日輪凛空は勇者である〜太陽の子〜   作:シン・ナス

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まさかの厨二力全開!
そして、意外に楽しいじゃないか!
じゃあ、四話へGO!!!!!


四話 守護者の葛藤

 〜翌日〜

 

 昨日、凛空は校長先生に事情を説明し、明日、明後日は休むと宣言し、許可も一応もらった。部活にも顔を出さなかった。この二日のあいだに凛空は合わせて二つのところに行かなくてはならない。まずは大赦本部。御霊の異常な再生スピードに関する情報を大赦側に警告する。もう一つは乃木(のぎ)園子(そのこ)が入院している病院に行くことだ。これは園子自身による呼び出しのために行く。

 

 「お待ちしておりました、日輪凛空様。本日の御機嫌はいかがでしょうか。」

 

 と神官と巫女が複数人でひれ伏して出迎え、その中の老神官が代表して挨拶した。

 

 「悪いしそんなことどうでもいい。それよりも、だ。」

 

 と少し間を開ける凛空。

 

 「日輪家頭首として命ずる。」

 

 と凛空は少し、威圧するように言った。

 

 「高位の神官、巫女どもを早々に招集せよ。場所は大会議場だ。」

 

 そう言うと、老神官は

 

 「は。今すぐに。」

 

 と言うとすぐさま招集にかかった。

 

 「案内は要らん。神官、巫女よ。早々に仕事に戻られよ。」

 

 と凛空は付け加た。神官群は一礼して下がった。

 

 「はぁ〜・・・キャラ作るのたいへんだわ〜。ま、大赦が相手なんだしこれ位大きくないと、ね?」

 

 と、少し大きなため息をつきながら大会議場に向かっていった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    

 

 

 〜緊急会議終了後〜

 

 凛空はすぐさま専用の車に乗り園子が入院している円鶴中央病院に向かった。

 

 「どうでしたか、凛空様。また、爆弾発言したんじゃないでしょうね。」

 

 と言うのが日輪家の使用人で、老人の領域ではあるが運転手を務める凛空の執事的存在の高田幸助(たかだこうすけ)

 

 「なんだよ、爆弾発言って。」

 

 と反論したが、幸助は

 

 「知ってますよ〜?凛空様が大赦の人達の前で神樹なんざ一発で焼けるんだけどなぁ、と言ったことを。」

 

 とまるですべてお見透しであるかのようにいった。凛空はウッ、となりながら反論した。

 

 「あれは・・・まだ、子供だったから・・・」

 

 久しぶりだったからか二人は会話が弾んだ。

 時間も月が昇り始める位になった。

 

 「なぁ、幸助。」

 

 「はい、凛空様。」

 

 「今日は一層月がきれいだ。輝きすぎず、暗すぎず・・・程よい色だと思わないか?」

 

 「ええ。凛空様は素晴らしい目の持ち主でいらっしゃいますねぇ。」

 

 「世辞はいらないよ。ただ綺麗だと思っただけなんだ。」

 

 「そうですか?」

 

 「ああそうとも。」

 

 というような、会話もあるぐらい仲は凄くいい。

 十一時になった頃だった。幸助は凛空がウトウトし始めたのを見てこう言った。

 

 「凛空様、明日も忙しいんですからもうお寝になってはいかがですか?」

 

 「ああ、そうさせてもらうよ。幸助すまない、運転させっ放しで。」

 

 と凛空が心底申し訳なさそうに言うと、幸助は笑って返した。

 

 「いえいえ。これも凛空様にお仕えする者の仕事の一つでありますよ。明日も、お起こしいたしますので、ご安心しておやすみなさいませ。」

 

 「ホントに、何から何まですまない・・・。じゃ、おやすみ。」

 

 「おやすみなさいませ。」

 

 幸助は車の窓のシャッターを降ろし凛空がなるべく寝やすい環境を作った。

 その暗い部屋はすぐ凛空に眠りの妖精を舞い降ろさせたのであった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 突然に朝は来た。窓からは太陽の光が差し込む。その光は強制的に凛空を覚醒させた。その時刻は朝七時だった。

 

 「おはよう幸助。」

 

 「はい、おはようございます。」

 

 と幸助が昨夜の宣言通り起こした。

 

 「幸助は寝れたの?」

 

 と凛空が心配そうにするので幸助は

 

 「はい、午前一時に円鶴中央病院に到着しましたので四時間程、睡眠時間を頂きました。」

 

 と少し眠そうに言うので、察した凛空は

 

 「四時間か。少し短いね。俺が園子と話している間少し睡眠とっといて。あ、遠慮します、的な言葉は聞かないから。」

 

 と少し気づかった。

 

 「では、そうさせてもらいます。」

 

 「ああ、おやすみ。」

 

 「・・・」

 

 と言うときにはもう眠っていた。

 

 (意外と素直に受け入れてなおかつ眠りにつくの早い。ホントに意外な一面もあるもんだ。)

 

 と思いながら凛空は病院に入っていった。

 

 園子がいる病室は病室とは言えない小神社のようなものだった。園子はその中のベッドに横たわっていた。

 凛空は園子の包帯を全身ぐるぐる巻にされていて、左眼と口だけが見えるその顔を見ると優しい顔をして

 

 「おはよう、久しぶり園子。」

 

 と挨拶をした。

 

 「おはよう、久しぶりりっくん。」

 

 と、凛空のことをりっくんと呼ぶのが園子スタイルだ。

 

 「今日は、学校おサボりしてきたの〜?」

 

 と聞いてきたので凛空は

 

 「いや、園子が呼んだんでしょ。」

 

 と言い笑った。

 

 「そうだったそうだった。」

 

 と園子もとぼけたふりをし笑っていた。

 

 「りっくんは学校楽しい?」

 

 「そうだね。まだ一ヶ月しか行ってないけど楽しいさ。」

 

 「うんうん。私も学校行きたいな〜。」

 

 「だよな。」

 

 というような、会話を一時間ぐらいしていた。凛空はやっぱり園子はのんびりしている、と思ったのだった。

 

 「そ〜だ。」

 

 「なんだ?」

 

 「みのさんの体の具合、どーなの?」

 

 みのさんとは、三ノ輪銀(みのわぎん)の事で先のバーテックスとの戦いにおいて乃木園子と鷲尾須美(今は東郷美森という名だが)とともに戦った勇者だ。だが銀は射手(サジタリウス)型、(キャンサー)型、(スコーピオン)型の三体と、たった一人で戦闘し、追い払うことに成功するが、死んでしまった、と思われいた(・・・・・・)

 日輪家は銀は肉体的にはほぼ死を迎えているが、魂においてはまだ死を迎えていないと判断したのだ。日輪家は『肉体的に死かけ』状態なら復活させる術を持っていた。西暦の時代に蒼崎橙子(あおざきとうこ)という魔術師が確立した技術を書体にして継承していた。その技術とはその人間と一寸違わぬ『人形』を作る技術だ。この技術を使えば、銀の肉体的に死かけから回復させることができるし、失われた右腕も完璧な義手を作れるのだ。

 日輪家は銀の両親の了承(むしろどうかお願いします、と言ってきたぐらいだ)を得、その体を葬儀の後、日輪家が所持する火葬場に運び込まれ、火葬されずそのまま当時の日輪家第四代頭首の手によって肉体の筋肉という筋肉、血管という血管、神経という神経を繋ぎ合わせ、心臓までも作り直し、脳に覚醒信号を送り込みその体は再び活動を始めた。

 

 それを聞いた銀の両親は涙したという。

 

 ただ体のほとんどがほぼ生まれ変わった形になっているので魂が肉体になれるまでに最低でも二年はかかるという。今年はその二年目なのだ。その頃すでに凛空はその身にカルナを宿していたため魂の形が見えたのだとか。当時の凛空があの人まだ生きてる、と発言しなければ銀は本当に死んでいたのだ。この事は園子と日輪、竜葉家の者しか知らず、世間的にも銀は御役目を全うして亡くなった勇者、として認識されている。

 

 

 無論大赦も知らない。

 

 

 園子は、率直にたずねて来たので

 

 「ああ、順調だよ。魂が強靭じゃなかったら肉体的に死にかけの地点で魂も死んでたよ。」

 

 と素直に銀を称賛した。

 

 「ホントによかったぁ。あの時のわっしー(鷲尾須美)と、私の涙返せ〜、って感じだったけど、りっくんがわざわざ人払いの結界に音漏れ解消の結界、盗み聞き看破の結界を張ってくれてまで、そのことを私に教えてくれた時、生きてるんだ〜、って言う別の意味で涙出たね〜。」

 

 「ああ、だが今の問題は最新版の勇者システムの事だ。そのことで呼び出したんだろ?」

 

 「お、さすがりっくん。話早い〜」

 

 「だろうな。あのシステムに関しては園子の後遺症を見て日輪の名前使って強制的にチェック入れさせてもらったよ。」

 

 「すっご〜い。どうやって、あの頑固な大赦に干渉したの〜?」

 

 「やや、威圧的な態度で。」

 

 「威圧的なりっくん怖そ〜」

 

 「そのせいもあってか、大赦の奴ら、俺を見るやいなや体を震えさせるんだけど。」

 

 「多分、ホントにりっくんを恐れてるんだろね〜。だって小六最後にりっくん日輪の頭になったじゃん。その時に大赦に挨拶しに行ったらいきなり神樹様燃やせるぞ、みたいなこと言ったらしいし〜。しかもそれ、りっくんならホントにできるし〜」 

 

 と言い少し笑っていた。

 

 凛空はそのネタを二日のうち二日とも言われるとは思ってなかった。

 

 「何回そのネタ言われるんだ・・・。まぁ、ともかく。あの『満開』だ。あれは使わせたくないな。」

 

 「でもりっくんは言えないんだよね?」

 

 「ああ、無理だ。どうやら父上が亡くなる時にそういった呪いをかけられたようだ。だから園子の口から言ってもらうしかない。」

 

 「でも、今の勇者達には会うの禁止されてるから〜」

 

 園子は少し寂しげに言った。

 それはすなわち鷲尾須美と会うことを許されないということなのだから。

 

 「わかってるさ。それに園子も俺も、暴走した勇者を抑えるという役目がある。」

 

 「まぁ、私はする気ないけどね〜。りっくんは?」

 

 「・・・正直、わからない。でも俺は人の敵を倒し、人理を救う。ただそれだけだよ。」

 

 園子はその言葉に曖昧なところがあることをわかっていたが、あえて指摘しなかった。

 

 「うん。それが一番りっくんらしいよ。」

 

 「ありがと。じゃあ俺はこの辺にしとくよ。」

 

 そろそろ凛空たちは別れの挨拶をし始めた。

 

 「今日はありがとう〜りっくん。」

 

 「ああ、こっちこそ。また、機会があれば来るさ。」

 

 「うん!待ってるよ〜」

 

 と分かり辛い笑顔だがしっかり凛空はその笑顔を認識して、凛空は笑顔を返した。

 

 「じゃあな。」

 

 「うん、またね〜」

 

 そう言いながら病室を出た。

 病院を出ながら凛空は

 

 (もしかしたら、人の敵になった勇者に・・・俺は手を下すかもしれない。そんな俺がいそうで少し怖い気もするが・・・)

 

 と思ってしまった。だが凛空は決意した。

 

 あいつらといる以上、俺はあいつらを守ってみせる、と。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 〜昼過ぎ〜

 

 凛空は一度家に帰りとある家を訪れた。幼馴染の竜葉(りゅうは)瑠奈(るな)の家だ。

 瑠奈はとある事情で今家から出られない状態にある。

 

 凛空は瑠奈の両親に家の中へ上げてもらい、瑠奈の部屋に行った。

 

 「やぁ、瑠奈。」

 

 「ああ、凛空?」

 

 「そうだよ。」

 

 「ごめんね、今魂がどうたらこうたらで慣れるまでは前見えないんだって。」

 

 「知ってるよ。」

 

 そう。実は瑠奈は銀と真逆の状態なのだ。先の戦いにおいて英霊アルトリアを宿し(今もだが現在は非覚醒期)戦ったのだが、園子とともに最終決戦に挑んだ際、全力の『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を使用してしまったので、その宝具の存在の重さに魂が耐えきれなく粉々に砕け散ってしまったのだ。園子曰く、魂抜けたみたいだったんよ〜、と。まさにその通りであるが、今はこうして話せている。なぜなのか。

 実は、アルトリアが所持するもう一つの宝具『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』が自らの意思によって、瑠奈の中に残っていた記憶から『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』の自我を持った神核が瑠奈の人格にできるだけ似せるように変化し瑠奈の肉体に宿ったらしい。

 要するに、瑠奈の魂=最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)、という状態なのだ。

 つまり、今の瑠奈の魂は神霊クラス。凛空はその事実を知った時絶句したが、少し涙をこぼしそうになった。

 そこにいる瑠奈は瑠奈であって瑠奈ではないからだ。だが、その性格は紛うことなく瑠奈だった。

 

 「瑠奈、今日はホントに会いに来ただけなんだ。今は近くに住んでるからいつでも会いに来るよ。」

 

 「ほんと!?凛空といつでも会えるのは嬉しいなぁ。」

 

 「ああ、俺もだよ。だから、またね?」

 

 と短く。

 

 「今度は凛空の姿を見たいから、目が慣れるように頑張るよ!」

 

 「ああ、応援しているさ。」

 

 「うん。じゃあね。」

 

 「またな。」

 

 と言い、凛空は部屋を出た。

 

 

 

 自分という存在を知り尽くしている瑠奈が自分がどういう状況なのかわからない筈がなかった。

 

 そんな自分はもう他の人の中に帰れないとわかっていた。

 

 少女が一人涙を零していたのを、誰も知る余地は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想ドシドシお寄せ下さい!
どんなことでもいいです。
ビシバシ叩いて頂いても大丈夫です!
とにかく感想よろしくですよ〜
あと、誤字脱字の指摘もよろだぜ〜
それはさておき、今回は結構長くなりましたね〜
でも全部重要なんで(棒)
そして東郷さんの初陣を見逃してしまった凛空さんなのでありました。
次回は最も短くする!
あと予告だけど夏凛の初登場もカットで

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