身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!! 作:あるれしあちゃん
「アルレシアさん、2ヶ月間ありがとう。少ないが、バイト代だよ」
そう言って亭主のトムさんが私に麻袋を渡してくれた。重さは決して軽くない、くらいだろうか。
「ありがとうございます。2ヶ月間ほんとうにお世話になりました。来年も、もしトムさんの元でお世話になるときはよろしくお願いします」
「もちろん、待っているよ。アルレシアさん」
トムさんとしっかりと握手をすると、私はトランクを握りしめた。後ろにいるのは、何故かスネイプ教授ではない。
「感動のお別れシーンですね〜!」
ライラック色の眩しい男が私の後ろで白い歯を見せて笑っているだろうことを想像するとため息がでそうだ。
「では、失礼します」
ギルデロイ・ロックハート。それが、この教授の名だ。顔はイケメンなのかもしれないが、老け専であるような無いような私としてはこういう砂糖まぶしたような顔より、塩顔が好み。
「では、行きましょう!お嬢さん、光栄に思ってくださいね!私の腕に掴まれるなんて、ほかの魔女が嫉妬してしまいます」
チャーミングなんとか賞が5回連続だったことがあるらしい彼の笑顔はいいのかもしれないけれど、バラけさせないでね、私の体を。
「ロックハート先生、失礼します」
出された腕を軽く掴むと、そのままパチンと音がなって、私の体は内臓を引っ張られた。
地面に足がついた感じがして目を開けると、久々にみるメンツ達だった。
スネイプ教授とダンブルドアだ。
「ロックハート先生、ありがとうございました。
スネイプ教授、ダンブルドア校長先生、お久しぶりです」
「アルレシア、久しぶりじゃ。セブルスから満月草の話は聞いたわい。わしからも、スプラウト先生に話しておこう」
「ありがとうございます。スネイプ教授が実験に協力してくださったおかげです」
「満月草ですか、私は満月草など目を瞑ってだって摘めますよ」
後ろから聞こえてくるその言葉に、正面にいるスネイプ教授は【○ね!××野郎!】って顔してる。魔法薬学と薬草学は切っても切れない縁がある、それを馬鹿にされてはこうなりたくもなるだろう。
「ギルデロイ、アルレシアと話をしたいのじゃ、少々席を外してもらっても良いかね?」
「勿論ですよダンブルドア校長!」
そう言ってマントを翻して校長室から出て行った。嵐のような男ですね。
「ジェフィフィーナ、ギルデロイには関わるな」
スネイプ教授が真面目な顔で私に言った。それを止めないダンブルドアも同意見なんだろうか。2人の瞳に映る自分から、意見を読みとることは出来ないと語っている。
何かしらあったことは間違いなく、ですかね。
「アルレシア、わしはギルデロイを闇の魔術に対する防衛術担当に指名した。しかしじゃ、今年限りじゃよ」
解っていて、任命する意味がわからない。そう思ってしまうのは、生きている期間が違うからだろうか。
私は取り繕った笑みを浮かべながら、持ってきたトランクをそっと離した。
「理由はわかりませんが、わかりました。ロックハート先生に目をつけられぬように気をつけます」
「可能な限り、そうしてもらいたいものですな」
鼻で笑ったスネイプ教授は杖を振って私のトランクを浮かせてくれた。どうやら部屋まで運んでくれるようだ。部屋まで行ったら、是非とも勉強した呪文を練習したいものだ。
「あ、ダンブルドア校長先生、これトムさんからいただいた....」
そう言って麻袋をそのままダンブルドアに差し出した。親にバイト代を渡す、みたいな感じだけど必要かなぁと思って。
「給金じゃな、そのまま貰うのじゃ。そのお金は君の2ヶ月間の仕事に対する対価じゃ」
だから、受け取れない。その言葉を口の中で噛み砕いたのかダンブルドアはそれ以上何も言わなかった。
「ジェフィフィーナ、行くぞ」
そう言ってスネイプ教授が歩き出した。私もダンブルドアに会釈して後ろをついて歩く。このお金で何を買いたいか、決まってはいないが有意義に使おう。
「スネイプ教授、満月草ですが、スネイプ教授の名前で出していただいてもいいでしょうか」
「何故だ」
「私が無名だからです。スネイプ教授がお出しになった方が多くの目に留まりますし」
それに、盗作される事などない。ロックハートの顔を思い浮かべながらその言葉を口の中で転がした。
「.........考えておこう」
2人で地下牢の方に向かうと、夏の割にもいつも涼しいお陰で汗が引いていく。スネイプ教授は相変わらずの黒のローブ姿だけど、きっと体に体温調節魔法をかけているか何かなんだろう。今年は自分の魔力量を測ってやってみようかな。その方が服も少なくて済むし。
コツコツと鳴り響く廊下。やっと、教授の私室に着くとゆっくりと中に入った。特に代わり映えしない部屋に何も思わないが、些かものが減ったというか整理したのだろう。
教授はトランクを私の部屋に放り込むと、そのまま扉を閉めた。私を部屋に戻してくれないんだろうか。
「ジェフィフィーナ、我輩は貴様にいくつか言わねばならんことがある」
「何でしょうか...」
言いたくなさそうな顔するのやめて欲しい。聞きたくなくなるから。スネイプ教授は私をソファの向かいに進めて座らせると紅茶を出してくれた。
アイスティーだったのが嬉しい。熱々じゃ最悪だった。私は礼を述べると、出されたガムシロップを入れた。
「まず、ロックハートについてだ」
「そんなに警戒なさる方なんですね」
「......ロックハートは一応、ホグワーツの教員だ。その為、何度か開かれる教員会議で問題児の扱いなどについて耳に入れる」
「........私も問題児といえば、問題児ですかね」
「問題児とまでは言わんが、一応は出身のことが表沙汰にならんように我輩たちはする.........スリザリンで異端者扱いされてることについても解決策を見出そうとしている」
「それは問題無いですよ。私も気にしてませんし」
「見ていればわかる、だいたいその髪も切られたんだろう。我輩にはわかる」
そう言われて自分の髪を撫で付けた。やっと少し伸びた髪は耳を全部隠してくれる長さになった。
スネイプ教授、髪の毛までやられたんだろうか。
「我輩達はジェフィフィーナを真剣に考えている。貴様が馬鹿の一味だったらこうはなっていなかったがな」
教授はえこひいきしまくってるけど、こういう点では平等で嬉しい。ありがたいけど、スネイプ教授よく喋るなぁ。
「先生方......有り難い限りです」
「ただ、1人除いてだがな」
誰だわかるよ!はい!はい!ロックハートでしょそれ。
「ロックハートは貴様を悲劇ぶってるヒロインだとほざいたのだ。自分の授業でその感覚を直すとな」
「悲劇ですかね?そんなに」
「我輩には何とも言えん。ロックハートはミネルバに絞られたが、反省しておらん。気をつけろ」
「お気遣いありがとうございます。気をつけます」
紅茶を飲むと、適度な甘みが喉を通っていった。ロックハートにはこれから面白くしてもらいたいなぁ。
「以上だ、新学期までしっかりと休みなさい」
「はい、失礼します」
紅茶はパッと消えて無くなり、私はスネイプ教授の私室から自分の部屋に移った。いくつか、といったのに1つしか無かった。
「フラグなのか......」
ベッドに倒れこむと、ゴロゴロしながらネクタイを緩めつつスカートのフックを外した。スネイプ教授の言葉の意図を探し出そうと頭をひねるが、1つしか無いことしかわからない。一体、教授は何が言いたかったんだろうか。
それがわからないまま、私は疲れからなのかそっと目を閉じた。