身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!! 作:あるれしあちゃん
それから私は特に何もないまま二月を迎えていた。スキャバーズに会うこともなく、かと言ってシリウス・ブラックにわざわざ会いに行くこともない。普通に授業を受け、時折マルフォイやノットと話す程度のいつも通りの日常を送っていた。
ファイアボルトの圧倒的速度によってクィディッチの戦いはポッターたちが勝ったぜ!だったり、ルーピン先生曰くポッターはついに白いモヤを作り出せてるぜ!だったり、シリウス・ブラックがグリフィンドール寮に侵入したりだ。ついでにルーピン先生の脱狼薬はまあまあの出来だったと言っておこう。
いくつか原作通りのアクションもあったが、概ね私の知る原作通りだろう。そんなこんなで次のホグズミード村へ行く許可が降りた今日も、私はあまりの寒さに行くことをやめて自室でのんびりすることにしていたのだ。
しかし、それもスネイプ教授の風邪流行ヤバい手伝え暇人の声で無理やり働かされているわけだが。そしてトムは私の部屋で試験勉強のまとめをするとかなんとか言って実体化して部屋に残ったし。最近のトムは私に変わって試験勉強をしているのでなんかもう私は趣味に没頭している感じな気がする。
「アルレシア、五つ追加」
「あーその前に保管庫見てきます。材料発注し足す方がいいですよね?」
スネイプ教授は私に在庫リストを寄越すとサッサといけ、そして戻ってこいと目で言う。私も駆け足でリスト確認するのだ。一月には満タンにしておいたがやはり風邪薬を中心に減りが早いのを追加した方がいいだろう。
保管庫でしっかりと数チェックをしていると、研究室の方から声がかかる。
「アルレシア、ノイローゼになる生徒の分も発注を始めておけ」
「五十ですか?六十ですか?」
「百で構わん。どうせフクロウ、イモリを抜きにしても学年末試験でノイローゼになる生徒が後を絶たぬ」
「了解です」
チェックリストを作り、発注票を用意して戻ってくると、風邪薬に取り掛かる。教授も隣で薬の補充を始めていた。
「...ポッターが隻眼の魔女の像の側を彷徨いておったが、何か知ってることはあるかね」
「隻眼の魔女...せきがん...そもそもその像はどこにあるんですか?」
「知らぬなら構わぬ」
「ポッターさん、魔女に恋でもしてしまったんでしょうかね」
「口ではなく手を動かしたまえ」
「もう思春期なんですから何に恋するかなんて個人の自由ですのに」
と言いながらも、あーホグズミードのお菓子屋かなんかに繋がる道ね〜と原作の内容を思い出した。恐らくこのままここにいれば忍びの地図を御拝見できるだろう。
「思春期真っ盛りのはずの貴様に思春期は来ないようですがな?」
「あらスネイプ教授、羞恥プレイがお望みでしたら申請してくださらないと」
「スリザリン五点げん...」
「大体異性って年下をそんな目で見られませんよ」
「同い年である先輩に目を向ければ良いだけだろう」
(三十七、八歳の同級生が居ないのだからやめてあげたまえ)
(トム!)
(事実だろう?)
(そうだけどさ)
「もっと大人な包容力が欲しいんです」
「森番のところにでも行ったらどうかね」
「いえ、物理的な包容力ではなくてですね」
あんなデカい男に包容されたら怖すぎて泣けそう。あんな感じじゃなくて、男らしいけど優しさもあるいい男がいいんですはい。あれはマジで頼らないから無理。
「理想くらい持っておらんのかね」
「そんなこと聞くんですか?やめてくださいよ」
「恥ずかしげもなく言うな」
「そうですね...はい、三つできましたよ。あと二つですね」
風邪薬を容器に詰めながら、私は自分の理想について悩んだ。前世では割と黒髪が...とか色々合ったが、今世では世間的にも魅力的な瞳が...とかセクシーな唇、とかになって染めたりなんかで変えられるところに魅力を感じる人が少ないっぽい。
「うーん...大人な包容力と可愛さとなんでも美味しいって食べてくれて...」
(ベッドも上手いも出した方がよさそう?どう思うトム)
(倫理観を疑うね)
「後は、お金持ってる人ですかね」
「結局は金かね」
「...お金が全てですよ。孤児院にいた時も、お金のことばっかり考えてましたし」
教授は私の言葉にピクリと肩を揺らしてから私の方に向き直るのだ。なになに?え?と思いながらも風邪薬の入った瓶の蓋を閉める。何か気に触るようなこと言っただろうか。
「お金の管理もアルレシアがしていたのか」
「え?あー...いえ、エリーさんという方が基本的に持管理してしました。そのお金の中で食費だけ私がもらって管理、って感じです」
「孤児院とはそんなに酷いものかね」
「私のいた孤児院は比較的悪質というか...あまりいい環境では無かったような気がします。エリーさんが言うには、ミセスコールが呪い殺されてからだ!なんて言いましたけどね」
「ミセスコール?」
「孤児院の職員だった人だと思います。その人が亡くなってから孤児院が悪い空気になったとかなってないとか」
そう言いながら残り二つの風邪薬を作り始める.鼻歌を歌いながらでも作れるけど、一度に管理できるのは三つまでなので仕方ない。教授は一度に五個作ってるので負けていられないが。
「とにかくお金が無いと何もできませんから。お金の余裕が心の余裕です。私は親族も帰る家も無いですし、友達も居ないのでホグワーツを退学にでもなったらどこに行けば良いかわかりませんよ」
教授はヤベェなって顔をして無言で私の前にガリオン金貨を飛ばしてきた。チャリンチャリン飛んできて、おひねりか!と思いながらも刻みナイフを放って両手キャッチしておく。開かれた手の中には三枚のガリオン金貨。おぉうお金ですわ!!
「いやいやついキャッチしちゃいましたけどお金を粗末にしちゃだめですよ!一枚のクヌートで笑うものは一クヌートに泣くんです」
「ならば返せ」
「嫌です」
私がそう言ってガリオン金貨をポケットにしまおうとしたその時だった。なんとなく足音が聞こえた気がしたのだ。おやおや?と思って動きを止めると、ガンガンッと扉を叩く音がする。珍しい、こんな叩き方をする人はなかなかいないのに。教授は誰だ?という顔でわざわざ扉を開けに行くようだった。
金貨をポケットに入れてから柄杓で薬を混ぜていると扉が開かれ、マルフォイが慌てた様子で教授に詰め寄った。
「スネイプ教授!!」
「何かね」
「ポッターが!!ポッターの生首が!」
黒のモハモハの帽子にも真っ黒なコートにも雪がこびり付いて転げ回りながら走ってきたのか?という様子のマルフォイは焦った様子でポッターのことをチクっていた。そうです、ホグズミードに行ってウィーズリーにとやかく言ったマルフォイ達をポッターが虐めるが顔がピロンしてしまう、みたいな話のことです。あーそういえばそれって今くらいの話だっけ?なんて思いながら刻んだ材料をぶち込んでさらに混ぜ込む。
私のことは全く気づいていないようで、いつものおぼっちゃまの様子は微塵もない。ゼーゼー言いながら支離滅裂にポッターについて説明するのだ。いつもの気取った様子は転げ回って走る間に落っことしてしまったのだろう。マルフォイの話をのんびり聞きながら出来上がった薬を瓶に詰めて蓋をしたあたりで、マルフォイはようやく一息ついたらしかった。
「それで!ポッターは絶対何か悪いことをしてホグズミードに来てたに違いありません!」
「わかった。ポッターはホグズミード行きの許可は出てない故、罰則に値する」
ウンウンと得意げにするマルフォイが、そういえばお邪魔でした?みたいな顔でキョロキョロとし出すところでようやく私のことに気付いたらしくアワアワしながら汚れた服を払い始めた。
「じぇ、ジェフィフィーナか」
スネイプ教授がため息を吐きながらマルフォイに杖を振って汚れを落とす。パパルフォイがいるから二人はそれなりに長い付き合いだと思うが、おじさま!ってスネイプ教授のことを呼んだりしてなかっただろうか。ちょっとだけ気になる。
「マルフォイさん、災難でしたね」
「いや、僕はそんな奴らには付き合っていられないからねさっさと退散したさ」
逃げてきたが正解だと思うが...。
「そうでしたか、大人な対応ですね」
「まあ僕は紳士だからね。そこらへんのポッター達のような奴らとは違うさ」
「ポッターさんたちも見習えばマルフォイさんみたいにモテモテになれますね」
得意げな顔のマルフォイに言葉のおひねりを与えつつも出来上がった薬の瓶を他のものと一緒に並べておく。これを医務室に持っていかなければならない。
「ジェフィフィーナ、我輩はポッターを探してくる故...」
「医務室に薬を届ければいいですか?」
「いや、此処を片付けておけ。ドラコ、念のため医務室に怪我が無いか見てきたまえ。その時に出来上がっておる薬を届けてくれぬか」
「勿論です。僕が必ずを届けますよ」
素直ー!良いこー!そう思いながらカゴに薬を詰めてマルフォイに手渡す。落とすなよ???という呪いをかせるのは忘れない。
「すみませんマルフォイさん、お願いしますね」
「フン、構わない。そうだ、ジェフィフィーナに菓子をやる。店員に勧められて仕方なく買ったんだ。僕は甘いものを食べない」
そう言いながらコートのポケットからお菓子の箱を出して...ウン。先ほどマルフォイはどうやって此処まできたか。そう、転げ回ってきたんだろうね。高級そうなお菓子の箱は残念ながらひしゃげていた。いやいや、まあ当然だろうけど。
「...いや、これは店員の...」
「あらぁ」
「とにかく僕のせいじゃ...」
「スネイプ教授に伝えたくて急いでましたから何処かでぶつけてしまっても仕方ありませんよ。お怪我はないですか?」
「あ、あぁ。何処かでぶつけてしまったらしいな。怪我はない」
「そうですか。でも、せっかくですから頂いてもいいですか?」
マルフォイはチラチラつぶれた箱を見てから私に渋々渡してくれた。中身は無事だろう多分。スネイプ教授と一緒に部屋を出て行く二人を手を振って見送る。スネイプ教授もポッターを捕まえてすぐには帰ってこないだろう。映画ではこんなシーンなかった気がするし、捕まえて説教もなかった。原作では捕まえて、ルーピン先生を呼ぶ、ルーピン先生助け船。だった気がするが。
箱のリボンを解いて箱を開けると、中身はチョコレートとクッキーらしい。チョコレートはひとつひとつ丁寧に入れられていて、いくつか割れているが大丈夫そうだ。クッキーもラングドシャみたいなのをくるくると巻いたものはバキバキだが、他の絞りで作ったものや型抜きしたものはそこまで被害がない。
美味しくいただこう。そう思いながら、ラッピングをし直してお茶や食事をする時に使うテーブルに置いておく。私はのんびりと調合の片付けや足りなくなった材料の発注用紙を先ほどのチェックしたのと本当にあっているのか確認作業をすることにした。
のんびりと言うが出来が遅いと怒られるのでさっさとやっていると、あっという間に終わってしまう。ついでに発注票はフクロウ小屋に行って出してこようとスネイプ教授のディスクにメモを残した。
スネイプ教授の研究室を出ても、まだ帰ってきた様子はない。発注票を手にスキニーとセーター姿で出発だ。寒い。
ホグワーツの冬はマジで舐めてはいけなかったらしい。隙間風というかもはや石畳みの引かれた吹き抜け。ビュービュー風が耳元で鳴るのを聴きながら早足でフクロウ小屋へ向かう。
ホグズミードから帰ってきた生徒達に混じり込みながら、外廊下の方へ行こうとした時だった。
「おい」
私の肩を掴んで引き留める。誰かと警戒して振り返ると汚れたコート。男の野太めの声が私の頭上でした。おや?と顔を上げるとそこにはコートの至る所を白くしたポッチャリ二人。
あー、なんだっけ。ほら、マルフォイの取り巻きの...グラップとゴイル?クラッブ?あれれ?寒いから早くしろと言わんばかりに手を擦り合わせながら見上げると、二人は困ったように眉を下げていた。
「あーその」
「なぁ」
「なんです?」
「ドラコ」
「どっかいっちゃって」
「俺たち足遅くて...」
細々と双子のように交互に言い訳しながら言うので、なんか一周回って良いなと思いながら杖を振って服の汚れを落としてあげる。
「マルフォイさんならスネイプ教授に頼まれて薬を届けに医務室に行かれましたよ」
「あ...あり、がと」
「ありがとう」
「いえ。少し前のことなのでもしかしたらもう寮に向かっているかもしれません」
私の言葉に二人は頷き合って背を向けて走り出そうとしてからピタッと止まった。そしてもう一度振り向くのだ。
「なにか?」
「その、また風邪でホグズミードに行かなかった?」
「え?」
「体調悪いなら薄着は良くないぞ」
そう言いながら二人はコートのポケットに手を突っ込み始めた。そしてガサゴソと漁り出すのだ。
「俺のやる」
「俺のも」
クリームパンのような手が握りしめられた状態でポケットから出てくる。私は何かと思いながら両手の掌をくっつけて差し出した。そして二人分の手からバラバラと個包装のお菓子が出てくる。ついでにセロファンのゴミも。
二人はお菓子のゴミを私の手のひらから拾いながらコレは美味いだのコレは微妙だの言っていた。
そしてあらかた拾い終えると特に何も言わないまま背を向けて去って行くのだ。マルフォイを探さなきゃと小走りに去っていった。
「...うーん?」
なんか優しいなオイ。まあ良いやとポケットにお菓子を入れてから、私はまたフクロウ小屋を目指すのだ。少し遠いフクロウ小屋の入り口まできた頃には、私の手は真っ赤になっていた。体温管理の魔法は長期で使うの難しすぎるのですはい。
近場にいたフクロウにお願いして発注票を括り付けていると、誰かが歩いてくる足音が聞こえてきた。今度は誰だいと思いながら目立たないように下を向くと、男の声と共にドスンとモノが落ちるような音がした。
「いっ...」
顔を上げると、ネビル・ロングボトムが半べそでお尻を摩っている姿だった。
「大丈夫ですか?」
涙目で頷くロングボトムはこけるときに握りしめてしまったらしい封筒を見てまた半べそをかいているので、コレがのちに真のグリフィンドール生かなんかになるのマジで不思議ー!と思いながら体についた雪を払ってあげる。
「あ、ありがとう」
「もう痛くないですか?」
「うん。え、あ...その」
何か言いづらそうに私を見下ろすのでなんです?という顔で首を傾げると、ロングボトムは着ていた厚手のカーディガンを脱ぎ始めた。
「ロングボトムさん?」
「顔真っ白だよ。僕のその、着て」
そう言いながら私の体にカーディガンを掛けてくれるので、はぁどうも?いやでも申し訳ないしと脱ごうとすると止められた。
「僕たくさん着てるからへっちゃらだよ。ばあちゃんが沢山着ろって教えてくれたんだ。あと、女の子は体を冷やしちゃダメって言ってた」
「...私、グリフィンドール生の嫌いなスリザリン生ですよ?」
「でも君は、僕のことを笑ったり馬鹿になんてしないよ。それに、前に魔法薬学で励ましてくれて、助けてくれたから」
助けた覚えない。なんだっけと首を傾げていてると、ロングボトムは慌てて追加で付け足すのだ。
「その、三年生の最初の頃。魔法薬学の縮み薬のとき。僕の薬失敗しちゃって、スネイプ教授がトレバーで実験させようとしたやつ」
「あ、そんなこともありましたね」
「その時、励ましてくれたしやり方も教えてくれたのに。僕お礼も言えてなくて、それに...そのあとスネイプ教授に居残りさせられて、僕...怒られたんじゃないかって」
またも半べそとロングボトムに、嫌々と首を振る。正直開心術を使われて喧嘩というか険悪になってしまったことの方が思い出深いので、その前のロングボトムのことなんてすっかり忘れていたのだ。
「...詳しい説明はグレンジャーさんがしてくれましたし、私はただ声をかけただけですよ」
「でも...スネイプ教授に怒られたよね?ごめんね、僕のせいで」
「...教授、怒ってませんでしたから大丈夫ですよ」
そう言いながら私はポケットに入っていたお菓子をロングボトムに差し出した。グラップゴイルの二人組がデロンデロンに溶かしちゃったりしてないと良いが、そんなことを思いながらロングボトムがべそへぞとお菓子を受け取るのを見届けた。
「ロングボトムさんは今日はどうしてフクロウ小屋へ?」
「あっ!僕ばあちゃんに手紙を送らなきゃなんだ。僕、ホグズミードに今日行けなくて...」
そうボソボソ言う話の中にはシリウス・ブラックが寮に侵入しました。一週間分の合言葉を持ってました。僕が落としました。ってことだった。あー、そんなことあったねぇと私は慰めの言葉を口にしておく。
そして私のことを待っていてくれたフクロウの足に確実に発注票をくくりつけるのだ。
「雪に気をつけて行ってくださいね」
「ホォー」
飛び立つフクロウに手を振り、見送ると同じようにロングボトムもフクロウを選んでいた。おばあさまに近況か反省でも送ってるのだろう。
私はそろそろ寮に戻ろうとカーディガンを脱いでロングボトムに返した。
「これ、ありがとうございました」
「うんん」
ロングボトムは私を手を振って見送ってくれるのだ。コレがのちに真のグリフィンドール生かぁ...そう思いながら私は長い外廊下を歩いた。よーし、怖いから教授の研究室に寄るのはやめておこう。なんて思いながら私はセーターに首を埋めた。
これでしばらくお休みさせてもらおうと思ってます。
次の更新は十二月の第一土曜日です。