身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第100話

私は静かに羽ペンを握りしめた。机の上に置かれた教科書に目を落とし、小さく息を吐いた。今までの笑いの絶えない授業とは違う、的確で確かにわかり易い授業だった。移し書きを終えて、私が教科書に線を引いているタイミングでスネイプ教授は私の隣で立ち止まった。

 

「ジェフィフィーナ、今までの羊皮紙を出したまえ」

 

「...はい、教授」

 

羽ペンを置き、羊皮紙の束を差し出す。教授は鼻を鳴らしながら羊皮紙を開いた。ルーピン先生が今までにやった座学だけでなく、実践についてもまとめたそれらをさら読みした教授は丁寧に巻き直した。

 

「実に下手な説明だ...これは間違いだ。河童はむしろ蒙古によく見られる。我輩ならばこの様な説明をしたりせぬが...我輩の説明でこんなことを書く頭の悪い生徒がいるならば...十点中三点もやれん」

 

「...すみません」

 

「あぁよい。この羊皮紙の中身は我輩の解説物ではない」

 

そう言いながら私の元へいやらしく羊皮紙の束を置いた。グリフィンドールの生徒たちが不審な顔でスネイプ教授を見るのを、私はスネイプ教授越しに見ていた。またスネイプ教授が歩き出す。静かな教室に響きわたる教授の足音が私にさらなる不安を煽る様だった。

 

羽ペンをもう一度持ち、教科書へ線を引いていく。人狼の特徴とルーピン先生の特徴はよく当てはまる。だって、人狼だからだ。私はチラリと目線だけグレンジャーに送った。

 

(今日は満月だから狼男の教師はいないのか)

 

(そう。さらにシリウス・ブラックがホグワーツに侵入したってことでスネイプ教授もお怒り)

 

(そうか。まぁ僕でもあの教師を疑うからね。アルレシア、原作とやらだとどうなっているんだい)

 

(あー...えっとね、手引きしたヒトはいないよ)

 

(ヒト、ね...)

 

グレンジャーから視線を外して羽ペンを片付ける。少し悩む様に眉間に皺を寄せるグレンジャーに、ルーピン先生が狼男であると勘づき始めていることに気づいた。

 

(手引きというか、手伝いをしていたのはニーズルとのハーフ?か何かの猫。グレンジャーの飼い猫)

 

(猫が?)

 

(クルックシャンクス、だった気がする。でも、シリウス・ブラック自身の頑張りでホグワーツに侵入したようなものよ、多分ね)

 

( ...ブラック家の長男ならあいつらの子供か。ホグワーツに侵入できるだけの頭の良さを持つ、いや、アズカバン送りになる時点で頭が悪いのか...)

 

あいつらってことはトムは五十年前...オリオン?ヴァルブルガ?なんかそんな感じの名前の人たちであるブラック家の世代と同じにあたるのだろうか。少し考える様なトムの声に、ブラック家の嫡子か知り合いであることは間違いないらしい。

 

(トムって爺世代だっけ)

 

(じじ?)

 

(爺、親、子、孫?って呼び方なのかな。あんまり詳しくないんだけど)

 

(原作とやらの呼び方か)

 

(トム達が私たちの年代...ハリーポッターの主人公ハリー・ポッターから見たお爺ちゃん達だから爺世代)

 

(今の僕なら子世代だろ。人を耄碌呼ばわりして)

 

(でもロズワールさんだって同い年でしょ)

 

(で、親世代がポッターの親、スネイプ達の世代か)

 

あ、無視した。でも正解だ、なんて思いつつインクの蓋を閉める。チャイムが鳴るまであと少しだ。

 

(そうそう。それで、ポッターが子世代)

 

(となるとポッターの子供が孫世代になるわけだ)

 

(まぁそこまでは色々言わないけど)

 

(大体ハリーポッターって本なのだから、主人公死亡のバッドエンドになるとは思えないからね)

 

だいせいかーい。そう思いつつも黙って書き終えた羊皮紙を読み直して誤字脱字がないことを確認した。

 

(子供を持つのっていいことだと思うなぁ。私も結婚して安泰な生活して専業主婦になって子育てしたい。イクメンパパ欲しい)

 

(イクメンパパ?)

 

(子供を育てるメンズ、あー子育てに協力的なパパってこと。手伝ってくれるのよ、頼れるの!)

 

(自分の子供なのに子育てできないパパなど捨ててしまえ)

 

(...いや、ほら、非魔法属だとさ、育休って女性しか現状は取れないのよ。取れるけど取れないのよ、基本的に。だからメインはお母さん、サブ親父なの)

 

(自分の子供なのに手伝いって表現。君の母国ってどうなってるんだい)

 

そういえば日本って家事子育ての負担率男女差やばいんだった。そりゃ昔は専業主婦家事と育児が仕事だったからよねー。今は二馬力じゃないと生活できんって感じだからお母さん負担ヤバいって。

 

(...ウン。なんかそうだね。でも、男性と女性のマルチタスクが違うらしいよ。同時にいくつもの物事を行う女性と一つのことに集中する男性って脳に違いにあるんだって)

 

(どうせ女性は赤、男性は青という決めつけも混じってるだろう?)

 

(あーステレオタイプ。いやまあうん。そうだね、自分の子供なのに関心を寄せれないなら捨てるべきだね)

 

まぁ養育費問題とかもあるだろうけど。前世はちょこちょこ家事の合間に聞く音楽代わりに某ちゃんねるのまとめ動画を聞いていたからか、自分の中では色々その辺は辛辣な気がする。

 

(ま、恋人もいない人間が考えることではないね)

 

(...ソウダネ)

 

そしてようやくベルがなり、授業の終了を知らせるのだ。

 

「各自レポートを書き、我輩に提出するよう。人狼の見分け方と殺し方についてだ。羊皮紙二巻き、月曜の朝までに提出したまえ。このクラスは、そろそろ誰かが締めてかからねばならん。ウィーズリー、残りたまえ。処罰の仕方を決めねばならん」

 

わざわざ他の授業を飛ばしてまで人狼について説明したスネイプ教授、教卓に立つその姿を私は見なかった。下を向いて他の生徒が居なくなっていくのをただ荷物をゆっくりと纏めながら待った。

 

これは原作通りの状態だ。だからこそ、この授業が重要なヒントになるから、私がとやかく言ってはいけない。

 

私は大きなため息をこぼして鞄を肩にかけた。ウィーズリーが教卓に歩いていくのを視界の端にとらえながら、教室を出ていこうとしたその時だった。

 

「ジェフィフィーナ」

 

「...っ、はい」

 

スネイプ教授が私に目だけで来る様に指示してきた。ウィーズリーが早く罰則の内容を言えと言わんばかりに顔を顰めている。やだなあと思いながら教卓に駆け寄ると、スネイプ教授はウィーズリーを端に待たせて杖を振り始めた。

 

「ジェフィフィーナ、今月分のデータが取れ次第、先月・先々月との比較をしたまえ」

 

口ではそう言いながら授業の片付けをしていく。使われたスクリーンが消え、カーテンが開けられていく。パッと明るくなった部屋で、ウィーズリーが目を細めながらも何言ってんだこいつらって顔をしていた。いや、そりゃそうだよね。

 

「私がですか?」

 

「できないと言うのかね」

 

「...いえ、やらせてください」

 

「今までの資料はまとめてあると言っていたが」

 

「はい、全てまとめてあります」

 

ウィーズリーがなんだこいつらみたいな顔してるので私はなるべく平常心を保ちながら頷いておく。

 

「必要なものは自室へ届けてある。来週からまた研究を再開する」

 

「材料の下処理はどうしましょうか」

 

「全てやっておけ。補充も忘れるな」

 

「...承知しました」

 

話はそれで終わりらしく、私はさっさと教室を出た。罰則を言い渡されているウィーズリーのことは知らなかったふりをしておく。

 

(下処理全部やらせるのか。君、ポピーの花粉の処理で毎回手のひらガビガビじゃないか。なんとかしてスネイプにやらせなよ)

 

(そこまで強い材料じゃないからたまにだけならいいかな)

 

(...後で手荒れに効く薬を教えてあげる。ブラック家秘蔵のレシピだ)

 

(ブラック家の?)

 

(あぁ、勉強の代わりに聞き出したのさ)

 

それは楽しみだ、なんて廊下を歩いて角を曲がるとグリフィンドール生が固まって愚痴っているらしい。

スネイプ教授は確かにあの態度良くなかった。が、そこを通り過ぎるなかでグレンジャーだけがまじめに考えている顔をしていることに気づく。私と目が合い、何か言いたげに口を開いてから閉じるのだ。

 

私は何も言わずに通り過ぎると、スリザリン寮の方へ向かう。さて、頼まれた比較資料を作ろうか。

 

これでも私は、前世資料を作ることなんてしたことがない。パソコンで作る以外なんかできないぞ。少し悩みつつ、私は寮への道を急いだ。

 

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