身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!! 作:あるれしあちゃん
「リーマス」
「おや...セブルスのようだね」
そう言いながらも、まるで誤解が無いようにとルーピン先生は私の腰から手を引く。さすが、まともな大人だろうか。私自身もあたかも向かい合って話していましたと言わんばかりに座り直す。
「入るぞ」
さっさと扉が開けられ、スネイプ教授が姿を現した。私を見て驚くでも無くただ近づいてくる。そしてガタガタと揺れるキャビネットとルーピン先生、私の三点をゆっくりと見つめた後に私へ視線を戻すのだ。
「ここに居たのか」
「...あー、セブルス。ボガートの体験をしてもらってね。その後は話に付き合って貰っていたんだ」
焦りながら言い訳のように言うルーピン先生。まるで浮気がバレ、妻にでも言い訳してる夫のようで、私はクスクスと笑いながら立ち上がった。そしてそっとスネイプ教授に近づくのだ。
「スネイプ教授、迎えに来てくださったんですか?」
「...つけ上がるな。我輩はルーピンの経過を調べに来ただけである。貴様を使いっ走りにしようと思ったが居なかった故...」
「そうでしたか。じゃあ私は先に帰ります」
「いや、貴様がメモを取れ。貴様も聞けば二度手間にならぬ。また、こんな時間に貴様を廊下に放り出すほど我輩も鬼では無い。巷で噂のシリウス・ブラックを知らぬようですな」
「ふふっ...じゃあお手伝いさせていただきますね」
そう言いながら私は、渡された羊皮紙と羽ペン、インクでメモを取り始めた。少しだけ申し訳なさそうなルーピン先生がちょっと面白い。流石に長々と話しすぎた自覚はあるのだろう。
スネイプ教授は嫌味たっぷりに薬の味はどうだと聞きながらも作ってやるだけで感謝しろだの満月前後の休暇中は自分が代わりに授業してやってるのに生徒とお茶とは羨ましいものだの言いたい放題だった。
たっぷり三十分かけてストレス解消の様に罵声を浴びせると、スネイプ教授は満足げに鼻を鳴らすのだ。
「次回もジェフィフィーナが調合する故、失敗して犬にでもなった際は此奴を恨むことですな」
「頑張りますね」
「よろしく頼むよ」
必要なメモを取り終わったので、私もようやく寝られるなと羊皮紙を丸めた。インクの蓋を閉め、羽ペンの先も拭う。しっかりと片付けを済ませて、私はいつでも帰れますよーと教授を見上げるのだ。
「行くぞ」
ローブを翻しながら立ち上がるスネイプ教授の背中を追いかける様に立ち上がる。
「はい教授。ルーピン先生、今日はありがとうございました。スネイプ教授の自慢のお陰で明日からも頑張れそうです」
私はにっこり笑ってそう言うと、扉を開けてくれるスネイプ教授の後ろをついていった。ルーピン先生もただ軽く手を振るだけに留めるのだ。
二人で冷える廊下を歩く間、スネイプ教授は何も言わなかった。ただ黙ってスネイプ教授の自室、寮のある地下を目指すのだ。私も何も言わずに部屋へ入るまでついていった。
少し歩いてようやく着くと、スネイプ教授は暖炉の前に二人掛けのソファを移動させて私に座る様に促してくれたのだ。
「何を話したか聞かないんですね」
ソファに腰掛け、パチパチと強く燃える火に、これこそ暖炉と感謝しながら冷えた足先を暖炉に向けた。じんわりと暖まっていると、スネイプ教授もローブを脱いで隣に座るのだ。
「人の目が無くなるまで黙ってやったのだぞ。我輩の自慢とは何かね」
「ふふっ」
「貴様の魔法薬学実技試験がフクロウになりたくなければ答えたまえ」
「...ルーピン先生が、私のことをスネイプ教授が自慢するんだって教えてくださったんです」
「フン、デマカセを」
「そうなんですか?」
「貴様のどこに自慢できる点があるのか教えてもらいたいものですな」
「...ルーピン先生の部屋に行ったこと、怒っているんですか?」
「我輩がそんな器の小さな男と御思いかね」
鼻を鳴らす教授に、私は笑いながらいいえと返した。
「ルーピン先生が言うには、“アルレシアは他のトロールの世に鈍間で馬鹿な者どもの中でも比較的マシなトロールである”って何処かの魔法薬学のプロフェッショナル様が自慢されたそうですよ」
「...身に覚えがありませぬな」
「トロールじゃなくてヴィーナスですもんね」
「フム、トロールならば最近口にした覚えがなくも無い」
「いい気分だったので、ルーピン先生と話してたんです」
「ルーピンは浮気がバレた夫の様でしたがな」
「...私のことを疑ってます?」
私はそう言いながらスネイプ教授の肩に顔を乗せた。少しだけ首を傾げてそう聞くと、スネイプ教授はため息を吐いて首を振ったのだ。
「ルーピンは貴様の好みでは無い様ですからな」
「失礼ですね、好みだなんて」
「もう寝たまえ」
そう言いながらスネイプ教授は私の自室の扉を指差すのだ。おやおや、本当に会話がそれだけだと思っているのだろうか。
「怒っています?嫌な気分にさせてしまったのならもう行きません」
「貴様の色恋沙汰に我輩が関与する言われは無いのですがな」
「じゃあまたルーピン先生に私の自慢してくださいね。聞きに行ってモチベーションにするので」
「トロール風情が何を言うかね。サッサと寝たまえ。このままでは一生ティーンのままですぞ」
「それは困りますね。でも...本当に他の会話については言わなくていいんですか」
私が立ち上がりながらそう言うと、スネイプ教授は私の腕を掴むのだ。まるで座れと言わんばかりに引っ張られるので、素直に座り直す。
「...ルーピンは何について話した」
「まずは教授がルーピン先生達について何を話したのかと聞かれましたよ」
「答えたのか」
「いいえ。私はスネイプ教授側である以前に人ですから、少なくともこっそり教えてくれた様なことは腹を割った相手でなければ言ったりしません」
「別に言っても構わぬがな」
そうでしょうとも、そもそもルーピン先生もスネイプ教授も大差ない。シリウス・ブラックが裏切るなんて有り得ない。ピーター・ペティグリューが立ち向かうほどの勇敢さを持ち合わせてるわけない。この二点は同じだった。
「...スネイプ教授は、当時闇の陣営にいたんですよね?」
「...さよう」
「なら、シリウス・ブラックは例のあの人のそばにいたところを見たことがないんですよね?」
「さよう...しかし」
そう言いながらも、スネイプ教授は口をつぐんだ。なぜ黙るのか。悩む様に眉間に皺を寄せる姿に、そんなに言い淀む所があっただろうかと首を傾げた。
「ルーピンは貴様になんと言った」
「...口が軽いと思われるのはアレですがスネイプ教授にだけですよ。ルーピン先生は私にスネイプ教授と全く同じことを言いました。それと...秘密の守り人がシリウス・ブラックだったはずなのに、なぜ裏切ったのかと。そして、何もできなかったことを悔いてました。ポッターさんを守る、だけどポッターさんの父親と瓜二つですから贔屓にしない様にただの生徒ととして見ながらも...学生が知識を求めるならば与えると」
「秘密の守り人であったことも言ったのか」
「ポッターさんの名付け親であり、後見人であることもです」
「ほとんど全てを話したようですな」
私もそうですねと曖昧に笑っておいた。それほどまでに追い詰められていたのだろうから仕方ない。スネイプ教授はぼんやりと暖炉を見つめた後に静かに私を見下ろすのだ。
「貴様の予想は」
「私、少し前に自分で証拠のない話とかは聞きたくないって言いましたよね」
「貴様が言いたくないとは言った覚えがありませぬな」
はてどうだったか、思い出せないのでそうかもしれない。私は納得しながら口を開き閉じを繰り返した。言っても良いのだろうか。どうしたら良いのかわからなかった。
「...何を聞いても怒らないでくださいね」
「我輩のことを侮辱せんかぎりですな」
「しませんよ。話にも出てきません」
「さようかね。言いたまえ」
「...今までの話を総合して考えるならば、裏切り者はピーター・ペティグリューだと思います」
「我輩とてそう思う。ならばなぜ、ポッターの家は襲撃されたのだ」
「シリウス・ブラックが秘密の守り人を、ピーター・ペティグリューに変更したのかもしれません。教授方の話を聞けば、シリウス・ブラック達とピーター・ペティグリューの間には決して無くならない格差があったととても感じるのです。だからこそ、守人はシリウス・ブラックであると皆が思い込む。そこを狙った。
そして、ピーター・ペティグリューこそが例のあの人の味方。だとすれば、シリウス・ブラックがピーター・ペティグリューの裏切りを確信して追いかける。その先でピーター・ペティグリューが自爆を図る。シリウス・ブラックに罪を着せる。
この方が辻褄が合うと感じる程度です」
「...フム」
教授は何も言わなかった。自分でも想像した様なことを言われた、という顔だった。教授も予想したのだろう。でも、わざわざシリウス・ブラックがピーター・ペティグリューに守人を移すメリットが少ない。
だからこそ、整合性の取れない話だ。
「守人を変更...しかし」
「でも、ルーピン先生は変更したとは言っていませんでしたから分かりません」
私はそう言い切ってから立ち上がった。これ以上の会話なんて必要ない。そう思ったからだ。
「予想を言い合っても仕方ないので、私はもう寝ます」
「...当人がいなければ机上の空論ですな」
「ですね。さて、私のモチベーションのこと忘れないでくださいね」
「サッサと寝たまえ、トロールになりますぞ」
私はくすくすと笑いながら部屋へ戻った。シャワーを浴びてからベッドへ倒れ込むのだ。
トムからルーピン先生の話についての声をかけられているのを、まるで子守唄のように聞きながら私は寝返りを打った。
(アルレシア、ちゃんと聞いている?)
(聞いてる。今の会話で分かったと思うけど...)
(ピーター・ペティグリューが死喰い人だったのか。親友と言いながら、見下してたことが見え見えの様だね)
(...おまけに見下してるニュアンスを本人に堂々と言える男だからね、シリウス・ブラックも)
(ポッターにクズ要素がないことに感動するレベルの世代だね)
(意外とトムみたいに隠してるのかも)
そう言いながらクスクスと笑うと、私はトムのいるところへと移動する様に力を抜いた。フッとした浮遊感と共に気づくと私の背中には柔らかな感触がある。
「何か言ってから来てくれても構わないんだよ?」
「なんだかトムに会いたくなって」
顔を上げれば、トムが私の隣に座っていた。足を組んで、退屈そうに肘をついていたのだ。
「ピーター・ペティグリューにもシリウス・ブラックのように構いに行くつもりかい?」
「うーん、悩み中。だってネズミだし」
そう言いながらヨッコラセと起き上がると、なんだか今日は疲れたと思いトムに両腕を広げた。
「構ってちゃんかい?僕がなぜ君の機嫌をとらなきゃならないんだ」
「えー、構ってよ。トムの優しい腕がいい」
「...だったら僕がそっちに行ったのに」
そう言いながらも私に場所を開けてくれた。トムの膝に乗り、トムに体を預けるのだ。温かくもない。香りもしない。それでも確かにトムはそこにいるのだから安心できる。
「今はシリウス・ブラックのこともあってダンブルドア校長もきっと警戒してるの。だから実体化して出るのは良くないから」
「あっそ。僕をこんなところに一生閉じ込めておくのかい」
私の頭に頬を寄せ、トムはわざとらしく嘆いた。そんなわけないって自分でわかってるくせに。私は笑いながらトムの首筋に自分の額を寄せるのだ。忍びの地図がポッターさんの手元に既にあるのだとしたら、私のそばにトム・マールヴォロ・リドルの綴りがある可能性があれば...と、考えたらトムが実体化するのは少々リスクがある。
「君って本当に罪だよね。あの汚らしい犬にも、狼人間にも、スネイプにも優しくして...甘え方や声の掛け方がそれぞれ違うから、本性を知る僕でなければ揃って全員アルレシアに骨抜きさ」
「えー、良いこと言ってくれるね」
「今日は退屈しない夜だったからね。最後は僕を選んだから許してあげるさ」
「実は本命が別にいてね」
「前言撤回だ浮気者め。どこの馬の骨か吐いてもらおうか。君の体を借りて僕が叩きのめしてくる」
「冗談だって」
トムは私の頭を軽くこづいてから笑い声を上げていた。
「誰のことも別に好きじゃないだろう。わかってたさ」
「えーじゃあ、前世の元彼の話でもする?」
「まずは元彼の数を申告したらどうだい?」
「...当時ね、付き合ってた元彼がねファミリーレストラン...まあご飯屋さんでねポップコーンを食べたの。映画館で買ったのを他の店で食べたの。それが原因で別れたわ」
「...本当に?」
「嘘」
「いや、嘘じゃないね。それ恐らくきっかけだ。理由は他にあるが、みんなにはその理由を言った、というところだろう」
突然の名推理に、私は笑いながら正解と手を叩いた。トムもだろう?と言う顔で鼻を鳴らして私の頭をぐしゃぐしゃと撫でつけた。
「アルレシアのことなら僕は他の誰より、君の次に君を知ってるさ」
「今日優しいね。いつもそれくらい優しければいいのに」
「今日は面白い話が聞けたから大サービスだよ。さて、もう寝ると良い。明日も一段と冷えそうだから、僕が定期的に火は強めておいてあげよう」
トムの声と共に、私はフワッと浮遊感を感じ、自分が自室に戻ってきたことに気づいた。
(子守唄でも歌ってあげようか?眠り姫)
(ブフッ...)
私は目を閉じてゆっくりと息を吐いた。トムが知らない歌を歌うのを聴きながら寝返りを打って良い体勢をとる。
微睡の中でのトムの声はやっぱり良いものだなぁと私はしみじみしてシーツを体に巻きつけた。
さて、周りの人からあれだけ色々言われるシリウス・ブラック、ピーター・ペティグリュー両名のうち、まだスキャバーズとは話をしていない。是非ともピーター・ペティグリューであるスキャバーズともお話しする機会があればいいのだが。原作にない話が楽しすぎて、私は明日から試験に向けて勉強を進めなければと思いながら意識を手放した。