身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第109話

 

それから短い休暇も特に興味もないクィディッチも終わり、グリフィンドール優勝に不機嫌なマルフォイを宥める程度で私はいつのまにか試験間近を迎えていた。

 

マルフォイはまたも寸前でスニッチを取られたせいで大分荒れていた。近くで勉強をしているとしつこいくらい文句を言うので、私も伝家の宝刀繰り返しの技法で話を聞いていたのだ。ちょっとコミュニケーションの勉強をしていた人ならわかるだろう。

 

「だからポッターはインチキを!!」

 

「ポッターさんがインチキをしていると思うんですね」

 

「あぁ!だから僕は弱くない...」

 

「そうですね、マルフォイさんは弱くないです」

 

って、繰り返すやつです。私はそんなことをやりながらマルフォイの話をくぐり抜けて試験勉強をしていた。

勉強する先は図書館の奥の奥の部屋。そこでトムから勉強を教わりながら試験対策をしていた。なんでトムを寮外でも実体化や霊体化を許すかと言うと、寮よりマシに限るからだ。

 

女子寮には男子入れず、というルールがある。なのに私の部屋にトムの名前が載ってしまえばポッターに知られた時に言い訳が困るだろう。トムの名前が中性的ならまだしも、オーソドックスな男性名だし。

 

「そこ違う」

 

「え?本当?どこ」

 

「そこのスペリング。それから年号が違う、二十三年ではなく二十五年」

 

その言葉に魔法史の中世魔女狩りの年号を開き直して確認する。本当だ、間違っている。あーとため息を吐きながら髪をかき上げて、赤いインクを開いて正解の書き直し。そういうば長かった髪の毛を切ってしまったんだったとかきあげるたびに思い出す。そんなにバッサリじゃ無い。太ももまで伸びてた邪魔な髪を肘というか二の腕ぐらいにしただけだ。特に理由はない。強いて言うなら脱狼薬の研究で失敗して毛先を燃やしただけ。教授にはもちろん怒られましたよえぇ。思い出したくないからここでサラッと言うけど。

 

「これだけ勉強すれば主席くらい取れるだろう?」

 

「今回勉強全然出来てないし...」

 

「自信がなさそうだね。どうしても自信がないなら僕が部屋中覗いて答案用紙を見てきてもいいよ?」

 

「そんなズルはしませーん」

 

「だろうね」

 

私はそんな軽い会話をしながらテストに向けて勉強をし続けた。

 

テストについてはあまり特筆することはないだろう。変身術は特に問題なくティーポットを陸亀にしたし、呪文学では元気の出る呪文をかけた。魔法薬学の混乱薬は満足する濃さの出来になったし、闇の魔術に対する防衛術もちゃんとチキチキレースみたいなのをこなした。魔法史も全て埋まっている。

めんどくさかったトレローニー先生の球を使って占うやつも少なくとも嘘はしっかり並べてきた。正直言うと何も見えなかった。モヤモヤきりだなぁ。ってくらいのレベルだった。やっぱり自分は占い学は向いてない。リアリストなのかも。なんて思いながらもだからと言っておにぎりを作ってる自分が見えたと言うのは馬鹿だと思う。部屋が暑すぎた。吐くかと思ったので仕方あるまい。

 

つまり、普通に試験を終えたというわけである。トムも試験中は口を出さなかったが終わってからも特に何も言わなかったのでよかったということだろう。

 

そう、つまり私にとっては試験など些細なことだ。重要案件なのはこの後の叫びの屋敷で行われる教授達の同窓会に同席することだった。さあ、おじさんたちの集いに参加するぞー。えいえいおー!と心の中で騒いだらトムに怒られた。そうよね。トムも試験で疲れたから引っ込むと黙ってしまったので、夕食まで試験中に不足した睡眠時間をお昼寝で養ってから食欲も無いのでのんびりと部屋にいることにした。タイミング的にはそろそろ同窓会スタートだと思うんだけれど。

 

そんなことを思っていると、教授の部屋に繋がる扉がノックされた。試験で免除されていた脱狼薬の調合再開もあるだろうしと思いながら扉へ向かう。

 

扉を開ければ、教授が着ていたローブをハンガーにかけていたところだった。

 

「脱狼薬の調合を再開しろ」

 

「はい教授」

 

「貴様の薬の採点結果によってはもう一度同じ薬を作らせてからでも構わなかったのだがな」

 

「ダメでした?」

 

「いや、薄鈍どもの中では一番マシだったがな」

 

「なら良かったです。流石に成績を落としたら教授に研究室から追い出されてしまいますから」

 

鼻を鳴らして当たり前だろうと言わんばかりの顔をして教授は私を見下ろした。ハイハイと私も髪を束ねて脱狼薬の準備をと思ったら既にテーブルに材料が並べられていた。教授が作ろうと思って我に帰って私に作らせようとしたとか?テスト終わりましたもんね。そう考えると授業や試験以外ではなんとなく久々に教授に会う気もする。

 

「試験の結果は」

 

「え?そうですね...占い学はえぇまあってところです」

 

「...二枚舌だろう貴様は」

 

「だから適当に言いましたよ。でも、おにぎりを作っている自分が見えたはちょっと失敗しました」

 

「...ライスボールは馬鹿極まりない」

 

「じゃあスネイプ教授が見えますきゅん!とかならよかったですか?」

 

「きゅ...?」

 

そうでした。伝わりませんでした。自分も試験で疲れているんだなと思って曖昧に返して無かったことにした。

 

「占い学は向き不向きがある。レディらしいレディほど向いている。グレンジャーやアルレシアは向いていないだろう」

 

「そうですね。グレンジャーさんは向いてなさそうでした。私と同じでしたね」

 

「ふむ」

 

教授は杖を振って何か黒いものを私に寄越した。布?マント?と思って畳まれた何かを確認するために広げた。

 

「これ...」

 

黒のローブ。そう、目の前の教授と同じデザインのものだった。えー!!そんな急にボーナス?ログインボーナス?転生特典???思わず緩む頬をローブを見るふりをして顔を隠す。

 

「そろそろ失敗すると怪我に繋がる薬を調合させる」

 

そう言って教授は鼻を鳴らしさっさと着ろと言わんばかりに自身のローブをシワを伸ばすように胸元を引っ張った。

 

「はい!ありがとうございます教授」

 

「貴様が間抜けな失敗でもすれば即刻、おできの薬から再スタートですがな」

 

「大事なチャンスですから...必ず一回一回集中をしていい経験にします」

 

私はにっこり笑って脱狼薬に取り掛かる。なぜ材料を準備してくれたのかは聞かなくてもいいだろう。というか面倒くさいし。しかし、なんとなく薬を調合するのも料理みたいで悪く無い。そろそろ将来を考えるならこういう道も...いや、給料がな、なんて最近はお金のことばかり頭をよぎるのは精神的に大人になって来たからだろうか。

 

「今年の夏はどうするつもりだ」

 

「夏?どうって...何がですか?」

 

「漏れ鍋で過ごすのか」

 

「そうですね。帰る家もありませんし、かと言って帰る家を作るのも家賃とか考えたら無意味ですし。スネイプ教授がバイトとして雇ってくれればありがたいですね」

 

少し笑いながら言うと、教授は採点しようと思っていたのか解答用紙の束を手に鼻で笑い返して来た。そして生意気な奴と言わんばかりに私の方に近づき頭を軽く叩く。

 

「何ですか。急に叩くなんて虐待?えーと、なんでしたっけ学生とかにやるのって」

 

ど忘れしちゃったなと頭を悩ませながらもどんどん脱狼薬を進めていく。教授はその間も少し考えるように鼻を鳴らしながらも私の調合をぼんやりと見つめていた。

 

「...教授?」

 

らしく無い姿に区切りのついたところで手を止めて声をかけると、教授は私のことを見下ろした。そして静かに私の髪に触れるのだ。

 

「切ったのか」

 

「え?あ...髪ですか」

 

「それともまた間抜けな虐めでもあったのかね。貴様のような人間が今更揉めるとは。鍋の火で燃やすだけに飽き足らず。スリザリン生とは思えぬな」

 

「いやいや、自分で切ったんです。切られた訳じゃないですって。それに、毛先が燃えたのは纏めていたのが解けちゃったのが原因だったんですって」

 

そう言いながら纏めてたヘアゴムを取って下ろして見せる。トムが切ってくれたから毛先も揃っているし大丈夫だと思うのだが。それに縛っていれば今までと何ら変わらないし。私の髪の毛をかきあげるように大きな手で触れると、髪を撫でた手は首筋をなぞってから離れた。憂いを帯びた目は確かに私の髪を捉えている。スネイプ教授はどうしたのだろうか。

 

「長い方が好きでした?」

 

「黙れ、スリザリン五点減点」

 

「スネイプ教授!それはちょっと酷いですよ」

 

「我輩は願掛けでもしてるのかと思ったのでな」

 

「あぁ、あれだけ伸ばしてたのはただ単に切るお金が無かったんです。これを機に、切った髪を売ろうかなって」

 

「...」

 

うわって顔をして教授は逃げていった。背を向けてしれっと採点をし始めたのだ。まったく、でも太ももまで伸びた髪を切るのはちょっとだけ勇気が必要だった。

 

「私も本当は長い方が好きだったんですよ」

 

「なぜ切ったのだ」

 

「うーん。難しいですね」

 

脱狼薬の調合を再開させながら私は首を捻った。何でって言われても難しい。何となく、そろそろスーパーロングも終わりかなって思っただけだ。

 

「何となくです」

 

「若者は失恋すると髪を切るんじゃないのかね」

 

「おじさんみたいな発言しますね」

 

「スリザリン10点げん...」

 

「スリザリンを最下位にしたいんですか。酷いですよ。でも本当に失恋したら髪を切るなんて、実際あるんですか?髪は女の命なんです」

 

「ますますわからぬ。命を易々と切るとは」

 

今日は饒舌だね教授と言ったらもう1発叩かれるそうだからやめておこう。どうしてそんなに髪に拘るのだろうか。

 

「失恋する相手がいないじゃないですか。恋人がいるわけでもないですし」

 

「...フンッ」

 

何でそこで鼻で笑うかな。そんなことを思いながらも脱狼薬を仕上げ、あとは煮るだけにしておいた。ここまですればいいだろう。でもどうせ、この薬はルーピン先生の口には入らないんだから無意味よね。だって今日は、おじさんたちの同窓会の日だし。

 

「...それに、私なんかと付き合ってくれるような物好きはなかなかいないんです。友達も居ないですし」

 

教授はその言葉を無視するように顔を上げなかった。教授も独身で、リリー、ハリーポッターの母親を愛し続けた。同じ独り身なのに、教授の方がずっとずっと誇り高い。羨ましい、私のように言い訳だってしない。

 

私も黙って脱狼薬を完成させると何も言わずに部屋に戻った。何となく、重苦しい気分になってしまったのできっと研究室に、スネイプ教授のそばにいたくなくなったんだと思う。

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