三玖と恋するフータロー   作:アランmk-2

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中学生みっく可愛い


僕らを取り巻く衛星の

「三玖ちゃんお願い! 自由班に入れて!」

 私がフータローと付き合っている事が半ばクラスの公然の事実となったころから、こんな事を言われるようになった。

 理由は簡単。武田君がフータローと班を組むから、フータローの彼女である私と一緒の班になれば、もれなく武田君が付いてくるという状況を、彼を狙う女子達が見逃すはずがない。

「でも……」

「お願い、ね、ね。だって三玖ちゃんあれでしょ、サテライト組でしょ?」

「さ……サテラ……何?」

「知らない? 班を組んでるけど抜け出して二人きりになる人たちの総称なんだけど」

「知らなかった」

「上杉君と二人きりで京都を回るんでしょ? 邪魔しないから班に入れてよー」

 彼女はそう自分の言いたい事を言いきると手を振ってどこかへ行ってしまった。

 私はため息の一つでも吐いて、ノートのとあるページを開く。そこにはさっきの彼女のような頼み事をしてきた女子の名前が書いてある。ノート半ページ分ほどにもわたる名前の羅列は、彼女達の恋心が立ち昇ってくるようで、そこから一人を選ばなければならない自分のおこがましさに頭が痛くなった。

「どしたの三玖? うわ、女子の名前がいっぱい。え、何、殺すの?」

「殺さないよ。発想が島津すぎる……」

 ノートを見て唸っていた私を見かねてか、友達三人が声をかけてくれた。三人は回し読みし終えると、

「もしかして一緒の班に入れてくれって女子の名前? これ」

「そう。ちょっと相談にのって欲しい」

「はあ~? 小早川秀秋に話す事なんかないからな~」

「三玖さん彼氏が出来たからって頭高くのうござりませぬか?」

「どうする? 処す? 処す?」

 ここぞとばかりに攻め立ててくる。フータローと付き合ってると知られてからちょくちょく当たりがきつい。

「お慈悲を……」

「三玖―」

 お奉行に裁かれる罪人ごっこをしていたら後ろから私によく似た声が読んでいる。

「あ、すみません。お話中でしたか」

 長い髪を振って、星のヘアピンがきらりと光る。

「あ、五月ちゃん。いいよ、しょうもない話しかしてないから。用事があるなら言って、どうぞ」

「いえ、私もそんな大そうな用ではないのですが……」

 あれ、と五月は机に置いてある女子の名前が書かれたノートに目を止めた。友達は私の許可なくそれを差し出す。

「なんでしょうか、この女子の名前の羅列……。上杉君に色目を使った女子リストですか?」

「あはは!」

 皆は五月と似たり寄ったりな発想だった事がおかしくて声をあげて笑った。

「五月まで、私を何だと思ってるの」

「嫉妬深いお姉ちゃんでしょうか」

 思わず怒りに頬が膨れてしまう。私ってそんなに嫉妬深いかな? ……いや嫉妬深いか。

「あはは。そりゃあ嫉妬深いお姉ちゃんが女のリスト作ってたらそういう発想になるよ」

「もういい。もう頼らないから」

「結局これは何のリストなんですか?」

「男の為にあんまり話したことのない人にもすがる哀れな女の名前だよ」

「言い方ァ!」

「間違ってないのがなんとも」

「返して」

 好き勝手言われている源であるノートを取り返して机にしまった。

「ごめんごめん。でも本当にどうするの? 誰を選んでも角が立つ状況に追い込まれた訳だけど」

「本当にどうしよう……」

「皆さんの中から誰かが班に入ればよろしいのではないでしょうか」

「嫌だよ。松風に蹴られて死にたくないからね」

「いやそっち?」

「「あはは」」

 一人が冗談を飛ばすと、私達は笑った。

「あの……すみません三玖。どういう意味でしょうか?」

 しかし五月は分からなかったようだ。私の袖をひいて説明を求めてくる。

「えっと、これはね……」

「ちょっと冗談を解説しないでよ」

「でも分からないって言うし」

「解説しないでー」

「してよし」

「同じく」

 冗談を解説されたくない派とさせたい派の争いは、一対二の数の有利によりさせたい派の勝利に終わった。その戦いを見届けた私は五月にさっきの冗談の解説をした。

「まず松風っていうのは馬の名前」

「馬の名前ですか」

 それを聞くと五月は理解できたとばかりにぱっと顔が笑顔に変わる。

「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ、という言葉ですね。なるほど」

「もう少し意味が込められてる」

「松風に馬以上の意味が込められてる、という事ですか?」

「そう。松風は『花の慶次』って作品で前田慶次が乗っていた彼の愛馬の名前で、前田って言ったら?」

「そういえば上杉君は武田君と前田君と班を組むと言ってましたね。その前田君ですか」

「うん。だから松風って言うと、前田君の事だよね」

「そう……ですね。松風の主は『前田』慶次、ですから」

「で、前田君って彼女が……いるんだよね?」

「そうだよー」

「だからさっきの冗談は『いや私の方じゃなくて前田君の方の心配してるのかよ』というボケの重ね合わせ」

「ああ、なるほど。そういう事だったんですね」

 解説を終えて理解した五月は、今更ながらくすくす笑った」

「渾身の冗談を真面目に解説された気分はどう?」

「私は貝になりたい……」

「あーあ、ふさぎ込んじゃった」

「す、すみません。私の理解力が足りないばっかりに」

「うっ……眩しい。そんな真っすぐな目で見ないで」

「私はそういう事に頭が回らないので素直に凄いと思います。えっと……三玖なんて言いましたっけ?」

「え、ボケのダブルチーズバーガーの事?」

「そんな発言じゃありませんでしたよね!? ……ダブルチーズ……」

 五月はどこか遠くに目を向けると、じゅるりと唾を飲み込んだ。余計な事言っちゃったかも。

「三玖、今日ポテトLサイズが百五十円のクーポンが使える日なので行って半分こしませんか?」

「やだ」

「お金は私が出しますから」

「お金じゃなくて、五月と行くとハイカロリー過ぎてみてるだけで胸やけしそうになるから」

「君達は五つ子なのにそんなに食が違うのかな?」

 疑問から口を挟んだ友達は、首をかしげながら答えを待っている。私達は体型もほぼ同じだから、きっと同じような食生活を送っているのだろうという先入観からくるのだろうか。

「だって五月、フルーリーを頼んで『飲み物ですし白いので実質カロリーゼロ』とか言うんだもん」

「えぇ……そんな好感度めちゃ高なお笑いコンビみたいな事言ってるの?」

「言ってません! フェイクニュース、フェイクニュースです! 失礼ですよ、嘘つきの記者は退室してください!」

 びしっと五月に指を突きつけられた私は抹茶ソーダでも買いに行こうかと席を立った。

「あー! 嘘です、嘘ですから退室しないでください」

「五月、結局用事って何?」

「ああ、そうでした。お昼に二乃が話があると」

「二乃が?」

「はい。おそらく上杉君の事とは思いますけど」

「フータローの事?」

 いや、より正確にいうならフータローと班を組む武田君を狙う女子の事だろうけど。

 期せずして渦中の真ん中に巻き込まれたフータローを横目に見ると、何人かで固まって勉強を教えているようだ。

「だからここの虚数iがな……」

「おお」

「√iが……」

「はあ……」

 数学をしているみたい。

 解説を受けている男子はガリガリ頭を掻いていた。フータローは注意をしようと口を開くが、

「うおー! アイアイうるせー! 南の島のお猿さんかよコノヤロー!」

「ひどい言いがかりを見た」

 ……よく分からない理由でキレられていた。

「もうさ、上杉君と二人班にしたらいいんじゃない?」

「そうそう。どうせ途中で抜けて二人で京都を回るんでしょーが」

「でも……せっかくフータローに男の子の友達ができたんだから、楽しんで欲しいし……」

「うわー正妻発言出たね」

「これはエモいですな」

「……私、悩んでるんだけど」

「火事は江戸の華っていうし、それはもう轟轟燃えてください」

「他人事だと思って」

「見てる分には面白いもん」

 けらけら笑う友達は、普段は良い人なんだけど、今は面白がってそれどころじゃない。

「あの……それで二乃が」

 私達が話していると、忘れられたのではないかと五月が不安そうな顔をしながら私の袖を引く。雨に濡れた子犬のような潤んだ瞳は、人に何かしなくちゃと訴えかけるものがある。

「分かった」

「はい!」

 光が差し込んだみたいに五月の顔がぱあっと明るくなると、ぴょんぴょん跳ねながら私の手を握って来た。

「おーおー、可愛えーのう」

「お嬢ちゃんちょとこっちおいで」

「五月あんなほぼ犯罪者に近づいちゃダメだよ」

「友達甲斐がないなあ」

「妹に手を出そうとする人とは友達付き合いを考えないと」

「えーやだー、私達は兼続が愛の兜かぶるまで三玖にべったりするつもりだからね」

「気が早い気が早い」

「「あははは」」

「……あの、今のはどういう」

「あれはね……」

「だから人のネタを懇切丁寧に解説するなー!」

 私達は一際大きな笑い声をあげた。そして遅れて五月の笑い声が聞こえた。ちなみに解説しておくと花の慶次のスピンオフ『義風堂々直江兼続』という作品において直江兼続は上杉謙信の嫡男という設定で、つまりフータローとの子供を見るまでくっついてやるぞという言葉である。友情に厚いのか、ただ面白がっているだけなのか。楽しい友達であることに変わりはない。

「別に解決法を考えてくれてもいいんだよ?」

「パス」

「同じく」

「陽キャこわい」

 ……頼りにはならないけど。

 

 

「来たわね」

 昼休憩になって手短にご飯を済ませると、私は中庭に向かった。真ん中に位置する屋根付きのベンチに、残酷な天使が窓辺から飛び立ちそうなアニメに出てくる司令みたいに指を組んで肘をついて口元を隠して二乃は神妙に言った。横に四葉が背筋を伸ばして立っているから余計にそれっぽい。

「今日はあんたも私達も悩ませるあの問題に決着をつけましょう」

「……やめていい?」

 真面目に立っていた四葉はむずむずと身を震わせると、固い表情を崩してため息を吐いた。

「そういえば一花も五月も来ないの?」

「どっちも先生に話があるそうよ」

「最近多いね」

「一花は休んだ授業分の補習の話。五月は受験の話だし、大学受験を考えているなら、考えすぎ話しすぎって事は無いでしょ。東大を目指す子はそれこそ小学生のころから準備しているって一緒に見たテレビで見たじゃない」

「あはは……未知の世界だね」

「……じゃなくて! 今はとりあえず目の前に迫る問題を解決しないと」

「武田君と班を組みたい女子多すぎ問題」

「それよ。三玖、五月から聞いたけど件のノート見せなさい」

 言われた私は持って来たノートを開いた。

「うわぁ……これってクラスの女子半分くらいかしら。武田ってそんなにモテるの?」

「この前友達が話してたけど『明るい花沢類がいるみたいなもんだから、そりゃモテる』なんだって」

「誰よ花沢類」

「『ま~きのっ』てやる人」

「あぁ、あの芸人がやってる小栗旬の役ってそういう名前だったっけ」

「友達のお姉ちゃんがすっごいそのドラマが好きで、何回も見させられたんだって。私も歌だけだけど何回も聞いたよ」

「へぇー。どんな歌なの?」

「たぶん分かるよ。有名な歌だもん」

 あの、問題の方は……

 私の戸惑いはお構いなしに四葉がドラマの歌の準備をする。

「確かに聞いたことあるわ」

「紅白にも出てるからね」

「……いい?」

 話題がひと段落した所で口を挟んだ。二人はバツが悪そうに頬を掻いて、仕切り直しとばかりに口を開いた。

「こほん……それでこの由々しき事態に、私は一つ解決策を提案したい訳だけど」

「本当?」

 悩んでいる私にとってその一言は、地獄に下りてくる一筋の蜘蛛の糸のようにキラキラ光って見えた。

 二乃は自信ありげに微笑んで、そして一人の名前を指さした。

「この子を選びなさい」

 そう言って指さしたのは、いわゆるスクールカースト上位な女の子だ。可愛くて頭も良くて、部活でも結果を出して友達も多い。

「どうして?」

「そりゃあ一番角が立たないからよ。この中で一番凄い女子がこの子でしょう? 圧倒的一位を選ぶのはつまらないかも知れないけど、納得せざるを得ない力がこの子にはあるわ。例えば隣のあの子に勝てないから悔しいとは思っても、大坂なおみに勝てないから悔しいって思う人はいないでしょう?」

「確かに……」

 その提案には一定の効果があるように思えた。凄い人には負けたって仕方がない、と思う心理は私にもよく覚えがある。

「私から言いたいのはとりあえずそれくらいかしら」

「……でも、それでいいのかな?」

 ポツリと息を吐くように小さくそう言うと、耳ざとく聞きつけた二乃は眉を顰める。

「どういう事かしら」

「あ、ごめん。二乃の提案は確かに良いと思う。でも、どうしてかな、納得できないというか、したくないというか……」

 そんな私の言葉に、理解できないように二乃は睨みつけてきた。

「二乃、三玖はそんなつもりで言ったんじゃないよ」

 隣の四葉はそっと二乃の肩に手を置くと優しく語り掛ける。その四葉の体温にほどけたように笑って、四葉を撫で返した。

「分かってるわよ」

 顔から険のとれた二乃は、それでも力のこもった目線を真っすぐに私に向けて言った。

「でもね三玖、あんたにどうしても味方したいとか、あの子の恋を応援したいとか、そういうのがないなら私の提案は充分に検討の価値があると思うわ。どうせ人の恋路なんだもの、何がベストかなんてわかりっこないんだから」

 二乃はからかうように微笑んだ。

「ごめんごめん。思ったより話が長くなっちゃった」

「どうですか? 結論はでましたか?」

 しばらくすると一花と五月も合流してきた。五月はいつも通りだが、なんだか一花は疲れたように笑っている。きっと出なければならない補習の量だけで気疲れしてしまったのだろう。

「ダメね。クラスのマドンナでも私の班に加わるのは相応しくないんだって」

「二乃、そんな事言ってない」

「納得してないのはそうなんだけどねー」

 私達五人は女子の名前リストを中心に置いて議論を戦わせた。といってもそんなのは最初だけで、次第に普通の会話になって気楽なものになっていく。

 気の重たい事柄から離れた会話をしていても、その事柄の渦中の人物を見れば引き戻されてしまう。

「あ、フータロー。武田君と一緒だ」

 渦中の人物、武田君はフータローと何人かの男友達を食堂の方から引き連れて教室に帰る所だ。その中から一人が躍り出ると、くるりと回って後ろに滑るように進んでいった。

「上手―い。無駄にムーンウォーク上手い」

 一花は小さく手を叩いて気の抜けた声を出した。

 その彼はフータローを引っ張りだして、俺がやった事をやれと言っているのかもしれない。フータローは足元に視線を落として、見様見真似でマイケルになりきる。ギギギ、ギギギ、と油の差していないロボットのような動きに男子達も、そして私達からも笑い声があがった。今度は武田君の番のようだ。軽やかにステップを踏むと、帽子を押さえる仕草をしながら後ろに滑って行った。

「おー」

 私達の口から関心する声が出てきた。

「ほんと武田君ってなんでもできるんだね」

 ふんふんと四葉は何に納得したのか頷いている。たしかに皆、彼が出来ないと言った所を見た事がない気がする。

 しかしこう彼らが楽しそうにしているのを見ると、

「面白くないわね」

 二乃がそうつぶやいた。

「私達がこんなにあれこれ悩んでるのに楽しそうにしちゃって。本人が責任取りなさいよ」

 確かに悩みの種がこちらの気も知らないで楽しそうだと嫌味の一つも言いたくなる気持ちは分かる。

「おーい! ちょっと男子―!」

 二乃は大きく手を振って男子の一団に声をかけた。こちらに気が付いたフータロー達は皆一様に首をかしげてこちらに向かってきた。

「ぞろぞろ来るんじゃないわよ! 来なさい女の敵」

 そう言われると武田君は苦い表情になって周りの友達からばしばし肩を叩かれた。武田君は大げさに肩をすくめながら、ゆっくりとこちらに歩を勧める。

「こらー、一年ダッシュだよー!」

 そんな武田君にしびれが切れたように、一花はふざけつつそんな事を叫んだ。

 男子の一団からは大きな笑い声があがって、武田君はバツの悪そうに頭を掻いて駈け出した。

「やあ中野姉妹の皆。女の敵とは穏やかじゃないね」

「武田さん、これを見てもそんな呑気な事を言えますか」

 四葉は女子の名前リストを武田君に突きつけた。

「この女性陣がどうかしたのかい?」

「あんた、薄々察してはいるんでしょ? しらじらしい真似は止めなさい。年貢の納め時よ色男」

「これは手厳しい。でも、申し訳ないけどもう他の人を班に入れる気はないんだよ」

「はぁー!? 私達が悩んだのは何だったわけ!?」

 二乃は武田君の言葉におかんむりだ。私も、悩んでいたのにその時間が無駄だったと突きつけられると、胸の内がもやもやした。

「何て言えばいいんだろ……」

 それと同時に気分が重くなった。彼女達に何と言って納得してもらうのか。

「まあそれは僕が言うよ。女の子にばかり苦労を押し付けていられないからね」

「当然よ」

 二乃がふんっと口を尖らせて言った。

 解決法が見つかってしまえばなんて簡単な事だったんだろう。後の事を一切合切武田君に丸投げしてしまうという、いささか無責任な方法ではあるけれど。

「終わったか?」

「あ、フータロー」

 武田君が立ち去った後すぐに、フータローが話しかけて来た。

「終わったわ」

「そうか。何の話だったんだ?」

「フータロー君には関係ない話」

 一花にそう言われると、フータローは口をへの字にして不満を露わにさせる。私はそんなフータローの頬を突っついた。

「妬いてる?」

「……別に」

「かわいいな」

「やめろよ、三玖」

 困ったように笑う彼に、ついついちょっかいをかけてしまう。

「こほん、お二人、ここが学校だと分かっていますか」

 五月が真面目な顔をしてそう言うから、浮ついた気持ちの波がさあっと凪いでいった。

「ごめん」

「まあまあ、面倒な問題が無くなったんだからお固い事は言いっこ無しで。ね、五月ちゃん」

 一花は怒ったような五月の肩を叩いてなだめる。

「私達は私達で初日のプランを考えましょう」

「そうだね」

 四葉は懐から旅行ガイドブックを取り出すと机の上に広げた。四人の輪の中に私も加わる。

「こら、三玖は違うでしょ」

「こっちに来ちゃったらフータロー君不貞腐れちゃうよ」

「俺は子供か」

「じゃあ三玖は貰っちゃって良いんですか? 上杉さん」

「……そうは言ってない」

 その照れくささを隠すようにつっけんどんな態度に、私達はくすくす小さく笑った。

「上杉さん、後悔のない修学旅行にしましょうね!」

 

 高校生活最大のイベントは、もう目の前だ。

 

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