今まででは有り得ない感情が胸の内にあるのも理解できた。すると

「ちょっとそこー?会って初日でイチャイチャしないの!」

 後ろで二つに纏めている黄色の髪のお姉さんが立っていた。

「お、お姉ちゃん!?」

 樹の姉は驚く樹とはよそに蓮を見て

「君が凛空の弟の蓮ね?」

 とぼくめがけて聞いた。

「は、はい。」

「私は犬吠埼風。三年で勇者部の部長よ。よろしく!」

 と一方的に自己紹介されたし、手も差し出された。

 ーああ。驚きに満ちているって・・・

「ほんとなんですね。」

 と思わず口から漏れてしまった。

「?」

「なんでもないです。」

 風はなんか怪しそうな顔をしたが

「そう。ならいいわ。こっちよ。」

 とついてくるように促した。

「樹!行っちゃうよ!」

 ぼくはガッチガチに固まった樹を叫んで呼んだ。

「あっ!」

 と我に返って走り寄ってきた。

 

 それからというもの同じクラスの樹には幾度となく助けられた。樹が一番輝いてたのは音楽の時間だと思う。

「樹、歌すごい上手なんだね。」

 樹は顔を見えにくくしてもじもじすると

「お姉ちゃんや友奈さん達のおかげなんだよ・・・」

 と言った。

「それでも、樹にしかない歌声だと思う。」

 と言ったら今度は顔を隠してしまった。

 

 樹との日常は築かれていった。だが、こんなことになってしまうなんて・・・

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 〜現在〜

 

「好きだよ!蓮くんッ!」

 今ならわかる。はっきりわかる。樹の声が。()()()と言ってくれている樹の声が。ぼくも叫ぼうとした。だがー

(声が、でない・・・)

 口は残ってても声帯がもう無いせいだろう。だが一生懸命口を開いて伝えようとした。

()()()

 すると樹は満足したのか涙ながらも大きな笑顔を見せた。

 ーよかった。樹の笑顔を見れて。本当に良かった・・・

 

 こうして、日輪蓮の人生は閉幕した。その生涯は不幸な歩みであったが、幸せな最期を迎えられた。

 

 日輪はまた、()()()()に受け継がれるのだった。




七話分、持ちそうです。このまま突っ走ります!
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