身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!! 作:あるれしあちゃん
気がつくと私はベットに寝かされていた。
マルフォイがどこかをぼうっと見つめていて、その瞳がやけに印象的だった。ブルーグレイの瞳には、何が映っているのかここからはわからない。でも、その顔にいつもの意地悪な感じはどこにもなかった。どこにでもいる、少し顔の良い男の子、そんな顔だったのだ。
「ありがとうございました」
私がゆっくりと起き上がるとマルフォイは気づいて瞳に光を宿した。
私の方に向き直り、なんでもないようにいつもの表情に戻るのだ。
「いやいい、マダムポンフリーが言うには何か刺激物にやられた事と脳が揺れたことによる吐き気、あとはその刺激物に痺れ薬が混じってたんじゃないか、らしい」
「そうですか.......、クソ爆弾とやらはすごいのですね」
「やったのは誰だ」
「.......グリフィンドールの双子でした。何方かはわかりませんが同じ声、同じ顔でしたので」
「ウィーズリーの双子か。
そういえばお前はなぜローブを着ていないんだ」
「まぁ.......なんといいますか。貴方のを使うのは恐れ多いですし。私のは教授が持っていますし.......」
「勤勉なお前が風邪を引いたらどうするんだ、僕にはスペアのローブがある。構わず着ろ。マフラーも使え」
「.......ありがとうございます」
私は気まずく思いながら頷いた。そして、頭を少し動かし、もう吐き気もないことに安堵した。
「1つ聞いてもいいですか、何故私にここまでかまうのです?
貴方にメリットどころか、私のような穢れた血に構うことでデメリットさえ生まれるのに」
私の問いに、マルフォイは言葉に詰まったように黙った。視線をうろうろとさせ、私から完全に視線を離す。
そして、下をむいて小さな小さな声で言うのだ。
「スネイプ先生から、父上伝いに聞いた」
「.........孤児院出ていると?それとも職員にいじめられて学校にさえ行けなかったことですか?...それとも」
私はなにかリミッターが外れたのか、マルフォイが何処まで知っているのかを知りたくなりまるで摑みかかるようにマルフォイに聞いてしまった。
「.................売られたと........娼婦にされそうになったと....聞いている」
マルフォイは心底言いづらそうに私に目線を合わせずにボソリと呟く。私は途端に、ため息が溢れた。頭を抱えて、体をシーツの中で丸めた。
「....うっ.......11歳の子供に言っていいことではないし...なにを考えているの.......スネイプ教授は.....。貴方もそんなことを知る必要はない..........違うわね。知って欲しく無かった。
私が穢れてる、血、それだけじゃない。
私自身が穢れそうになったことなんて...そんなの、あなたはさぞ軽蔑するでしょう。
ごめんね、マルフォイさん。
私は貴方に今から八つ当たりしてしまう......」
「構わない、僕がしつこく聞き出したことが原因だ。なによりも僕がホグワーツでは原因を作った」
「私はこんなところに居たくなかった。
親友とこれからもどっちかに彼氏ができても婚約しても結婚してもおばあちゃんになっても一緒に笑い合いたいって約束してたのに......。
11歳と一緒に勉強だなんて.......私は11歳なんかじゃない........。
優しくもない、ただ、いい人でいたかっただけ!孤児院でも下の子の代わりになれればよかった。
何か必要があれば言えだなんて、何を買っていいかも言わないのに。
私にお金さえ渡してくれないのに........私だって休日も普通に食事くらい取りたい、娼婦の時のワンピースを休日着て、その服じゃ談話室にも出られなくて。そんな惨い事を....思い出させないで...自分が娼婦にさせられそうになったことをただ思い起こすだけ。
学校に通わせてもらってるだけありがたい、無い物ねだりだってわかってる!だけど。
ほかに服もなくて、櫛さえもなくて、ハンカチも持ってない、タイツも、マフラーも、コートも。
持ってるのは下の子がくれたヘアゴム1つで...
スネイプ教授は殺風景な部屋だなんて言わないで、私が一番思ってる!
ノースリーブのネグリジェでこの時期寝ろなんて、寒くて寒くて。このまま冬が来るのが怖くてしょうがない。
最低限の学用品あれば十分なのかもしれない。でも、私は他の人みたいに親も親戚もいない、だからなくなって困っても頼れない。
今度は13だか14だか知らない年下の上級生に馬鹿にされてクソ爆弾投げつけられて、それが悪戯。悪戯だなんて思わない。おかしいよ、それはただのいじめ。
嫌だ.......助けてよ.......」
「ジェフィフィーナ........」
私はマルフォイに対して酷い事をしてしまった。あぁ.......最低だ。
こんな4つも年下の子供に......。
私はマルフォイに縋った。きっと私は今この世界で一番最低な人間だろうに。
「どうして...」
涙が溢れた。溢れて溢れて止まらなくて私は嗚咽を必死に止めようとしてまた新たな涙をこぼした。
「...じぇ..ジェフィフィーナ」
「ごっ...っ...ごめんね.....ま、るほい........くん.....ひっぐ.....っぐ........ぁぁ.....ご、め....んなさい」
マルフォイの胸元を握りしめたまま私は溢れる涙を止める事を諦めて枯れるまで泣き続けた。
マルフォイが私の背中をさすってくれたこと。
ハンカチで涙を拭いてくれたこと。
泣き止むまで名前を呼び続けてくれたこともきっとこの先忘れることはない。
「ジェフィフィーナ、ジェフィフィーナ...僕が悪かった。僕が...君の人生を奪った...だから」
そんな後悔が、11歳、12歳の子供の胸の内にあったなんて。かわいそうだった。こんな小さな子供が、こんな後悔を背負うなんて...そんなのって。