身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第106話

「シリウス・ブラック...彼についてハリーに聞かれてね」

 

ルーピン先生はそう言いながら項垂れた。なんでもないような声なのに、信じられないと言わんばかりに唇を噛み締めるのだ。ホグワーツで大人気の陽キャ感抜群だった先生からは到底想像できないような姿だろう。さて、除け者だったルーピン先生から聞けるのはどんな話なのだろうか。

 

「ハリーが、“僕の父をご存知なら、シリウス・ブラックのこともご存知なのでしょう”と言ったんだ。私はゾッとしたんだよ。ハリーに、当時の私たちを伝える人は居ないはずだからね」

 

「...死人が出ているからですか?」

 

「例のあの人に狙われ隠れてもなお殺されたハリーの両親。死喰い人に寝返り、裏切ったブラック家の直系。それを止めようとし哀れにも殺された男。もうタブーに近いんだよ。なぜ、どこで、ハリーはそれを聞いたんだろうね。私は、ハリーへ突き放すように答えて何も伝えられなかった」

 

「...その言葉をただ伝えればよかった訳ではないのですね」

 

「それだけなら私にも伝えられたさ。伝えられなかったのは、ハリーが失望することを確信していたからだよ」

 

「...ハリーの名前はね、シリウスが付けたんだ。名付け親...ハリーの後見人はシリウスだったんだ」

 

原作通りの解答だ。周りの人間含め、ルーピン先生もポッターの後見人がブラックであると伝えないのはなぜなのか。失望するとは言うものの、正直別にそこまで気にする要素でもない様な気がするんだけどなぁ。

 

「後見人が実の親を、そして自分を殺そうとしたと知れば、ハリーはシリウスを憎む筈だ」

 

「だから、ポッターさんに言えないんですね」

 

「ハリーが聞いたらどう思うか」

 

どう思うと言われても、ポッターはどこかでその話を聞く筈だ。その時もシリウス・ブラックへ憎しみの気持ちを持っていた。きっと、ルーピン先生が言ってもポッターが突っ走ってシリウス・ブラックとエンカウントしていた可能性だってあっただろう。もしかして、ここで伝えるように促す方がポッターにとっても良くなる?でもそうするとピーター・ペティグリューを捕まえるタイミングやバックビークを助けるタイミングを逃す?

 

難しい、なんて思いながらルーピン先生を見ていると、先生は言いづらそうに私へ口を開くのだ。

 

「アルレシアは、私たちのことをセブルスからどう聞いている?」

 

「...教授は、ルーピン先生達のことをそこまで多くは語りません」

 

「じゃあ、アルレシアにセブルスは何を言ったんだい?」

 

「それは...」

 

正直そこまで言っていないと言うか...そもそも言っていいの?と思って私は言い淀んだ。

 

「聞くのはマナー違反だね。私が悪い」

 

ルーピン先生はそう言いながらも心苦しそうにただため息をこぼすのだ。そして大きな大きなため息をもう一度ついてから髪の毛をぐしゃりと握りしめた。

 

「私には、わからないんだ。シリウスのことも、ジェームズの裏切りによる死も...ピーターが立ち向かったことも」

 

「...ルーピン先生は...」

 

「私はあの時蚊帳の外だったんだ。その騒動も、もしかしたらその他のことでさえも。まさか私は、何も知らずにのうのうと居たのかい。私は...わた、しは」

 

その声がだんだんと小さくなり、ルーピン先生は顔を手で覆った。肩を震わせ、縮こまるように丸くなるのだ。先程まで先生であった人が、まるで母体の中にいる子供のように小さくなる。

 

「シリウスのことを、私は知らなかったのか。シリウスは、本当は...例のあの人に陶酔していたのかい。あんなにも血を嫌っていたはずの男が。純血主義を否定したシリウスが...」

 

「ルーピン先生...」

 

「ハリーを抱きしめてあんなにも笑ったシリウスがジェームズを殺すはずがない!親友を売るくらいなら、死んだほうがマシだと思う男が...」

 

私はその声をただ背中をさすることで聞いていた。ルーピン先生にとって、ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラックの両名はそんなにも特別な縁で繋がっていたように見えたのだろうか。ピーター・ペティグリューを下に見ていることが、どことなくルーピン先生からも伝わる。

 

「...ピーターが指一本、たった一欠片だけを残して死ぬ筈がない。ピーターは本当に小心者だったんだよ。私たちの後ろをいつもついて回ってきた。なのに、ピーターが立ち向かえて...わたしはッ...」

 

「...ルーピン先生は、辛かったんですね。助けに行けなかった親友。止められなかった親友。自分にはできないことができた親友。三人に対する罪悪感で辛かったんですね」

 

私はそう言って、ルーピン先生の頭を撫でた。柔らかな髪を撫で付けると、ルーピン先生は私の両肩を握るのだ。まるで縋るように、クリスマスの日に犬であるシリウス・ブラックがしようとしたことをするようだった。親友同士だからか、波長が似ていたのだろう。

 

「私は...弱い」

 

「ルーピン先生は弱くありません」

 

「私が行けたら...シリウスの気持ちに気づいていたら、シリウスを止められていたら。私は勇気がなかった。何も知らず、あの二人なら大丈夫だと」

 

「...」

 

「シリウスが秘密の守り人なのだと、私も同じ様に信じてやまなかった!...シリウスなら大丈夫なのだと!」

 

ルーピン先生の指が肩に食い込んだ。でも、その手が震えていることに気づいて、私はその手を握り込むのだ。顔を上げたルーピン先生は泣いていなかった。ただ辛そうに顔を歪めて、自分の過去を嘆くのだ。秘密の守り人がペティグリューに変わったことすら、まさか先生は知らなかったというのか。そうか、だからポッター家の場所を知る者が裏切り者であると確信できるのか。秘密の守り人が裏切ったが故にポッター家の襲撃。誰もがシリウス・ブラックに違いないとの確信が、裁判すらもせずにアズカバン送りなのだろうか。

狼男であるが故に、狼になっている無防備な間が危険な先生は、蚊帳の外だったのだ。先生自身も、それに気づいているからこそ、こんなにも後悔しているのだろう。

 

「ハリーを見るたびにジェームズを思い出す。ハリーの姿があれば、シリウスを探してしまうんだ」

 

「...ルーピン先生は辛くて、寂しかったんです。そして....自分が何もできなかった不甲斐なさを悔いているんですね」

 

「...何もできなかった私が寂しいと思ってはいけない」

 

「そんなこと絶対ありません。ルーピン先生の大切な親友が皆いなくなってしまったんですよ。寂しいと思ってもいいんです。ルーピン先生の体質を受け入れてくれて、そばに居てくれた大切な親友。その親友達が一度にみんないなくなってしまったんですから。

それに、先生は今やっているじゃないですか。ポッターさんの指導を、大切な親友の子供を守ってます」

 

「...ジェームズ、シリウス、ピーター」

 

「辛くて当たり前です。寂しくて、苦しくて、悲しいのは当たり前です。だって、ルーピン先生はそれを誰にも言えずにずっと一人で抱えてたんですからね

 

「...私は、大切な親友を前に何もできない男だった。そんな私が...楽になっていいとは、思えない、ありえない」

 

「いいに決まってます。ルーピン先生はもう十分苦しんだんです。シリウス・ブラックが、貴方の信じている人ならばポッターさんのお父さんを裏切るなんてこと無いですよね?なら、それを信じることはいけませんか。裁判もなくアズカバンに入れられたシリウス・ブラックは本当に裏切ったと口に出しましたか。

...ルーピン先生が信じたいことを信じていいと思います」

 

「わた...しは、本当は信じたい。シリウスが裏切った筈ない」

 

「なら、信じましょう。どうしてシリウス・ブラックが脱獄したのか、ポッターさんを殺そうとしているとして、その理由は?まだ、大量殺人鬼と呼ばれるにはあまりに情報が少ないのです」

 

ルーピン先生は頷きながらも、そっと私の肩から手を離すのだ。静かに自分の顔を手で覆いため息をこぼす。

少しの間そうしていると、ルーピン先生は顔から手を離し、私を見つめるのだ。まるで、今までずっと隠してきたことを言ったみたいに、ルーピン先生は穏やかな顔をしていた。そして私の頭を撫でるのだ。

 

「私は信じたいさ。そんなわけないと...」

 

「信じないんですか」

 

「シリウスじゃなければ、誰がジェームズを裏切ったのか。死んだピーターなら、死人に口なしだよ」

 

「...そうですね」

 

「アルレシア、君は本当に素晴らしい魔女であり、素晴らしい女性だ」

 

「突然褒められても困ります」

 

「君は本当に素晴らしいよ。私が会った中でもピカイチにね。今まで誰にも言えなかったことを、年下で学生な君に全て言ってしまった。私はなるべくハリーのお父さん達と同世代だと言わないようにしてきて、隠してきた。でも、アルレシアになら言えてしまったよ」

 

「...私はただ、ルーピン先生に辛い思いをしてほしくなかっただけです」

 

「ありがとう、アルレシア」

 

「いいえ。ルーピン先生の気持ちが楽になったなら」

 

「なったさ。口に出したことで、納得した。私は弱い。立ち向かえない男だ。だからこそ、今は私のできることをする。ハリーに呪文を教える...きっとそろそろ、ハーマイオニーが私の正体に勘付いているからね」

 

「...グレンジャーさんは素晴らしい人ですから、知っていても言いません」

 

「...もう、秘密を知られる恐怖に慣れてしまった。ハーマイオニーが言わなくても、他の誰かがきっと言ってしまう。私が悪益な人間だってね」

 

「悪益だなんて。ルーピン先生の授業はこの学校で一番人気なんです。みんな、ルーピン先生のことが大好きですよ」

 

「しかし、私が狼人間だと知ればみんな軽蔑する」

 

「...」

 

「慣れているのさ。私みたいな人間はね」

 

ルーピン先生はそう言うと立ち上がった。ゆっくりと杖を振って紅茶を入れ直す、チェストからお菓子が飛んできて皿を彩る。静かにルーピン先生は紅茶を飲み、お菓子を食べるのだ。

 

「...でも、私はルーピン先生を軽蔑したりしません。私が脱狼薬を作り続けます」

 

「ありがとう。でもいいんだよ、脱狼薬が無い時はいつだって私はただの狼だった。その孤独に寄り添った親友達は居なくても、私にはその思い出があるからね。そう、エクスペクトパトローナム」

 

杖を振り、銀色の光が噴き上がる。でも、その光は煙となっても明確な形を作り出さなかった。

 

「...私のパトローナスはなんだと思う?」

 

「狼」

 

「そう。だから私は、パトローナスを人前では出さない」

 

そう言いながらも、ルーピン先生はゆっくりと煙を形作る。最後に出来上がったのはしっかりと狼だった。一体何をもってして、動物が決まるのかさっぱりだ。なぜ私はたぬきだったのかも教えてほしいくらい。

 

「...ルーピン先生は、ポッターさんにディメンターに対抗する術を学ばさせて、どうしたいのですか」

 

「別に何も無いよ。私はね、ハリーをジェームズの息子では無く、ただの学生だと思うことにした。学生が知識を欲するなら、それを叶えるのが私の仕事だ。セブルスがアルレシアを自慢げにするのがちょっと悔しいだけだよ」

 

さっきまでの小さな子供のようだったルーピン先生は消えて、今はいつもの表情に戻っていた。いつのまにか火が弱まる暖炉の音も、雪が強くなった外も、かなりの時間私たちが話し込んでいたことを教えてくれる。

 

「教授の自慢なんてほんの少しでしょう?」

 

「でも、私にも一人くらい贔屓で無くても手放しで私が育てたと言う相手が欲しいものさ」

 

「それが、ポッターさんですか」

 

「...本当は、あの世でジェームズ達に会えたら少しくらい自慢する口実が欲しいだけなのかもしれないね。

さあ、もう夜は遅い。そろそろお開きにしようか」

 

そう言ってルーピン先生が私の腰に手を回し、ソファから立ち上がらせてくれようとしたその時だった。ドンドンッと強くドアが叩かれる。それと共に響くのはよく知る声だった。

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