身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第110話

疲れてしまったからか、私はヘロヘロな気持ちで自分の部屋に戻るとシャワーを浴びた。熱い湯は嫌い、あったかいくらいのお湯でシャワーを浴びて魔法で髪を乾かす。晩御飯を食べたら教授とそれとなく同窓会に連れてってもらおうか。いやでも、何だか気まずくなってしまった。

 

「はぁ」

 

まったくもう、なんて思いながら適当な服に着替えていると不意に部屋をノックする音がした。コンコンと軽いノックと共に聞こえてくる声は聞き覚えのあるキーキー声だ。

 

「ジェフィフィーナ。いるかしら」

 

パーキンソンの声に間違いない。わざわざなんだろうと思いながら扉を開けると、いるとは思わなかったと言わんばかりの表情でこちらを見ていた。

 

「どうかされました?」

 

「いつの間に部屋にいたのよ。さっきも呼んだのよ。寝てた訳?」

 

「え、あーまぁ。試験で寝不足だったので」

 

「ふん、主席の自慢なんて結構よ。ノットが呼んでるわよ。あんた、私のこと2回も呼びに来させたこと忘れるんじゃないわよ」

 

「あら、そうでしたか。すみません。ご迷惑をおかけしました」

 

まあ確かにパシリにされた上に一回いなくて再度パシられるならブチギレても仕方ない。ノットは女子寮には入れない訳だし。

 

「談話室。とっとと行きなさいよ」

 

礼を言って談話室に降りると、暑くもなく涼しくもなく、いや少しひんやりとして過ごしやすい空調になった談話室でお喋りに勤しんだり試験について話す人たちがポツポツといた。

 

そんな中に、ノットはポツンとソファに座り考え込むようにぼんやりと窓から見える湖の景色を眺めていた。彼らしくない、脚を適度に開いた、よく言えば男らしく、彼に合うように言えばいささか疲れているのだろうと思える出立ちで。薄緑のような、青いような窓の外の景色は太陽の光が反射してか、大イカの泳ぐことで揺れキラキラと輝いてる。自分も思わず窓まで近づいて、湖を見つめてしまった。

 

「...外の景色の綺麗さを表現する言葉がなかなか見つかりませんね。水族館みたいで、眺めているのも悪くありませんね」

 

私の言葉に、ノットはゆっくりと視線を私の方に移した。菫色の瞳が少しだけ煌めくように見開かれ、そしてすぐにいつも通りに戻る。

 

「...君は、水族館が好きなのかい」

 

「え、まぁそうですね。好きです。ずっと見ているのは楽しいですし。本当は、ただ歩きながらお喋りをして、綺麗な景色を分かち合うのが好きなのかも。動物園とか美術館とか」

 

そんなことを言いながら、そういえば恋人と見て回ったりしたなとか。親友と遊園地に行ったのも楽しかったなとかいろんなことがふと脳裏をよぎった。

 

「でも私、何かをずっと見ているのが好きなのかもしれません。だって、セオドールさんの綺麗な瞳を見るのも結構好きですよ」

 

「...試験で頭がパーになったのかい。変なこと言って、別にいいけど。僕がわざわざここに呼んだのにいなかっただろう。どこに行ってたんだい?」

 

「ちょっと疲れて寝ていたんです」

 

「...本当に?」

 

「え?えぇ、ずっと寮にいましたよ?」

 

ノットは時計をチラリと見てからフーンと言わんばかりに足を組んだ。先ほどぼんやりと窓の向こうを見ていた人間とは全くの別人のようだった。

 

「何の用だったんですか?」

 

「...別に、試験の自己採点でもしようかと思っただけさ」

 

「大切なことですね」

 

「でも、アルレシアを待ってる間に大体の採点が頭の中で終わったよ」

 

「すみません、すっかり眠ってしまいました。私もあんまり自己採点とかするタイプでもなくて、そんなことすっかり忘れてましたし」

 

「別にいいけれどね。じゃあ、暇だしチェスか何かしようよ」

 

「チェス苦手なんですけれどいいですか?」

 

「暇つぶしぐらいにはなるからね。そこ、座りなよ」

 

向かいに座ると、杖を振ってチェス盤を呼び寄せノットが並べてくれた。よくやっているのだろうか。迷いなく、彼は淡々と準備をしてくれる。そして並べ終えると、ポケットからコインを取り出すのだ。

 

「僕が表、アルレシアは裏」

 

そう言って投げ、出て来たのは表。ノットは最初から決めていたようにポーンを動かした。私も少し考えてから手を伸ばした。

 

「試験が終わってから、アルレシアは外へ出た?」

 

「外?出てないですよ」

 

「そう。てっきり気分転換に外へ行ったと思って」

 

「いえ、そんな気分でもなくて」

 

私の言葉にノットはルークを横に動かしてから顔を上げた。菫色の瞳が不思議そうな、何でもないような感情を乗せているのがよくわかった。どうしてそんな事が気になるんだろう。私がどこで何してても気になんてしないと思うのに。

 

そう思いながらチェスをしていると、徐々に盤面の雲行きは怪しくなってくる。明らかにノットは格上だった。ただでさえ得意じゃないチェスなのだ。お貴族様のお得意だろうに。

 

「セオドールさんお強いですね。多分もう負けるんだろうなって思います」

 

「だろうね。明らかに初心者だし」

 

「あまりやったことないんですよねチェス」

 

「ルールしか知らないってこと?」

 

「まあ、ちょっとはしたことありますよ。でも、自分はするよりもやって喧嘩になったのを仲裁してたんです。小さい子ってすぐ喧嘩しますし」

 

「ふーん。まあ僕一人っ子だからわからないけどね。チェック」

 

「チェックってことはまだですもんね。えーと、うーん。ここに行くと取られるしここも取られるし、うーん。ここ?」

 

「チェックメイト」

 

はっきりとした口調で言われ、私はハァと負けを認めた。まあ、勝てる訳ない勝負だ。

 

「負けました。強いんですね」

 

私の言葉にノットは少しだけ年相応の笑いを見せた。そんなふうに笑えるんだ、そんなことを心の隅で思いながらあくびをする。そういえば寝たいと思いながら全然寝ていないじゃないか。

そんなことをおもっていると、チェス盤に影を作った人がいた。

 

「ノット、ジェフィフィーナ、チェスをしているのか」

 

「...マルフォイか」

 

「あら、マルフォイさんこんにちは。しっかり負けたところです」

 

「じゃあ次は僕がやろうか。僕がしっかりお手本を見せてあげようじゃないか」

 

鼻を鳴らしながら隣に座ってくるので仕方なく端に寄ってあげる。石鹸のような、香水にしてはやや薄い匂いがふんわりと香って来て、おしゃれな香り、さすがお貴族様と心の中で拍手する。

 

「仕方ないね。アルレシアじゃ勝負にならないし」

 

そう言いながらさっさとチェスの準備して、マルフォイ達は戦い始めた。お互い真剣な表情で戦うのでパーキンソン含めた女子グループが観戦に来たのでうるせーと席を立ちたかったがマルフォイがちょこちょこ話しかけてくるのでそうにもいかない。

 

「ジェフィフィーナ、僕がここに置いたのが何故か後で考えさせてやろう。僕だって伊達に父上とチェスをしていないからね」

 

「はぁ...うーん」

 

マルフォイの言葉に何とか相槌を打つが、正直に言うと眠くなってしまった。しかし、2人は頑張って戦っている。貴族の余裕を持ち、ポーカーフェイスを保ちながらも真剣に考えている。なんか邪魔してはいけないしと頑張って目を開けるが、徐々に眠くなってしまい。私はチェスを観戦する姿勢で目を閉じた。

 

そもそも、試験明けに頭を使うのが無理な話だ。夕食までまだ時間があるんだからいいじゃないか。

 

ウトウトしてはパーキンソンの金切り声で目が覚めるを繰り返しながら、私は徐々に白熱する試合とは全く真逆に重い瞼を持ち上げられないままソファに寄りかかって目を閉じた。

 

 

 

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