身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第104話

私はホグワーツに戻ってみて初めて自分がクリスマスの宴会に遅刻していることに気づいた。おやおやまあまあと荷物を置いて走り出す。大広間の扉は冬ということもあり固く閉ざされていた。

 

私が走って扉に近づくと、一人でに大きな扉は開くのだ。その先には十数名の先生方と生徒が揃っていた。

 

「おやアルレシア。待ちくたびれて食べ始めてしもうた」

 

ダンブルドア校長はそう言いながら生徒たちの集団、先生たちの集団と分かれたような席の中で先生たちの集団側に残された最後の一席。お誕生日席に食器を用意してくれた。

 

「すみません」

 

「いいんじゃよ。セブルスから少しかかると聞いておったからのう」

 

軽く会釈してスネイプ教授の斜めになるお誕生日席につく。私を合わせて14名のクリスマスランチになった。正確にいうとランチとディナーが合わさったものだ。何時間ものんびり飲み食いしながらお話を楽しめということだろう。

 

私も近くにあったミネストローネを盛り付けながらチラリとスネイプ教授を見上げるのだ。

 

「ジェフィフィーナ、貴女鼻も指先も真っ赤じゃありませんか。一体何をしていたのです」

 

マクゴナガル教授にそう言われ、私は苦笑いを浮かべながら鼻先を手のひらで温めた。そんなに酷い顔をしているのかと少しだけ落ち込む。

 

「ちょっと暴れ柳の方に行っていたんです」

 

「暴れ柳ですか?セブルス、あそこは危険な場所です」

 

「キチンと手順を踏めば問題あるまい。現にジェフィフィーナは傷ひとつ負っておらぬ」

 

「大丈夫です。材料を掘りに行っていただけなので」

 

「ジェフィフィーナ、嫌でしたら私のところに逃げていらっしゃい。ティータイム付きでやっていただきますから」

 

「だそうですよスネイプ教授」

 

「フン」

 

鼻を鳴らしながらも、教授はナチュラルに私の好きな糖蜜パイとローストビーフをこちら側に引き寄せた。甘いもの大好き!というわけではない教授が糖蜜パイを当然取るわけではない。私は笑いながらお皿にまずはローストビーフとグリーンサラダ、マッシュポテトを盛り付けた。そしてお皿の端に糖蜜パイを乗せておく。

 

「教授、ありがとうございます」

 

「ジェフィフィーナがティーンのまま止まるのを我輩とて危惧しておる」

 

「...もう無理じゃないですか、流石に」

 

ローストビーフを食べながら、これ以上でっかくなるのは普通に無理だぞと顔を顰める。身長はホグワーツの新入生に混じれるほどでほとんど止まってしまった。これ以上大きくなるのは薬でも入れなきゃ無理だろう。

 

「女性としての魅力があれば何も問題ありませんよ。貴女は立派な淑女に成長していますから」

 

「マクゴナガル教授...。聞きました?スネイプ教授」

 

「魅力ですと?淑女レディであれば悲鳴をあげる代物を魔法薬学で躊躇無くすり潰しているのはどこの誰かね」

 

「美と好奇への探究心は誰にも止められないものなんですよ教授」

 

「貴様が顔に粉を叩いたところを我輩は指導してから一度も見た覚えがないがね」

 

「...調合中の薬に混入したらどうするんですか?何かおかしなところがあれば絶対に私のせいにするはずです」

 

「我輩は毛のある動物と体に纏わせるものに関しては細心の注意を払っておる。貴様と違ってしくじったことはない」

 

「私だって毛のある動物には調合時には近づきませんし、アメニティには気を遣ってますよ」

 

「いいや、貴様のハンドクリームがこの前の薬の数値をおかしくさせたのをお忘れかね」

 

「...」

 

私はごもっともですと黙った。そう、先日ブラック家秘密のハンドクリーム薬を塗った後に作った安らぎの水薬、キチンとした手筈で作ったにもかかわらず煙は赤色。普通ならじわじわと銀色の煙が立ち上るはずだった。つまり、ハンドクリーム薬の成分が混入した。きちんと手を洗ったのだが、スーパー強力な薬で成分が残ったらしい。

 

「...責任とって飲んだじゃないですか」

 

「その結果、精神を安定させるどころか不眠症になったのをお忘れかね」

 

「あれは多分ヘレボルスのエキスがもう一滴あってもよかったと思います」

 

「貴様の目は節穴かね。もう一滴あったらそのまま眠って一生目が覚めぬ」

 

「不眠症だって三日、四日で治ったので問題ないです」

 

「解毒薬を自分で調合したの間違いであろう?」

 

「後始末までつけたじゃないですか」

 

「ほっほ...セブルス、アルレシア。今宵はクリスマスじゃ。二人は余程頭を悩ませながら調合しておるようじゃが...ちょっと今夜ばかりは頭を休めてもよかろう?」

 

校長の声に、私たちはそれぞれ口を閉じた。そしてチラリと教授を見るとこの狸ジジイが!という顔で下を向いていた。髪の毛で隠れていて、私が下から見上げるように見えるからわかったが、他の人には見えていないだろう。

そりゃ夏からあれだけ調合していれば無理もない。私だって微力ながら手伝ってふたりで努力しても散々な結果だ。どれくらい難しいかというと、失礼すぎるがイギリス料理を国民と一緒に美味くするくらい難しいだろう。

 

「セブルスは特にルーピン先生の気付け薬に気を揉んでおるのじゃから仕方もないのう。より良いものを作ろうとするプロとしての探究心は誰にも止められぬものじゃ」

 

スネイプ教授はその言葉に対して何一つ答えはしなかった。ただ黙ってゴブレットの中身を飲み干すのだ。

私もうーん急に空気重いなぁと押し黙る。ご飯をもそもそ食べながら他の先生方ともポツリポツリと喋る程度に止めるのだ。学生達と反対側にいるせいで全然話さないのは少し残念だが、話すような仲でもないし。

 

そんな程度で2時間ほどの食事は幕を閉じるのだ。クリスマスプレゼントは残念ながら一つもなかったのだった。

 

食事を終えて、私は何食わぬ顔で寮へと戻り、自分の部屋を通ってスネイプ教授の部屋へと入った。クリスマスくらいスネイプ教授もいい酒を開けているはずだと予想しておつまみなんかを厨房に用意するのも忘れない。

 

「赤ワイン開けましょう教授」

 

「なぜ我輩が貴様の相手をせねばならんのかね」

 

「クリスマスじゃないですか」

 

「さようで」

 

「クリスマスなのでハメの一つや二つ外してもいいと思います」

 

「その前にネリネの確認をせねばならん」

 

どうぞー!と教授にネリネの根が入ったバスケットを指差す。確認をする教授を背に、私はおつまみを並べてグラスを置くのだ。

 

「ルーピン先生の調子はどうでした?」

 

「変わらぬ」

 

「そうでしたか。クリスマスに被ってしまうなんて悲しいですね」

 

「イベントひとつ潰れた所で大袈裟な」

 

「教授にライフイベントが起きたらそんなこと言っていられなくなりますよ」

 

「我輩が結婚だ子供だなどとうつつを抜かす暇があるとお思いかね」

 

「...わかりませんよ、性行為だってリスクあるんですから私が妊娠でもしたらどうするんですか。あっという間に一児のパパですよ」

 

根の確認を終えた教授が私の前にワインボトルを置きながら鼻で笑った。雑に私の髪に手櫛を通して隣に座るのだ。

 

「...狡猾な貴様がおいそれと我輩を逃すことは無いようですな」

 

「そこは我輩の避妊薬を馬鹿にしているのか、です。それに、私が妊娠しても堕ろせとは言わないんですね」

 

そう言いながらワインを二人分用意した。教授は鼻を鳴らしながらワイングラスを傾け、回しながら飲むのだ。

 

「...冬に素手でネリネを掘らせたのを根に持っているのかね」

 

「いいえ。そんなことは魔法薬学なんですから覚悟の上ですよ」

 

「さようで」

 

私たちはワインボトルが空になるまで黙って飲んだ。さて私はだいぶ酔いが回り、教授がもう一本ボトルをと杖を掴んだタイミングで扉を叩く音がするのだ。

 

「セブルス、わたくしです。見ていただきたいものがあります」

 

マクゴナガル教授の声だ。スネイプ教授は私に寝室を指差すと、ワイングラスとワインを魔法で寝室の方へ送った。私も静かに寝室の扉へ向かうのだ。

 

寝室に入り、扉を閉めて一体マクゴナガル教授は何の用だ?と首を傾げる。はてはて、原作にこんなイベントがあったか。思い出せない。

 

結構アルコールも回ってきたので、私はベッドに倒れ込んでぼんやりと天井を見た。

 

(トム、出てこないでね)

 

(言われなくても)

 

(どうする?どこか校内を散歩でもしてる?)

 

(気が向いたら試すさ)

 

トムはそれだけ言うと何も言わなかった。私もワイングラスにワインを注いでくるくるとグラスを回した。正直香りとか色とか味わいとか全然わからない。お酒が大して強くないし、お酒の魅力もかっこいいから飲む程度だからだろう。

 

しばらくぼんやりとワイングラスを持っていると、寝室の扉が開いた。スネイプ教授がワイングラスを手に戻ってきたのだ。腹立たしそうに舌打ちした音は聞かなかったことにしよう。

 

「済んだのですか」

 

「...貴様はシリウス・ブラックがホグワーツ近辺にまだいると思うかね」

 

「私が大量殺人鬼のシリウス・ブラックでまともな感性をしているのであれば、わざわざホグワーツでポッターさんを殺そうとはしません」

 

「さようで」

 

「どうしたんですか?」

 

スネイプ教授はワイングラスに並々ワインを注いで一気に仰いだ。結構いい値段するワインだと思うんだけど。

そしていい加減にグラスを置いてベッドへと腰掛けるのだ。ガラスの音が響いて、結構いい値段なんだけど大丈夫?ヒビ来てない?気になったのは内緒だ。

 

「忌まわしいポッターが...」

 

「またポッターさんなんですね」

 

私はそう言いながらベッドから起き上がって、スネイプ教授の隣に座った。顔を覗き込むと、心底ムカついた顔になっているのでちょっと笑いそうになる。スネイプ教授の体に寄り添い、私はウンウンと相槌を打った。

 

「ファイアボルトが匿名でやつのところに届いた」

 

「ファイアボルト...あぁ、箒ですか」

 

「ブラック家の天文学的かつ未知数な財産を考えれば駄菓子程度の出費だろうが...その箒に呪いをかけてポッターに送ったとお考えのようで」

 

ファイアボルト誰が送ってきた事件ね。そっか、映画だと最後のラストシーンで送られてくるけど原作ではクリスマスプレゼントだっけ。

そんなことを思いながら、私は教授の眉間に寄った皺を撫でた。

 

「呪いはあったんですか」

 

「その類いは見られぬようで」

 

「そうでしたか」

 

「シリウス・ブラックはポッターの父親と親友だった。我輩は何故彼奴らが決別することになったのか...わからぬ」

 

「それだけ深い固い友情だったんですね」

 

「...あの二人は、だろうな」

 

「ルーピン先生、シリウス・ブラック、ポッターさんの父親...そして、ピーター・ペティグリューですか」

 

「あの高慢ちきなポッターの父親とブラックは波長がよく合った。主席と次席で、スリザリンにふさわしいと我輩は思う」

 

「でも、一緒にいた残りの二人は違った?」

 

「ルーピンは二人のストッパーだったが...ペティグリューは二人の後ろをついて歩くような小心者である」

 

「二人組プラス、二って構造だったんですか」

 

「...三人組に近かったのだ。そこにペティグリューはついて回っていた」

 

その当時のことはよく知らないが、映画を見ているだけでもわかるだろう。ペティグリューがどんな感じだったかなんて。スリザリンとグリフィンドールのどちらに入れるか迷われた男であるペティグリュー。ほんの少しの何かによってグリフィンドールに入っただけだ。その何かが、一体なんだったのか、気になってしまうくらいだ。

 

「ブラックか裏切ることもありえぬが...ペティグリューがそのブラックに立ち向かったという方が信じられぬ」

 

「...実際にペティグリューは死んで、ブラックは捕まりました」

 

「あのブラックが、巨悪に負け陶酔するのか。ブラックというスリザリンの血を何より軽蔑していたあの男が。悪の道に落ちた人間を、実家どころか...実の弟でさえも毛嫌いしていたあの男が。それならば...レギュラスはもっとマシな...」

 

「教授...」

 

教授は黙って私のことを抱き上げてベッドへと下ろすのだ。全く、陰湿なクリスマスで嫌になってしまう。柔らかなベッドと良い肌触りのリネンに、私は孤児院時代の固い床よりはマシかと呼吸のようなため息を吐いた。教授は着ていたローブを脱いでベッドの下に落とすと、私の上へと馬乗りになるのだ。

私の顔にかかった髪を退け、スネイプ教授は私の耳元に顔を寄せた。

 

「シリウス・ブラックをホグワーツに引き入れたのは...」

 

その言葉を聞き切らないうちに、私は教授の頭を抱きしめた。黒髪を抱き込み、教授が私に不満の声を上げるのを耳元で聞いた。教授、そう一言呼ぶと何も言わなかった。

 

「証拠が無いことは聞きたくありません」

 

「予想がついているようですな」

 

「証拠がない話を聞きたくないだけです。疑いたくないので」

 

「ならば机上の空論でも聞けば良い」

 

「...誰の名前が出るか、確信しているので言わないでください」

 

「ならば疑っておるのか」

 

「疑ってはいませんが、消去では出てくる名前は一つだけです」

 

「随分肩を持つのだな。随分お気に入りのご様子だ」

 

「別に気に入っているんじゃないんです」

 

「我輩よりもよっぽど頼りにしているようではないか」

 

「...先生にとっては脱狼薬を調合してくれる人のうち、話しやすい方って感覚なんですよ...きっと」

 

「貴様も変わらぬようで」

 

「そんなことありませんって」

 

「貴様は気に入ったものに執着する癖がある」

 

「なんでその癖知ってるんですか」

 

「三年目故にそれくらいは察する」

 

「そうでしたか。でもお気に入りではありませんよ」

 

教授の髪の毛を優しく撫でながら、私は笑うのだ。そう、ルーピン先生はお気に入りではない。あの先生にどれだけ媚を売ろうとも、あの人は子供を好きになりはしないだろう。原作でルーピン先生はトンクスという女性とくっつくのだから。わざわざ無理とわかっている相手に愛想を振りまくほど私は暇ではない。

 

「私のお気に入りは...スネイプ教授と、あとはトムですかね」

 

「我輩と漏れ鍋の亭主は同列なのかね」

 

「ご不満ですか」

 

私の言葉に教授は顔を上げて私を見下ろした。不満げでも、満足げでもない顔で私を見るのだ。最初から気にしてなさそうなその顔に、誰がお気に入りとか聞くそっちが悪いのにと眉間の皺を指で撫で付けた。

 

「...ただ、スネイプ教授に歩み寄ろうとしているルーピン先生の味方なだけです」

 

「つまり」

 

「私は教授側ということです」

 

スネイプ教授はその言葉にただ鼻を鳴らした。満足いく答えだったらしい。私の頭を雑に撫で付けると、着ていたセーターにそのまま手を這わせるのだ。

 

「明日は二日酔いに効く薬も煎じてくださいね」

 

私のクリスマス休暇は殆ど調合とスネイプ教授のご機嫌とりで終わってしまったような気がするのは、気のせいではないのかもしれない。まだ温まりきらない寝室の暖炉を、私は指を鳴らして強めた。杖がなくてもこれくらいならできる。さて、この大きな子供のご機嫌をしっかり取らなければ、脱狼薬どうこう以前に、ポッターがいじめられそうだ。

ファイアボルトを取られて、ポッターたちもさぞご立腹だろうし、チクったグレンジャーのこともある。

 

明日は腰の痛みと闘うことになりそうだ。

 

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