身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!! 作:あるれしあちゃん
ポキポキという軽い通知音。目の前には自分がいた。相変わらず長い髪。でも、黒髪じゃない。髪を染める前。そして制服の赤いリボンが目立つ。まだ高校生だった頃。そしてパッと手に取るスマホ。
「またメールじゃん。ほんと、よく送ってくるわ」
そんな事を言いながらも、“私”の口元は嬉しそうに弧を描いて、目尻は下がっていた。嬉しくて嬉しくてたまらないのがわかる。
「......こっちだって、好きじゃなきゃメールなんてしないし、返さないのに」
そう言いながらもスマホのロックを外して返信を始める自分を懐かしく感じた。片想い中だった頃で、幸せだった毎日。
家に帰ってご飯を作って共働きの両親、兄達を祖母と待って、楽しくご飯食べて課題をして友達と通話して、好きな人と連絡を取り合って、元彼のことも思い出さないし、幸せだよって胸張って言えるような幸せな毎日。
暖かくて、甘い匂いを夢の中で感じて、思わず涙が出そうだった。
思わず手を伸ばして“私”の手に触れようとしたその瞬間に。
何かキーキーと甲高い音がした。その音に“私”が顔をあげる。そしてすぐさま、意識は現実へと戻された。まだ起きる時間じゃないよと本能がささやいて、シーツを握りしめてぎゅっと目をつぶった。
甲高い音が聞こえなくなって、ああ良かったなんて思った。幸せな夢をもう一度見たい。眠ろうとすると何かがぶつかる音がドンっと聞こえた。
「マダム・ポンフリーを....」
パタパタと走る音がした後、2人の足音が聞こえ始めた。
「何があったのですか?」
マダムの声だ。次に何かもそもそとしゃべる声が聞こえたけど何を言ってるかは聞き取れない。しばらくボソボソと囁き合った声がピタリと止んだ。沈黙が続く。そして熱ぽい期待された声が響いた。あぁマグゴナガルだ。
「この子が、襲った者の写真を撮っているとお思いですか?」
かちゃかちゃと音がしたと思うとシューッと音が響きわたった。
「なんてことでしょう!」
マダムの声とともにプラスチックが焼けるツーンとした臭いが漂ってくる。
「溶けてる.....、全部溶けてる.....」
マダムの腑に落ちない声が聞こえたと思うと何かがテーブルに置かれる音がする。私はようやくそこで気づくのだ。今はコリンなんとかって男の子がカメラのレンズ越しにバジリスクの目を見てしまい石になった医務室でのシーンなのだと。
「アルバス、これはどういう意味なのでしょう?」
「その意味は...“秘密の部屋”が再び開かれたということじゃ」
「でも、.....アルバス.......いったい...誰が」
「誰がという問題ではないのじゃ.......問題は、どうやってじゃよ.....」
マダムとマグゴナガルの息を飲む声が聞こえた。秘密の部屋がついに開かれたこと、それが教師にも、生徒にも、響き渡った。
そういうことだ。
「マダム、コリンは石にされたのじゃろう........セブルスを呼んでくれんかのう」
「わかりましたわ」
パタンと扉の閉じる音がした。
「ミネルバは各教員に伝えてくれるかのう」
返事こそ聞こえなかったが、おそらく頷いたのだろう。ローブの擦れる音が聞こえたと思うとパタンと扉の閉まる音が聞こえた。
あぁ、原作がついに半ばまできたか、かともう一眠りしようと瞳を閉じた瞬間だった。マグゴナガル教授の声が医務室にまで響き渡った。ちょ、寝てるフリしてんだからもう少し静かにしろや。
「セオドール・ノット!就寝時間は過ぎているのですよ!何をしているのです!」
その音を追いかけるように続けざまに大きな足音が近づいてくる。ドンっと扉の開く音と一緒にハァハァと呼吸音が響き渡った。
「アルレシア!校長!アルレシアはここに?いるな?アルレシアは!」
「落ち着くのじゃ」
「落ち着ける筈が....っ.....あ.......ごめん。ごめんなさい」
大きな声だったのが急に小さく囁く声に変わった。隣のベッドでズズッとポッターの寝返りの音がした。流石にこんな大声で起きないやつはいないだろう。
しかし途端に小さな声で話し出すノットのせいで何も聞こえない。あぁ、起こさない為か。そう納得して何故彼がこんなに焦っているのだろうと全神経を耳に集中すべく目を閉じた。
「アルレシアはどうしたのか、教えてください、ダンブルドア校長」
やっぱり、ノットの体には誰かがいるんだろうか。それとも、なんだっけ、逆行?だっけ、それをしているんだろうか。
「セオドール、落ち着くのじゃ。ハリーもアルレシアも起きてしまうじゃろう」
「ポッターなど、起きているでしょう?アルレシアは.....」
その声と一緒に足音が近づいてきて私は目を瞑り直した。カーテンがゆっくりと音を立てて開いたのが聞こえて私の頭に触れる手を感じた。
「......アルレシア.....寝てるみたいですね」
その声とともにカーテンが閉まった。コツコツとまた足音が聞こえて目を開ける。
「セオドール、消灯時間はすぎておる」
「わかってますよ、しかし、校長、貴方に僕は約束したはずだ」
「ワシとて全ての生徒を監視することはできないのじゃよ」
「それでも、わかっていたはずだ」
約束、なんだそれ。そんな事を思いながらも耳をそばだてているとそれ以上ノットは何も言わなかった。
これでセオドール・ノットが原作通りですなんてことが許されたら頭が飛びそうだ。絶対にノットには誰かがいるはずだ。ノット、君のことは存在Xとでも呼びたい。誰なんだ。君は。
「わかっておる......セオドール。大丈夫じゃ、アルレシアは石になっておらんよ」
「ならいいです」
「そうじゃのう.....セオドール」
呼び止めたダンブルドアは何かを囁いたようだった。何を言ったのかも何を伝えたのかも何も聞き取れない。
しかし、明らかにピリッと空気が変わったことはわかった。あぁ、魔力が漏れ出ているのだ。かなりの強さで。
「えぇ、精々肝に銘じておきます。それでは。次はもうアルレシアのことで僕が気にかけることがないことを願いますよ」
その言葉と共に扉の開く音が聞こえた。そして静かにパタリと閉じた。
セオドール・ノット。君は一体何者なんだ。私には何もわからない。
空中に銀色の髪の毛を思い浮かべた。モデルのようにしなやかな体と背を合わせるように誰かがいるのを思い浮かべる。
そして私は何か猛烈な眠気に襲われた。いや、何かだるさだ。
とてつもなく、体が重い.....,。
あぁ、麻酔された時のそんな感覚だ........。となりのベッドで寝息が聞こえたと思うと私は乾いた目を潤すべく瞬きをした......つもりだった。気づけば私は眠ってしまっていたらしい。