身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第74話

クィディッチの熱い熱い土曜日。まぁ、この鉛色の空じゃ快晴とはとてもいい難く、今回のはポッターくん骨抜き事件の会な訳だが。でもクィディッチの試合がマジ秒で終わる為観に行くつもりはない。めんどくさいし。そして、土曜日の朝っぱらから頼まれごとをしているため、私は地下牢教室の方にいた。

 

私はスネイプ教授に頼まれた器具の片付けを始めようと肌寒いのを我慢してローブをばさりと脱ぎ捨て椅子に引っ掛けると、ワイシャツの袖を捲った。うまく捲れないとずり落ちるので、しっくり来るまで何度かまくってからシンクに水を貯める。使用した三角フラスコを丁寧に水の中に落とした。

 

「へくっし...」

 

あまりの寒さにくしゃみが飛び出しながらも、一応寮監で一言話に行った教授を一人待ちながらフラスコに水をどんどん入れる。ボコッとフラスコの空気が抜ける音がしながら一通り水が入ったような感じがするので水を止める。

よしっと、洗剤を棚から取り出した。少し埃っぽいのか鼻がムズムズしてまた小さなくしゃみが出るのを肘で抑えるがしっかり飛ばしてしまった。

 

「風邪をうつすな」

 

「うわっ...。す、すみません、何だか数日前から風邪っぽくて」

 

くしゃみの直後に教授が戻ってきたようで驚いて洗剤をぶん投げてしまうところだった。

 

「お帰りなさい、教授」

 

洗剤をブラシに掛けて泡立てるとフラスコの中をゴシゴシと洗う。教授は何も言わずに杖を振ってどこからか束にされた土の塊を連れてきた。

洗ったフラスコを隣のシンクに丁寧に置いて寒いぞと気持ちだけ送る私に対し、教授は今日使用したペリフィラフォードで無くなってしまった分の在庫追加の為に、根を洗っていた。ペリフィラフォードは主に皮膚再生に用いられる薬草で、紫色のスミレのような花が咲くのが特徴だ。ま、見たことはないが。

 

「ホグワーツでも風邪が流行る時期だ。我輩は早めに医務室に行くことをおすすめしますぞ」

 

「お気遣いありがとうございます。これ以上体調が悪くなるようでしたら...検討いたします」

 

さっとフラスコの中に水を入れて流すと脇のカゴに逆さに立てかける。

教授も洗った根を丁寧に切り揃えていた。ハンカチで手を拭いて私も根を切り揃えるのを手伝う。

 

「教授、ペリフィラフォードの根は皮膚再生に使用されますが、花はどうなんでしょう?」

 

「観賞用に近い。花に養分が吸い取られるせいで根の効力は今ひとつになるのが難点だ」

 

「すみれ色の花でしたよね?」

 

「まだ見たことがないのか」

 

「はい、ペリフィラフォードの花は薬としてはあまり使わないですし...」

 

「禁じられた森に行けばその辺に生えているがな」

 

「...え、そうなんですか?」

 

「薬に使うなら取ってきた方がいいが、観賞用なら魔法で出した方が早い」

 

まぁそうかとロープのポケットから杖を取り出すとぽっと振った。想像力がないのか出てこない。

 

「...何故でしょう。オーキデヴス」

 

もう一度振っても杖はうんともすんとも言わなかった。可笑しいなぁ。

ここに来て魔法が使えないとかありかね。疲れているかな?なんて思いながら首を傾げる。

 

「何を遊んでいるのかね」

 

何度かブンブン振ってようやく三本出てきた。おおとキャッチしてフラスコに差し込むとすみれ色の花がいささか元気なさげに首を傾げていた。

 

「情けない。スリザリンの生徒ともあろう者が...」

 

「すみません...」

 

教授は呆れたように溜息を吐くと最後のひと束であるペリフィラフォードの根を切って鍋に入れた。

 

「煮詰める時間は三十分だ。アトピーによく効く。主に幼児用に用いられることが多い」

 

「ペリフィラフォードは使いやすいといえば使いやすいですよね。ただ、失敗すると爛れるそうですが」

 

「貴様は時々妙なところで失敗するようですがな。我輩は理解に苦しむ」

 

教授が杖を振って自室のテーブルに紅茶を出してくれた。鍋はしばらく煮込まなければならないので小休憩ということだろう。ソファに向かい合って座ると、角砂糖を二つ、ミルクをひと回しして飲むとゆっくりとため息を吐いた。

 

「指が冷えで痛いです」

 

「体温調節を魔法ですればよかろう」

 

「そんな高度なことできません」

 

「練習をしたまえ」

 

「いつか頑張ります。あ、お菓子を昨日作ったんですがいかがですか?」

 

「お菓子を作る暇があるなら、勉強していただきたいものですがな」

 

「栄養満点のキャロットパウンドです」

 

カバンから切り分けられたパウンドケーキを出してさりけなくぱっと魔法で出しておいてくれたお皿の上に並べる。教授、食べる気満々じゃん。よしよし。

 

人参を摩り下ろして作ったケーキは割と美味しい。少なくとも、私は大好物だ。煮込んでいる根の火力を調整した教授が向かいに座ると二人でケーキを突いた。

 

よしも悪しも言わずに二口ほどで食べてしまった教授は不機嫌そうな顔で紅茶を煽った。どうやら美味しくなかったらしい。そんな事を思っていると二つ目に手を出して食べていた。 気に入らないなら手を出さないという人なのに、この短時間なら気に入ったらしい。

 

「朝食まだでした?」

 

「いや、食べた」

 

本当に気に入ったらしい。ホクホクとした気持ちで残りもカバンから取り出してテーブルの上に置いておく。

 

「少し多めに作ったので軽食にどうぞ」

 

二切れにしてある小さい方の袋を手渡すと教授は杖を振って何か魔法をかけるとディスクにケーキを飛ばした。そのまま引き出しの中へと入っていくのだ。先程のは腐り防止魔法だろう。

 

ゆっくりと紅茶を飲み終えると、私はいささか熱っぽい気がするようでしないので早めに寝ることを心のメモに書き留めた。風邪は引き初めが肝心だ。

 

フラスコの水気を切って拭くと元の棚に端から片付けた。百個近くあるのもどんどんやっていけばすぐに終わるもので。綺麗に片付けた事に満足してローブを着直す。

 

「では、教授も風邪には気をつけてくださいね。また何かあれば呼んでください」

 

レポートの採点を始めた教授は私をちらっと見てから、またレポートに目線を戻した。教授の自室から、自分の自室へ移動するともう予定は終了したので私服姿に着替えた。

 

少し薄めのハイネックとスカート、そして軽い羽織ものをしてから図書館にでもいこうと肩掛けカバンを持つと談話室へ降り立った。いつもよりも静かというか沈んだのを見るとどうやら少し前に試合が終わってダラけてるらしかった。

 

みんな濡れた体が嫌なのかバタバタと沈んだ空気で歩き回っているのをスルーして寮を出ると図書館がある方に歩き出した。

 

しばらく何気なしに歩いていると泥が跳ねたように汚れた廊下があってすぐそばの空き教室の扉が開いていた。誰かそこで休んでるのだろうか。ガタンとなにかが倒れる音が中から聞こえて心配で覗くと、マルフォイだった。今日は凶日でしたかね。

 

泥んこで輝くグリーンのユニホームも色あせていた。それ以上に、座り込んで俯くマルフォイは小さく肩を揺らしながら俯いているのだ。

 

「マルフォイさん」

 

私が静かに呼ぶとビクッと体を揺らして私を見た。青白い顔、青紫色の唇だった。低体温症か、このままでは風邪をひくし、もうすでにあまり良くないのだろう。

 

「...ジェフィフィーナか」

 

私が何も言わずに近づいて隣に座り込んでも、マルフォイは何も言わなかった。それどころか特に離れるわけでも身をよじるわけでもなく、ただそのままに居た。

 

「寒いですよね...少し待ってください」

 

私は杖を振ってユニホームの泥はねを綺麗にすると今度は服を乾かそうと杖を振った。しかし、中々乾かないのだ。自分の髪の毛だっていつもちゃんとできているのに。

 

「...すみません、なんだかうまく魔法が使えなくて」

 

何故か一向に乾かない。諦めて着ていた羽織りものをマルフォイの体に掛けた。気休めだろうけど、無いよりはマシだろう。

 

「もう少しこの教室に居ますか?私でよければお話を聞きますし」

 

その言葉にマルフォイは頷くのだ。しおらしい態度に、私は今度こそとマルフォイが肩にかけていたタオルを手に取って杖を振った。温タオルは特に苦労せずに疲れたので、そのタオルで顔を拭いてあげる。ドロドロだから顔だけでも綺麗にした方が気持ちもいいだろう。

 

「...父上が最高級の箒で勝てないのは努力不足だと」

 

そう言って落ち込むマルフォイの頭を撫でる。ルシフォイ酷い〜。原作ではその事について語られてはいなかったけど、わざわざ試合を見にきたということはそれだけ息子に期待していたのだろう。そして、クィディッチでシーカーになりたいというどらフォイの願いを叶えるために高いお金で箒をチーム分揃えた。

 

普通に考えれば親バカのルシフォイかと思ってしまうけど、マルフォイ家の長男が、みたいなやつなんだろうか。いや、最終決戦を考えれば親バカなだけか。

マルフォイの顔を拭き終えて、今度は冷え切った手を取って温め直したタオルで包む。

 

「努力なんて、マルフォイさんは努力を沢山したじゃないですか」

 

「マーカス・フリントもチームメイト達もスリザリンが負けたのは僕のせいだと僕に直接言わずに陰で言う。負けたのは僕のせいだ」

 

「シーカーはたしかに、試合を終わらせられる権限を持っています。しかし、取られても負けないほどの点を取れなかったのは彼らでしょう?」

 

私は冷たい体をして震えるマルフォイを抱きしめた。珍しくいい子に私の肩に顔を埋めて泣くのを横目に背中を撫で付けるのだ。まだまだ小さな子供。中学生に上がるかどうかの子供なのだ。悲しくて仕方ないのだろう。

 

「マルフォイさん、よくがんばりましたね」

 

声を殺して泣くマルフォイが泣き止むまでずっと抱きしめ続けた。

冷たい体を抱きしめて行くとだんだん自分も体が冷えて行くのを感じて、あぁ風邪が悪化するだろうかと間抜けな考えが浮かんだ。

 

泣くと体があったまるのかだんだん暖かくなってくるマルフォイに安心しつつも冷たいユニホームで心も体もひえっひえの三十六歳は風邪を引きそう。

 

十分程度経った頃にゆっくりとマルフォイは私から離れた。腫れた目をしていて、いつもより目がちっちゃく見えるのがツボだ。

 

「父上は、マグル生まれなど穢れた血という。僕もそれは否定しない。マルフォイ家の長男として伝統を重んじるべきだと思う」

 

「そうですね。ルシウスさんを家族として、考えを理解することはとても大切です。そして、家を守ることもとても重要でしょう。しかし、あなたはドラコという一人の人間です。だから、あなた自身の考えを持つことも忘れないでくださいね」

 

「ジェフィフィーナは不安じゃないのか、その、秘密の部屋が開かれて」

 

「そうですね、全く怖く無いと言ったら嘘になるんですよ。しかし、死期は誰にも平等に訪れる。それが今日なのか、はたまた十年後か二十年後か、それは誰もわからないのですよ」

 

「もっと怖がれば、周りも同情するんだぞ」

 

「怖がってます。でも...私が死んでも悲しんでくれる人なんて誰も居ませんから」

 

私の言葉に、マルフォイは何も言わずに私の肩に顔を埋めた。まるで居なくならないでとひっつく子供のようだ。そんな頭をただ撫でて、私はくすくすと笑った。

 

「ジェフィフィーナの事を穢れた血だと罵らなくてはいけないのに、僕は、それをすることを躊躇してしまう。血を...血を裏切る者になってる」

 

マルフォイがポツリとそういうと、また辛そうに私の肩に顔を埋めるのだ。

 

「僕が秘密の部屋の継承者だったら良かったのに...」

 

まさかの、純血主義否定なのか、否定なのか!?

 

「マルフォイさん、貴方はとても優しい人ですよ。だから、否定をしない考えを尊重する人になってください。そして、誰よりも家族を愛してあげて」

 

死の秘宝で、どらフォイを守るために最後の決戦から逃げた両親。きっと、風当たりは強かった事だろう。しかし、誰よりも残党狩りを手伝ったお陰で投獄を免れた。

 

「僕は父上のことも母上のことも愛してる.」

 

「そうですね。マルフォイさん、そろそろ寮に戻った方が良さそうですよ。寒いでしょう?」

 

そう言って笑いかけると、マルフォイはようやく顔を上げた。そして私の顔を見て眉を顰めるのだ。

 

「ジェフィフィーナ、顔色が悪く...ないか」

 

言わんでくれ、風邪の引き始めという症状がストレートに私の体を蝕んでることにはとっくに気づいている。

 

「いいえ、今日は少し肌寒かったので少し冷えただけですよ。マルフォイさんこそ、今日は早めにお休みになられた方がいいですよ」

 

そう言って私は着せてあげた上着のボタンを止めた。マルフォイを扉の外に連れて行って、そういえばと鞄に入れていたキャロットケーキを持たせてあげる。

 

「これ食べて元気出してくださいね」

 

無言で頷くマルフォイに笑いかけて見送った。そして図書館へ向かおうと進行方向へ向いた瞬間だった。

 

何かが擦れる音が微かに響き渡った。ズッズッだろうか、スッスッだろうか。どのみち不快な音には変わりなく、私は自分のできることと言ったら全力疾走して逃げることだけだった。

 

廊下全体にローファーのヒールが響き渡るのも気にせずに走り続けた。どんどん、どんどん大きくなってくる音に私はもつれる脚を必死に動かして、そして、恐怖した。誰かと思い切りぶつかった。ボフッと音を立てて私は思い切り倒れこんだ。

 

「...あいたたっ。ごめ、す、スリザリンの....」

 

最悪だ。まさかのロン・ウィーズリー....。ロニー坊やとこんちわなんて。

 

「すみません...急いでるので、」

 

私はそのまま軽く会釈するだけで走り出す。そして、階段を降りる途中で階段を踏み外した。あ、死んだ、そう思った時にはもう私はきつく目を閉じていた。

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