「頼んだよって言われてもねえ……はあ……」
ひらりひらりと揺らめく蝶のようなリボンをはためかせながら、彼女は窓の向こうで小さくなっていくヘッドホンを首にかけた姉妹を見てため息を吐いた。
期末試験が終わり、テスト週間のせいで止められていた部活が始まり、それに駈け出す生徒達をクーラーの効いた教室から見下ろしている。
からからと引き戸が開く音がして、外に向けていた目をそちらに向けた。黒髪と金髪の、二乃がこの学校に転校してから仲良くしている女生徒だ。
「やっほー二乃。なにブルーになってるの」
「そうそう。せっかく試験が終わったのに、悩むような事ある?」
「ん? まあちょっとね」
ここ数か月の二乃の主な悩みと言えば、喜びとしてのイエローと憂いを帯びたブルーと恋愛戦線を張ったのちに世の果てで青と風が交じった事なのだが、二乃は友人にも風太郎が好きだという事は秘密にしていたので、軽く頷きながら言葉を濁した。
「何々? 赤点取ったの?」
「いやいや、今更取らないわよ」
「ていうか赤点て取らない物なんだけど」
「それ」
「もう」
三年になってから、というよりは、二乃が赤点を取らなくなってからこういう冗談も交わせるようになっていた。
あっ、私って気を遣われてたんだな、と思ったのは二乃史上最もヘコんだ事の一つである。
「というよりこの高校レベル高くない? なんで全国トップ10が二人もいるの? そんな超進学校だっけ」
「二乃、勘違いしてもらっちゃ困る」
「あの二人は完全にヒュー・ジャックマン」
「そうそう。蜘蛛に噛まれたトムホ」
「……突然変異って言いたいの? あと私、スパイダーマンはアンドリュー・ガーフィールド派だから」
「えー、トムホかわいいじゃん」
「可愛すぎじゃない? 私ワイルド系の方が好みだから」
「そう言えば二乃はそうだったね」
例えばお気に入りの俳優が出ている映画を見に行った時、二乃の反応が良いのは俺様系の役柄を演じている時なのは二人の共通認識だった。
「でもうちの学校に二乃の好みっていなさそう」
「武田君はタイプ違うし」
「あ、そうだ。五つ子なんだから男の好みも同じになるの?」
「は?」
唐突としか言いようのない言葉にピキリと顔が固まって苦い顔になった。ホテルの一室で三玖から緑茶を受け取って飲んだ時のような苦い顔だ。
「もしそうだったら地獄すぎないそれ?」
「昼ドラも裸足で逃げ出すね」
「あんた達ねえ、どうせ三玖の事面白おかしく聞きたいだけなんでしょ? スッと聞きなさいスッと。なんでいちいち妹の恋バナの始めに私がダメージ受けないといけないの」
「えっ、聞いていいの?」
「いいから。今の私は試験が終わって無敵だから」
「じゃあ聞くけど二人が体育倉庫でヤッてたってマジ?」
「ごふっ!」
ヤッただのと生々しい質問に、飲み込もうとしていた唾が変な所に入って思わずむせた。どんな質問も受け止める準備が出来ている無敵モードだと言ったのは嘘ではない。ただ質問の内容がハイパームテキを突き破ってくるような内容だっただけで。
「げほっ! な、何て?」
「だからヤッ……」
「あー! やっぱいい、分かったから。……そういう事……」
「え? どうかした?」
「どうかしてるのはそっちでしょ!? どうしてそんな発想になるの」
「いやだって鍵かかった狭い部屋で恋人がする事って……ねえ」
「しかも上脱いでたんでしょ? 有罪でしょ」
「事実無根よ……と言いたいけど事実が織り交ざっているだけに何とも言えないわね……」
風太郎と三玖が閉じ込められていた倉庫を開けていた教師がポロっと零したのだろうか、それともたまたま見ていた生徒でもいたのだろうか、どちらにせよ面倒の種を投げ込んでくれたものだとこめかみのあたりをトンと叩いた。
「三玖とあと身内である私達の名誉の為に言っておくけど、いかがわしい事はしてないからね」
「嘘だー」
「というか噂に弄ばれすぎ! なんなの、初陣で昌幸に弄ばれた秀忠なの?」
「は?」
「何言ってんの?」
「ほら前にやってた大河の話。草刈正雄にやられた星野源って言った方が分かりやすいかしら?」
「あ、大河ドラマの事言ってるの」
「意外。見てるんだ」
「三玖がね……。くっ、あの時パーを出していれば……」
「録画すればよかったんじゃないの」
「リアタイで見れるのに見ないのは何か負けた気がするじゃない」
「そういう物?」
「あれ、何の話だっけ」
「だから日曜の夜は大河よりイッテQを見るべきよねって話じゃないの」
「違―う! だから噂の二人が校舎の端でヤッてるのかとかどうかって話でしょ」
「ま、お下品」
「お上品ぶるの止めない?」
「そんな強引な舵取りするなんてやっぱしてないってのは嘘?」
「嘘じゃないわ。閉じ込められて熱中症にかかったから脱がしたって言ってたんだから。保健室の先生にでも聞きに行ったら一発で分かる嘘ついてもしょうがないでしょ?」
「それはそうだけど」
「それと、保健室からのお知らせがあったでしょ? 熱中症患者が出たので皆さんも注意して下さいってやつ」
そう言われて二人は先ほどのホームルームを思い出した。確かにこれから最後の部活に向けて頑張る中で汗をかいて熱中症にかかったり、涼しい部屋と外の気温差で体調を崩す事がないように、と担任から言われたのだった。
「あったあった」
「あれ出たの三玖のせいだから」
「えーそうなの? 確かに終業式の連絡事項でまとめて言えば良くない?とは思ったけど」
「大体、やらかしてたら反省文なり奉仕活動なり停学なり処分されるはずでしょ」
「そっかー、つまんないの」
「噂話の真相って、案外つまんない物よ」
は~あ、と二人は大きくため息を吐いてスマホを取り出してせわしなく画面をタップし始めた。ため込んでいたメッセージに適当に返信しながら気の抜けた会話をしていたが、不意に何かを思い出したように元気になって話出した。
「ね、これからあの店行かない?」
「タピオカ?」
「何言ってるの。二乃が美味しいパスタ出す店があるから今度行きましょうって言ったんじゃない」
「あっ、ガチの方の食べ歩きね」
「そうそう」
楽しくふくらませれそうな噂話を失ってがっくりしていた二人は、気を取り直して楽しい事に目を輝かせ始めた。
「おい、三玖、いないのか?」
スマホでお店へのルートを確認しながら話していると、無粋に割って入る声が扉の方から響いてきた。
怪訝な目をしながらその方を振り返ると、平均身長よりも高いすらりと、というよりはひょろりとした体型の男子。さっきまで噂していた上杉風太郎その人だった。
噂を持ち込んでぶつけて来た二人は思いがけないラッキーに目を輝かせた。
「ここに……」
「上杉君、丁度良かった」
「聞きたい事があるんだけど」
「は? ……まあ別に構わないが」
「やった。こういうのは本人から聞くのが一番だよね」
「二乃はやっぱ第三者だから」
「散々聞いておいて最後それは酷くない?」
女子達の会話を風太郎はいつものような、ぼうっとしているわけでは無いが覇気のない雰囲気で聞いていた。そこから椅子にでも座ろうかと思っていると、「ん?」と頭を捻り、「は?」と零した。
「二乃」
「何よ?」
「二乃……二乃!?」
「何なのよ。人をゴリラの学名みたいに連呼しないでくれる?」
「何そのピンとこない例え」
「どういう事?」
「ゴリラの学名はゴリラ・ゴリラって言うのよ」
「ぷっ、連呼するなってそういう」
「中野・中野さん」
「誰なのよそれは」
また脱線しかけた話の流れを風太郎はこほんと一つ咳払いをしてせき止めた。三人の女子の内、二人は何を聞こうとしたか思い出して、残りの一人は鋭い目つきを更に尖らせてそのまま流されておきなさいよと彼を睨んだ。
何で俺睨まれてるの、と釈然としないまま風太郎は聞きたい事があるならどうぞと促した。風太郎はここ一週間、何かにつけて勉強の質問を受けていたので、俺に質問があるなら勉強の事だろうなとアタリを付けていた。受験生とは言え試験直後に勉強したいとなる人間は少ないが、そんな事を風太郎は知る由もない。風太郎は人の心が分からぬ。
「あれなの? 忘れられない夏にしてあげる♡されちゃったの?」
「……なあ、なに言ってんのこの人」
「無駄無駄。そういう迂遠な物言いは分からない奴だから。それと……」
「えー、彼女と同じ顔の姉妹がCMに出てたらチェックするんじゃないの?」
「無理ね」
「無理って。いくら忙しくてもテレビくらい見るでしょ?」
「だってこいつの家テレビがないんだもの。物理的に無理なのよ」
「は? 吉幾三じゃん。ウケる」
そう言うと二人はけらけら笑い出して、ついて行けない風太郎は笑う二人とそれを見守る一人を見比べた。聞きたい事があると言われて、良く分からない事を言われて、そしていきなり笑いだされた。しかもよく知らない相手に。質問が勉強の事ではないと分かった事であるし、急に風太郎は帰りたくなった。
「帰ろうぜ」
「駄目駄目上杉君、これから二乃は私達とご飯食べに行くんだから」
「三玖ちゃんと付き合ってるからって、姉妹を独り占めはいけないなあ」
「独り占めって、人聞きの悪い事を言うな」
「でもさ、姉妹の皆ってけっこう君にべったりじゃん。実は皆と付き合ってるんじゃって噂もあるくらいだし」
「噂、噂ってなあ、俺はみ……」
「わー! そ、そんな事ある訳ないでしょ! しよう物なら私が絶対に許さないんだから!」
反論でもしようかと手をあげた風太郎を勢いよく制して、どこかしどろもどろな調子でそんな事を言った。
「二乃、なんか必死すぎて逆に怪しいよ」
「あれあれ? 実は~?」
「怒るわよ。そもそも五つ子って言っても好みなんて全然違うんだから」
「へー、例えば?」
「三玖の好みはそれこそあれね、草刈正雄ね」
「そうなのか?」
「いや何で当人が疑問形なの。好きな俳優の話くらい聞かないの?」
「聞いてないな。だから今聞いてる」
「本人から聞きなさい」
「だから」
「もうこの話は終わり終わり!」
これ以上の話をさせないように、パンパンと手を叩いて会話を打ち切ると、行く準備してと二人に声をかけた。変な二乃、と思いながら二人は荷物を手に取った。
「なに焦ってるの? ランチは二時までやってるんだから余裕だって」
「だとさ。恋バナしようぜ恋バナ」
「上杉君自分の事なのに、君結構いける口だね」
「そういう訳でもないんだが。ほら二乃、無いのか? こういう事三玖が話してたとか、そう言う話」
「あ・ん・た・ねえ」
「興味あるある」
「大体三玖とほとんど会話した事もないでしょ、二人は」
「話した事は無くてもああいう大人しい感じの子がどんな付き合いをしてるのかは興味あるよ」
「ほら三対一でお前の負けだ」
そう言うと、我が意を得たりとばかりに風太郎は調子付いた。普段多数決を取ると、好みがバラバラの五つ子姉妹とはいえさすがに姉妹、風太郎の意見は少数派に追いやられてしまう事が多いので、珍しく多数派になれた彼は気分が乗っていた。俗に言うイキってる、というやつである。
「うぅ……」
そんな三人に詰め寄られて、さしもの彼女も困り果てる。蝶のようなリボンは心なしか気弱な犬の耳のように垂れさがって見えて、困ったように下がった眉に、つぐんだ口がもの言いたげに震えて不思議に色っぽい。
そんな顔出来るじゃん、と二乃の友人二人はどこからの目線か分からないがそんな風に思った。
「じゃあ言わせてもらうけど。上杉!」
「はい?」
「はい? じゃないわよ。あんたいつもデートって言ったら家の中とか図書館で勉強とか、そんなんばっかりじゃない。三玖は確かにインドアだけど、変な所でアクティブなんだから偶にはどっか出かけなさい」
「は、はあ」
「聞こえなかったの?」
「はい。分かったよ」
「何か上杉君って偉そうだけど尻に敷かれてるのが似合う男だね」
「武田君みたいな爽やかに対等なパートナーがいそう感とは真逆」
「酷くないか」
「はいお終い」
「今度は良い方の話を聞かせてよ」
「そうだよ。あんなにベタベタなんだから姉妹にのろけ話の一個や百個はしてるんでしょ?」
「俺もそれ聞いたら帰るから何か教えてくれよ」
「何譲歩してやった感出してるの!」
ぷんすか怒っているがのろけ話と聞いて何かを思い出したのか赤い顔をしていて、怒り顔も効果薄だ。
「何怒ってるの?」
「別に二乃の事を話せって訳じゃないじゃん」
「そうだぞー」
「覚えてなさいよほんとに」
ぎゅっと拳を固めながら絞り出された言葉に、睨まれた風太郎は背中に穏やかでない感覚が流れたが、毒を食らわば皿までよと無駄に覚悟を決めて話せよとせっついた。
「言ってたのは……そうね。いつもは難しい顔してるくせに、見せてくれる優しい笑顔が可愛いって言ってたわね。それと、なんだかんだ言ってもきちんと向き合ってくれるのは嬉しいとか何とか。女の子の事にちょっと察しが悪いのはまあご愛敬ってところで。頑張ったなって褒めてくれると泣きそうになっちゃうくらい嬉しいって。だから上杉、困ったらとりあえず褒めておけば? ま、まあそんな感じで、非の打ち所がない彼氏だと……三玖は思っているみたいで……はい……。あとクラスメート達と交流が出来き始めているのは喜ばしいけど、私だけが知っている彼の一面っていう特別感が薄れているのはちょっと寂しいと……えー、そんな事を言ってました、まる」
最初の方は普通に話していたが、言葉を進めていく内に気恥ずかしさが押し寄せて来たようで、段々と身を竦めるようにして縮んでしまって行った。
「愛されてるねえ上杉君」
「……」
「あはは、照れちゃってかわいー」
蚊帳の外な二人は気楽な立場と決め込んで呑気に笑っていた。その呑気さが気に障ったのか、赤かった顔は鳴りを潜めて嘘くさい程の笑顔を浮かべた。それを見た三人は、笑顔とは本来攻撃的な物である、という言葉が脳裏に走った。
「うふふ、人から散々恋バナ聞いたんだから、じゃあ次は自分が話す番よねえ」
「いや私達の事はいいじゃん」
「えーと、あの坊主頭の……山内くんだっけ?」
ぴしっと金髪の彼女を指差しながら、不敵に笑みを浮かべてにじり寄った。
「人の事、っていうか人の妹の事ばっか言わせて、お店に行ったら根掘り葉掘り聞かせてもらうんだから」
「乗った」
「やだー」
さっきまでの余裕は一転攻勢により立ち消えて、そのまま金髪の彼女をいじるように攻め立てて、逃げるように鞄を持って教室から飛び出して行った。
「あっ!」
「こら待てー!」
その後ろ姿を追いかけて、二人もひったくるように鞄を手に取って教室から駈け出して行く。あっという間に一人にされた風太郎は、結局あれはどういう事なんだと頭を掻いた。
「ごめん忘れ物。先行ってて」
ちょいちょいとスマホをいじりつつ、もう帰るかと思っている所に、いきなり扉を開け放たれて風太郎はビクッと肩を竦めた。
「あら、いたの?」
「いたよ。なあどういう事だよ二乃。いや――
――三玖」
「何の事かしら」
「お前今更俺がそれくらいの変装でだまされる訳ないだろ。で、結局これはどういうつもりなんだ」
「話は聞かせてもらった」
ピシャーン! と勢いよく扉を開けたのは意外な人物、三玖だった。風太郎は不審な物を見るように彼女を見つめて、その視線に気が付くと微笑みながら手を振った。
「三玖……いや二乃。どういうつもりなんだ。話を聞かせて欲しいのはこっちだよ」
「何の事? フータロー」
「……その見え見えの嘘をついて楽しいか?」
「ちぇっ、フー君には通用しないわね」
「でも二乃の目的は果たせたと思うから、それでよしとして」
風太郎の言葉に、二人は観念したように髪に手をかけた。艶やかに流れる髪がごっそり頭から取れたかと思うと、その下からもっと鮮やかな髪が露わになった。
二乃の姿は三玖に、三玖の姿は二乃に、それぞれ普段から見慣れた姿に戻った。
「で? こんな事しようって言ったのは二乃か。二乃に決まってるよな。絶対二乃だ」
「ちょっとその熱い信頼なんなの!?」
「違うのか?」
「違いませんけど?」
「開き直るな。どうしてこんな事したんだ」
「あー。友達待たせてるから手短に話すわね」
「さっさと話せ」
二乃は三玖になるためのウィッグを鞄にしまいながらスマホをいじり、「さて」と小さく言ってから机の上に腰掛けた。
「端的に言うと嫌だったのよね」
「嫌? 何が」
「この前の体育の後で二人が閉じ込められたでしょ?」
「ああ、あれか。中々に肝が冷える体験だったよ」
「ね」
「それは私達は分かってるんだけど、他の皆は面白い方に飛びつくのよね」
「何か面白い事なんかあったか?」
「三玖の上を脱がせてたでしょ? そこだけが独り歩きしてね……」
「なんだよ」
「だーかーら、二人で変な事をしてたんじゃないかって疑われてるのよ」
変な事? と風太郎は小さく口にしながら首をかしげた。何が変な事だ、当人としては大変だったんだぞ。そんな事を考えながら腕を組むと、頭の中に一つ思い浮かんで、その答えに軽く赤面した。
「馬鹿かあいつら」
「馬鹿みたいでしょ。だから嫌だったのよねえ。何で妹がヤッただのヤッてないだのを私がわざわざ話してあげないといけないの」
「……まあなんでこんな事をしたのかは分かった」
「そう。で、三玖、お願いした通りの展開になった?」
「うん。適当に私達の事を話して友達の恋バナに矛先を向けておいた」
「ありがと。待たせてるから行くわね。二人はどうする……って聞くまでもないか。じゃーね」
おどけたように二乃は手を振りながら、頭に付けたアゲハ蝶のようなリボンを羽ばたくように翻らせて教室を後にした。
「行っちまった」
「私達も帰ろう?」
呆れ交じりに風太郎は言う。それを見てくすりと笑った三玖は音もなく隣に立って手を取った。愛しい掌に指を這わせて、くにくにとしっかり確かめると、ゆっくりと指を絡ませる。
「そうだな」
風太郎は握って来た小さな手をぎゅっと握りしめると、バイトもない気楽な帰り道についた。
「どうする? 二乃みたいにどっか食べに行くか?」
「うーん。最近新しい料理を覚えたから、食べて欲しい」
「そうか。材料は? 買い物に行くか?」
「いい。家に材料はあるから来てくれれば」
「分かった。じゃあ行くか」
二人は仲睦まじく手を繋ぎながら、そんな会話をして穏やかな気持ちで帰って行く。
それを聞いた生徒がまた新たに噂話を広げて、聞かれた二乃のこめかみがピキッたのはまた別のお話。