悪いひとたち ~南方深海泊地へようこそ!~ 作:シャブモルヒネ
自然が美しいなんて初めに言い出したのは誰だろう?
そいつはきっと都会育ちの箱入り娘・息子に違いなく、区画整備された公園で草花でも眺めながら「わぁきれい」と幼児のごとく喜んでいたに違いない。
こんな物知らずが蔓延するようでは世も末だ。
植物は、愛でるものでも保護すべき弱々しい存在でもない。
凶暴なまでの生命力に満ちている。
その事実は南方海域にいれば嫌というほどよく分かる。
むせかえるような緑色が大気中に溶け込むほどにネラネラと輝いて、その葉先を太陽光へと貪欲に伸ばすだけでは飽き足らず、たっぷりと栄養素を蓄えた大地にまでずっぷりと根を下ろしている。そんなのが所狭しと折り重なって、葉の裏には毒虫や吸血生物が潜んでいて――そんな自然の在りようを見せつけられた先進国の兵士たちは大半が「故郷に帰りたい」と思うらしい。
アスファルトと鉄筋コンクリートが乱立する文明のジャングルこそが人間の棲み処であって、こんな除草剤すら糧としそうな原生生物たちの王国は異界の地に違いない、と嘆くのだ。
しかし、これが生の現実というやつで。
地球は人間専用の棲み処ではなかったと思い知ることになる。
……まぁ、ショートランド泊地の裏庭はそこまで原始的なわけはないけれど。
概ねそんな場所だった。
雑草が無秩序に伸びていた。
蔓蔦が建物の窓枠にまで覆って絡みつき、好き勝手な方向を向いていて。
当たり前の話だが、植物は人の世の都合なんておかまいなしに生きている。
整備された談話スペースとはかけ離れた有様で、害虫・羽虫がそこかしこに貼りついている。
おかげで誰も寄り付かず、負け犬がひっそりと泣き言を零すにはうってつけの場所だった。
「霞、朝霜。お前らは部屋に戻れ」
目的地に着いた新貝は、開口一番そう言った。
「ここから先は深海棲艦の泣き言だ。お前らみたいな順風満帆に生きてる艦娘には聞かれたくないんだよ」
霞と朝霜は、心外だという顔をした。
「司令。ココマデ来テ、ソリャナイヨ」
「何ヨ! 一度死ンダグライデ、偉ソウニ!」
二人とも思い通りにならないことぐらい何度も経験している。
だから仲間が傷ついているなら力になってあげられる――そう抗議したが、新貝は聞き入れようとしなかった。
「何度だって言ってやる。お前らは幸せ者だ。普通という名のレールの上を歩けてるんだからな。でもな、そんな当たり前のこともできない奴が世の中にはいると知ってくれ。俺たちゃ聞かれたくないんだよ、そんな泣き言なんか」
「劣等感グライ誰デモ抱エテルモノヨ」
白髑髏はゆっくりと首を振って否定する。
「俺たち劣等生はな、“それぐらい何でもない”って顔を作ることで何とか毎日を生き延びてきたんだ。そんな誤魔化しの向こう側まで覗き込まないでくれ」
「デモヨォ……」
「――別に、いい」
ずっと黙っていた清霜が呟いた。
「今更、隠したってしょうがないよ。最初から分かってたことなんだから」
「……お前がそう言うならいいけどよ」
新貝、清霜。
そして霞、朝霜。
左から順番に、ベンチに座った。
初めに口を開いたのは新貝だった。
「……清霜。何があった? と言っても話は一つしかないか。負けたんだろう、黒井に」
清霜の肩が震える。
それを横目で見ながら、霞が問う。
「黒井提督ガ、ドウシタノ?」
「あいつも深海棲艦になったんだ。というか南方棲戦姫の正体が、あいつだ」
「ナンデスッテ!?」
「その辺は後で話す」
今は黙っとけ、と言外に含ませた。
「……分カッタワ」
清霜はしばらく何も言わなかった。
長い時間をかけてから、ぽつりぽつりと一週間前の敗北について話し始める。
その後のことも。
復活してから何を想い、どうしてショートランド泊地に来たのかを。
全員でただ耳を傾けた。
「……仕方ナイコトヨ」
経緯を聞いた霞はそう言った。
「レ級normalノ性能デ姫級ニ負ケルナンテ、当タリ前ノコト。何モ情ケナイコトナンテナイ」
「……そういう話じゃないんだよ」
慰めの言葉を、新貝は否定した。
「清霜はどうしても勝ちたかった。仲間を逃がすため、遺恨を晴らすため……そして何より、納得するために。あいつに勝つことで人生に初めての勲章を飾りたかった……違うか?」
「……違くない」
「でも、勝てなかった」
清霜は唇を噛みしめる。
「目いっぱい努力して、一対一の状況まで持ち込めて。……俺にも何となく分かるよ。そこまできたらいけるって思う。いきたいって思う」
「……」
「お前は前世では……いや、前々世か。艦娘のときは決戦の舞台にも辿り着けなかったんだよな。今度こそは、って思ったろう」
「……」
「俺だって似たようなものだ」
全員の目が、白髑髏に向けられた。
「ガ島奪還作戦で清霜を喪って……今度は誰も死なせないって思ってた。一から必死に考えて、最善の方法を模索して……。でも結果は全滅。一体何が悪かったんだって思ったよ。あんなに無力感に苛まれたことはない」
「……じゃあ、どうして?」
どうしてまた立ち上がろうと思ったのか?
そう問いかける清霜には何も応えずに、新貝は逆に質問した。
「お前はどうして負けたと思う?」
「それは、」
言葉に詰まった。
努力が足りなかったから――違う。これ以上ないほど努力した。
性能で負けていたから――違う。差はあっても同じ戦艦。その装甲を貫くことは不可能ではなかった。
状況が悪かったから――それも違う。あの戦いは一対一で、ほぼ無傷で始まった。条件は五分と言っていい。
勝率はゼロパーセントではなかった。
勝機は、確かにあったのだ。
じゃあ、一体どうして負けた?
何が原因で負けた?
清霜は答えることができない。
たった一つだけ思いあたることはある。
しかしそれだけは口にすることができなかった。
だから代わりに、新貝が口にした。
「生まれついての負け犬だから」
清霜の拳がびくりと震える。
「……アンタ、黙ッテ聞イテレバ!」
霞が激発し、立ち上がる。
しかし新貝は目も向けない。
「……そう思っちまうんだよ、俺たちみたいな勝ち知らずはな」
「く、黒井が、言ってたんだ……」
「なんて?」
「結果を出せなきゃ意味は無いって……。できないのは、ど、努力が劣ってるからだ、って……」
「そうか。それをお前は真に受けたってわけか」
「だって!」
「いいか、よく聞け。正論なんてな、誰でも言えるんだよ。それがどんな極悪人だろうとな」
考えてみろ、と新貝は続ける。
「詐欺師が「あなたのお金が目当てです」って馬鹿正直に言うか? あくまで「あなたの為になる話を持ってきました」って始めるだろ。けどな、それだって嘘じゃない。ただ、物凄く小さな部分を広げて話してるだけだ。……黒井が言ったのも同じこと。確かに正論かもしれない。けれど、お前にぴたりと当てはまるわけでもない。……あのな、そんな“他人の正論”をいちいち真に受けてたらどこにも行けないぞ」
「で、でも……」
「お前は努力してなかったのか?」
「したけどっ! でも勝てなかったんだから……!」
首を振った。
「したんなら気にすることないだろ。いいか、お前が負けた理由はな、努力不足でも性能不足でも状況のせいでもない。そういう、“たった一つの致命的な原因”のせいじゃないんだ。色々なものが少しずつ積み重なって負けたんだ。その中には運だってあるかもしれない。……ただそれだけの話なんだ」
「……よく、分かんない」
「物事は単純じゃないって話だ。どうしたって手が及ばない事も確かにある。だからこそ皆、工夫して、努力して、積み重ねていくんだ。……つまらない結論かもしれんがな、俺たちはできることを続けるしかないんだよ」
「できることを……」
「お前は運命を信じるのを止めたんだろう? なのにどうして“生まれついての負け犬”なんて戯言を信じ込んだんだ?」
「それは……それは、」
――何カヲ成セルト、思ッタカ? 貴様ノヨウナ、負ケ犬ガ……
――貴様ニハ、何モ、デキヤシナイ
黒井が正論らしいことを言ったから。
「あんなつまらない奴の呪いにかかるんじゃない」
「……呪い」
「お前は、負け犬なんかじゃない。それを決めるのはお前自身だ」
清霜は、長い時間をかけてその言葉を噛み締めた。
俯いたまま、膝を握る。
彼女が顔を上げるまで三人は辛抱強く待った。
ようやく見せてくれたその顔は、憑き物が落ちたようだった。
けれどまだ、ぼんやりとしていて。
生気は取り戻すには至らない。
新貝は続けた。
「今のお前なら――エリートなレ級様なら勝ち目はあるぞ。南方棲戦姫の装甲を抜くことだって十分可能なはずだ。やってやれないことはない。どうする?」
「も、もう負けるのは嫌……あんな惨めな想いをするのは……」
「……そうか。それもいいだろう」
清霜は息を呑む。
空っぽの瞳を新貝に向けた。
「なんだ、慰めの言葉でも期待してたか? 「もっと頑張れ」とか「お前ならできる」とか?」
新貝は自嘲するように口元を歪めてみせる。
抜けるような青空を仰いで、その遠い向こう側を覗き込む。
過去を見た。
かつて無人島の浜辺に蹲るしかなかった、一週間前の無様な己の姿を。
「失敗するのが嫌なんて当たり前の感情だ。俺にはよく分かる。頑張って頑張って、それでも惨めな想いをするのは辛いよなぁ」
清霜は、無防備な顔のままだった。
触れれば無残に切り裂いてしまうかもしれない。
けれど、新貝は言葉の刃を突きつけることにした。
「けどな、清霜。だったらお前は、どうして復活できたんだ?」
清霜の顔が歪んだ。
「何もしたいことがないなら、一体何が未練で復活したんだ? お前にはまだ諦めきれないことがあるんじゃないか?」
新貝は、動揺に震える清霜の左腕を指差した。
「それは北上の腕なんだって? あいつはなんて言ってるんだ?」
「……誰かにできることは、誰にでもできることだ、って」
鼻水をすすり上げる。
「雲龍は、なんて?」
「ただ、大丈夫、って」
「だったらよ……もうちょっとだけ続けてみないか。他でもないお前自身が納得するために」
清霜の顔がくしゃくしゃになって。
ぽたぽたと大粒の涙を零した。
「こんなの、それこそ呪いでしかないよ……」
「そうさ、呪いだ。叶えるまで縛られ続けるんだ」
「……」
「はっきり言おう。呪われたまま生きていくのも一つの道だ。目標を諦めて、違う道に進むのは間違いじゃない。たくさんの人間がそうしてる。それはそれで立派な生き方なんだ」
霞も朝霜も口を挟まなかった。
彼女たちはこれまで、たくさんの“妥協した者たち”を見てきた。
その中には艦娘を辞めた者も含まれている。
けれどそんな人たちを負け犬と思ったことは一度も無い。
「俺は、お前がどの道を選ぼうが呆れたりしない。応援する。傍にいる。だがな、全部投げ捨てるってのだけは無しにしてくれ」
清霜は今、岐路にいる。
これから先をどうやって生きていくのかを決める分岐点に。
どっちを選んでもいいと新貝は言う。
霞と朝霜も、ただ見守っているだけ。
たった一つも優しい嘘をついてくれなかった。
酷い、と清霜は思った。
もしも背中を押してくれたなら簡単に進むことができるかもしれないのに。
ただ傍観しているだけなんて、こんな酷い話はないと思った。
自分の人生は自分で背負わなければならない――そんな当たり前の話が、こんなに重いなんて知らなかった。
「……か、勝てる、かな?」
「分からねえ」
新貝は誤魔化さなかった。
その場しのぎの慰めなんてクソの役にも立ちはしない。
そのことを新貝も清霜も嫌というほど知っている。
現実は甘くない。
何をしたって容赦してくれない。
清霜の試練に立ち向かえるのは清霜自身だけ。
だからこそ、新貝は正直に言った。
「はっきりいって分は悪いだろう。レ級eliteといっても姫級じゃないんだからな。火力も装甲も一枚劣る。おまけにあの南方棲戦姫の中身はあの黒井なんだ。あれから一週間も経ったなら、更に強くなってるだろうよ」
それでも、と新貝は続けた。
「諦めきれないんなら、やれよ。黒井なんぞを引きずりながら生きていけるのか? お前はそんな器用な真似はできないだろう?」
「……」
清霜はごしごしと涙の跡を拭い取る。
長い長い時間をかけて、清霜は掠れた声で呟いた。
「……こ、こんな、理由で……戦っていいのかな」
「こんな理由って?」
「色々、あるんだ」
清霜は顔を上げた。
自分の傍にいてくれた仲間たちを見回した。
「霞ちゃんたちショートランドの皆を助けるため……自分にもできることがあるって証明したいから……。でも、今の一番の理由は、違うんだ」
新貝は無言で続きを促した。
霞も朝霜も、清霜の吐露を遮ることはない。
清霜は、胸の奥深くにしまいこんでいた本音を曝け出す。
「あいつが、ムカつく」
その瞳に熱を宿らせて。
拳を力いっぱい握りしめて骨を軋ませる。
「あ、あいつ言ったんだ。「お前には何もできない」って。私のことを、ガ、ガラクタでも見るような目をして、言ったんだ!」
激し過ぎて舌が回らず、清霜は吃った。言葉遣いもまた幼稚になるのを構わずに、ただ本心を吐き続ける。
「そんなの違うって否定しないと、私はもうどこにも行けない! 何をしたって自分が役立たずだって思い返すことになる! そんなふうに生きていくのは嫌!」
清霜には、ずっと無意識下で恐れていることがあった。
正しさを貫くことに意味は無い。
善行を積み上げても役に立たない。
そう理解していようとも、悪いことだけはしてはならないと信じていた。
悔いの残る生き方をしてはならない――そう思っていた。
しかし、ことここに至っては。
そんな甘ったれた遠慮をしていては試練に打ち勝つことなどできやしない。
後のことなど考えず、できることは全てやりきらねばならない。
卑怯なこともする。
惨いことも躊躇わない。
ありとあらゆる手管を使わなければ、黒井成一を倒すなんて不可能だ。
ならば――
清霜は決めた。
勝利のためなら手段を選ばない――そんな悪いひとにだってなってやる、と。
「コンゴウさんが、言ってるんだ」
「コンゴウ? 第三戦隊の?」
「うん。あの人も沈んだのね。今は私になっている」
清霜は、そのコンゴウの信条を読み上げた。
――侮辱は呪いとなって魂に突き刺さる。けして消えることはない。そのままでは一生引きずって生きることになるだろう。故に、屈辱は晴らさねばならない。
――呪いは相手に返してやるべきだ。
――勝てなくったっていい。せめて後悔させろ。そうして初めて自由になれるのだから。
「……勝てなくてもせめて不具にしろ、一生ものの傷を負わせてそれを見るたびに嘆くようにしろってさ。眼を潰すか、指を噛み千切れって。思い知らせてやれって、物凄く楽しそうに言うんだよね」
霞は思わず身を引いた。
「……ナニソレ」
「金剛型の、鉄の掟だってさ」
「コワッ。金剛型ッテ……モハヤ、ヤクザジャン……」
朝霜もドン引きする。
新貝だって内心ちょっと引いていた。
そこまでしろとは言ってない。
けれど、それが彼女の選んだ道ならば。
「そのヤクザなコンゴウさんも、今は私。だから私もそう思ってる。……私はやるよ? あいつの眼を潰して、指を噛み千切ってやる。そう決めた」
清霜はベンチから立ち上がり、一歩二歩と進んで振り返った。
「ごめんね、皆。真っ直ぐで綺麗な駆逐艦清霜は、混ぜこぜになって消えちゃった」
謝罪を告げながらも、その晴れ晴れしい表情といったら。
瞳を未来に向けて、恐れに堪えながらも歩を進めようとしている。
その姿が間違っているというのなら、正義など無用の長物なのだろう。
だから、新貝は肯定した。
「いいさ」
人生は成功と失敗の積み重ねで成り立っている。
今、清霜が踏み出した一歩も、本当は間違っているのかもしれない。すぐにまた後悔に苛まれることになるのかもしれない。
けれど、その歩みを止めなければいずれは正解に辿り着く。
だから間違っていてもいいのだ。
恐れに屈して、立ち止まりさえしなければ。
「……イイノカシラ」
「イインジャネ?」
清霜の目に、新貝は強い意思の光を見た。
その声に、もう怯えは無い。
敗北に潰されず、それを跳ね除けて立ち上がろうとする彼女を、新貝は眼を細めて見上げた。
「これでいいんだよ」
新貝はある歌詞を思い出していた。
それは人の定義について問うた歌だった。
整形手術したら別人か?
臓器移植したら別人か?
記憶喪失になったら?
洗脳されてしまったら?
その全てが同時に起こったら?
そいつは本人か、別人か?
本物か、偽者か?
――余計なお世話である。
そんなことより大切なのはどう生きるかだ。
例え、目の前のレ級から駆逐艦清霜が薄れてしまっても、それでも新貝は堂々と彼女のことを清霜と呼んでやろうと思うのだ。
「……風評被害デース!」
「オ姉様、静カニ」
「金剛型ハ、清ク、正シク、美シク! ケシテ人様ノ目ヲ潰シタリシマセーン!」
「……いや、私のコンゴウ御姉様はああいうことを言う。というかやってた」
「野蛮ナ深海棲艦ハ黙ルデース!」
「なにぃ? あれは艦娘時代の話だぞ。未遂に終わったが……大問題になりかけた。うむ、懐かしいな」
「Bloody hell! アナタ達ハ、絶対! 金剛型デハアリマセーン!」
新貝たちの居る裏庭は、建物の影。
縦横無尽に伸び盛る蔓蔦が窓枠を覆い隠している。
盗み聞きされるためにあるような場所だった。
唐突な叫びに振り向くと、金剛型と第十一戦隊が悪びれもせずに覗いてた。
それどころか不破や大淀も傍に居て、その他の深海棲艦たちさえも加わっている。
「……お前ら、そこで何してる?」
霞たちは振り返った姿勢のまま固まってしまった。
清霜だって目を白黒させている。
新貝も盗み聞きされているなんて気付かなかった。
非難の目で睨んでも、キリシマは憎らしいほどに平然とした態度を崩さなかった。
「おやおや? もしかして新貝か? 近くにいたなんて奇遇だな」
「こんな奇遇があるものか」
「交渉と作戦会議は早々と終わってね。今はこうして親睦を深めているところだ」
「廊下でか?」
「友誼を結ぶのに場所は関係ないだろう?」
「おま、お前な……」
上手い返しが出てこない。
口で女に勝てようはずもなく。新貝は嫌みを零すに留まった。
「……そんなんだからお前ら第三戦隊はトラック泊地に受け入れてもらえなかったんじゃないか?」
「提督なら問題児ぐらい受け入れてみせろ」
「限度がある! ……っていうかお前ら、自分で問題児と分かっていたのか。……いやいや、そうじゃなくてだな。人の悩みをなんだと思って……」
「いいよ、もう」
清霜は言った。
「見栄を張ってたってしょうがないし」
「……そうか」
器用な生き方はできない。一つだけの目標に注力する、と清霜は言った。
それは“後悔の有る生き方”となるだろう。
あるいは悪の道だと多くの者に非難されるかもしれない。
けれど清霜はこう思うのだ。
――勝手に言っていればいい。
傍にさえ居てくれない人の戯言なんて聞く価値も無い。
窓枠の向こう側――建物内では新旧金剛型の面々が好き勝手に言い争っていた。
キリシマの「まったく最近の若い連中は……」という老害めいた苦言はいつの間にか艦娘全体への非難に辿りつき、当代金剛型の淑女たちを大いに憤慨させている。
「大体なんだ、その短いスカートは。今にも下穿きが見えそうだ。破廉恥にも程がある」
「コレハ艦娘ノ正装デース! 文句ヲ言ワレル筋合イハアリマセーン!」
「私を見ろ。昔は皆、ズボンだった」
「ズボン~!? 今ハ“ボトム”・“パンツ”ッテ呼ブンデスヨ、オ婆チャン!」
「パンツ……? はぁ~、今はこんなのが普通になってしまっているのか。貞操観念の欠如も甚だしい」
呆れてみせるキリシマに、謂われのない中傷に顔を真っ赤にさせている金剛。
そんな女性陣の諍いから漣は少し離れて、男性陣に向けて率直な意見を伺った。
「ゴ主人様ハ、ドウ思イマス? 短イ、スカートッテ」
「私ハ良イト思ウ」
「俺もいいと思う」
満場一致の見解だった。
キリシマは天を仰いだ。
「嘆かわしい。男共がこんなだから鎮守府・泊地が売春婦の見本市になるんだ」
「バッ、売春婦ゥ!?」
艦娘の霧島がヒステリックな声を上げた。
「ダッダダ、誰ガ!?」
聞き捨てならない言いように、その場全員の艦娘がいきり立つ。
当事者ではない不破と新貝はいけしゃあしゃあとしたままで。
「売春ハ止メテヤレ。……今ハ、援助交際トイウノカ?」
「パイセン、それも古い。今はパパ活っていうんだよ」
「エ、援交ォ!? パパ活ゥ!?」
「涙ぐましい努力をするものだ。いくら呼び方を変えても本質は同じだというのに」
「チョットォ! 艦娘ハ、バ、バイシュ……イカガワシイ事ナンテシテナイデース! 取リ消シナサイ!」
金剛がキリシマに詰め寄って、榛名が抑えにまわり……いよいよ殴り合いに発展しかねない、そんな喧騒の中で新貝は、清霜にだけ聞こえるように呟いた。
「清霜」
「ん」
「生きる理由なんて正しくなくたっていいんだ。責任を負えるならな。お前には覚悟があるんだろう? ならそれでいいじゃないか」
「……うん」
@
「あああ、ああああ~!」
潜水新棲姫――イムヤが頭を抱えて港の堤防の端で蹲っている。
事の発端は、新貝が発した何気ない質問だった。
「――清霜、お前さぁ、わりとまともになってるよな」
「んん? どういうこと?」
「いやさ、言動っつーか、頭の中身がちゃんとしてるっていうか」
意味が分からない、そう疑問符を浮かべる清霜に、新貝は自分の腰に引っついて離れようとしない潜水新棲姫を指し示してみせた。
「イムヤを見ろ。だいぶ幼児退行してるだろ?」
「あ、うん。私もなんか変だなって思ってたけど……どしたの?」
「復活したてはこうなるらしい。ほら、雲龍のときもそうだったろ」
「そういえばそうだね」
「だからお前もパッパラパーになってると思ってたんだがなぁ」
「……言い方!」
「なのにお前は普通じゃないか。どうして直りがそんなに早いんだ? 高速修復材でも浴びたのか?」
「そんなの無かったけど……」
清霜は人差し指を顎にあてながら思い出してみる。
レ級eliteとして復活してからのこと。
ずっと海の上に居た。
修理だって受けてない。
「バケツ、は無かったけど……。海水を飲んだくらいかなぁ」
「海水? なんで?」
「喉が渇いたから」
「おいおい、危ねえな」
「えーとねぇ、毎日飲んでたような気がする。何リットルぐらい飲んだっけ」
「ええ……? 普通は一リットルで死ぬんだぞ?」
「へー。深海棲艦って丈夫なんだねぇ」
あはは、と笑う清霜は、事の重大さを分かっていない。
いつの間にか背後に立っていたキリシマが一つの仮説を立てた。
深海棲艦は、海水に浸かっていれば直る。
それは乱暴に言ってしまえば、海水が修復材の役割を果たしているようなもの。
ならばそれを飲めばどうなるか?
「……修復効果が全身を巡って、通常よりも早く直るんじゃないか?」
「そうなのか?」
「あくまで仮説だ。海水を積極的に飲む深海棲艦なんていないんだからな。あんな塩辛い液体を、まして傷ついている時に飲むものか」
「言われてみれば確かにそうか。……試してみる価値はあるかもしれん」
新貝は、慈愛に満ちた笑みを作ってみせた。
話の内容を分かっていない潜水新棲姫に向けて。
「イムヤちゃん? いい子だから、海水を飲んでみようか?」
「!」
「大丈夫、何も怖くないよ。ぐへへ」
邪気を感じた潜水新棲姫が本能的に後ずさる。
「やだーーっ!」
まるで楽しみにしていたお出かけ先が歯科医院と知らされたときの幼女の顔で。
こうなったら梃子でも動かないだろう。
新貝は「困ったなぁ」と首の後ろを擦りながら、無慈悲に言った。
「雲龍」
「なに?」
「やれ」
空母の馬鹿力は、実は戦艦を上回る。潜水艦娘に抗えるものではない。
「ぎゃーーっ!」
そこからはもう世界残酷劇場の始まりである。
「ガボボボ、ぐえーっぷ、まずーい! ゴボゴボボボ」
漏斗を使っても一発で噛み砕いてしまうため戦艦清霜と空母雲龍が二人がかりで幼女の口をこじ開けて海水を流し込むという人間から見たら拷問以外のなにものでもない酷い絵図が展開された。
「やめてー! ゴボボボ! ぎゃーーっ!」
「……アリャ大丈夫ナノカ?」
人倫に反するものを見ている気がする、そう控えめに非難する不破を無視して暴挙は続行された。
その結果。
潜水新棲姫は打ち上げられた魚のように痙攣し、泡を吹いて動かなくなった。
「あーあ」
先日に艦砲射撃されたばかりの、破壊痕が残る港の隅で。
新貝一派と不破一派による最後の確認がなされていた。
「――で、今後の方針はどうなったんだ?」
「オ前ナ……」
「今後の方針」
お前らにくれてやるバケツは無いぞ、とぼやきながら不破は話を切り替えた。
「オ前ラ深海棲艦ハ、居ナイモノトシテ扱ウ」
「ほぉ」
どれだけ深海棲艦のスペックが高かろうと、練度が高かろうと、完熟訓練も経ずに同じ艦隊で動けるわけがない。それは信用以前の問題だと不破は言った。
だから初めから居ないものとして作戦を立てる。
艦娘だけでベストを尽くす。
そうすると、相手はそのベストの最も弱い部分をついてくる――と大井は言ったらしい。
「相手ハ黒井ナンダカラ、ソノグライ見透カシテクル、ッテナ。……ダカラオ前ラニハソノ対応ニ動イテモラウ。独自ニナ」
「保険ってわけか。いや、それでいいと俺も思う」
「……トコロデ、アノ南方棲戦姫ハ、本当ニ黒井ナノカ?」
「ああ、間違いない。実際に喋ったからな」
「ナンテコトダ」
提督が、艦娘を攻撃する。それは例え深海棲艦になろうとも許されない選択だった。
「あの野郎、どうやら深海棲艦憎しが高じて艦娘まで嫌いになったらしい」
「馬鹿ナンジャナイカ?」
その声色は不破らしからぬ侮蔑に満ちていた。
大きな声では言えないが……と前置きしながら、不破は言う。
「家族ノ仇? 同情ハスルガナ……同ジ境遇ノ奴ガ、何百万人イルト思ッテル。ソイツラ全員、自棄ッパチニナッテルカ? ……頑張ッテ生キテルダロウガ。恨ミヲ抱エナガラモ、未来ヲ見据エテ、生産的ニ」
「……耳が痛いな」
「第十一戦隊、オ前ラモ反省シロ。何ガ恨ミダ、仇討チダ。ソンナモノハ飲ミ込メ。仲間ガ殺サレルノモ戦争ノウチダ。ソンナノハ分カッテテ参加シテルンダロウ?」
何も言い返せないキリシマを、新貝がフォローした。
「こいつらはこれでも随分ましになったんだ」
「……フン。私ノ元部下ヲ無駄死ニサセタラ、絶対ニ許サナイカラナ」
「ああ、けして投げ出さない」
「頼ムゾ」
大まかな作戦はすぐに決まった。
新貝たち深海棲艦の艦隊は、三つの艦隊に別れることになった。
第一艦隊、艦娘たちをフォローする遊撃部隊。
第二艦隊、対駆逐水鬼部隊。
第三艦隊、対南方棲戦姫部隊。
その振り分けについては異議があがった。
主に、第二、第三艦隊について。
「……潜水艦娘ト一緒ニ潜航シ、ピンポイントデ襲撃スル? ソンナコトガ可能ナノカ?」
可能だと新貝は言った。
まず第二艦隊。
駆逐水鬼――彼女は最も重要な局地戦に差し向けられる。何故なら、一番強いから。
つまり不破の作戦――“艦娘だけのベスト”な作戦が見透かされていることが前提の待ち伏せである。
「随分ト、黒井ノ読ミヲ信頼シテルンダナ」
「あいつは俺たちより頭がいいからな」
「シカシ、一騎打チトイウノハ……」
第二艦隊は、北上とイムヤだけで行くと言う。
敵の前衛部隊を潜ってやり過ごし、一騎討ちを狙う。
相手だって多勢だろう、と不破が指摘すると、北上は反論した。
水鬼が随伴艦を皆殺しにしてくれるから大丈夫、と。
「アタシはあいつの足を壊して逃げ延びた。それはあいつにとっては絶対にあってはならない汚点なんだ。誰にも知られるわけにはいかない。だから、アタシが現れたら目撃者は生かしておかない。これは決定事項なんだ」
そう断言する北上に、待ったがかかる。
「榛名モ行カセマショウカ?」
随伴を申し出たのは、意外にも金剛だった。
「相手ガ一人ナラ、榛名ノ得意分野デス」
「要らないよ」
「アナタ。前モ一騎打チデ、負ケタノデショウ?」
「今回はお互い損壊してから直ったまっさらな状態だから、五分のスタートなわけ。油断しなけりゃ勝てるって」
「デモ百パーセントジャナイ。ナラ確実ニ、シテオカナイト」
「悪いけど、あんたらの手に負える相手じゃないんで」
「榛名。駆逐水鬼ノ動キハ見マシタヨネ? ドウデス? ヤレマスカ?」
「ハイ、榛名ハ大丈夫デス」
えらく自信満々に言ってのける。
北上はほんの数センチだけ首を傾げて虚栄が無いか確かめた。
戦艦娘と視線が絡み合う。
目を眇めても違和感の正体は分からなかった。
「……あんた、もしかして」
「榛名ハネ、一対一デハ無敗ナンデス。横槍ガ入ラナケレバ、ネ」
榛名はにこりと笑みを浮かべてみせた。
「榛名ハ大丈夫デス」
「へぇ、驚いた。……世間は狭いなぁ。こんなところにも居たなんて」
北上は一転、賛同を示して手を取った。
ニ対一の決戦をしかけることになる。
それをまさか卑怯と宣う輩は一人もいなかった。
次は、第三艦隊。
なんと清霜と新貝、二人だけで行くと言う。
「ナンデ、オ前ガ行クンダヨ?」
その問いに、新貝は己の背中を示して答える。
酸素ボンベのような艤装。
それはまさしく酸素ボンベの役割を果たすという。
新貝は潜水艦娘のように水中を自在に泳げるようになったというのだ。
「多分、この背中にイムヤの残骸が組み込まれたんだな。魚雷は撃てないが、清霜一人を連れて海底を進むぐらいはできる」
「爆雷ヲ避ケラレルノカ?」
「危険度でいったらどこも同じだ。むしろこのガ島潜入組が一番安全といっていい」
「ドウシテ?」
「黒井は、深海棲艦が嫌いだ。今の味方さえ憎んでる。だから誰も傍に居させないはずだ。ガ島に居るのはあいつ一人だけ」
「ソンナノ推測ダロ?」
「あいつが人間だったら嫌々ながらも護衛をつけただろう。だが今は深海棲艦だ。我侭を通すに決まってる」
「無茶苦茶ナ理屈ダナ」
「その通り。だから深海棲艦は艦娘に勝てないんだよ。肝心なところで一致団結できないから」
「ジャア、何カ? ガ島近海ノ防衛網ヲ潜ッテ通リ抜ケタラ、ガ島泊地ニ居ルノハ黒井一人ダケ? オ前ハ戦エナイカラ……清霜ガ、一騎打チヲヤルト言ウノカ?」
「そうだ」
「フウム……」
この第三艦隊にも艦娘を随伴艦としてつけるべきか、不破は考えた。
――無理だ。
今ショートランドで動ける潜水艦娘は伊58だけ。彼女を榛名につけたら他には居ない。
じゃあその榛名・伊58のペアを対南方棲戦姫のほうに向かわせるべきか?
それもない。
危険すぎるからだ。
まず、新貝のいう理屈が合っているという保証がまるで無い。
合っていたとしても、黒井に仲間を呼ばれたら万事休す。
仮にそれも上手くいったとしよう。仲間を呼ばれる前に黒井を倒すところまで完遂した。だが、戦艦同士で派手に争って、近海で待機している深海棲艦たちに気付かれないとは思えない。
きっと潜る前に囲まれる。
帰れない。
「新貝、オ前ハ……」
そこまで分かっていて言っているのか。
新貝は無言で肩を竦めてみせた。
「……イイダロウ」
不破としては。
この南方棲戦姫暗殺作戦が失敗に終わっても問題はなかった。
もう一戦凌げれば、ほぼ間違いなく佐世保の精鋭艦隊が到着するからだ。
大和型二番艦、武蔵を含む、新編二航戦が主力の連合艦隊。
三大鎮守府の名は伊達じゃない。
佐世保の精兵たる彼女たちが戦争に加われば、数頼みの深海棲艦や一人しかいない猛者の駆逐水鬼をねじ伏せて、あっという間に南方棲戦姫の首を獲るだろう。
そしてその後は、残った全ての深海棲艦たちを……。
「コノ戦争ノ片ガツイタラ、ドウスル?」
「元の鞘に収まるだけだ。ガ島泊地に居座るさ」
「ダガ……」
第二次ガ島奪還作戦が始まるぞ――とは言えなかった。
これ以上の助言はきっと利敵行為になる。
そして、不破が呑み込んだ言葉の先を、新貝はとっくに察していた。
察した上で、居座ると言っているのだ。
だったら不破に言えることはない。
「そのことなんだけど」
不意に、大井が割り込んで。
「ちょっとお時間よろしいかしら?」
その手に薄汚れたフラッシュメモリを弄びながら、うち捨てられたコンテナの影を指した。
「……ナンダ、ココジャ不味イ話ナノカ?」
「ええ、とっても」
彼女は見事な笑みを作ってみせた。初心な男が相手なら一発で恋に落ちてしまうような愛嬌満点の笑顔だ。
不破を伴っていく彼女の後ろ姿を、新貝は背筋を震わせながら見送った。
「――ところで、大淀。清霜と北上を潜らせるにはスクーバ器材が必要だ。タンクとか色々、セットでくれ」
「深海棲艦ノクセニ、海中デ呼吸モデキナインデスカ?」
「そんな呼び名は人類が勝手につけたんだろう。魚じゃないんだ、単独で潜れるのは俺や潜水艦娘だけだよ」
「面倒デス。事後処理ガ」
「……俺たちが盗んだことにすればいい」
「ダッタラ、ソノ手順モ考エナキャイケマセンネ。私タチガ責任ヲ負ワサレナイヨウニ」
「かーっ、面倒くせえな!」
「ソウイウモノデス、提督ハ」
「だったらついでに改修MAXの一式徹甲弾もくれ。不破パイセンなら持ち込んでるだろう?」
「何ガ“ダッタラ”ナノカ、意味ガ分カリマセン」
「いいだろ? 俺たちが勝つためだ。投資しろ」
「デモ不破提督ニ、許可ヲ取ラナイト……」
「駄目駄目。作るのめっちゃ苦労したって言ってたから断られるに決まってる」
「ソレヲ分カッテイテ、持チ出ソウト言ウンデスカ……」
「ああ、あと戦闘糧食とかもくれよ。米を食いたい。パンでもいいぞ」
「アノデスネェ……」
わちゃわちゃと話し込んでいると、それまで横になっていた潜水新棲姫が唐突に身を起こした。
「お」
幼女が白い顔を上げ、ゆっくりと周囲を見回している。
「ようイムヤ。調子はどうだ?」
潜水新棲姫は何も答えない。背を向けて一歩二歩と進みだし、堤防の端まで辿り着くと唐突に頭を抱えて蹲る。
そして、
「あああ、ああああ~!」
逃れようのない記憶に苛まれた。
「イムヤちゃーん? いつもみたいに俺にひっついてきていいんだよ?」
「やめて! あれは違うの! 意識が朦朧としていたっていうか……とにかく違うの!」
「あのときのイムヤちゃんは可愛かったなぁ。俺を慕う本心が表れていたんだろうなぁ」
「はぁぁ? 今、なんて!?」
「司令官、だいちゅき」
「そんなこと言ってない! あああ~! 最悪、最悪よ!」
「イムヤねぇ、大きくなったら司令官のお嫁さんになるぅ」
「黙れぇ!」
頭の中身がすっかり戻っていた。
海水効果は抜群だった。
後に漣は「こんなのバケツが無限にあるようなもんじゃん」と呆れ、不破は「この広い海で誰も発見していないわけがない……」と死んだような声で補足した。
遅かれ早かれ広まるに違いない。
大淀の疲れきった溜め息がやたら印象的だった。
やっぱり5-5で決着はできませんでした。