犬兄弟の適当な長男   作:丸猫

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ものすごいお久しぶりです。

風牙さんと忘れている。こんかいは人外度は薄めです。
御母堂と風牙さんの話です。


母に勝てる息子はおらず

「ご機嫌はいかがかなあ、お袋?」

 

その日、その女は珍しく訪ねてきた長男の姿に久方ぶりだと挨拶をした。

 

 

 

その日、女は、仮にここでは女としよう。

もう、その女を名前で呼ぶものはいないのだから、それだけで十分だろう。

女が外出から帰り、空の上にある己が宮殿に足を踏み入れた。そうすれば、警備をさせていた部下が慌てて走り寄ってくる。

 

「どうした?」

「そ、その、申し訳ありません!実は、息子君が訪ねてこられまして。」

 

息子、という単語に女の脳裏には二人の顔が浮んだ。けれど、二男の方はすぐに頭から追いだした。それは良くも悪くも、自分の眼をかいくぐって宮殿に忍び込むなんて器用なことなど出来ない。

本来ならば、配下たちに罰の一つでも下すところだ。

けれど、女はすぐにその考えを捨てた。

 

「あれに言うことを聞かせるなど、あれの父親でさえも難しかったのだからな。」

 

気だるそうにため息を吐き、女はそのまま宮殿を進んだ。

 

 

 

「お袋、久しぶりだな。」

「久しぶりというぐらいならば、もう少し会いに来ればいいだろう。」

「そう?なら、毎日顔を出そうか?」

「そこまで行けば、鬱陶しいわ。」

 

女は宮殿の奥、そこにある座に腰掛けた。息子である風牙は、いつも通り、愛想良く笑いながら、座に向かう段に腰掛けていた。

肘を突いて、女は目の前に座る息子を見た。その、後ろ姿は本当に父親によく似ていた。

風牙は特に振り返ることもなく、広間の天井を眺めている。

 

「俺に何かついてる?」

「・・・・どうやって入った?目くらましも、結界もあったはずだ。」

「めくらましがあるのなら、よく見える目を使えばいいし。それが無理なら、臭いを辿ればいい。結界も抜け道がないわけじゃないしな。」

「相も変わらず、器用なことだ。」

「周りが不器用すぎるだけだろう。」

 

のんびりとしたそれは、平然とそんなことを言った。それが出来ないからこそ、女はわざわざ言葉をかけたというのに。

 

「それで、何のようだ?」

「母親に会いに来ただけだろう?」

 

それを女は鼻で笑おうとした。妖怪であるお前が会いたいというだけで来るなんてあり得ないだろうと。

けれど、そう言いかけて、まじまじと不服そうに頬を膨らませた息子の姿があった。

夫の顔でそんなことをするなと思いつつ、その、変わり者の息子を見た。

 

(いいや、こやつならあり得るか。)

 

ただ、母親を慕って会いに来る。妖怪ならばあり得ないが、それならばあり得るかと女は気を取り直した。そうして、ふと、嗅ぎ慣れない臭いがすることに気づいた。

 

「・・・・風牙、来なさい。」

「うん?ああ。」

 

立ち上がった風牙はそのまま母の座る玉座のようなそれに近づいた。そうして、男は自然にその場に跪いた。

それを、女は、ああ変わっているなあと思う。

それは基本として、おもねるような行動に戸惑いがない。跪くなんて仕草、自分は元より、弟や父親などしたことさえないだろう。

 

自分が母であるから?

 

それは確かにあるだろう。事実、それは産まれた頃から独立心の固まりのようだった殺生丸とは違い、長子である風牙は非常に甘ったれだった。

幼い頃から、己の膝の上で甘えるのが好きだった。

 

女はとんとんと己の膝を叩いた。そうすれば、風牙は何のためらいもなく、その膝に頭を乗せて甘えるように目を細めた。

その光景は、風牙の容姿が父親似のためか、見る存在によるだろうが、闘牙王が生き返ったように感じただろう。

女はそのまま男の髪を梳ってやった。そうすると、かすかに、それが付けるには甘ったるい匂いがした。

 

「女のところにでもいたのか?」

「何故?」

「甘い匂いがする。」

 

それに夫によく似た顔をした息子は少しの間、考えるような仕草をした後、くすくすと楽しそうに笑った。

 

「ああ、あれだな。女、ではないな。昔、命を助けて懐かれたものがいてな。それが、つけたのだろう。」

「父親に似て女に手が早いとは思ったが。お前は男にまで手を出しているのか?」

「ひどいなあ、まあ、こだわりがあるわけでもないけれど。」

 

気だるそうに己の膝の上で目を細めるそれに女はふむと頷いた。

それを見て、女は考える。

 

これは、本当に己の子どもであるのだろうかと。

 

 

その子どもが産まれたとき、感慨深さはあった。

何せ、己が腹を痛めた子どもだ。それ相応に情は芽生えた。けれど、育つにつれて、子どもは予想外の方向に進んだ。

 

子どもは、徹底的に甘ったれだった。父親がいれば父にじゃれつき、母がいれば母に甘える。

それは、ある意味で幼体としては正解であったのだろう。

けれど、女にとって疑問だった。これは、本当に自分の子どもであるのだろうか?

 

山犬というそれを元にした妖怪である自分たちは、そういった上下関係を是としている。例えば、夫である闘牙王を長にして、部下たちも多くいる。けれど、女は別に闘牙王を長としているわけではなく、彼女は彼女なりの群れを構成している。

自分たちは、そう言った部分で上に立つ者としてしか生きられないと思っていた。

けれど、その子どもは特別に己の群れを作りたがるとか、反発心も持つことはない。

 

いいや、女は知っていた。

温厚で、愛想も良く、甘ったれな幼子は群れの中で軽んじられていた。

それは表に出るようなものではない。

暴力を振われるだとか、食事を抜かれるだとか、そんなあからさまなものではない。

子どもの性格はさておいて、何よりも後ろ盾である闘牙王は風牙のことを可愛がっていたというのもある。

そうして、女はというと、夫に似た息子は可愛かったのは事実だ。

けれど、息子が軽んじられているということを変えようとは思わなかった。

軽んじられていると言っても、陰口だとか、無視だとか、そういった類いのものだ。

命の危機というほどのものでもなく、この程度で力を貸してはという想いがあった。

何よりも、当人は何を言われてもにこにこと笑っており、悔しいだとかを思っている様子もない。

女は不思議だった。

自分の子であるのならば、そんなことを言われて我慢できるはずがないのだ。けれど、それは争いを好まず、どちらかというと妖術を好んでいた。

さすがに、闘牙王も息子がまったく戦えないというのは不安だったのか、鍛えようとしてはいた。

けれど、争いの苦手な風牙はそれから徹底的に逃げ回っていた。

そんな態度であれば闘牙王も好きにしろとしか言えなかった。戦闘を好まないと言うだけで、妖術などは使えたそれは人並みに身を守ることは出来ているようだったためだ。

 

そんなある日のことだ。

その日、風牙は母の膝の上でゆるゆると微睡んでいた。それに女はぼんやりと、子どものことを眺めていた。

未だ幼いそれは、変わること無く甘ったれで、まるで人間の子どものようだった。それに、女は以前から考えていたことを口にした。

 

「風牙よ、お前の家を用意しようと思っているんだが。」

「どうして?」

 

ふくふくとした頬を膨らませてそれは言った。

父親そっくりの瞳に、少しだけ癖のある髪は肩までそろえられている。女が用意した華やかな衣装のせいか、いっそのころ少女のようだった。

 

「ぼく、母様といっしょにいたいのに。」

 

これまた可愛らしいことを言うなあと、女は驚きさえあった。

 

「お前は私と一緒にいたいのか?」

「はい、ぼく、母様と一緒にいたいです。」

 

風牙は女の膝の上によじ登り、体に抱きついてくる。ふくふくとしたほっぺたを胸に押しつけてふにゃふにゃと笑った。

それに女も、こんな甘ったれならまだいいだろうかと考えるがすぐにそれを打ち消す。

 

「・・・・いいや、だめだ。」

「どうして?母様、ぼくのこと、きらい?」

「そうではない。」

 

女はため息を吐きながら、風牙を下ろした。そうして、向かい合ってため息を吐いた。

 

「闘牙と話をしたのだ。お前も、いつまでも守られているわけにはいかないだろうが。ならば、一度、離れて暮らさせるのも手だろうとな。」

「・・・・でも、ぼく、そんなに弱くないよ?」

「周りから侮られているようでは、認めることができん。」

 

女はそのまま風牙を部屋から追いだした。ただ、意外だったのは子どもは特別泣き出すことだとかもなく、さっさと部屋を出て行った。

 

女は、それの様子を不思議に思ったが、そのまま家をどこに用意し、使用人として誰をいかせるかと考え始めた。

 

全てがひっくり返ったのが、次の日のことだ。

用事のために出かけた先で夫と会い、風牙との別居について改めて話すことにしたのだ。

そうして、帰った先に宮殿は、まさしく蜂の巣を突いたような有様だった。

 

「ふ、ふうが様が!」

「ご乱心です!ご乱心を!」

 

慌てた様子の側仕え達がやってくる。それに、闘牙王が宮殿の中に走り出す。それを女も追った。

そうして、奥の部屋、風牙の生活区域のそこは、血の海になっていた。

そこにいたのは、側仕えをしていた女中であり、護衛の男であり、古参の妖怪もいた。血だまりの中に、その中心で、何かを大事に両手に抱えた風牙がいた。

 

「風牙!」

 

叩きつけるような闘牙王のそれに風牙はにっこりと、愛らしく微笑み、そうして近づいてくる。

 

「風牙、何があった?」

 

闘牙王がそう言って風牙と目線を合わせるように座った。それに、風牙は満面の笑みで両手に抱えていたそれを差し出した。

それに闘牙王と、そうして、後から来た妻である女は目を見開いた。

 

手の中にあったのは、複数の目玉だった。

それに闘牙王たちは、何故、部屋に転がる人間達が顔を覆ってうめき声を上げているのか理解した。

 

「・・・・何故、こんなことを?」

「だって、父様も、母様も、愛らしいだけの子どもは好みじゃないんだろ?」

 

今までの舌っ足らずな口調とは違い、それはどこまでも流暢なものだった。にこにこと笑ったそれは、そっと目玉を闘牙王たちに差し出した。

 

「ねえ、これで。」

母様と父様と、一緒に暮らせる?

 

にこりと笑ったそれに、女はああと思った。

なるほど、これは確かに、どこまでも獣でしかないのだと。

 

 

風牙よ。

うん?

なぜ、目玉をくりぬいたのだ?

だって、殺すのはかあいそうだから。

殺す気だったのか?

うーん。別に。ただ、軽んじられないように、ある程度のことは示さないといけなかったから。俺、馬鹿にされるのはどうでもいいんだ。蔑まれるからこそ、知れることがあって面白かったから。

ああ、そうだな。あの場にいたのは、特にお前を軽んじていたものたちだった。

・・・・それはどういうことだ?

父様、いいんだよ。大体、俺がふざけてたのが悪いから。

・・・・風牙よ、何故、軽んじられることに甘んじていた?

だって、母様が。

私か?

弱くて、幼い間は、側にいてくれるって。

呆れたことだ。お前は、私と共にいたいから愚かな振りをしていたのか?

まあ、そう怒ってやるな。可愛らしいことだろう。

 

その日、結局、闘牙王は風牙のそれを赦し、そのまま母と暮らすことを許可した。確かに、やったことは苛烈であれど、強者である風牙を軽んじた彼らへの蛮行を闘牙王は赦した。

目をくりぬかれた妖怪達はそのまま追い出された。

その後は、風牙は闘牙王からの扱きにも素直に応じた。強くなろうと、母親や父親と暮らすことを許可されたからだ。

 

それはいいことだろう。女とて、それが強くなることに不満はなかった。

けれど、疑問に思っていることがあった。

 

「風牙よ。」

「なに?」

 

それはいつも通り、その甘ったれの息子が女の膝に甘えてきていたときのことだ。いつも通り、髪を手で梳いてやっているときのことだ。

 

「・・・・お前は、あの日、お前を軽んじていた者たちの目玉をくりぬいたな?」

「そうだね。」

 

ふくふくとしたほっぺた、まあるい瞳、柔らかな髪。

それは、まるで、この世の穢れなど知らないというように微笑んだ。

 

「だが、あの日、あの場にいたものの中にはお前を尊重してたものもいたはずだが?」

 

そうだ、あの日、その場にいた妖怪達は全て、風牙を軽んじていたわけではない。中には、風牙を庇っていた者も存在していた。それには打算があれど、わざわざ、そんな彼らを害する理由もないはずだ。

 

それに、風牙はきょとんとして顔をした後、ああと頷いた。

 

「だって、飽きちゃったから。」

 

くすくすと、幼子の軽やかな声を今でも覚えている。

女は、己の息子が、楽しそうに。まるで、楽しい遊び方を思いついたときのような、そんな顔をしていたのを覚えている。

 

それに女はふむとうなずき、そのまま子どもの頭を撫でてやった。そうすれば、それはくすくすと変わらず笑った。

 

「飽きたか?それは、何にだ?」

「いいえ、皆、それ相応に面白かったんです。自分の実力は棚に上げて、俺のことを軽んじていた妖怪も、俺を庇っていた、俺に見返りを求めていた妖怪も、俺の言動一つで態度が変わって楽しかったんです。でも。」

 

子どもは柔らかな光を宿した瞳を女に向けた。

 

「あんまりにも、思った通りに動きすぎて、飽きちゃったから。」

いらないって、思ったんだな。

 

それに女はああと納得した。これは確かに、人でなしであるのだと。

 

 

 

「お袋?」

 

ぼんやりと幼い頃のことを思い出していた女の耳に息子の声が飛び込んできた。

 

「どうかしたの?」

 

自分を見上げる息子の顔を女はまじまじと見た。

ああ、なんて、夫に似ていて、けれど、誰にも似ていない息子だろうか?

元より、さほど甘ったるい関係ではなかった闘牙王と女は子どもは一人で十分だと感じていた。けれど、それでも二人目である殺生丸を作ったのは、偏にそれを一人にするには危うすぎたということもある。

そうして、産まれた二男は驚くほどに、良くも悪くもまともな息子だった。

それ故にだ、己の似た二男のことをも出すたびに、これは本当に己の息子なのかと疑問に思う。けれど、その顔はどこまでも夫によく似ている。

 

「いいや、何でもない。それで、どうかしたのか?」

「ああ、殺の奴に刀でもうってやろうかと思ってな。牙に使えそうな、丁度良い妖怪知らないか?」

「あれには天生牙があるだろう?」

「お袋だって、親父の意図ぐらい知ってるんだろう?」

 

珍しく呆れの混じったそれに女は意外に思った。

 

「ほお、なんのことやら。」

「嘘吐かないでくれよ。親父が、犬夜叉のために残したものについては文句ないが、殺の八つ当たりは全部俺に来るんだぞ?気持ちもわからんくないがなあ。」

 

我らは獣なれば、所詮は、振う牙は己のものでなければならん。

 

物憂げに目を細める様は少しだけまともに見えた。

 

「それがわかっているのならば、無視していればよかろう?」

「親父にとってはなんの心配も無い、独り立ちずみの息子だろうが、俺にとっては手のかかる弟なんだよ。そんなことできん。」

 

風牙は女のそれにため息を吐き、そうして、立ち上がる。

 

「行くのか?」

「うーん、まあ、覚えがないのなら、それでいいんだけど。俺も、他に刀を用意しないといけなくてさ。」

「・・・・お前も、父親から残されたものがあるはずだろう?」

「叢雲牙?あれ、使いにくいから嫌いなんだよ。」

「ふ、殺生丸が聞けば怒り狂うだろうな。」

「まあ、殺にも使えるだろうが。殺の成長には邪魔だろうしな。」

「大体、お前はとっくに自身の牙を手に入れているだろう?」

 

その言葉に風牙はくるりと振り向いた。そうして、目を細める様は、珍しく苛立ちが混じっているようだった。

 

「・・・・・あれもまた使いづらいんだ。戦うに、あまりにも一点特化すぎる。自分の牙のことを思えば、確かに鉄砕牙も欲しくなるよなあ。使いやすいし。」

「ある意味で、お前らしいと思うがな。」

 

楽しそうな声に風牙は不満そうに顔をしかめた。

そこで女は、ふと、ずっと考えていた疑問を口にした。それは、ただの気まぐれだ。

 

「なあ、風牙よ。」

「なんですかい?」

「お前は、私のことが好きか?」

 

それに風牙は楽しそうに笑って、座の肘置きに手を突いた。そうして、母を覆うように顔を近づけた。

それは丁度、獣が親愛を表すような気安さだった。

 

「お袋だから、それは当たり前だ。」

「何故?」

 

それに風牙は本当に不思議そうな顔をした。

 

「“母を子どもが愛するのは当然だろう”?」

 

それは、心の底から言っているようで、まるで、何かの節をそらんじているようだった。

女は、それにそっと風牙の首に手をかけた。

 

「お前の命が欲しいと言ったとき、どうする?」

 

その言葉に風牙は首を傾げ、そうして、すぐに答えた。

 

「お袋が望んでいるのなら。」

 

あっさりとした、それ。その表情は、その瞳は、あっさりと自分のそれを受け入れていた。男を育てた母親にはわかる。

風牙は母が望めば、それを受け入れるのだと。

 

それに女は少しだけ笑った。

ああ、やはりと、思うのだ。これは、本当に自分の息子なのかと。

 

まるで人間のように情というものを求めて、母や父に縋るくせに。その理由はまるで、この世の理とはこうであると学習した空虚さだ。

 

情がないと言うわけで無いのに、執着というものがない。

かあいいと笑うくせに、その滑稽さをさめざめと見つめている。

人も、妖怪も、見つめる様はまるで逸脱しているようであり、そのくせどこまでも醒めている。

 

ああ、これはなんなのだろうか。

そう、思う。

それ故に、それを周りは熱狂の内に信奉するか、理解が出来ないと遠ざける。

ならば、女はどうなのか?

 

「間抜けな顔だ。」

 

女はそう言って、父親そっくりの息子の鼻をつまんだ。

 

「いって!」

「ふん、お前も結局母のご機嫌伺いだけに来たのではないのだろう?用が済んだのなら、さっさと帰れ。機嫌伺いに来たというのなら、土産の一つでも持ってこい。」

「・・・・手厳しいなあ。わかったよ。でも、また来るからさ。あと、土産の一つぐらい、持ってきてる。」

 

そう言って、風牙は不満そうな顔をして、女に花を差し出した。

 

「ほう、これは・・・」

「物を水晶に出来る奴と知り合ってさ。お袋、こういうの好きだろ?それじゃあ、俺は行くからさ。」

 

それが手渡してきたのは、美しい水晶で出来た、赤い花だ。正確に言うのなら、水晶になった花なのだろう。

 

「ふふふふ、こういうものがあるのなら、もっと来るといい。」

「調子いいなあ。まあ、いいけど、じゃあね、お袋。」

 

そのまま、広間を後にする息子の後ろ姿を見つつ、女は機嫌伺いの花を見つめた。

 

それが恐ろしいか?

気味が悪いか?

忌避するか?

 

(何を、くだらん。)

 

女はその息子を、変わり者だと、毛並みが違うと思うことがあれど、恐ろしいなどと思うことなどありはしない。

所詮は、己が腹を痛めた、子なのだ。

 

「母に勝てる息子など、この世にいるはずもないのだからな。」

 

くすりと笑った女はそう言って、手の中でその花を弄んだ。

 

参考までになんですが風牙さんのヒロインていると思いますか?もしも、具体的なこの人がいいなっていうのがあるなら活動報告の方に言っていただけると嬉しいです。

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