身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第103話

 

 

「今年はスリザリン生の五年が残るゆえ、寮の封鎖はできぬ」

 

「...はい?」

 

私は嘘だろ、なんて思いながらクリスマス休暇を迎えていた。今年は可哀想なことに貴族社会スリザリンで珍しくクリスマスにホグワーツに残る男子生徒がいるらしい。

寮が閉鎖されないので仕方なく怪しまれないように寮からきちんと廊下を通って教授の元へ通っていた。

 

トリカブトの瓶を開けた。そう、クリスマス休暇、幸か不幸か満月が休暇に丸かぶりしてしまったルーピン先生のために脱狼薬を煎じているところだ。

 

トリカブトを取り出してナイフで刻む。それを大鍋に入れて混ぜ、満月草の粉末を追加で。

 

「アルレシア、もうひとつまみ」

 

「本当ですか」

 

「叩き出されたいのかね。粘度が足りぬ」

 

(確かに粘度が足りなけどひとつまみが的確でさすがプロだ)

 

(見たってわかんない)

 

(僕だって初めて知った薬だ。僕の時には無かったさ)

 

私は言われた通りもうひとつまみ足して混ぜ続ける。匂いが全然良くない、相変わらずとんでもなく不味そうな仕上がりになっている。

 

「ふむ、まぁまぁですな」

 

「ダメな点はどこですか」

 

「雛菊の根を入れるタイミングが遅い。トリカブトの量が若干多い。粉末が少ない」

 

私は言われた通りメモをしておいて後で考えようと服のポケットに突っ込んでおく。出来上がった薬を柄杓で掬い上げて垂らすと、確かに先ほどよりも粘度が上がり、教授の普段作ったものに近づいていた。

 

「ふむ、来月から貴様に調合は任せる」

 

「いやいやまだ四、五ヶ月しか勉強してないんですよ」

 

「今月分は我輩が監督するゆえ叩き込みたまえ」

 

仕方ないと頷いて、私は少しだけ薬をガラス製の小皿に出す。それをスネイプ教授に差し出すと嫌々そうに小指で攫う。私も同じように小指で薬を攫って粘度の確認をする。

 

「良さそうですね」

 

「ひとつまみが効きましたな」

 

最後にその薬を口に含むとあまりの不味さにお互い顔を顰める。これを毎回飲んでるルーピン先生はやはり屈強な精神を持っているらしい。

 

「ルーピンのもとへ持っていけ」

 

「教授も一緒にいきましょうよ」

 

「断る」

 

「いいじゃないですか」

 

「ならば我輩がルーピンの元へ行く、貴様は冬にしか咲かぬ薬草」

 

「ウィンタークィーン、鎮痛剤の薬草ですか」

 

「残念ですな。ダイヤモンド...ネリネを雪から探し出して根っこを取ってこい」

 

「...ネリネですか」

 

ネリネとはギリギリ今も咲いているだろう植物だ。しかし、ネリネの別名というか一般的に知られる名はダイヤモンドリリー。そう、教授はポッターの母親の名前を呼ぶことを躊躇したのだ。

全く、三十年初恋拗らせるとこうなるんだから。

 

「知らんのか」

 

「いえ、花びらが光に当たるとダイヤモンドのように光る花ですよね。根っこってことは球根でいいんですね」

 

「あぁ」

 

「なら取ってきます。たまには外を歩いたほうがいいですし」

 

そう言いながら私はゴブレットに薬を入れた。スネイプ教授がそれを手に取り、私も収穫用のカゴやスコップを手にする。これが終わったら注文していたイモリの尻尾も届くはずだから定位置に置いておかなければ。

羊皮紙にやることリストのメモを書き足して、最後ランチまでに戻る、目標と付け足す。

 

「アルレシア、ネリネは禁じられた森ではなく暴れ柳側にある」

 

「暴れ柳に殴られたくないです」

 

「...暴れ柳の幹にコブがある。それに触りたまえ。殺人鬼に会ったら迷わずご自慢の魔法でも打ち込みたまえ」

 

「シリウス・ブラックのこと気にしてらっしゃるんですね」

 

「貴様のことなど見向きもしないと思うがな」

 

私は仕方なく頷くと教授よりも先に自分の部屋に戻る。コートやマフラーなどの防寒具を着込み、スリザリン寮を通って歩き出すことにした。

寒い寒い廊下に両手を擦り合わせつつ厨房も寄る。シリウス・ブラックがいたら一応は餌やりもしておこうか。クリスマス休暇だから私服だろうしスリザリンとは気づかれないだろう。

 

そんなこんなでバスケットに軽食も詰めて暴れ柳へと到着した。幸いなことに、ポッターがクィディッチで箒から落っこちて以来ディメンターは敷地内に入ってこないので暴れ柳周辺は安全である。

 

(さて、暴れ柳のコブを触らなきゃ)

 

(そもそもなぜこの木が植えられた?少なくとも僕の在学中はこんなものなかった)

 

あぁ...と思ういながら原作の記憶を辿る。これが植えられたのは二十数年前ぐらいだろうか。

 

(この木はルーピン先生のために植えられたの)

 

(理由は?)

 

(この木の根元から叫びの屋敷へ通じる道があるの。この道を隠すために木が植えられた)

 

(へぇ...)

 

(さてどうやってあそこまで行ってコブを触ろうか)

 

私がそう言った瞬間、トムの鼻で笑う声がした。そして、気づいた時にはトムが木の真下に立っていた。グッと重くなるような、走り終わったような疲れが体にのしかかる。

そしてさっさとコブに触れて消えるのだ。

 

(いやー、ずるいね)

 

(ちょっとずつ僕が表に出る練習でいいじゃないか)

 

(まあまあ)

 

私は食べ物を入れたカゴを持って木の幹の方へ歩き出す。よくよく見てみれば絡み合う根の方に下に繋がる穴があるのを見つけた。これが叫びの屋敷へとつながる道。そのそばに軽食を入れたカゴを置いて材料を取るために適当な場所で膝を下ろす。魔法系のものに関しては収穫の時に魔法を使うとうまくいかない。物を取るのと、収穫は全く別の話だ。傷つけないように丁寧に扱わなければならない。

そのため私は手で雪を掻き分けた。手袋は持ってないので素手でカチコム。普通に寒い。トムが鼻で笑う声がするとも思ったが、魔法を使うことがよくない事を知ってるのかあまり色々は言わないらしい。

 

丁寧に雪を掻き分ければ、そこには潰れた花があった。ダイヤモンドリリーだ。花の茎をたどり、地面をスコップで穴を掘り、丁寧に根を取り出す。それを繰り返すのだ。

 

(雪に埋もれてないものを見たかったね)

 

(女はつくづく花に宝石にレースに、美しい物が好きだね)

 

(...歳をとると徐々にわかると思うんだけどなぁ)

 

(僕の方が年上じゃないか)

 

(...トムより私の方が経験値的な意味では年上だよ)

 

近場のネリネは全て掘り出し、カゴに放り込むとまあこの量でいいか、というくらいになったので杖を振って手を綺麗にした。雪で手が真っ赤になってしまったので、ローブで手を包みながら暴れ柳のそばに座った。

 

(指寒くて死んじゃう)

 

(魔法でも掛ければいいじゃないか。腰につけてる杖はマドラーなのかい?)

 

(ブフッ...)

 

そんな会話をしていると、不意に何かが転がるような、パラパラと音がした気がした。顔を上げて杖を手にして周囲を見ると、木の影から出てきたのは黒い犬だ。

 

「あら、ワンちゃん!」

 

「ワフッ」

 

私は杖を握りしめたままワンちゃんに向き直る。休暇前の犬のはず...特徴ないとわかんない。

 

「シリウス・ブラックかと思って焦ってしまいました」

 

(で、本心は?)

 

(いや、これはシリウス・ブラックで間違い無いでしょ)

 

ちょっと耳を垂らしながら私を見上げるのでワンちゃんは可愛いけどおっさんだよなぁって思いながら杖を振る。

 

綺麗になぁれ。犬をしっかり綺麗にするが決して触れない。今回はちょうど脱狼薬調合期間なので特に動物の毛は厳禁なのだ。

 

「ワンちゃんご飯食べる?」

 

「ワンッ」

 

「ご飯あげるね。でも、今大事な調合をしてるから動物の毛はダメなの。だから離れたところで食べてね」

 

そう言って杖を振って少し離れたところに軽食、今回はチキンやポテト、サンドイッチもたまご系の入っているミックスサンドを置く。玉ねぎは抜いたから大丈夫だろうけど。

 

お食べと言わないうちに食べ進めるワンちゃん。私はその犬を少し離れて見守りながらこのまま殺してしまったらどうなるだろうか、なんてぼんやりと考えるのだ。

 

「ねぇワンちゃん。貴方は一体どころから来たのかしら。って、野良犬なのか元飼い犬なのかもわからないね」

 

だいぶ温まった指先をローブから出して、指先同士でさすりながら杖を振って雪を退ける。適当なところでネリネがあるのを見つけて杖でそっと持ち上げるのだ。

 

「ダイヤモンドリリー...綺麗な花。いつまでもいつまでも執着してるなんてバカらしくも感じる。でも...尊敬するの。どうしてそんなに一途に居られるの?」

 

(わざとシリウス・ブラックに聞かせているのかい?)

 

(別にそういうわけじゃ無いけど。でも、スネイプ教授ってずーとずーと片想いしてて拗らせて拗らせて大変なことになってる。

もうとっくに死んでしまった人をずっと愛してられるなんて...羨ましい)

 

ぼんやりとしたまましばらく花を見てから、それをそっと収穫した根の上に置いた。一つくらい持って帰ろう。教授の一日が喪に臥せば良い。

 

(この犬を殺せば、スネイプ教授の気持ちは楽になってポッターが騙されて神秘部にいかなくていい...?あ、でもそうするとヴォルデモートが復活したって魔法界が認知しないんだっけ)

 

(...全ての行動に意味や理由があるんだろう?無理して関わろうとするのはやめたらどうだい)

 

(それはそうだけど)

 

でも殺したい程憎いことだってあるだろう。いやでも...私が死ぬはずだった人を生かすのも殺すのもきっとタブーになる。未来が変わる。今までの夢主の皆さんどうやってきたのだろうか。ぜひ教えてほしいくらいだ。

 

ご飯を食べ続ける犬。この犬がシリウス・ブラックなのだとわかっていて放置していることが知られたら私もまずいだろう。そんなことをぼんやりと思っていると不意に犬が顔を上げた。真っ黒な瞳がこちらを向くのだ。

 

「クゥーン」

 

「どうしたのワンちゃん」

 

その言葉に何も答えはしない。動物に変身するとそのレベルまで知能は落ちるのだろうか。体に心が引っ張られてしまうのか気になる。

 

「こんな可愛いワンちゃんがシリウス・ブラックなわけがないね」

 

名前に少しだけ反応を見せるところが、やっぱり嘘をつけない男というか衝突猛進タイプなんだなぁと思いながらさらに言葉を重ねる。

 

「ワンちゃんはどう思う?シリウス・ブラックって何をしてしまったの?たった指一本しか残らなかった人間は本当に善だったのかしら。罪人としてアズカバン送りにされてしまったとして、その罪は正しく裁かれたの?」

 

犬は私の言葉を聞いて徐々に近づいてくる。まるで助けを、理解者を求めるかのように徐々に近づいてくるのを私はゆっくりと後ずさった。

 

「ごめんね、今大事なことをしてるからやっぱり動物の毛はダメなの」

 

「クゥーン」

 

「ご飯食べ終わった?私そろそろ学校に戻らなくちゃ。ルーピン先生が心配だし...」

 

私は答えを聞く前に杖を振って荷物をまとめる。そして立ち上がるのだ。シリウス・ブラックのことは元々そんなに好きじゃない。でも原作でネズミ食べて生きてます、みたいなシーンがあった気がするから気にしているだけ。

 

「ワンちゃん、元気でね」

 

クリスマスディナーが始まってしまうのを気にして、私は荷物を手に走り出した。

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