身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第102話

 

 

それから、十二月まで雨が降り続けた。そこからいつしか雨が雪に変わっていったのだ。私も十一月の脱狼薬を教授の指示のもとやってなんとなくコツを掴んできたのだ。なかなか順調な魔法薬学の調合に私の気分も上向きだった。

 

それと共に、私の元へ告げられたのはホグズミードについてだった。私の後見人として誰が名を書いたか知らないが、ホグズミード行きが許されたらしい。

 

そのため私は一人、クリスマス休暇になる直前の週にホグズミードを歩いていた。明日から休暇だからか、ホグワーツの空気も浮き足立っているようだ。

さて、私もホグズミードを歩いている。理由はそう、バタービールを飲むためである。私は前世からお酒が大好きだったのだ。そう、前世二十歳で死んだと言っておきながら、赤ワインもブラックペッパーだの、ウィスキーには甘いものだと色々言うのは私がたしかに飲んでいたからである。

 

しかし、間違って欲しくないのは私がかなりのお酒弱々という点である。お酒を飲むとめちゃめちゃに眠くなるか、異様なまでにハイテンションになってしまうのだ。残念なことに吐きそうになるとかそういうのがなくて、本当にちょっと量で酔っ払う。今日はバタービールでどれだけ酔うのかの体験である。先日飲んだのは瓶だったのだから今回はのんびりどこかで飲もうと思う。

 

というか本音を言えば教授に学校から追い出されたから仕方なく行っているのだ。一緒にいる友達もいなければ待ち合わせの予定もない。昼食用のサンドとバタービールのテイクアウトを手に、私は良い食事場を探していた。

 

(アルレシア、叫びの屋敷に行こうよ)

 

(えー...なんかシリウス・ブラックとかがいそうじゃない)

 

多分いると思うけど、なんて言えずに濁すと、トムは笑って居ないだろなんて流した。

 

(でもいたら?)

 

(その時には簡単さ、杖を振って一言)

 

(ひとこと?)

 

(リディクラス)

 

(...聞いた私が馬鹿だった、馬鹿馬鹿しい)

 

トムがどうしても行きたいというので、私は仕方なくランチバスケットを抱えて叫びの屋敷へ向かった。正直ホグワーツの暴れ柳から入った方が近かったですはい。

 

そして近くまで歩いて行って、私は見慣れた銀髪がいることに気づいたのだ。

 

「...セオドールさん?」

 

私の声にゆっくりと振り向くのは、やはりノットだった。なぜ彼がわざわざここにいるのか。そんなこと聞かなくても答えは一つだろう。彼の中に原作を知る人間がいる、だから探りにきたのだろう。

 

来るんじゃなかった、なんて思っているとノットは笑って私の元へ歩いてきた。随分と上機嫌で、なんだか不気味だった。

 

「アルレシア、なぜこんなところへ?」

 

「...貴方こそなぜ?」

 

「一番怖いお化け屋敷さ、気にならないわけがないだろう」

 

「そうですね。確かに気になります」

 

「アルレシアは?」

 

「...友達がいないので一人でご飯食べるのが目立つんです。目立たない場所を探すついでに観光をと思って」

 

「そう、ここへ来て正解だね。僕がいるんだから」

 

ノットは自分の被っていた耳当てまでついた帽子を私に被せると、エスコートするように私の隣へ立った。そんなに寒そうに見えるんだろうか。

 

「叫びの屋敷を案内してあげようか」

 

「怖いので大丈夫です」

 

「せっかく来たんだから見ればいいじゃないか。僕との約束を破っているわけだし」

 

「約束したわけではありませんよ。それに、貴方はたくさんお菓子を買ってくれましたし」

 

「でも、僕は君と話したいことが沢山あるんだよ」

 

「例えばなんでしょう?」

 

「例えばね...君が、これか...」

 

「ワンッ」

 

何かを言いかけたところで、犬の鳴き声がして私はそちらを向いた。良いタイミングで、黒くて汚い犬が現れたのだ。ご飯が欲しいかねポチ。

 

「わぁ...ワンちゃんですね」

 

「こんなところに野良犬って不自然じゃないか」

 

「え?初めてきたので...」

 

このワンちゃんがシリウス・ブラックだったりしないよね?大丈夫だよね?私はそう思いながらホルスターに手を伸ばしつつ犬の方にしゃがんだ。

 

「アルレシア、もしかして君犬好き?」

 

「好きですよ。ワンワンおいで〜、怖くないでちゅよ〜!」

 

(アルレシア、君犬がそばにいると精神年齢下がるね)

 

「犬が近くにいるだけでアルレシアの精神年齢が下がった。そんな君初めて見るよ」

 

「ブフッ....ワンちゃんかわいいじゃないですか」

 

私の言葉に、犬は少しずつ近づいてきた。可愛い。これがシリウス・ブラックならそれはそれで面白そうだし今は制服も着ていないからスリザリンだとはバレないだろう。

 

スリザリンアレルギーの男だしなぁ。なんて遠い目をしつつ、私はバスケットの上にかけていたナプキンを外した。

 

「お腹すいてるかな?犬って玉ねぎとかチョコがダメなのかな、わんちゃん教えて〜って教えてくれるわけないですね」

 

(アルレシア...君僕じゃなくて犬を飼った方がいいんじゃないか)

 

「ンッッ...ちょっと喉がイガイガしますね」

 

「むやみに餌をやると懐かれるかもしれない。毛並みの汚れもあるし、やめておいたらどうだい」

 

「綺麗にすれば大丈夫ですよ。わんちゃーん、サンドと付け合わせのポテトしかないんですけど、卵サンドとチキンサンドならどっちごいいですか」

 

「ワンッ!」

 

「よくわからないで両方あげちゃう!さぁお食べ、かわりに杖を振って君の毛並みを綺麗にさせてね」

 

ナプキンの上にサンドを置き、私は食べ始めるわんちゃんに杖を振った。途端に綺麗になる毛並みに、私は満足げに背骨の方から撫でつけるのだ。

 

「真っ黒で可愛い、でも...ツヤがあって素敵。でも何処かで既視感」

 

「愛想と清潔感を取り入れたスネイプじゃないか」

 

その瞬間にビクッと耳を立てるワンちゃんに、私はあーシリウス・ブラックだぁと撫でている手を止めた。

 

「あれ、どうしたんですかね。まだ食べます?」

 

まだ食べるようで下をむき始めたので、私は満足するまであげようとバスケットの中身をナプキンに移した。

 

「愛想と清潔感ってスネイプ教授がどうして髪にトリートメントしないか知ってます?」

 

「理由があるのかい」

 

「身なりに気を使うとダンブルドア校長先生がパートナーができたのかとしつこいかららしいですよ」

 

「子供ができたか聞いてくる義母か何か?」

 

わたしは笑ってサンドを食べる犬の背を撫でる。お腹が空いていたのかしっかり食べている。

 

「スネイプの飼い犬かもしれないね」

 

「それはありません」

 

「そう?」

 

「毛の抜ける動物は薬の調合で異物になります。たった少しの異物で反応が変わるんです。特に材料となる動植物はそばにおかないようにしてるんですよ。絶対に有り得ません」

 

「なるほど、そうだったね。そういえば」

 

「はい?」

 

「森番のところにいたあのヒッポグリフ、裁判の結果死刑になったんじゃなかったかい」

 

「ヒッポグリフ...あぁ、マルフォイさんの腕をやってしまった魔法動物ですよね。マルフォイさんには言えませんけど、マルフォイさんにも悪かったところあると思うんですよ」

 

「全面的に悪いだろう。あそこまで馬鹿丸出しだとマルフォイ家の先が思いやられるね」

 

「でも、可哀想ですね。理事長の子供が怪我したのでそれ相応の対応でしょうが...」

 

「嫌なの?」

 

「当たり前ですよ」

 

「芋虫やネズミの肝臓は躊躇なく刻むだろう」

 

「命を目の当たりにするのとしないのじゃ違うんですよ。動植物を食べてきた私たちは、牛や豚が目の前で殺されれば可哀想だと思います。でも、生きていくためです。

芋虫やネズミも、わたしたちのためです。でも、ヒッポグリフは...違う殺され方をするんですよ」

 

そう言いながら、私は最後のサンドをナプキンに乗せた。ノットの方を見上げると、なんとも言えない顔で私を見下ろしているので、一体どうしたんだいと首を傾げた。

 

「その犬、シリウス・ブラックだったらどうする」

 

サンドの中にいたチキンを犬が噛み砕いた。ノットはやはり確信めいて言うように聞こえた。ノットにはこれがシリウス・ブラックに見えているのだろうか。

 

(此奴が動物もどきだとしたら、さぞ屈辱的だろうね)

 

(どうして?)

 

(今は犬のように食事をとるんだ。僕なら死にたくなるさ)

 

(たしかに)

 

「...そうしたら、とっくに私たち殺されてるかもしれませんよ。特にセオドールさんなんてポッターさんと同じ年ぐらいにちゃんと見えてますから」

 

「ポッターの居場所なんてホグワーツしかないのにな。あの校長が英雄をこんなところに送り出すわけがない」

 

「ポッターさんなら今はルーピン先生がそばについてますから大丈夫ですね」

 

「ルーピン...あぁ、闇の魔術に対する防衛術の」

 

「ルーピン先生も、ポッターさんのお父様もシリウス・ブラックも、それから指のかけらだけ見つかっているピーター・ペティグリューも、学生時代の仲間同士だったんですって」

 

「スネイプが言ったのか」

 

「あぁ、教授も同い年でしたね。いいえ、スネイプ教授はあまり自分について話さないんですよ」

 

「あんなに仲良くしてるのに?」

 

「仲良くといいますか...友達が居ないので暇だと思われて使いっ走りにされているんです」

 

「貴族に雑用はさせられないからね」

 

「わかっているじゃないですか。そのせいで私はスネイプ教授にビシバシ叩かれてます」

 

「ガリ勉の君にはぴったりじゃないか」

 

「そんなわけないですよ」

 

「なぁ犬もそう思うだろう。君に餌をあげたそこのレディはね、前日には蛇の肝臓、蛙の心臓。毒蔓の根を切り刻んでいたんだ」

 

「してません。わんちゃん、ご飯終わっちゃった。ごめんね」

 

「キューン」

 

その言葉に反応しているらしい。三十代おじさまなら私も目を閉じたい。知らんぷりをしたい。

 

「このワンワンがシリウス・ブラックだったら、未登録の動物もどきになりますね」

 

「その場合は、アズカバンの脱獄方法も辻褄が合うようだし」

 

「脱獄方法?」

 

「ディメンターは動物には反応しない。杖が没収された囚人でも、動物もどきにはなれる」

 

(あぁ、確かにディメンターは動物には反応しない。その犬捕まえてみてよ)

 

(いやですよ)

 

「へぇ...よくご存知ですね」

 

「君こそ学年一位の名が廃れる」

 

「...セオドールさんだけにいいますが」

 

「それは光栄だ」

 

「今回は夏休みから薬の実験を始めているんです」

 

「なんの」

 

「それは言いませんよ」

 

「スネイプ教授と共にずっとずっとです。私もいつか煎じることができるように頑張っているんですよ。だから全然勉強出来てないんです。

ねぇ〜ワンちゃーん。私も頑張らなきゃ。親兄弟もいないし、頼れる相手もいないんだから一人でも食いっぱれないような職種に着かなきゃ」

 

ご飯を食べ終えた犬を撫でて、私はこれがシリウス・ブラックなら嫌だなあと笑っておいた。

 

「どうしても困ったら僕の別荘のキッチンとして雇ってあげてもいい」

 

「仕事が年一で住み込み三食おやつ昼寝付きですか?」

 

「...クビかな。困ったらシリウス・ブラックにでも願い出たらどうだ。ブラック家は後見人がいないため事実上途絶えた。天文学的な額の遺産がこのままでは魔法省の肥やしさ」

 

「受け取る権利が絶対得られそうも無いですよね?だったらスネイプ教授の助手でもして魔法薬学の座でも狙います」

 

「結婚して研究でもしていればいいじゃないか」

 

「...私みたいな人間、もらってくれる人がいませんよ」

 

残念、なんて言いながらナプキンを杖を振って綺麗にする。そして、バタービールとポテトだけになったバスケットのすみの方においておく。

 

「その犬どうするんだ」

 

「どうするって、魔法薬学をやっている私が毛の抜ける動物を飼えるわけないですよ。自分の生活費稼ぐので精一杯なのに犬まで面倒見られません」

 

「...餌だけ振り撒いて後は見捨てるなんて、君らしい」

 

いきなり当たり強くないですか?私何かしました??ノットを見上げると、心底軽蔑したように犬を見下ろしていた。なんでそんな顔で犬を見るのか。

 

「...犬にはいい思い出が無いんですか」

 

「...いや、むしろこの犬には感謝してるくらいさ」

 

そう言うと、ノットは犬の方へしゃがみ、そっと頭を撫でた。

 

「最も、僕は猫派だけどね」

 

「犬に向かって猫派とは...酷いですね」

 

「君には負けるさ。アルレシア、バタービール僕にも半分分けてよ」

 

「えぇ...年齢は大丈夫なんですか」

 

「大丈夫だよ。飲んだらホグワーツに帰ろうか」

 

「いや、私まだ観光の予定が」

 

「シリウス・ブラックがどこにいるかわからない。そんな中御観光とは命知らずだね」

 

「そうですね...私なんて特に殺されてしまいそうです」

 

「わかっているじゃないか」

 

バタービールを一気に煽る。犬はそんな私たちを見ていた。二人で交代で飲んでいくと、不思議と身体が温まる。これはそういう飲み物なのだろう。

 

飲み終えて、私は暫く熱が引くのを待った。

 

「セオドールさんはこの犬が本当に動物もどきだと思いますか」

 

「正直否定はしないけど、ここでこの犬がシリウス・ブラックになっても杖がないんだからなす術無しだからね。アルレシアこそどうなんだい」

 

「私は正直...この犬がシリウス・ブラックであれば...」

 

私はそこまで言ってやめた。正直、この犬はシリウス・ブラックだろうけど、本当にそうであったら?教授をいじめ抜いたせいでああなった?そもそもの話ポッターの父親達が虐めをしなければこんなことにはならなかった?

 

ゆっくりと犬の首周りを撫でる。そして、両手で首を囲った。その手に少しだけ力を込める。このまま首を絞めたら、原作はどうなる。ブラック家が不死鳥の騎士団本部にならない。ハリー・ポッターはあんなに強くなれない。

 

「わからない...」

 

私はそう言って手を滑らせる。犬の顔全体を通るように手を滑らせてスポンと抜き去る。柔らかな毛並みに、私は口角を上げた。

 

「ワンちゃんには罪がないですものね〜!これがシリウス・ブラックであれば女子学生がニコニコ撫で回してるのを甘んじて受ける三十代おじさんとしてアズカバンへ逆戻り〜!ですもの」

 

「君、成人してるじゃないか」

 

(スネイプにもブーメラン刺さってないかい)

 

(ちょっと待ってください撤回しますから)

 

(教授もアズカバンか...)

 

(すみませんてば!!!)

 

「はてなんのことやら。ワンちゃん、私そろそろ帰ります。だいぶ酔ったので」

 

「アルレシアみたいなのって純血の見せしめにされそうだからね、仕方ない送るよ」

 

「じゃあ酔いすぎて転ばないように見ててくださいね」

 

私はそう言って立ち上がった。犬に手を振り、ホグワーツを目指すのだ。二人で無言で歩いていると、ホグワーツの門が近づいたところでノットはようやく口を開いた。

 

「あの犬、やっぱりシリウス・ブラックなのかい」

 

「そもそも動物もどきだったんですか?」

 

「君の予想は?」

 

疑わしげに投げられる視線。私はただ笑って置いた。

 

「そんなわけないじゃないですか。だって、こんなにディメンターがウヨウヨしてるような所にいる意味がないですし。仮に動物もどきだとしてもブラック家に帰るなり例のあの人の僕に匿って貰えばいいです。それなら夏休みになって魔法も使えない状態で家に帰ったポッターさんを狙う方が確実ですから」

 

「本当にそう思ってる?」

 

「むしろどうしてそんなに疑ってるんですか?」

 

私はそう言いながら不思議そうに首を傾げた。それを見てか、ノットはそれ以上言及してはこなかった。

私たちはホグワーツに着く頃には別々に歩き始めていた。

 

 

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