身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

82 / 111
第82話

ただ頰に伝う涙をぬぐい続けた。目の前の誰かが私の前でハンカチを手渡してくる。素直に受け取って握りしめた。そのハンカチは少しシワがついていて、それがまたなぜか可愛く感じた。

 

優しい匂いだった。

 

何で私は泣いてるんだろう。目の前で深い緑色、抹茶色の液体が入ってグラスの水滴がグラスを伝っていくのを見た。

 

目の前の人が辛そうに表情で必死に笑みを作ったのかもしれない。

ただ、ボヤけていてわからない。

 

これは親友じゃ無いのに、どうしてこうも安心してるんだろう。私はハンカチで涙を拭った。そしてありがとうと嗚咽混じりの声で言うと、相手はホッとしたような、それでいて辛そうな顔で笑みを作って私に何かファミレスのメニューを渡してくれた。

 

そして、口を開いた。

 

何か言ったのだ。

 

それを聞いて私は喜ぶ声を上げてメニューを見つめて悩むと、一番いちごの乗ったケーキを指差した。

 

そして前を見つめると、もうそこには誰もいなかった。

 

「なっ.....」

 

そして私の目の前に真っ黒な闇が広がって、溶けた。

 

 

 

 

 

 

「....っ....夢」

 

ベッドから起き上がると軽く伸びをして髪の毛を手ぐしで整えながらベッドを降りた。時計は朝6時を示している。割と毎日夢は見る方なので直ぐに頭が現実に戻ってきた。

 

ストレッチをしてネグリジェからワンピース(服はワンピースかスキニーパンツとシャツしか夏は無いのでどちらかになるのだが)に着替えると櫛で髪を纏めてゴムでまとめた。

 

そして扉を開けると、正面の部屋から。

 

ポッターさんのご登場。

はい、漏れ鍋に彼がいるということは、はい。ナイトバスゥ〜です。数日前にシリウス・ブラックが脱獄しましたね!大騒ぎだよ本当に!

 

「おはようございます、ポッターさん」

 

「えっ!?あ.....あ、アルレシア....おはよう。何で...君がここに?」

 

「それより、朝ごはん食べなくて良いのですか?御亭主の作るご飯は絶品ですよ」

 

無理やりに話を逸らすとポッターは頷いて後ろをついてきた。夏の間にまた背が伸びたのだろう、もう頭一つ違う。

 

大きくなったなぁ坊や。

 

下に降りると私は素早くスタッフルームに入ってエプロンをつけると手を洗ってトムさんのところに向かった。

 

「おはようございます、トムさん」

 

「あぁ、おはようアルレシアさん。ポッターさんも起きてきたようだね。一緒に食事するかい?」

 

「いえ、従業員ですし、そんなに親しい仲では無いので......」

 

私はグラスを布巾で拭いてどんどん棚に戻しながら言うとトムさんは軽く相槌だけを打ってお盆にハムエッグとウィンナー、それからパンにバターを添えてお盆に乗せた。

 

「ポッターさんに頼むよ」

 

「はい」

 

お盆を手にポッターさんが居心地悪そうに座る席に向かった。

 

「お待たせしました」

 

「アルレシア、従業員なの!?」

 

「そうですよ。飲み物は紅茶ですか?カボチャジュースにします?」

 

「あ、じゃ....カボチャジュースで...」

 

お盆の上のものをポッターの前に置いてホークとナイフを置くとカボチャジュースですねと復唱。

 

「すぐ持ってきますね」

 

「あ、まって!」

 

その声になんじゃいと思いながらも振り向くとポッターさんは居心地悪そうな表情を私に向けて口を開いた。

 

「アルレシアも...もし、仕事が終わってるとかなら...一緒に食べてくれないかな....あと、勉強見て....欲しい...」

 

片言にそう言うポッターさんに内心は暇じゃねーよ!と思いながらも可愛いので許す。

敵は少ない方がいいからね!

 

「いいですよ、でも朝はあと1時間半待ってもらえますか?お客様の相手があるので、お茶にはお付き合いしますから」

 

「うん!待ってるよ!」

 

私は微笑んで頷くとお盆を持ってその場を立ち去った。次に来たお客さんからフレンチトーストを注文されてトムさんの元へ急ぎ足で戻った。

 

「トムさん、8番テーブルの方がフレンチトーストをご注文です」

 

頷くトムさんに私も頷くとカボチャジュースをグラスに注いでポッターの所へ戻って置いてあげた。

 

そんな風にドタバタしているうちに一時間半どころか2時間が過ぎて、客足は常連のカウンター席だけになった。休暇の真ん中頃は一番混むのであと1週間程度もすれば今までの半分になるだろう。それまでの辛抱。

 

エプロンを外して腕に挟むとトムさんの出してくれた賄いの朝食(今日はビーンズサラダとフレンチトーストとゆで卵、それにカリカリのベーコンとヨーグルト)を持ってポッターさんの前に腰を下ろした。

 

「すみません、お待たせしました」

 

「お疲れ様。僕、漏れ鍋がこんなに混むなんて知らなかったよ」

 

「今の時期は丁度混み合いますね。あと1週間もすれば客足は落ち着くとおもいますよ」

 

ビーンズサラダの豆を取らないようにしながらレタスにホークを突き刺して食べながら話を聞いた。

 

「僕、アルレシアは良い所の娘だと思ってたんだ」

 

「...あはは....真逆ですね」

 

苦笑いするようにそう答えると、ポッターは眉を困るように下げて首を振った。

 

「勉強も出来て、スリザリンなのに優しいから。魔法族じゃ無い所の育ちだと思ってた。ハーマイオニーの両親は非魔法族なんだ。歯医者なんだって。だから、アルレシアもそんな風なのかなって」

 

「いいえ、私が優しいのでは無いですよ。スリザリンの皆さんはちょっぴり不器用なだけです」

 

「マルフォイは....優しく無いや」

 

ポッターはあの可愛い頃から大分成長したその顔で少し嫌そうに顔をしかめながらも原作よりもいくばか良さげな雰囲気だった。

フレンチトーストを切り分けつつもそのことに満足しつつ私はポッターに笑った。

 

「マルフォイさんも、貴方と一度はお友達になりたがってましたよ。でも、マルフォイさんは少し世間を知らなかったんです。

今は意地になってますが、今でも貴方とお友達になりたいって思ってるんじゃないですかね」

 

「うーん、それはどうだろう。

僕はマルフォイの事、好きって思っては無いけど、ロンみたいにスリザリンを全否定するつもりじゃ無いんだ。スネイプのことは大嫌いだけど...」

 

「ふふ....教授については私からは何とも言えないですね。教授にはきっと...教授なりの事情があるのかもしれないですし」

 

貴方のお父様がいじめ抜いたせいで根性ひん曲がってるけどね!ね!

 

「アルレシアって本当は何歳?13歳....じゃないよね?」

 

「まぁ、見た目通りの年齢と思っていただけたら幸いです。

でも、ポッターさんの事は誰でもある程度ご存知のようですが、ポッターさんが知らないというのはフェアではありませんね。

何か3つ質問をしてもいいですよ」

 

答えられないのはダメですけどね、と続けるとポッターは考えるように眼鏡を少し上げた。

その間にヨーグルトを食べて食器をまとめると端っこに寄せておく。

アズカバン早々にこんなに主人公に関わるとか運気使い果たしてる気しかしないなぁ。でも原作だとグレンジャー達がこっちに来たのって休暇最終日じゃなかったっけ。主要なところ以外はあんまり覚えてないからなんとも言えないけど。

 

「じゃ....じゃあ」

 

悩んだ末に思いついた質問なのか、ポッターはゆっくりと口を開いた。

 

「アルレシアの父さんや母さんってどんな人?」

 

「そうですねぇ......私は自分の両親の顔を見たことが無いので何とも言えませんね」

 

「え、写真とか無いの?」

 

「えぇ、私は俗に言う捨て子でしたから。名前も誰が付けたんでしょうね。両親か、もしくは私を保護してくださった方でしょう」

 

さっきのって質問換算しても良いですかね?どうなんだろう。

 

「アルレシアは、何でスリザリンに入ったの?」

 

あ、これは質問の換算で。

 

「何故でしょうね?帽子がそう判断した、としか言えません。私はホグワーツについて何も知らずに組み分けをしてますから」

 

「君は、スリザリンみたいに意地悪じゃないよね。優しいし、頭もいいし。マルフォイ達みたいに鼻につく感じは全然しない。僕はスリザリンを薦められたんだ。偉大になれるって。でも、グリフィンドールがいいって帽子に言った。だから、君は僕と同じようにスリザリンを選んだのかなって」

 

「私はどこの寮も希望してませんよ。マルフォイさん達のように名家のバックアップがあるから、貴方が偉大になれる、という事だったのかもしれませんね。ポッターさん、スリザリンに入っただけで、必ずしも悪になるわけではありませんよ」

 

「でも、なった人は一杯いるって」

 

「でも、グリフィンドールでもハッフルパフでもレイブンクローでも悪の道に走った人は片手では足りないでしょう?」

 

「でも......」

 

「ポッターさん、貴方自身の目で見た結果で判断しても構いません。しかし、グリフィンドールが正義とは限らないことを忠告させてください」

 

私はポッターににっこりと笑いかけると続けて口を開いた。

 

「グリフィンドールで、昔大きないじめがあった事もあります。ご存知でしたか?グリフィンドールでもいじめを行うのです。しかも、それを悪戯だと明言してです」

 

誰とは言わなかった。ポッターの偉大な父親の話だけど、父親を信じるする子供にとっては悲しい事実だろう。

 

「.....僕、それは知らなかった。じゃあ、グリフィンドールが悪の道に進む事もあるんだね」

 

「えぇ、だって....その人次第でしょう?どの道に進むのかって」

 

ポッターはまた頷くと、今度は私に質問なんだと口を開いた。もうとっくに、漏れ鍋はバーに来た人だけになって、私たちは異質かのようにも思えてしまう。

 

「アルレシアは将来何になりたい?」

 

「......私は......」

 

将来何になりたいんでしょうね。たしかに17だし。将来についてかなり考えなきゃいけないだろう。私が言い淀んでいるとポッターもポッターで何か悩んでいるようだった。

 

「私は将来、自立できる職に就きたいですね。当面の目標は死なずに成人でしょうか」

 

少しお茶目に返すとポッターは少し笑って、また今度は真剣そうな顔で見てきた。

 

「グリムって、見たことある?僕、その...黒い犬を見かけたんだ.....だから......」

 

「グリムですか....」

 

はいそれ、シリウス!ブラックはーい!ねぇー。

私は笑って有り得ないと首を振った。

 

「そう簡単に死ぬわけありませんよ。

この辺も野良は沢山いるのでそのうちの一匹でしょうね。

そんなこと言ったら私なんて100回以上見てますよ」

 

だから安心しでください、と続けるとポッターは安心したように笑った。彼は割にメンタルが弱いらしい。

 

「そうだよね。僕の見間違いだよね。

あ、そうだ..アルレシア、一緒にダイアゴン横丁に行こうよ、僕、いろいろ見て回りたいんだ」

 

「そうですね。今日の午後はいいですよ。

それまでは、きちんと課題をしていてくださいね」

 

「うん」

 

私は食器を手に店の奥へとまた戻った。

食器をシンクに入れてまたエプロンの紐を締めるとトムさんの手伝いをする。

掃除は基本的にメアリーさんという40半ばのおばさんがしてくれるのでホール中心だ。

 

これからパブでランチ系を頼む人が出てくるのでめんどくさいがまあほどほどに頑張ることにする。

そんなこんなで課題を行うポッターを横目に愛想を振りまきながらジジババの相手をする。

 

(彼は....ハリーだね)

私の頭の中でそんな声が響いた。頭の中でひんやりと何かを感じる。一瞬頭にひやっとすると同時に声が聞こえてくる、というような感じだ。

 

(ポッターは新学期までここにいるよ)

 

「お待たせしました〜!豆のスープです!」

 

歯の何本か抜けた年老いた爺さんの前に出す。この豆のスープ、実はただのスープでは無いんですね。

魔法植物から取れる豆なので、結構危険が伴います。

 

「すまないね。ありがとう」

 

「ニキフォルダ、早くしねぇと食われちまうぞー」

 

爺さんの隣でタバコをふかした爺さんがガハガハと笑いながら告げてくる。

 

「そうじゃな。食われる前に食っちまわんと」

 

「ごゆっくり」

 

笑って空いたグラスを持ってその場を後にした。

あの豆は食べようとしてくる対象から逃げ回る豆で、さらに時間が経てば経つほどでかくなっちゃうんですよねぇ。

 

(ポッターって一応は名家の筈じゃ。親戚くらいいるだろう?そこになんで帰らないんだ?)

 

(あー.........そこはダンブルドアの考えがあるんだけど。ポッター側の親族って聞いたこと無いよ。もう、亡くなっているんだろうね)

 

たしかに.....。あんだけの資産あるなら一応は名家なんだよね?じゃなんで引き取り先に支援するとかしないんだろ....。

不思議だ。

 

(そう考えるともしかして僕の方がマシな生活していたのかもしれない)

 

(あはは...でも、人の不幸は比べられないから。みんなそれぞれ不幸持ちだし。

ポッターも親戚に愛されてなくて可哀想だ)

 

(アルレシアって僕の孤児院にいた先生に似てるね)

 

(何急に)

 

(その先生はこういうこと言うんだよ。

不幸な人間など吐いて捨てるほどいるけど、全てにおいて幸福な人間なんていない。

他人との不幸さを自比べて無いで。必要なのは里子に出してもらって幸せになること。

だから可愛子ぶってなさい。

その先生、20代だったんだけど孤児院の出らしくて。

僕の事を一度も叱らなかったんだよ)

 

(そんなにリドルが悪い子ちゃんだとは思ってないつもりだけど.....そんなに怒られるような事してたの?)

 

(いや........ホグワーツ 入学前はね。それからは秀才の人間の鑑だったよ)

 

(へぇ〜じゃあその先生は褒める人だった?)

 

(褒めてはいるけれど、いつも目は笑ってなかったよ。

アンバーの瞳が蔑むように細くなるだけだよ。

【凄いわねトムは。将来はきっと立派になるわね】

そう言って頭を撫でてくる。でも、冷たい人だったよ)

 

(今何してるんだろうね)

 

(さぁ。結婚でもして孫に囲まれてベッドで寝てるんじゃ無いかな。その人ももうおばあちゃんぐらいだしね.......)

 

(リドルってもうおじいちゃんだもんね。見た目が若いからすっかり忘れてました)

 

(まぁ、見た目の割にはね)

 

「はい、フィッシュ&チップスです。ソース足りなくなったらおっしゃってくださいね〜」

 

テーブルに置いて空いたジョッキをお盆に乗せる。リドルって実は何歳になるんだろ。65?わーおじいちゃんじゃん。

 

そんなこんなで頑張って仕事を片付けて時計が2時になったのを確認した。

ポッターのお守りの時間って事です。これから1ヶ月これとかじゃないよね!?かんべんだよ。

エプロンを外すとそれをスタッフルームのフックにシワを伸ばして引っ掛ける。

 

髪の毛を下ろして後頭部のところから一本の編み込みを施して、施して、最後に腰まで三つ編みすれば完成。

 

部屋から財布とカバンを持って下に戻るとポッターの元へ。

程よく空いてきた店内にはある意味で殺伐とした雰囲気がしている。まぁ、シリウス・ブラックが脱獄ならこんなもんだろう。

 

「お待たせしました」

 

「アルレシア!課題進んだよ」

 

そう言って私に見せてくる羊皮紙にはおっさんの挿絵が抱えれており、ルーモス、と書かれていた。あぁ、原作でライトを照らして観てた本だ。

 

「お疲れ様です。では..」

 

「アルレシアさん」

 

私が声をかけようとした瞬間、後ろからトムさんの声が聞こえた。振り返ると少し申し訳なさそうな表情のトムさんと目が合った。

 

「アルレシアさんにお客様だよ」

 

「トムさん.......ポッターさんすみません少し失礼します」

 

「あ、うん。じゃあ、もう少し待ってる」

 

トムさんと店の奥へ入ると其処には真っ黒蝙蝠のご来店でした。そして、不機嫌を通り越して死んだ顔をなさった真っ黒蝙蝠さんは無言で腕を出した、来い、という事かね?

 

「お久しぶりです、教授」

 

軽く鼻を鳴らす程度で特になにも言わない教授になにしたいねんの思いながらもトムさんに向き直った。

 

「トムさん、ポッターさんに言伝を..」

 

「わかっているよ。行っておいで」

 

歯の抜けた口で笑うトムさんに再度、監視役も含めて頼む。教授が来た理由はポッターの近くに私を居させると監視しにくいという事だろうか。

あるいは、私をウィーズリーやグレンジャーと違い身元がうまく割れないから危険視してるのか。

 

なんて、そこまではないと思うが。この辺からは原作知識が怪しい。おそらく炎のゴブレットに来ると半分がわからない、不死鳥まで来ると殆ど合間合間しかわからないだろうな。

 

トムさんにお礼を言うと教授に改めて会釈する。不機嫌そうな教授の腕に捕まり私はゴムの弾ける音を体全身で聞いた。

パッと地に足をついたと思うとそこは教授の家。そして、散らかり放題の研究室だ。論文や数式の山やメモの切れ端や千切った羊皮紙。

 

「これは.......」

 

「脱狼薬だ」

 

「必要とする生徒が入学するのですか?」

 

「いや.......」

 

口を開き、また閉じる教授になんだかんだいって守ろうとしてるのだろうかとちょっとほっこりしていた。羊皮紙の山を拾い上げながら、私はとりあえずご飯にしましょうと教授に笑いかけた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。